
【初心者向け】カスタマージャーニーマップとは?作り方や目的、メリットをやさしく解説!
「カスタマージャーニーマップ」は、みなさんも一度は聞いたことがあるフレームワークではないでしょうか?
この記事では、その定義や目的、メリットから作り方まで、具体例を挙げながら詳しく解説します。
初めて作る人でもできるようにわかりやすい内容になっているので、ぜひ今のビジネスに活かしてみてください。
カスタマージャーニーマップとは?
カスタマージャーニーマップとは、「ユーザーが商品・サービスとのかかわりの中でたどる一連のプロセスを視覚化したもの」です。
「カスタマージャーニー」におけるジャーニーとは、カスタマーの購買行動における「行程=顧客体験」を指します。
つまり、カスタマージャーニーマップとは、カスタマーの一連のブランド体験を可視化したものです。
ユーザーは、商品・サービスとの関わりの中で、認知や検討などステージごとに異なる行動をし、その時々で感情も変化します。
だからこそ、全体像を俯瞰して見ることで、それぞれのステージでの課題と対策を考えることが重要で、それを可能にするのがカスタマージャーニーマップなのです。
カスタマージャーニーマップを作る目的
カスタマージャーニーマップを作る目的は、「時系列で顧客の行動・思考・感情を可視化し整理すること」です。
カスタマージャーニーマップを利用することで、今まで見えなかった顧客課題を発見することが可能です。
ユーザーが自社の商品・サービスに関わる際の行動を、イメージしやすいように、服を具体例にして解説します。
■ユーザーが服を購入する流れ
- 好きなモデルがSNSで着ている服を見て興味を持つ(認知、興味)
- ブランドのサイトを見て、他ブランドや商品との比較検討もしつつ詳しくリサーチする(情報収集、比較検討)
- ショップに行って、実際に試着してみる(体験)
- 気に入ったので購入する
- 実際に着用した姿をSNSにアップする
ユーザーは、認知~購入の中でどれか一つのステージでも「違う」と思えば、離脱してしまう可能性が高くなります。
例えば、試着したときに「ちょっとイメージと違ったかも」と思えば、購入に至らない結果となるでしょう。
一方で、こうした「顧客が期待する体験(To be)」と「現状の体験(As is)」の間で乖離が起きている箇所に気づき、改善することでブランド体験の価値を高めることができます。
「現状の体験(As is)」と「顧客が期待する体験(To be)」のそれぞれのカスタマージャーニーマップを作成することで、潜んでいた顧客課題を発見し、理想のユーザー体験を整理していくことができるのです。
カスタマージャーニーマップとサービスブループリントの違い
カスタマージャーニーマップとあわせて耳にすることのある言葉に、サービスブループリントがあります。
カスタマージャーニーマップとサービスブループリントの違いは何か、疑問に思ったことがある方も多いのではないでしょうか?
カスタマージャーニーマップは「ユーザーがサービスの中でたどる一連のプロセス」であるのに対し、サービスブループリントは、ユーザー側のプロセスと共に、サービス提供側のオペレーションも図示したものです。
ユーザーの行動や思考だけでなく、ユーザー側のプロセスに連動したサービス提供者側の動きも可視化することで、ユーザーとサービス提供者との関わり方を明らかにすることできます。
■関連記事:サービスブループリントについては以下の記事で詳しく説明しています。こちらの記事もぜひご覧ください!
サービスブループリントとは?使うメリットと作り方、カスタマージャーニーマップとの違いをやさしく解説
カスタマージャーニーマップを作成する4つのメリット
次に、カスタマージャーニーマップを作成することでどのようなメリットがあるのか、順番に見ていきましょう。
1.ターゲットユーザーの理解を深めることができる
カスタマージャーニーマップを作成する1つ目のメリットは、ターゲットユーザーに対する理解を深めることができるということです。
先に説明したように、カスタマージャーニーマップは、ユーザー体験(行動・思考・体験)を時系列で見える化したものです。
カスタマージャーニーマップを作成することにより、ユーザー体験を可視化して、ターゲットユーザーへの理解を深めることができます。
2.現状の課題を抽出し、優先度をつけることができる
2つ目のメリットは、ユーザー体験の課題を抽出して、課題の優先順位付けができるということです。
まず現状(As-Is)のカスタマージャーニーマップを作成して、現状のユーザー体験を整理します。
時系列順にAs-Isのカスタマージャーニーマップを整理することで、現状のユーザー体験のどの段階でユーザーの不満が発生しているのか、課題が明らかになります。
洗い出した課題を、特に注力したいフェーズや深刻度などの基準を設けて優先度付けすることで、解決すべき課題の優先順位が明確になるのです。
3.課題の共通認識を持つことができる
3つ目のメリットは、ユーザー体験の中の課題を他者と共有できるということです。
カスタマージャーニーマップを作成することにより、ユーザー体験とそこに潜む課題を可視化することができます。
体験と課題を可視化することで、自分だけではなく他のメンバーとも共通認識を持つことができ、その後の解決策の検討や施策の実行を進めやすくなります。
4. 理想のユーザー体験を整理することができる
4つ目のメリットは、To-Beのカスタマージャーニーマップを作ることにより、理想のユーザー体験を整理できるということです。
To-Beのカスタマージャーニーマップでは、As-Isカスタマージャーニーマップで整理した現状のユーザー体験で抱えていた課題を解決した後の、あるべき理想のユーザー体験を整理していきます。
課題の洗い出しと優先順位付けをした後は、課題の解決策を考えていきます。
As-Isのカスタマージャーニーマップをベースに、検討した解決策を実現するためのTo-Beのユーザー体験をカスタマージャーニーマップに描いていくことで、あるべき理想のユーザー体験を整理していくことができるのです。
カスタマージャーニーマップを作る前にやるべき2つのこと
カスタマージャーニーマップを作る前に、下準備として2つのやるべきことがあります。
カスタマージャーニーマップは、ユーザーの課題を発見し、その解決策のヒントを得るためのツールです。
この効果を最大化させるために、
- カスタマージャーニーマップのゴールの設定
- ペルソナの設定
が必要です。
1. カスタマージャーニーマップを作る目的とゴールの設定
まずは、何のためのカスタマージャーニーマップなのかを確認しましょう。
カスタマージャーニーマップに限らず、特に目的なくツールやフレームワークを用いるのはナンセンスです。
効果的にフレームワークを利用するためには、目的とゴールをはっきりとさせておかなければなりません。
今回は、アパレルブランドを例として、目的とゴールを以下のように設定したとします。
- 目的
- ゴール
新しく発売する20代男性ビジネスマン向けスーツの販促のため。
デザイン性が高く、素材にもこだわっている。他のビジネススーツに比べ、高価なものを売り出したい。
スーツ購入における購買行動を可視化し、課題箇所を特定・改善案を出すこと。
2. ペルソナの設定
目的とゴールを確認したら、次は商品・サービスのユーザー像を具体的にイメージしてみましょう。
ここで有用なのが、ペルソナという概念です。
■関連記事:ペルソナについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
「ペルソナ」とは?ターゲットとの違いやペルソナ設定の重要性までやさしく解説
「20代男性」のように曖昧なターゲットではなく、実際にその人物が存在しているかのように、職業や年収、興味のあることや価値観まで深く情報を設定するものがペルソナです。
今回商品の例として用意したスーツ購入者のペルソナは、以下のようになります。
比較的高価なスーツを選ぶ人物像なので、可処分所得が多く、身だしなみにコストをかけるタイプがイメージできますね。
ここまで具体的にユーザー像を設定することで、商品購入までのプロセスでどのような行動をし、どのように考えるのかが具体的に思い描きやすくなります。
カスタマージャーニーマップの作り方5つのステップ
目的とゴール、ペルソナを設定した後は、いよいよ実践編です。
STEP1~5に分けて解説するので、この手順に沿ってカスタマージャーニーマップを作ってみてください。
ここでも、先ほどのスーツを例として、具体的に解説していきます。
【STEP1】縦軸(項目)に入る内容を精査
カスタマージャーニーマップ作成において最初にするのが、縦軸(項目)と横軸(ステージ)の設定です。
縦軸には、ユーザーの行動や思考などが入ります。
扱う商品・サービス、目的やゴールによって変わることもありますが、一般的には以下が入っていれば十分でしょう。
- 行動
- タッチポイント
- 思考、感情
- 課題
「ショップで試着する」などユーザーが実際に取る行動を指します。
SNSやショップなど顧客の接点となるツール・場所のことです。
「この服が気に入った」など、ある行動をした際にユーザーが考えたことや感じたことです。
「気に入ったけど、サイズが合わないかも…」といった、ユーザーが抱く「不安・不満・不足」などの要素を意味します。
【STEP2】横軸(ステージ)を設定する
次は、ユーザーがたどるプロセス上の各ステージを設定しましょう。
こちらも、商品や目的によって変わりますが、今回のスーツの例の場合は以下のように区切るといいでしょう。
- 認知、興味
- 情報収集、比較検討
- 来店、試着
- 購入
商品のことを知って、欲しいと思っている段階です。
商品についての情報を集め、実際に購入するか検討している段階です。
実際の商品に触れることで、購入可否の最終ジャッジをしている段階です。
商品を購入する段階です。
コツは、ユーザーのタッチポイントが変わるタイミングで区切ることです。
特に、タッチポイントがオンライン⇔オフラインに変化する際は、行動や思考、感情も大きく変わるので、ステージを分けないと課題の発見がしづらくなります。
【STEP3】行動、タッチポイントを設定する
縦軸(項目)と横軸(ステージ)を設定できたら、あとはステージごとに項目の内容を埋めるだけです。
STEP3~5までは、最初に設定したペルソナをイメージしながら、できるだけ具体的な内容にするのがコツです。
まずは、行動とタッチポイントを一緒に記入していきましょう。
- 認知、興味
- 情報収集、比較検討
- 来店、試着
- 購入
行動:SNSを見ていたら、好きなインフルエンサーが着ているのを見て欲しくなった。
タッチポイント:SNS
行動:ブランドサイトを見て、こだわりや素材について調べた。他ブランドの商品とも見比べながら、購入するか検討した。
タッチポイント:ブランドサイト
行動:ショップに行って、試着してみた。シャツやネクタイとのコーディネートも、店員に聞きながら試してみた。
タッチポイント:ショップ、店員
行動:実際に購入した。
タッチポイント:ショップ
行動は、各ステージにつき1つに絞る必要はありません。
思いつく限り、「どんな行動をするだろうか?」を挙げてみてください。
【STEP4】思考、感情を設定する
次は、各ステージでユーザーがどのように考えるのか、どのように感情が動いたのかを記入していきます。
- 認知、興味
- 情報収集、比較検討
- 来店、試着
- 購入
思考:自分に似合うだろうか?同僚からどんな風に見られるだろうか?
感情:かっこいい!欲しい!
思考:どこのブランドだろうか?いくらくらいするのだろうか?どんな素材で、どんな着心地だろうか?
感情:好きなブランドのスーツで嬉しい!でもちょっと値段が高いかも…。
思考:実際に着てみないと分からない。自分が持っているシャツやネクタイとどんな風に組み合わせよう?
感情:着てみるとやっぱりかっこいい!でも、コーディネートが難しそう…。
思考:値段との兼ね合いで迷ったけど、購入しよう。
感情:欲しかったものが買えて満足!
感情は文字情報にプラスして、「〇・△・×」をつけるなど、ポジティブな感情とネガティブな感情の上がり下がりを折れ線グラフのように表示すると、視覚的により分かりやすくなります。
【STEP5】ステージごとに課題を分析する
最後に、それぞれのステージで、「ユーザーが不安・不満・不足を感じるであろう課題」を分析します。
- 認知、興味
- 情報収集、比較検討
- 来店、試着
- 購入
そもそもユーザーがフォローしているインフルエンサーに商品を知られていない。
SNSの写真が、ユーザーが実際に着ている様子をイメージできるものになっていない。
ブランド名のハッシュタグが無いため、ユーザーが検索できない。
価格が分からないため、ユーザーが購入を躊躇してしまう。
価格に対して納得できる商品メリットを伝えられていない。
自分に合うサイズの商品が置いていない。
店員に商品知識が無く、上手く案内できない。
この商品に合うシャツやネクタイが置いていない。
改めて価格を見て躊躇してしまった。
他ブランドの商品と迷いが出てしまった。
課題を分析するときは、特にユーザーの感情がネガティブに向いているところを注視するといいでしょう。
また、課題は1つとは限りません。
同じステージでも、様々な角度から考えられることを念頭に分析を進めてみてください。
ここまで作ることができれば、あとは課題に対する解決策を考えるだけです。
どの課題を解決すると、最初に設定したゴールに近づくのかを精査しながら、優先順位を決めて施策を実行していきましょう。
カスタマージャーニーマップとエクスペリエンスマップ
実はユーザー体験の表現方法には、カスタマージャーニーマップの他にもさまざまな形があります。
ここではカスタマージャーニーマップの他に、エクスペリエンスマップのご紹介もいたします。
エクスペリエンスマップとは、ある分野や領域におけるユーザーの体験を図示したものです。
カスタマージャーニーマップとエクスペリエンスマップは、同一のものとみなされる場合もありますが、次のような違いがあります。
カスタマージャーニーマップは、「製品やサービスの利用者」である個人に焦点をあてています。
対してエクスペリエンスマップは、「製品やサービスの利用者」である個人の行動というよりは、ある分野や領域の中でのユーザーの活動全般を表現するものです。
エクスペリエンスマップはカスタマージャーニーマップより広い活動や体験の可視化をするため、ユーザーがさまざまな場面や状況下で、さまざまなサービスに触れている状況を表現することができます。
カスタマージャーニーマップよりさらに俯瞰的にユーザーの体験や行動を表現したい時は、エクスペリエンスマップを用いると良いでしょう。
まとめ
ここまで、カスタマージャーニーマップの作り方についてご紹介してきました。
しかし、どのような手法やフレームワークも、ただそれを知っているだけではビジネスの結果には結びつきません。
結果として実らせるためには、実際に実践する中で経験を積んでゆく必要があります。
では、手堅く、リスクを最小限に実施するにはどうしたら良いのでしょう?
それは、「実績のある経験者のプロセスを参考にする」ことも一つの作戦だと思います。
ニジボックスは、リクルートの新規事業研究機関から誕生した経緯があり、UXデザインやデザイン思考をはじめとする様々なビジネス手法を実際にリクルートの新規事業でも数多く実施し、検証を重ねてきております。
これまでも、クライアントの課題に寄り添ったデザインプロセスを、実際にリクルートや大手クライアント様の新規/既存事業でも数多く実践し、検証と改善を続けてきました。
下記にて、ニジボックスがクライアント課題に伴走する中で、磨き上げてきたUXデザインのプロセスや支援事例の一端を資料として一部ご紹介しています。
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■この記事の監修者
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