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定量分析・定性分析とは?具体的な手法や組み合わせる方法も解説

定量分析・定性分析とは?具体的な手法や組み合わせる方法も解説

ニジボックスのUXデザインフローや案件事例をご紹介!


ビジネスの場で、定量分析・定性分析という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
よく似ている2つの言葉ですが、それぞれの分析で得られる内容は大きく異なります。

この記事では、まずは「定量的」「定性的」の違いをしっかり区別した上で、定量分析と定性分析の意味や使い分け方をお伝えしていきます。
また、それぞれの分析の具体的な手法についても分かりやすく解説します。

定量的・定性的とは?

「定量的」と「定性的」は、お互いに真逆の意味を持つ概念です。
まずは、それぞれの意味を明確にしておきましょう。

定量的とは?

定量的とは、一言でいうと「数値で表す要素」のことです。

例えばある店舗の状況について、「先月の売上高は○円で、客単価平均は○円。目標を○%達成した」「社員一人あたりの売上高が、昨年の同月と比べて○割増えた」のように説明する、金額やパーセンテージなどの数値が定量的な要素となります。

Webサイトであれば、「UU(ユニークユーザー)数」「PV(ページビュー)数」や「CV(コンバージョン)率」といったものも、数値で表せるので定量的なデータです。

このような定量的なデータのことを量的データともいいます

定性的とは?

定性的とは、定量的とは反対に数値では表すことのできない要素、つまり「文字や言葉でのみ表せる要素」を指します

店舗の状況についての説明なら、「最近、客層が変わった気がする」「社員たちの士気が上がり、売上にも良い影響を及ぼしていそうだ」のような数値で表せない内容が定性的な要素です。

Webサイトやアプリであれば、「リニューアルして使いやすくなった」「こういう機能が欲しい」といったユーザーのコメントやレビューなどが定性的データに該当します。

また、こうした数値で表せない定性的なデータのことを質的データともいいます

定量分析・定性分析とは?

定量分析・定性分析とは_比較画像

定量的・定性的のそれぞれの意味について説明してきました。
ここからは定量分析と定性分析がどのような分析なのか、確認していきましょう。

定量分析・定性分析の定義

定量分析と定性分析は、それぞれ次のように定義されます。

  • 定量分析
    定量的な数値データ(量的データ)を基に行う分析手法
    です。
  • 定性分析
    定性的な数値化できないデータ(質的データ)を基に行う分析手法
    です。

例えば、あるサイトのユーザーの傾向を探るのに、サイトのアクセスデータに表れる数値や選択式アンケートを分析するのは「定量分析」、来訪者へのユーザーインタビュー結果や、記述式アンケートなどを分析するのは「定性分析」です。

定量分析・定性分析のメリット・デメリット

次は定量分析と定性分析のメリット・デメリットをそれぞれ見ていきましょう。

定量分析のメリット・デメリット

定量分析は、客観的な事実に基づき分析できるという点がメリットです。
数値は誰が見ても全く同じ要素であるため、全ての受け手が共通の認識を持つことが容易にできます。

一方で、数値だけでは分析できない点があるのが定量分析のデメリットです。

例えば、ある商品のアンケート内の「また買いたいと思いますか?」という設問で、70%の人が「また買いたいと思わない」と回答したとします。
この場合、「また買いたい人が少ない」ことは分かっても、「なぜ買いたいと思わないのか」までは分析できません。

定性分析のメリット・デメリット

定性分析は、定量分析のデメリットとして挙げた「数値だけでは捉えきれない内容」を様々な角度から捉え、数多くの問題点を洗い出すことができます
また、一つひとつの質的データを深掘りできるので、少ないサンプル数でも有効な分析が可能な点が定性分析のメリットです。

一方で、数値という客観的なデータで示せない分、同じ要素でも個々人の受け取り方によって認識が変わってしまう可能性がある点はデメリットと言えるでしょう。
例えば、ユーザーインタビューで「この商品はコスパが良い」という意見を聞けたとしても、それはインタビュー対象者の主観によるものなので、全ての人にとってコスパが良いと判断はできません。

定量分析・定性分析でそれぞれ何が分かるのか?

それでは、定量分析・定性分析で具体的にどんなことが分かるのでしょうか?

定量分析で分かること

数値データを分析する定量分析では、現状を客観的に把握・評価することが可能です。
ユーザーの大まかな傾向を把握するなど、全体像を捉えるのに向いています。

例えば、商品購入を目的としたWebサイトの改善を行いたい場合に、ページごとの離脱率を定量で可視化すれば、多くの人にとってボトルネックとなっている箇所を捉えることができます。

定性分析で分かること

質的データを用いる定性分析では、ある事象についての理由や背景を導き出すことが可能です。
ユーザーの行動の要因となった価値観や、ユーザーの本音を捉えるのに向いています。

例えば、Webサイトに離脱率の多い箇所があったとしたら、ユーザビリティテストをして課題を特定することで、なぜそこで離脱するのかという理由を検証できます。

定量分析と定性分析をどのように使い分けるのか?

定量分析では客観的な事実を基にして現状の問題点を導き出すことができますが、「定量分析・定性分析のメリット・デメリット」の項でも解説したように、定量分析だけでは起こっている事象の「理由」や「背景」までは特定できません。

一方、定性分析ではユーザー行動の理由や意見を具体的に把握できますが、一つひとつの声や質的データは主観的なものであることが多いため、改善策などの根拠として示すには、別途検証が必要となります。

このように、定量分析と定性分析はお互いの強み・弱みが対になっています

定量分析と定性分析を使い分けるには、「まず定量分析で量的データから現状を知り、そこにある問題点の背景をユーザーの声から定性分析で導き出す」といった形で、調査目的ごとに使い分け、時に組み合わせていくことが大切です。

定量分析の手法3選

定量分析の手法

次に、数値データを用いる定量分析の手法でよく用いられるものを紹介していきます。

1. アクセス解析

アクセス解析とは、Webサイトを訪問したユーザーがどこから来たのか、どのページを見たのかなど、ユーザーの行動や特性を数値データから分析することです。

代表的なアクセス解析のツールとして、「Googleアナリティクス」があります。
Googleアナリティクスではページビュー数(PV数)やコンバージョン率(CVR)など様々な数値を参照し、データに基づいて問題点を導き出すことができます。

アクセス解析やコンバージョン率(CVR)については以下記事で詳しく解説していますので、こちらの記事もぜひご覧ください!

2. ABテストの結果分析

ABテストとは、WebサイトでLPや広告バナーなどのデザインパターンを2つ(またはそれ以上)用意して、一定期間の中で成果を比較するテストです。
ABテストの結果からデザインパターンごとのコンバージョン率を分析することで、最も高い成果を出せるものはどれなのかを見極めます。

比較的コストがかからず気軽に実施できるので、短期間で繰り返しながら細かな改善を重ねていくことも可能です。

ABテストについては以下記事で解説していますので、詳しく知りたい方はこちらの記事もぜひご覧ください!

3. アンケートの結果分析

ユーザーへのアンケート調査の中でも、「満足度は5段階のうちどれですか」のような選択式アンケートや、「この商品に適正な価格をつけるとしたらいくらですか」のように数値で答えるアンケートであれば、定量分析に用いることが可能です。

サンプル数をある程度揃える必要はありますが、ユーザーの満足度や意見・感想といった情報を直接収集した上で、数値で客観的なデータとして示すことができる手法といえます。

一方、アンケート調査の中でも「満足した理由を教えてください」といった記述式の回答を分析する場合は、定性分析に分類されます

アンケート調査については以下記事で解説していますので、詳しく知りたい方はこちらの記事もぜひご覧ください!

定性分析の手法4選

定性分析の手法

続いて、質的データを用いる定性分析の手法で、よく使われるものを紹介します。
※メインは定性の観点で使う手法ですが、調査方法によっては定量の観点で使う場合もあります。

1. ユーザーインタビューの結果分析

ユーザーインタビューでユーザーから直接「生の声」を集め、得られた意見や感想を分析するのは、定性分析の代表的な手法です。

ユーザーからマイナスの意見が出てきたら、その理由や背景を探っていくことで、改善点を導き出すことができます。
プラスの意見もまた、ユーザー満足度を上げるための改善点のヒントに繋がるでしょう。

ユーザーインタビューについては以下記事で詳しく解説しています。こちらの記事もぜひご覧ください!

2. ユーザビリティテストの結果分析

ユーザビリティテストとは、Webサイトやアプリを実際にユーザーに使ってもらい、操作感などに問題がないか、問題があればどのように解決すべきかを検証していく手法です。

ユーザビリティテストの結果から見えてきた問題点について、ユーザー視点での心理や行動を基に分析することで、新しい角度から改善策を検討することが可能になります。

ユーザビリティテストの分析については以下記事で詳しく解説しています。こちらの記事もぜひご覧ください!

3. ヒートマップ分析

ヒートマップ分析とは、Webサイトやアプリにおける各コンテンツがユーザーにどのように見られているかを、色の濃淡で表したグラフ(ヒートマップ)を用いて分析する手法です。

ユーザーの行動を示す「コンテンツのどの部分に長く滞在したか」「どこをクリックしたか」「どこで離脱したか」といった情報から、コンテンツの問題点や改善ポイントを導き出すことができます。

ヒートマップ分析では「流入元別の割合」「スクロール率」なども分かるため、項目によっては定量分析に分類されます。

ヒートマップについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

4. ヒューリスティック分析

ヒューリスティック分析とは、Webサイトやアプリについて、UI UXの専門家がその経験則(ヒューリスティック)から評価し、ユーザビリティを分析する手法です。

ヒューリスティック分析を行う前には、そのWebサイトやアプリで達成したい成果をあらかじめ設定しておきます。
そして、達成のための課題がどこにあるかを専門家の視点で見つけ、改善することを目的としています。

ヒューリスティック分析については以下記事で詳しく解説しています。こちらの記事もぜひご覧ください!

ニジボックスでは、ヒューリスティック分析から改善画面案作成までをご支援するサービス「Begin UX!」をご提供しています。
自社サイトやアプリに漠然とした課題感をお持ちの方は、ぜひ気軽にご相談ください!

定量分析と定性分析を組み合わせて、改善に役立てるデータを集める方法6STEP

定量分析・定性分析組み合わせ_進め方ステップ

定量分析と定性分析にはそれぞれメリットがありますが、両方をうまく組み合わせることで、改善に役立てるデータを効率的に集めることが可能になります。

その手法について、定量分析と定性分析を繰り返し行き来しながら、登録フォームのコンバージョンを改善したあるプロジェクトの事例を基に解説していきます。
定量分析と定性分析を組み合わせたことで、3か月という短い期間でも、クリティカルな課題の精査からより改善に結び付くと考えられる施策の決定まで、効率よく進められました。

≪事例概要≫

  • 目的:登録フォームの改善施策を実施し、フォーム登録率を上げる
  • 実施期間:3か月

プロダクトの改善には、調査の前段階でKGI/KPI策定などを実施します。詳しくはこちらの記事もぜひご覧ください!

【STEP1】定量分析で課題抽出

まずはじめに実施するのは、定量分析を行い、数値データから課題を導き出すことです。

事例で行ったこと

対象の登録フォームについて、各項目の入力率やフォームへの遷移率がどうなっているかを数値で出して分析し、考えられる課題を抽出。
入力率の低い項目をいくつか洗い出し、そこがボトルネックになっているのではないかと仮説を立てました。

【STEP2】定性分析で課題の原因を突き止める

次に、STEP1で見つかった課題を基に定性分析を行い、課題の原因を突き止めていきます

事例で行ったこと

課題の原因はどこにあるのか、定性分析として社内でヒューリスティック分析を実施しました。

【STEP3】STEP1と2を行き来して課題を精査

3つ目のステップは、課題を精査していくことです。
定量分析と定性分析を何度か行き来することで、課題の精査を繰り返し、その度に仮説の精度を上げていきます

事例で行ったこと

ヒューリスティック分析で気づいた課題の原因を定量調査チームにフィードバックし、再度定量分析をしたのちにまたヒューリスティック分析をする。以上の流れを課題がはっきり見えてくるまで何度も繰り返し行いました。

【STEP4】定性分析で課題検証

課題を精度高く捉えることができたら、別の定性分析でその課題を検証します。

事例で行ったこと

登録フォームのユーザビリティテストを実施しました。
この時点で検証すべき課題がはっきりしている状態のため、課題を重点的に検証できるようなタスクを設計することが可能でした。
仮にSTEP1~3を省略してしまった場合、テストのタスク設計にブレが出てしまう可能性があります。

【STEP5】定量分析で施策の決定

STEP4で検証した課題について再度定量分析を行い、課題解決の施策を決定します。

事例で行ったこと

ユーザビリティテストの結果を基に、もう一度定量調査に戻りました。
それまでの定性・定量分析では出てこなかった新たな課題がユーザビリティテストで見つかったため、その課題の影響度の高さを数値で計りました。

【STEP6】定量分析で効果測定

STEP1~5の分析を基に決定した施策を実装し、効果測定のために再び定量分析を行います。
このとき、一連の調査で分析した課題の精度はどうだったか、導き出した施策が解決に結び付いていたかどうかを測定します。

事例で行ったこと

実装後に登録フォームのコンバージョン率を分析しました。
この事例では、効果測定の結果大きな改善が見られ、クライアントの満足度も高い結果となりました。

目的に応じて、最適な手法やフローを選択することが重要

ここまで解説してきたように、定量分析と定性分析にはそれぞれメリット・デメリットがあります。
目的に応じて、最適な手法や分析のフローを的確に選ぶことが大切です。

「分析の手法がどんなものか大体理解したけど、自分でやるには少し不安がある」という方は、経験豊富なUXデザイナーの力を借りるのも手です。
ニジボックスでは、この記事で紹介したような定量・定性を組み合わせたUXリサーチを実施した事例がございます。
自社サービスやプロダクトについて課題感をお持ちで定量的・定性的調査をご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください!
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監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

Twitter:@junmaruuuuu
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