【実践編】ユーザビリティテストの分析方法とは?サイト改善につなげるための方法を具体例を交えながら説明!
ニジボックスのユーザビリティテストご支援事例を紹介!
ユーザービリティテストを綿密に設計して実施し、ユーザーの発言や行動の情報はたくさん集まったものの、どのように分析すればいいのか…と困ったことはありませんか。
この記事では、ユーザビリティテストの結果をどのように分析し、改善策考案につなげていくかまでのフロー3ステップを、具体例やナレッジを交えながら分かりやすく解説しています。
目次
ユーザビリティテストとは?
ユーザビリティテストとは、該当するプロダクトにおける使い勝手に関するユーザビリティ課題を導き出す調査手法のことです。
例えば、あるサイトの改善をしたい場合、実際にサイトのターゲットユーザーに利用してもらいユーザビリティテストを行うことで、操作感やサイトの構成に関する課題を発見することができます。
以前の記事ではユーザビリティテストの概要や実施方法について主に紹介してきましたが、今回の記事では、ユーザビリティテストを実施した後の分析方法について紹介していきます。
基本情報や実施するメリットや具体的な実施の流れについては下記記事をご参照ください。
適切な課題抽出のためのユーザビリティテスト実施時の留意点3つ
ユーザビリティテスト後に適切な課題抽出を行うためには、十分な情報が必要です。
課題を探るために、テスト実施時の留意点を3点説明します。
1.発言録(議事録)を取る
まず、ユーザビリティテストを行う際はユーザーの発言を記録した発言録(議事録)を取りましょう。目で捉えるユーザーの様子のほか、ユーザーの発言からユーザーの陥っている状態を観察・分析し、課題を抽出するためです。
インタビュアーがインタビューに集中できるようにするため、発言録はインタビュアー以外の方が取るか、文字起こしツールを利用することをおすすめします。
2.特徴的な行動をメモする
2つ目は特徴的な行動をメモすることです。
例えばあるアプリを操作したユーザーが下記のように発言したとします。
「メッセージの送信履歴を確認するには…どこをタップしたらいいか分からない」
この発言だけでは何が課題か分かりません。
そのため、後から発言録を見直した際、ユーザーが何をしていたのか分かるように、テスト中にメモをすると良いです。ユーザーがどこをタップしているのか、見ているのかをしっかり観察しましょう。
ユーザーの声だけでなく、ユーザーの行動に着目することが必要です。声には出していないものの、困っている様子を捉えることで課題抽出につながります。
<メモ例>
テストシーン1:TOP画面を上下に何度かスクロールを繰り返している
ユーザーの特徴的な行動は、課題の抽出やユーザーインサイトの発見につながります。
以下、3つ目に紹介する留意点で、取ったメモを参考にしながら質問を工夫していきましょう。
3.臨機応変に質問を工夫する
3つ目は、ユーザビリティテスト後のユーザーへの質問内容を、各ユーザーの行動に合わせて工夫し、何が根本的な課題なのか探っていくことです。
ユーザーの特徴的な行動を深ぼることで、課題を抽出したりインサイトを発見したりすることが可能です。
<質問例>
「先ほどTOP画面で上下に何度かスクロールを繰り返していらっしゃいましたが、どのようなものがあると期待してそのようにされていたのですか?」
インサイトについては、下記の記事もぜひ参考にしてみてください。
では、次からはそれぞれのフローの詳細を見ていきましょう。
課題分類から改善策考案までのフロー3ステップ
ユーザビリティテストが終了してから改善策が策定されるまでのフローは、大まかに分けると以下になります。
- 課題を抽出する
- 課題を整理する
- メンバー同士で議論する
【STEP1】課題を抽出する
まず、ユーザビリティテスト実施時に取った発言録から、ユーザーの課題を示す発言や行動のメモを抜き出します。
行動や発言を抜き出したら、そこからどのような課題が読み取れるかを言語化して整理していきます。
同じ課題がいくつ発生しているのかもチェックしていきましょう。
<課題抜き出し例>
発言「(アプリのヘッダーにある通知マークに気づいたかという質問に対して)あ、あったんですね。何かメッセージが届いたという通知があればいいのにと思っていたんですが。アプリって大体トップページに通知マークがあるから、なんとなくこの画面のどこかにあるんじゃないかと想像していたけれど、この位置にあるとは思わなかった。」
課題「アプリトップ画面の通知マークに気づかない」
また、ユーザーを観察した結果や、計測した時間からタスクを遂行できたかを判定します。
判定方法の例は以下です。
◯:独力でタスクを完了し、無駄な操作や混乱が少なかった場合
△:タスクを完了したが、無駄な操作や操作中に戸惑いが見られた場合(強い不満を述べた場合も含む)
✕:ユーザーが独力ではタスクが実行できなかった場合(補助した場合も含む)引用:オーム社、樽本徹也 著、(2021)『UXリサーチの道具箱II ―ユーザビリティテスト実践ガイドブック―』
課題抽出時の留意点3つ
1.課題ではない事象や意見を排除する
プロトタイプであるが故に発生している事象のものや、ユーザー自身の想像による意見は排除しましょう。
<課題から排除する発言例>
- (アプリではなくXDのプロトタイプを作った際のテストにおいて)「タップした後の動作が遅い」
- 「私は読めるけどもしお年寄りの方だったら読めないと思う」
なお、プロトタイプについては下記の記事も参考にしてください。
2.UXデザインの5段階モデルで根本課題を意識する
表面的な事象ではなく、根本の課題は何かを意識しながら整理していきましょう。
この時、ユーザーの視点で整理し、自分の思い込みが入っていない事実から課題を抽出することが大事です。
<例>
「送信履歴を表示させるボタンがどこにあるのか分かりにくかった」という発言において、課題はボタンの視認性なのか、画面上の位置なのか、そもそも画面遷移の時点で「この先にボタンがある」と想像させられていないのか…など、課題がどこにあるのか、ユーザーの前後の様子と発言から考える
これらはUXの5段階モデルで考えると捉えやすいです。後述する「整理」の工程でもUXの5段階モデルで整理するので、5段階モデルにおけるどの箇所の課題なのか分かるよう簡易の印をつけておくと良いでしょう。(要件は★、構造は■…など)
UXの5段階モデルについては、下記の記事もぜひ併せてご覧ください。
3.声だけでなく行動から課題を抽出する
ユーザーが困っている発言から抽出するだけでなく、ユーザーが声に出さないものの課題となっている部分にも目を配ります。課題を抽出する時もユーザーの行動に着目しましょう。
タスクを遂行できたかどうかの可否判定でも、ユーザーの発言を鵜呑みにするのではなく、経過した時間やどのような原因でそれだけ時間が経過したのかを考慮しながら判定します。
もしユーザーが「タスクを実行するのに戸惑った」と言ったとしても、他のユーザーよりも明らかに速く実行できていたとしたら、その判定は「◯」になります。初めて操作するが故に迷うと感じるなど原因はさまざまですが、ここでもユーザーの意見のみで判断するのではなく、事実も加味して判断しましょう。
【STEP2】課題を整理する
課題を抽出できたら、次に行うことは整理です。インパクト分析という手法を使います。
インパクト分析では、まずユーザビリティテストで導出された課題をそれぞれ「効果」「効率」「満足度」の軸で質を分類します。次にそれらの課題に対して「発生頻度」を掛け合わせることで、改善すべき課題の優先度を可視化することが可能です。
それぞれの軸の定義の仕方は以下です。
1.「効果」「効率」「満足度」の軸で課題の質を分類する
「効果」…タスク達成ができたかどうか
「効率」…タスク遂行において、ユーザーを戸惑わせたり無駄な操作を行わせたりしなかったか
「満足度」…ユーザーが不満や不安を感じなかったか
課題解決は「効果>効率>満足度」の順番で優先していきます。
2.「発生頻度」で優先度を可視化する
「発生頻度」は、同じ課題が表出したユーザーの人数から整理します。
頻度は「高」「中」「低」で分類し、通常「全員(ほぼ全員)」「複数」「1人」という3段階で評価します。
<例>
被験者が10人の場合「10〜9人、8〜2人、1人」
軸を掛け合わせて分類した課題の優先度は以下のように分けられます。
3.UXデザインの5段階モデルで改善箇所を明確化する
さらに、整理した課題はUXの5段階モデルのうち、どこに該当するかを確認していきます。
確認することでどこを改善すれば良いかを明確にしやすくなります。
UXデザインの5段階モデルについては以下の記事を参考にしてください。
先ほど軸を掛け合わせて導き出した優先度を前提に、下記のように課題をマトリクス内に書き込んでいくと全体の分布が分かりやすいです。
優先度1が多かったり課題自体が少なかったりした場合、テストの意義はあったのだろうかと不安になるかもしれませんが、「課題は少なかった」という結果が導き出せます。これも1つの気づきですので、プロダクトの今後に生かすことができます。
【STEP3】メンバー同士で議論する
まずインタビュアーが方針のたたき台を作成し、それをもとに議論し改善策を収束させていきましょう。
インタビュアーは、テストの場に同席していないメンバーにも分かるように発言や行動に適宜補足を入れながらたたき台を作成します。
議論時の留意点2つ
1.できるだけメンバー全員で議論する
議論にはできるだけプロジェクトに関わるメンバー全員が参加するとよいです。ディレクター、デザイナー、エンジニアなどさまざまな職種の方々が集まることで多角的な視点でブラッシュアップすることができます。
2.メンバー間で視覚的に認識を統一する
XDなど、実際に使ったプロトタイプのワイヤーフレームを共有しながら進めると、視覚的に認識を統一することができ、議論をよりスムーズに展開することが可能です。
ユーザビリティテスト分析時のExcel活用法
ユーザビリティテストの分析にはExcelを利用すると便利です。
以下は、これまで紹介した「課題分類から改善策考案までのフロー3ステップ」におけるExcelの活用の仕方の例です。参考にしてください。
「課題を抽出する」での活用法
- 課題をExcelで行ごとに記載した後、似たような課題を行移動でまとめて整理し分かりやすくする
「課題を整理する」での活用法
- 課題の優先順位をつける際に関数を使い短時間で整理する
「メンバー同士で議論する」での活用法
- 方針の記載やメンバーからの意見を議論前に課題をまとめたExcel上に事前に書き込んでもらう
- 事前に意見を書き込んでもらったExcelを画面投影し、メンバーの認識を統一しながら議論を進める
終わりに
今回、ユーザビリティテストの結果をどのように分析し、改善策考案につなげていくかについて解説していきましたが、いかがでしたか?
ニジボックスではユーザビリティテストによるUI UX改善のご支援に加えて、テスト後のデザイン・制作も承っております。
これまでも、クライアントの課題に寄り添ったデザインプロセスを、実際にリクルートや大手クライアント様の新規/既存事業でも数多く実践し、検証と改善を続けてきました。
下記資料では、ニジボックスのユーザビリティテストのご支援内容や、これまでの実施例を一部ご紹介しています。
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■参考書籍
オーム社、樽本徹也 著、(2021)『UXリサーチの道具箱II ―ユーザビリティテスト実践ガイドブック―』
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動
コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。
Twitter:@junmaruuuuu
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