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【初心者講座】「顧客開発モデル」4つのプロセスを理解しよう!

更新日 2022.9.29
【初心者講座】「顧客開発モデル」4つのプロセスを理解しよう!

イノベーティブなアイデアはあるのに、それを元にしたプロダクトが事業として成り立つのか不安に感じる、または本当に必要とする人がいるのだろうかと考え、事業開発への着手に二の足を踏んでしまうということはありませんか?
これから起業を考えている人やスタートアップとして次の段階に進みたい人、また大手企業にいても、企業内起業の役割を果たすよう期待されている人に役立つのが「顧客開発モデル」という事業開発手法です。

これは、スティーブン・ブランク氏が提唱し、『アントレプレナーの教科書』内でも書き著した事業開発の中核となる理論。
この記事では、なぜそれが新規事業を成功へと導くのか、どのように事業を開発していくのか、その4つのプロセスについて詳しく紹介します。

ニジボックスで、ビジネスモデル検証のメンタリングをしていただいている、ラーニング・アントレプレナーズ・ラボ 堤孝志さんによる「顧客開発モデル」講座から、入門編として顧客開発モデル全般についてご紹介したのが前回の記事

今回はその中から、「顧客開発モデルの4つのプロセス」について詳しくご紹介していきます!

成功確率が高いのにはわけがある――顧客開発モデルとは?

顧客開発モデル概要

新規事業開発には、先にターゲット(顧客)を決めておき、そのニーズにマッチするプロダクトを作る「マーケット・イン」と、先にプロダクトを決めておき、それを必要としている顧客を見つける「プロダクト・アウト」という、大きく分けて2つの手法があります。

顧客開発モデルは、そのうち「プロダクト・アウト」に属する手法。プロダクト開発と並行して顧客やビジネスモデルの開発や検証を進めていく方法です。

スタートアップを夢見る人の多くは、自分たちのアイデアがプロダクトになっていく過程を、右肩上がりの一直線だと考えるかしれません。

しかし、顧客開発モデルでは、開発したものをテストしてもらい、失敗したとしてもそこから学びを得、それを次の開発に活かして、またテストしてもらう、という“小さくて賢い失敗”を何度も繰り返していきます。

失敗を繰り返すのに、「成功確率が高まる」とはどういうことなのでしょうか? それは、新規事業開発は、プロダクトが完成して“おしまい”というわけではなく、作ったプロダクトに対してお金を出してくれる顧客がいてはじめて成功した、といえるからです。

この手法を使えば、失敗してもそれは“小さい”ので、資金もヒューマンリソースも時間もかからず、開発と検証のサイクルを短い期間で何度も繰り返せます。
その段階で、より受け入れられるプロダクトへと軌道修正していけるため、「プロダクトが完成したのに、顧客がいない」「ターゲットに満足してもらうプロダクトが完成しない」「リソースが尽きてしまった」という失敗を避け、事業を成功に導くことができるんです。

その目指すゴールは「再現可能でスケーラブルなビジネスモデル」を探し出すこと。

「再現可能」とは、“たまたま売れた”というものではなく、長きにわたって必要とする人がいて、それが売れ続ける状態を、「スケーラブル」とは、顧客が誰なのかをしっかりと理解したうえで、「現在の顧客+n人」をどんどん見つけていけ、それによって事業を大きくしていけることを示しています。

顧客開発モデルは、起業家教育に長年携わってきたスティーブン・ブランク氏の経験から生み出された論理に裏打ちされたプロセスがあります。このように体系化された顧客開発モデルを実践すれば、手探りの不安から解放され、自信を持って事業開発に取り組むことができるのです。

では、顧客開発モデルのプロセスとは一体どのようなものでしょうか。

顧客開発モデルの4つのプロセスとは?

顧客開発モデルには、次の4つのプロセスがあります。

  1. 顧客発見
  2. 顧客実証
  3. 顧客開拓
  4. 組織構築

各プロセスについて詳述する前に、覚えておいていただきたいのが、「仮説検証思考を持ちつつ」、ターゲットを「あえて絞り込む」という考えかたを原則としてもって手順を進めていくということ。

前のパラグラフで説明したように、顧客開発モデルには、“小さくて賢い”学びの得られる失敗を繰り返すという特徴があります。

学びを得るには、「なんとなく」「手当たり次第に」ではなく、仮説を明確に持っていることが大前提にあります。
そして、検証により、失敗したとしても、それを糧にして、軌道修正しながら、よりニーズの高いものへとプロダクトを昇華させていけるのです。
顧客開発モデルのサイクル
仮説を持つことの重要性

最初から「成功するだろう」という考えでは、受け入れられなかったプロダクトにしがみついてしまいますが、仮説検証思考を持って事業開発を行えば、「失敗は当たり前」というふうに考えられるようになり、事業として成り立つ確度の高いプロダクトを作ることができるようになります。

価値創出には試行錯誤が不可欠

また、ターゲットを絞り込むことで、プロジェクトを小さくはじめることも可能です。
切実なニーズのある人であれば、そのニーズが満たされるプロダクトを使ってくれますが、そうでない人はさまざまな機能が盛り込まれていないと使わない、という傾向があります。
もし、それに応えていたら、開発に時間とお金がかかりすぎてしまい、最終的に完成させることなくプロジェクトが潰れてしまう、ということになりかねないのです。

アーリーアダプターとは?

最初は切実なニーズを持っている人だけに、ターゲットを絞り込み、後にスケールさせていく、という考えを持ってこの4つのプロセスを踏んでいきましょう。

1. 顧客発見

顧客“発見”と、日本語では説明していますが、これは「見つける」という意味だけでなく、ターゲットになりきれるくらいに充分理解する、ということも意味しています。

ターゲットだと自分たちが想定した人に、切実なニーズがあるかどうかを見極めること、もし、ニーズがあるなら、その人たちにどんな特徴があるのかまで解明しておきます。
これにより、自分たちの開発しているプロダクトを売り出す対象がどんな人なのかを、再度調査しなくても判別できるようになるからです。

方法としては、まだ実際のプロダクトがなくても、コンセプトがあればその資料を作り、想定顧客のところに行って、「このようなものがあったら欲しいと思いますか? あったら使いますか?」ということをたずねていきます。

なぜ必要とするのか、というところまで理解し、ニーズを持っている人たちの特徴を引き出します。

2. 顧客実証

基本的には、「1」と同じことをこのプロセスでも行います。
ただ、プロダクトの開発が少し進んでいるので、実際に動くものがある状態になっています。

それを「顧客」として購入してもらえるか、本当に売れるのか、ということを検証するのがこのプロセスです。
つまり、作ったプロダクトへの対価が支払われるかどうか、顧客がいるかどうかを試してみる、ということですね。

このプロセスでは、営業プロセス(売り方)を確立することが重要です。
お金を出してくれる人がいて、その人たちを獲得する営業プロセスも確立すれば、再現性が高まっていきます。

あとはこの、「1」と「2」のプロセスを繰り返していけば、「事業化」に進めることができるでしょう。

3. 顧客開拓

「2」までのプロセスでは、顧客がいるかどうかを検証してきましたが、「3」では、
見つかった顧客への売り方やリーチの仕方を探っていきます。
これにより、後の組織構築をしていくときに、どこにより多くの投資をしていけばいいのか、どのように拡大させていくのが効率的なのか、ということを見極められます。

ただし、この場合でも「右肩上がりに一直線に成功できる」とは考えず、仮説・検証しながらである、ということを忘れないようにしましょう。

4. 組織構築

「3」まで進められたら、あとは組織やチームを作って事業をスケールさせてゆく段階になります。

ここまではあえてターゲットを絞り込み、切実なニーズを持っている人たちが満足するプロダクトを開発してきました。
今まで世の中になかったようなイノベーティブなプロダクトは万人受けすることがないからです。

とはいえ、顧客開発モデルのゴールは、「再現可能でスケーラブルなビジネスモデル」を探し出すことです。
まず、切実なニーズを持つ人たちに対して販売し、黒字化できたら、そこを足がかりにして市場を拡大していきましょう。
彼らの切実なニーズをしっかりと満たせれば、彼らよりも“弱い”ニーズを持つ人たちが、その実績を評価し、次の顧客になってくれるからです。

弱いニーズだとしても、それを「欲しい」と考える人たち(メインストリーム)に受け入れられるには、機能の追加が求められることでしょう。
ここで、必要最小限の機能だけを搭載していたMVP(Minimum Viable Product)から、万人受けする、さまざまな機能を盛り込んだプロダクトへと進歩させ、事業を拡大させていくのです。

人的リソースや金銭などの投資をどこにどれほど行うかは、「3」の段階である程度見極めているので、いきなり実践に入り、失敗する、ということも防げるでしょう。

さあ、顧客開発モデルを実践しましょう!

どんな手法やフレームワークでも、ただそれを知っているだけではビジネスの結果には結びつきません。
結果として実らせるためには、実際に実践する中で経験を積み、手法を自分のものにしてゆく必要があります。
しかしながら、相手は「ビジネス」です。
やみくもに実施しても一筋縄では行かないことは目に見えている上、コストもかかるのでリスクもありますよね。

では、手堅く、リスクを最小限に実施するにはどうしたら良いのでしょうか?

それは、「実績のある経験者のプロセスを参考にする」ことも一つの作戦だと思います。

ニジボックスは、リクルートの新規事業研究機関から誕生した経緯があります。
顧客開発モデルをはじめとする様々なフレームワークを新規事業で使用し、ビジネスの価値検証を重ねてきております。

これまでも、クライアントの課題に寄り添ったデザインプロセスを、実際にリクルートや大手クライアント様の新規/既存事業でも数多く実践し、検証と改善を続けてきました。


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・UXデザインの次の大きなキーワードは『プロダクトシンキング』ー人生は誰も望んでいないものを作るほど長くはないー
https://blog.nijibox.jp/article/uxdesign_productthinking/

以下、顧客開発モデルの理解を深めるために参考になるサイトをピックアップ!

・ラーニング・アントレプレナーズ・ラボ
http://le-lab.jp/
・スティーブ・ブランク氏が語る、顧客開発モデル
https://bizzine.jp/article/detail/8
・起業家教育の旗手スティーブ・ブランク氏に学ぶシリコンバレーの経験を集約した経営・教育ツール
https://diamond.jp/articles/-/30755
・顧客開発モデル1「顧客発見」
http://leanstartupjapan.co.jp/?p=175
・連続起業家スティーブ・ブランク氏が語る、アントレプレナーとイノベーターよる大企業イノベーションの本質
https://bizzine.jp/article/detail/3511

監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

Twitter:@junmaruuuuu
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