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デザインスプリントの実践方法とは?ワークショップ形式で学ぶ、ニジボックス式価値創造型スプリント①

更新日 2024.1.30
デザインスプリントの実践方法とは?ワークショップ形式で学ぶ、ニジボックス式価値創造型スプリント①

「デザインスプリント」はGoogleで開発されたプロセスではありますが、今回はニジボックスオリジナル版デザインスプリントを3回にわたってご紹介します。
世の中にたくさんのクリエイティブなアイデアが生まれてほしいという弊社の願いを込めて、みなさまご自身で体験いただけるよう、包み隠さず詳細に実践方法を公開いたします!

新規事業における課題

業界を問わず、会社に新しいイノベーションを起こすべく新規事業開発のチームや部署が新設される傾向が強まっています。
ニジボックスでは、新規事業立ち上げプロジェクトのご支援をさせていただいております。
しかし、初期段階においては、次のような状況となってしまうことも少なくありません。

  • 既知の課題や偏った考え方に基づくアイディエーションをしてしまう
  • アイデアはあるが、世の中にニーズがあるのか自信がない
  • イノベーション組織をつくったが、経験者や有識者が少ない
  • 十分な価値検証をできるほどの予算や期間がない

このような状況があったとしても、顧客のニーズを発見し、事業構想を推進できるワークショップがあります。
それが、今回ご紹介するニジボックスオリジナルのデザインスプリントです。

ニジボックスのデザインスプリントとは?

新しい機会を発見する「価値創造型」の短期ワークショップです。
一般的にワークショップでは、「おもしろいアイデア」を発散することはできても、様々な理由で実際に「事業化までできる」ことは少ない傾向にあります。

そのためニジボックスでは、ユーザーリサーチとビジネスモデル構築のノウハウを活かし、
「ニーズの確度が高く」「実現性の高いサービス価値を創造できる」オリジナルのデザインスプリントを設計しています。

例えば、アイデア収束の段階で、開発者とともに実現可能性の観点からアイデアを評価したり、コンセプトデザインの際にはキーとなる体験を見極め、最小限の機能実装を検討したりと、実現にむけたワークが特徴です。

ニジボックス式デザインスプリントの特徴

ニジボックス式のデザインスプリントを実施すれば、次のような効果がご体感いただけます。

  • 未知の課題を発見し、アイディエーションすることができる
  • 新しい市場を開拓でき、事業をスケールしやすい
  • チームメンバーだけで実践できる
  • 事業構想から具体的な実現方法まで、2~3日でできる

「課題解決型」ではなく「価値創造型」の新規事業開発をおすすめする理由

弊社では、プロジェクトの状況に応じてアイデア創造のスタイルを変えています

経済的に体力があり、「中長期的に収益を生みだしたい」または「CSR活動の一環として社会に貢献できる商品やサービスをつくりたい」というお客様には「価値創造型」の事業開発スタイルを推奨させていただいております。

短期的かつ早期に収益を生み出す事業を実現したい場合は「課題解決型」のスタイルがプロジェクトに合っている場合もございますので、各スタイルの特徴に沿ってご判断ください。

前提条件

まず、デザインスプリントを実施する前に必要な条件があります。
必ずしも完璧に守る必要はありません。
しかし、よい条件下で進行できると、よりアイデアの完成度が高く、早い実現を可能にしますので、ぜひお試しください。

  • 各職域のチームメンバー全員が参加する(例:決裁者、ディレクター、デザイナー、エンジニアなど)
  • アイデア発散時に、収束させようとしない
  • 調査対象となるユーザーが存在しており、調査できる状況にある
  • 楽しみながら、メンバー全員が能動的に参加する

デザインスプリントの内容

基本的にはデザイン思考の5ステップに沿って、それぞれのワークを実施いたします。
各ステップの目的・事前準備・ワーク内容をご紹介致します。
それぞれ所要時間は記載しておりませんので、状況に合わせて設定してみてください。

【Step1】共感

1.目的

■メンバーで共通認識をもつ

新規事業に関わらず、プロジェクトを成功させるためには、お客様を含むチームメンバーで目線を合わせ、同じ熱量で推進することが必要です。

弊社の数ある実績においても、立場を問わず同じ目線で全てのメンバーが積極的に参加できていたプロジェクトほど、正式にリリースできている傾向にあります。

例えば、アイデア創出〜コンセプト設計まで決裁者やコンサルタントの独断でなされた場合、上長やチームメンバーの共感が得られず事業の完成度が低くなる、またはリリースできなくなる、といった場合も過去にありました。
この前提があってこそ、スプリントではメンバー全員が積極的に楽しみながらサービス設計をすすめることができます。

■経験から価値を抽出する

確度の高いアイデア創出をするために、事実情報を集めて解釈します。

ここでいう「事実」とは、実際の経験者の「行動」や「発言」を指します。
後述するKA法によって、行動や発言をそのまま考えるのではなく、価値として捉え抽象化します

2.事前準備

ワーク開始前に、次のものをご検討、またはご準備ください。

  • 想定しているターゲットと市場
  • ホワイトボード、または模造紙
  • ポストイット(黄色、青色、オレンジ色、ピンク色)

    ※色は便宜上設定しています。ご自由にお選びいただけます

  • マジックペン
  • 養生テープ
  • 音楽、お菓子、飲み物などリラックスできるもの

3.ワーク内容

■仮説デザイン「もし・・・なら?」

まずは、価値創造に有効なアイスブレイクです。

常識にとらわれず、新しい解釈を生み出すやわらかい頭をつくるため、頭の体操をします。
また、後のアイデアのヒントにもなるので、思いつく限り仮説を発散させてみましょう。

①個人ワーク

  1. :「◯◯に関する常識」を青色のポストイットに書く
  2. :「常識を覆す仮説」を黄色のポストイットに書き、1のポストイットの下に貼る
  3. : 1~2を思いつくかぎり繰り返す

②グループワーク

自分の書いた仮説を説明します。

■価値マップデザイン

「KA法」と呼ばれ、発話録などから事実の背景にある価値を抜き出すことができます
行動や発言をそのまま考えるのではなく、本質的な価値として捉え抽象化します。

まずは事実を集めるため、ターゲットへのインタビュー、またはアンケート収集を実施します。
今回は手軽に始められる、アンケートを収集した後に価値マップを作成する方法をご紹介します。

⓪事実を集める

まずは個人ワークで、次の価値シートを書きましょう。

項目に沿って、具体的に書くほどメンバー間での認識齟齬がなく、あとで分析がしやすくなります。
例えば、このようなレベルの具体性があるとよいでしょう。

テーマは、想定している具体的なものより広く、類似した経験のある抽象的なものを設定しましょう。

これはアナロジー思考を応用しています。
アナロジー思考とは、自身の経験や知見と未知の領域に共通点を見出し、創造的なアイデアを発想するために有効な思考法です。

例えば、検討しているサービスが「マラソン」であれば、テーマは「スポーツ」と設定してみます。
ポイントは、特別な出来事ではなくても、些細な気づきがあったことを思い返しながら書き出してみることです。
意外と、取り留めもない体験が本質的な価値観を示唆することがあり、アイデアのヒントとなり得ます。

作成者はターゲットであることが望ましいですが、類似テーマの経験者でも構いません。
メンバー内で作成しても良いですし、メンバー以外のターゲット対象者を広く募っても構いません。
当日時間が足りなければ、事前の宿題とすることをお勧めします。
目安としては合計で100枚程度あれば十分でしょう。

①整理する

⓪で作成した「出来事」が似ているものをグルーピングし、ラベリングします。
オレンジ色のポストイットに書き込んでください。
出来事を大雑把にわけてから、細かく分類すると整理しやすいかと思います。

また、どのレベルの抽象度でラベリングするかによって、具体的な価値抽出の可否が分かれます。
弊社としては、なるべく具体的な項目をそろえてラベリングすることをお勧めいたします。

抽象度が高い状態

具体度が高い状態

一見難しいように感じますが、こちらのほうがグルーピングしやすくなるとともに、後続のステップもスムーズになります。

②分類する

次に、①のラベリングや、⓪の「価値」を参考にし、価値が似ているものを更にグルーピングします。
その後、「〜したい」という理想形でラベリングしましょう。
ピンクのポストイットに書き込んでください。

③つなぐ

最後に、グループワークで全体を整理します。
②のラベル間の関係性を整理し、矢印などルールをきめて書き込んでいきましょう。
整理が難しい場合は①を見直し、具体性があるか確認してみましょう。

⓪〜③を「スポーツ」というテーマで実施すると、つぎのようになります。

今回のまとめ

ニジボックスオリジナル版デザインスプリント講座第1回目は以上です。
今回は、デザインスプリントの概要と、「デザイン思考の5ステップ」に沿って行うワークの1ステップ目「共感」のワークを実践いただきました。

次回は、ステップ2の「問題定義」とステップ3の「アイデア創造」のワークを実践します。

■次回記事
デザインスプリントの実践方法とは?ワークショップ形式で学ぶ、ニジボックス式価値創造型スプリント②

また、下記資料でも、新規事業の立ち上げからリリースまでを具体的にどのように進めるべきなのかについて、よくあるご質問を交えながら解説しています。
ぜひUXリサーチを用いた事業推進への理解を深めることにお役立てください。

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監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

Twitter:@junmaruuuuu
note:junmaru228