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カスタマージャーニーにおけるペルソナの重要さと設定方法を解説

カスタマージャーニーにおけるペルソナの重要さと設定方法を解説

モノや情報があふれる現代では、ユーザーの視点に立った施策を立てることが重要です。そのためにはまずユーザーへの理解を深める必要があります。

ユーザー理解の一助となるのが「カスタマージャーニー」です。カスタマージャーニーを作成すると、自社のサービス・商品の具体的な顧客像の理解につながり、より興味を持ってもらえるサービス・商品の創出・改善が可能になります。

カスタマージャーニーを作成する際は、ユーザーの具体的な人物像となるペルソナの設定が重要です。この記事では、カスタマージャーニーの作成時、どのようにペルソナを設定すればよいのかを解説します。

カスタマージャーニーとは

カスタマージャーニーとは、顧客がサービス・商品に興味を持ち、そこから契約もしくは購入して共有・拡散するまでのユーザー体験のプロセスを指します。このプロセスを可視化したものは、「カスタマージャーニーマップ」と呼びます。

カスタマージャーニーマップは以下のように、「課題・興味関心」から始まり「共有・拡散まで」の5つのフローを通して作成します。

  1. 認知・興味
    困っていることや気になることがある
    例)インフルエンサーが紹介しているアイテムを見て興味を持つ
  2. 情報収集
    解決策を探す
    例)ブランドのWebサイトを閲覧する
  3. 評価・比較検討
    サービス・商品を比較検討する
    例)他ブランドと比較しながらさらに詳細を検索する
  4. 契約・購入
    サービス・商品の契約・購入を決める
    例)欲しいと思い購入する
  5. 共有・拡散
    感想のシェア、知人への紹介など
    例)SNSで使用感をシェアする

多くの場合、このフローのどこかで疑問を感じれば、顧客は離脱してしまいます。

そのため、「顧客が期待する体験(To be)」と「現状の体験(As is)」との間に差がある箇所を探して改善し、ユーザー体験の価値を向上させます。

カスタマージャーニーマップの作成方法については以下の記事で詳しく解説しています。

■関連記事:
カスタマージャーニーマップとは?As-IsとTo-Beの2種類の作り方までやさしく解説!

カスタマージャーニーではペルソナの設定が肝!

カスタマージャーニーを考える際は、関係者間でペルソナを共通認識として持つことが大切です。ペルソナを設定することで、より自分たちがターゲットにすべき人物像が見えてきます。

ペルソナとは

ペルソナとは、実際に自分たちの商品やサービスを利用すると考えられるユーザーの具体的な人物像です。ペルソナを作成する際は、ユーザーを架空の一人の人物として考え、具体的な経歴を設定してまとめあげます。

ペルソナを設定する目的は、関係者間で「どのような人物に自社の商品を利用してほしいのか」という共通認識を持つことにあります。
ペルソナを設定することによって、ターゲットとする顧客が何を欲しているのか、サービス・商品の方向性が定まります。

関係者間でペルソナを共有することで、途中で迷走することなく、より顧客に響くサービス・商品を生み出すことが可能になるのです。
そのため、カスタマージャーニーを作る際には、ペルソナの設定が重要とされています。

■関連記事:
「ペルソナ」とは?ターゲットとの違いやペルソナ設定の重要性までやさしく解説

ターゲットとペルソナの違い

ペルソナと類似する用語に「ターゲット」があります。ターゲットは、「Z世代」「30代女性」のように、ペルソナよりも大きな範囲で顧客層を表したものです。
そして、そのターゲットをベースに詳細な人物像を設定し、具体的な一人の顧客に見立てた架空の顧客がペルソナです。

そのため、まずはターゲットを定義し、その上でペルソナを作成することになります。

カスタマージャーニーでなぜペルソナが重要なのか

カスタマージャーニーでは「顧客がどのようにサービス・商品に興味を持ち、どのような流れで契約・購入に至るか」を顧客の行動やタッチポイント(接点)、思考、感情、課題などの項目に分けて考えていきます。

こうした項目をそれぞれ埋めていくためには、より細かな人物像が設定されていた方が項目を埋めやすいです。そのため、カスタマージャーニーではまずペルソナの設定が重要となるのです。

例えば、顧客とのタッチポイント(接点)になるSNSや利用デバイスは、ペルソナによって大きく異なります。ペルソナの把握を間違えるだけで、タッチポイント(接点)がずれてしまい、顧客にサービス・商品を認知してもらえなくなる恐れが出てきます。

タッチポイントや思考、感情をリアルにするためにも、ペルソナ設定時に利用するSNSやよく見るサイト、消費傾向など細かな点まで設定しましょう。

具体的なペルソナの設定方法

ここからは、ペルソナの具体的な設定方法を確認していきましょう。

1.ユーザーの情報を集める

まず、既存のユーザーに対し、アンケートやユーザーインタビューを行います。

ここでは、実際に自分たちのサービス・商品がどのような人たちに使われているのかを調査し、大まかな顧客像をつかみます。この段階ではまだペルソナを作らず、ターゲットとして扱います。

以下は、具体的に集める情報の一例です。

  • 基本情報(年齢・性別・住んでいる場所など)
  • 家族構成や人間関係
  • 職業や年収
  • 学歴
  • 趣味
  • 普段使用するSNSなど

アンケートの質問項目の作り方としては、まず基本情報に関する質問から始め、生活スタイルやよく利用するSNSなど行動に関する情報を設定していくとスムーズです。

また、ユーザーインタビューの際は、「サービス・商品に関することでどのようなことを課題に感じているか」「その課題を解決したい理由」などユーザーの心理傾向の理解につながるような質問を準備しておきましょう。

さらに「どこで自社のサービス・商品を知ったか」など、ユーザーと自社のタッチポイント(接点)を具体的につかめる質問も盛り込んでいきます。

ペルソナをより詳細に設定するためには、ユーザーインタビューによる情報収集がおすすめです。

ユーザーインタビューでは、相手との対話によって行動の背景や心理面の変化などをより深掘りできます。

アンケート調査やインタビューの具体的なポイントに関しては、以下の記事で解説しています。

■関連記事:
【基礎から分かる】アンケート調査とは?進め方や注意点を解説!便利なツールも紹介

【事例で分かる!】より良いユーザーインタビュー分析の3つの条件とは?

2.共通項を抽出する

次に、集めたユーザーデータを精査して共通項を探し、属性を分類してグルーピングします。
ターゲットとなる顧客層に共通する考え方や生活スタイルなど、さまざまな観点から共通項を抽出していきましょう。
そして、普段使用するSNSやデバイスなどを調査し、自社のサービス・商品がどのようなユーザーに需要がありそうなのかを調査します。

ここで共通項を抜き出すことで、フラットな形での顧客像が見えてくるはずです。

3.ゴールを設定する

共通項を抽出したら、それをもとに「この顧客は何を求めているのか?」を考えます。その顧客が求めることが、ビジネスとして展開すべきゴールです。

顧客のゴールは、以下の3つに分けて設定します。

  • エンドゴール
    エンドゴールは、ユーザーがサービス・商品を契約・購入する目的です。複数の目的があるケースも存在します。
  • エモーショナルゴール
    エモーショナルゴールは、サービス・商品を契約・購入する上での感情面でのゴールです。購入や契約することでどんな気分になりたいのかを整理します。
  • ライフゴール
    ライフゴールは、自社とユーザーが長期的につながる状態です。一度購入・契約して終わりではなく、生涯にわたってファンになる状態のゴールです。

これらのゴールを達成することで、ユーザーは満足をして商品の再購入やサービスのリピート利用などを行ってくれる可能性があります。

4.ペルソナを設定する

集めた情報をもとに、架空の一人の人物としてペルソナを設定していきます。以下のような情報をペルソナシートに書き出し、具体的なペルソナを作成しましょう。

ペルソナの設定イメージ

  • 年齢や職業、家族構成などの基本情報
  • 行動や心理傾向などの詳細情報
  • サービス・商品を利用する際のコンテキスト(利用シーンのストーリー化)

この際、より具体的であればあるほど精度の高いペルソナに仕上がります。

利用シーンをストーリー化する際は、ペルソナのエピソードや心理面の変化などをより詳細に言語化するのがポイントです。

ペルソナが完成したら、必ず検証を行います。まずは現実的に存在すると考えられる人物像になっているかを確認しましょう。

そして、そのペルソナに当てはまる人物が実際にどの程度存在するか、アンケートなどを実施して検証します。
その結果、ペルソナの完成度が低いと判断した場合は、ユーザーの情報収集からやり直した方がよいでしょう。

ペルソナを設定する際の注意点3つ

設定したペルソナをもとに、より良いカスタマージャーニーを作成するには、以下の3つの注意点を考慮すべきです。

1.自社の理想像=ペルソナではない

ペルソナはあくまでも「客観的なデータをもとに作るもの」であり、「こういう人がいるといいよね」という前提のもとに設定するものではありません。

自社に都合のいいペルソナを設定してしまうのは、ペルソナの設定時に特に陥りやすいミスの一つです。

また、「女性なら甘いものが好きだろう」「独り身なら結婚願望があるだろう」といった先入観で顧客像を決めつけるのもNGです。

こうした誤った方法でペルソナを設定してしまうと、設定後のカスタマージャーニーにも悪影響が出ます。

特にペルソナは「自社のサービスを利用する人はこういう人がいい」という担当者の先入観や思い込みが反映されやすい点には注意が必要です。

自社が期待する理想の顧客像を設定するのではなく、アンケートやヒアリングなどで実際に集めた情報や、SNS上の口コミなど、客観的なデータをもとに現実的なペルソナを設定することが大切です。

2.ペルソナは定期的に更新をする

ペルソナが完成し、運用が始まったら、定期的にペルソナの見直しを図りましょう。具体的には半年~1年をめどに更新することをおすすめします。

実際の顧客の動向は、市場の状況や時代の流れなどさまざまな要因により日々変化していきます。
ペルソナの作成時に想定していた顧客像をそのままにしていては、ペルソナと現実の顧客が乖離してしまうことは避けられません。

ペルソナを定期的に更新していけば、常に最新のペルソナ像を維持し続けることができ、市場の状況や時代の流れに沿ったマーケティングを行えます。

3.ペルソナのイメージ像を共通させる

ペルソナを作る際、フリー画像など実在する人物の写真を使って設計するケースがあります。これは、ペルソナに顔をつけることにより関係者間でより共通した認識を持てるペルソナを作り上げられるからです。

せっかく詳細なペルソナを作成しても、関係者間でそのペルソナに対する認識がずれていれば意味がありません。

ペルソナを共有しやすいよう、誰もがイメージしやすい平均的な人物像としてフリー画像などの写真を使い、外見まで設定しておくのはおすすめの手法です。

まとめ

カスタマージャーニーとは、顧客がサービス・商品に興味を持ち、そこから契約・購入し、共有・拡散するまでのユーザー体験の一連のプロセスを指します。このプロセスを可視化したものがカスタマージャーニーマップです。

カスタマージャーニーマップを作るには、顧客がどのように興味を持ち、どのような流れで契約・購入に至るかを顧客の行動や思考、感情などの項目に分けて考えていきます。そしてこの項目を埋めるためには、ペルソナの設定が有効です。

ペルソナは、ユーザーとなる人物像を住まいや年齢、性別、よく使うSNSなど細かく設定したものです。客観的な調査に基づいた詳細なペルソナを作れば、よりユーザーの理解が深まり、自社のサービスや商品の改善すべき点が見えてくるはずです。

ニジボックスは、リクルートの新規事業研究機関から誕生した経緯があり、UXデザインやデザイン思考をはじめとするさまざまなビジネス手法を実際にリクルートの事業でも数多く実施し、検証を重ねてきております。

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監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

Twitter:@junmaruuuuu
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