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【事例で分かる!】より良いユーザーインタビュー分析の3つの条件とは?

【事例で分かる!】より良いユーザーインタビュー分析の3つの条件とは?

ニジボックスのUXデザインフローや案件事例をご紹介!


ユーザーインタビューが問題なく終了し、いざ分析!
でも、手本となるような報告書はなく、方向性を示唆してくれる指導者もいない。

大量の発言から、何をどのように読み取って分析すれば良いのかわからない! と、
途方に暮れてしまう人も多いと思います。

この記事では、ユーザーインタビューの分析の基本的な考え方から具体的な方法まで事例を交えながら紹介します。

下記の記事ではユーザーインタビューの基本ついて詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

ユーザーインタビューとは「デザインリサーチ」である

ユーザーインタビューの分析の話の前に、
大前提として「なぜユーザーインタビューをするのか?」
を知っておく必要があります。

なぜなら、目的なく、なんとなく方法論だけを参考に進めても、
明確なアウトプットを生み出せないから
です。

結論から言うと、ユーザーインタビューとは、
人の気持ち(表層的なものではなく、当人自身も気づいていない深層にあるものも含む)を理解し、
サービスに活かすために行うもの
です。

新たなアイデアを創出するための手法、「デザインリサーチ」という言葉があります。

デザインリサーチは、人に話を聞き、じっくりと観察しながら、
その人のインサイト(人々の行動や態度の深層にある本音、核心)やメンタルモデル(思考プロセス、潜在意識)を導くことができる調査手法です。

ユーザーインタビューも、デザインリサーチのひとつです。

よって、分析を行う時は、新たな製品を作る、今までにないサービスを生み出すなど、
「ビジネス的・社会的課題に対するソリューションをデザインする」ことを目的としたリサーチであることを、頭に置いて進めるようにしましょう。

インサイト、メンタルモデルについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

「良いユーザーインタビュー分析」の3つの条件とは?

それではここから、ユーザーインタビューの「分析」について、
押さえておきたい基本的な考え方を解説します。

インタビューで得られた発言を整理して、分類する。

ここまではほとんどの人ができるのですが、
続くステップとしてもう一歩踏み込んだ分析ができない、やり方がわからない
という悩みをよく聞きます。

  • 発言を整理しグルーピングしたものの、どのように結論づけをすればよいか?
  • 定性情報に客観性をもって分析するにはどうすればよいか?
  • 少数意見の説得力はどのようにだせるか?

分析をなんとなく進める中で、このような疑問を抱く人も多いのではないでしょうか?

「良い(効果的な)ユーザーインタビュー分析」には、3つの条件があります。

この観点を押さえておくことで、
ユーザーのインサイトを読み解き、上司やクライアントに承認されるアイデアを発想できるようになる、
といっても過言ではありません。

その3つの条件とは、下記です

  1. 発見的であること…単純に発言を整理・分類するだけではなく、分析する人の異なる視点での「解釈」や新しい「発見」があること
  2. 実用的であること…ユーザーインタビューの目的が達成できる、課題を解決するものであること
  3. 科学的であること…「発見」とそれが「目的達成に有効であること」に妥当性があり、論理的に説明できること

これらの条件を満たすには、分析の正しいプロセスを理解する必要があります。

発言を上手く解釈し、妥当性のある発見につなげるためのフレームワークを知っておけば、
結果的に、目的を達成する成果物に昇華することができるのです。

ユーザーインタビュー分析のプロセス

インタビュー分析プロセス

「良い分析」が理解できたところで、
いよいよユーザーインタビュー分析のプロセスを、手順に沿って見ていきましょう。

ニジボックスで実際に手がけた
「ECサイトリニューアルのためのユーザーインタビュー分析」
を事例として、わかりやすく解説します。

ちなみに、ユーザーインタビューにも色々種類がありますが、
今回は代表的な手法である「デプスインタビュー」(インタビュアーと対象者が1対1で行う面談式)を採用しました。

①目的の再確認

ユーザーインタビューの分析は、常にその「目的」を頭に置いておくことが重要です。
インタビューで得た発言を観る前に、企画書や提案資料などから、インタビューの背景や課題、目的を確認しましょう。

今回のECサイトの事例でいくと、目的は「サービス活性化のため、利用者の満足度を高める顧客体験を設計すること」です。
ユーザーにインタビューをして、サイトのどこに、どんな不満があるのかを明らかにして改善を図るのが目的でした。

ここでのポイントは、下記の2点です。

  • 好意的な発言にとらわれすぎないこと
  • 分析に都合の悪い発言を切り捨てないこと

インタビューの読み込みが始まると、注意をひかれたある特定の発言に意識が向いてしまい、その発言を基準として分析してしまうことがあります。
特に好意的な発言には意識が向きがちですが、必ずしもそれが答えに直結するとは限らないことは留意しておきましょう。

例えば、「品揃えがたくさんあるいいサイトだと思います」といった発言があったとします。
これ自体はポジティブなものですが、実はよくよく聞いてみるとその裏に、「品揃えが多い故に、自分の欲しいものが見つかりづらい」という、インサイトが隠されていました。

好意的な声ばかりに注目してしまうと、改善すべき点(=ユーザーインタビューの目的)が
見えづらくなってしまう
ことが往々にしてあるので、注意が必要です。

また、同じインタビュー対象者から、矛盾するような発言(数分前には「Aが良い」と言っていたのに、「Aはイマイチ」と言うなど)が出てくることもあります。

これは分析する人にとって「都合の悪い発言」ですが、その発言を安易に切り捨ててはいけません。
矛盾の中に「発見」があることも多いからです。

②整理

インタビューでの実際の発言は、話す順番や言いたい要素が絡み合い、抜け漏れがある状態が多いものです。
膨大な情報を分析する前に、発言の意図を理解し、要素を切り分け、整理する必要があります。

ここでは、その情報整理のためのツールとして、下記の2つを紹介します。

  • ポストイット
  • AEIOU

【ポストイット】

■メリット

  • 物理的に並び替えやグループ分けがしやすく、結合しやすい
  • 書くスペースが限られているため、情報を程度な量に要約できる
  • 複合的な意味合いの情報を、適度に一般性をもたせることで、他の要素と結合しやすい要素にすることができる
  • 分析を複数人で行う場合、情報共有もしやすい

■手順

  1. 3色のポストイットを用意
  2. インタビューから得た事実情報を1要素ずつ、ポストイットに書く
  3. 事実情報を元に、何か発見があれば別の色のポストイットに書く
  4. 発見からアイデアが浮かべば、また別の色のポストイットに書く

それぞれの要素が事実・発見・アイデアどれなのかを明確にすることで、以降の分析が効率的になります。

そして、書くときのコツは「1要素1ポスト」を守ること。
1つのポストイット内に複数の要素が入ると、分析の邪魔になります。

例えば以下のように、個別で見ても意味が分かり、他の要素と結合しやすい程度の文量でまとめるようにしましょう。

事実/情報が多すぎる
発見/欲しい商品を探すときに時間がかかってしまうのでは?
アイデア/商品カテゴリをより細分化して、探しやすくする

■よりわかりやすくするためのコツ

イラストを加えることで、ポストイットの情報が一目で理解できるようになります。
五感による知覚の割合として約80%の情報は視覚情報から得ていると言われています。
イラストにより認知性を高め、情報処理効果が高まるのでおすすめです。

【AEIOU】

■メリット

  • 抜け漏れがなく、情報整理しやすい
  • 要素と要素の結合を促すことができる
  • 注目すべき観点が明確になりやすい

■手順
以下の順で、インタビュー対象者から出た発言を分類・整理します。

  1. A=Activity/特徴的な行動や行為、何を目的に行動を起こすのかを整理
  2. E=Environments/住居や住居周辺、周辺環境を整理
  3. I=Interaction/家族、友人、周囲の人とのつながりを整理
  4. O=Objects/生活環境にある興味深いモノ、モノから推察される人となり、モノから示唆される価値観を整理
  5. U=Users/年齢やその人の特徴、生い立ちから推察される価値観、大切にしていること、ありたい姿を整理

③分析

②で整理した情報を参考に、
顧客体験(今回の例では、ECサイトユーザーがサイト利用時に体験すること)のステップを構成する要素となりそうなものを抽出します。

例えば、ECサイトに関するユーザーインタビューであれば、
発言をグルーピングすると「商品の選択」「商品の受取」などのステップに分けられそうです。

このとき、グルーピングしたステップをわかりやすくまとめ、
かつ分析しやすくするためのツールとして、「プロセスマップ」を使ってみましょう。

時系列でステップを分けることで、
「どのステップに、どんな不満があるのか」を可視化することができます。

分析の3つのパターン

ここで行う分析は、以下3つのパターンごとにそれぞれ見ていくことで、
網羅的かつ多角的な視点での「発見」をすることができます。

  • パターン1/特定のステップで提供されていない製品やサービスに対して、顧客が不満に感じている
  • パターン2/特定のステップに適切な製品やサービスが提供されていない
  • パターン3/ステップはないが、何らかの製品やサービスを提供することで顧客の満足度が向上する

手順

  1. ポストイットに書き出した顧客体験の要素を、KJ法(※)を使って要素とタイトルの組み合わせで整理する
  2. グループインタビューの場合、2~3の要素が1つのタイトルで整理されるのが標準的だが、1つの要素が独立する場合はそのままでOK
  3. グループのタイトルを時系列に並べ、顧客体験のステップを整理する
  4. 作成したプロセスマップを3つのパターンにあてはめて分析する
  5. 3で分析した課題を解消できる施策を検討する

KJ法とは…それぞれのポストイットを、内容の似ているもの同士グループ化し、各グループ間の関係性を図解化することで本質的な課題を抽出するやり方

KJ法については下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

具体的な分析の例

ユーザーインタビュー1

おそらく手順を見るだけでは理解するのが難しいので、
実例を交えながらわかりやすく解説していきましょう。
上図のプロセスマップを見ながら読み進めてみてください。

【手順1】
ECサイトユーザーの、「待ち時間が長い」「受取時間が自分の都合に合わない」などの発言をもとに、
関係性の深い情報をグルーピングして、「待ち時間」「受取」などのステップに整理。

【手順2】
ECサイトで商品を購入するステップを時系列で、「選択」「配送手続き」「待ち時間」「受取」と並べる。

【手順3】
手順1~2で作成したプロセスマップ分析の3つのパターンにあてはめてみる。

例えば、パターン1にあてはめてみると、特に「待ち時間」「受取」のステップで不満を感じていることがわかる。
同様に、パターン2・3にもあてはめてみる。

【手順4】
パターン1における不満を解消するためのサービス改善施策を検討する。
例えば、「受取時間の制約への不満を解消するために、朝早い時間・夜遅い時間でも受取ができるような体制を整える」など。
同様に、パターン2・3においても課題があれば、改善施策を考える。

④統合

情報を整理・分析し、改善点を洗い出したら、いざ実践…としたいところですが、
この改善点が現実的でない場合も多いです。

そこで必要なのが、新しいステップやサービスを「統合」すること。
この統合によって、より現実的なアイデアが生まれることがあります。
さらに、これは事実に基づく根拠によるアイデアなので、
良い分析の条件である「論理的に説明できるか」を満たすことができます。

そして、新しいアイデアが顧客の不満を解消できることを仮説・検証することで
「発見が役に立つ」を満たすこともできます。

具体的に、どのように進めればよいかを見ていきましょう。

プロセスマップ

③の分析で明らかになった「待ち時間」「受取」2ステップに対する不満から、
ステップを「自分で商品を取りに行く」選択肢に統合することを検討します。
これで、「待ち時間が長い」不満も、「受取時間が自分の都合に合わない」不満も
解消できるのではないか、と想定することができます。

まとめ

ここで改めて、今回ユーザーインタビューの分析をした目的を確認しましょう。
それは「サービス活性化のため、利用者の満足度を高める顧客体験を設計すること」でした。

この目的を達成するために、
「良いユーザーインタビュー分析」における3つの条件

  1. 発見的であること
  2. 実用的であること
  3. 科学的であること

をふまえ、
①目的の再確認→②整理→③統合→④分析プロセスをお試しください。

ユーザーインタビューの分析は、その目的を常に頭におきながら、
正しいプロセスに沿って進めることが重要
です。

新しい製品やアイデアを生み出すために、ぜひ今回の記事を見ながら実際に分析をしてみてくださいね。

また、下記の記事ではユーザーインタビューの理解が深まる本を紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

ニジボックスではサイト制作や開発における、情報設計やビジュアル設計といったUIデザイン面に加えて、ユーザーテストやユーザーインタビューなどによるUX観点でのご支援も可能です。
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ご興味を持たれた方はぜひ、下記ダウンロードリンクよりご参照ください。

UX実績資料_ニジボックス

監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

Twitter:@junmaruuuuu
note:junmaru228