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どう使い分けるべき? UXデザインのためのユーザー調査手法とは

どう使い分けるべき? UXデザインのためのユーザー調査手法とは

ニジボックスのUXデザインフローや案件事例をご紹介!


UXデザインにおいて必要不可欠なユーザー調査
種類が多過ぎてどれを選ぶべきか分からない……と悩んでいませんか?
この記事では「ユーザー調査」について、手法の分類やその使い分けについて解説をします。

ユーザー調査とは?

そもそもユーザー調査とは、何のために行うのでしょうか。

新サービスの開発、既存サービスの機能追加・改善に向けて、ユーザーが何を求めているのか、
すなわちユーザーの「声」を聞くことはマーケティングにおいてとても重要です。

しかしながら、ユーザーの声を聞いてサービス開発・改善に反映させたにも関わらず、効果に繋がらなかったということも日々発生しています。
ユーザーの声というのは、あくまでもユーザー自身が認識できている需要や意見に過ぎず、ユーザー自身が、自分のニーズを正しく理解している、適切に言語化できているとは限らないためです。

UXデザインにおいては、顕在化されたユーザーの「声」だけでなく、まだ加工されていないユーザーの「体験」を聞いて分析をすることで、ユーザー自身が気づいていない潜在的なニーズについても把握することが必要になってきます。

よって、目的に応じた適切な調査手法を使い分けることで、より適した解決策を導くことが可能になります。

UX、UXデザインについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

ユーザー調査の分類

それでは、ユーザー調査の手法はどのように分類することが可能でしょうか。
一般的に調査方法は、収集するデータの性質により「量的調査」と「質的調査」に分けられます。

量的調査

人数、点数、割合など数値データやカテゴリデータを収集し、演算・集計する調査方法です。
代表的なものはアンケート調査です。集計結果を分析することで、集団の全体像や傾向を把握することが可能です。

質的調査

数値化できないデータを収集し、分類・構造化する調査方法です。
インタビューや観察などがあります。
量的調査では全体の傾向を掴むことができるのに対して、質的調査では数値化できない価値観や心理描写など、ユーザーの声や体験に関する深い洞察を得ることができます

さらに、調査方法を目的という観点から分類すると、「検証的調査」「探索的調査」に分類できます。

検証的調査

ユーザーのニーズについて(いくつかの)仮説が立てられており、その検証のために用いる調査。
顕在化したユーザーニーズの確認のための調査と言えます。アンケートやA/Bテスト、ユーザビリティテストなどがあります。

探索的調査

ユーザー自身もニーズを認識していないような、潜在的なユーザーニーズを発見するための調査。
インタビューや行動観察、アイトラッキングテストなどがあります。

ユーザー調査の手法一覧と使い分けのポイント

UXデザインに用いるユーザー調査の代表的な手法について紹介します。

アンケート

特定の属性をもつユーザーに対して、予め定義された設問・選択肢に回答してもらう、最も一般的な調査手法。
全体像を把握する必要があるため、わかりやすく答えやすい質問にすることや、短時間で簡潔に回答できるボリュームにするなど、回答率を最大化する工夫が必要です。

アンケート調査については下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

ABテスト

一定期間にサイトに訪れるユーザーに対して、2つ(以上)の異なるwebサイトのデザイン・レイアウトやアプリのプロトタイプを用意して、どちらがより良い成果(クリック率、コンバージョン率など)を出せるかを検証する手法。
注意点として、検証したい項目以外は同条件にそろえる必要があります。

ABテストについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

アクセスログ解析

サイトへの訪問状況の記録を解析する手法。
いつ、どこから、どのくらいの訪問があったのかというアクセス数や、どのページからどのページへ飛んだのかというページ内遷移、訪問元のURLや検索キーワードなどの情報を収集し、どこで機会損失が発生し、何が売り上げに貢献しているのかなどを分析していきます。

アクセス解析については下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

ユーザビリティテスト

ユーザーに実際のサイトやアプリケーション等を利用してもらい、課題を実行する過程のユーザーの行動を観察し問題点を発見する手法。
アクセス解析のような定量データの収集では、何が問題になっているかは把握できても、なぜそうなっているのかという原因は分かりません。

ユーザビリティテストでは、例えばログインページは新規顧客にとって分かりにくい、丁寧な表示は新規顧客には分かりやすいがリピーターにとっては煩わしいなど、特定のユーザーの特定の利用状況における満足度を知ることができます。

ユーザビリティテストについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

フォーカス・グループ・インタビュー

座談会形式のインタビュー。
調査目的に応じて性別、年代、ライフスタイルなどで切り分けた少人数のグループを形成します。

アンケートなどの定量調査では捉えきれない、消費者のニーズや消費行動に対する理解を深めることが可能になり、サービスへの満足度や新商品のコンセプトなど、商品・サービスに対する評価を直接確認することもあれば、ターゲットユーザー層の生活習慣や価値観を把握することもあります。

ユーザーインタビュー

座談会形式のフォーカス・グループ・インタビューと異なり、1対1形式のインタビュー。
サイト、アプリ、サービス、製品について、ユーザーがどう思っているのか、どのような改善を望んでいるのかなど、特定のテーマについて知ることを目的に、質問を進めていきます。

ユーザーの考えをより良く引き出すために、誘導的な質問を避ける、Yes/Noで回答するクローズド型質問をしないといった質問方法の工夫や、相槌、話すスピード、共感を示すといった、緊張させない雰囲気作りの工夫が必要になってきます。

ユーザビリティテストでは行動を観察し、その後にユーザーインタビューを行うことで観察した行動について言葉による回答を得ることもできます。

ユーザーインタビューについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

テキストマイニング

大量のテキストデータを自然言語処理の手法を使って単語に分割し、出現頻度や相関関係を分析する手法。
定性データの性質を持つテキストデータを、量的データとして活用することができます。

アイトラッキングテスト

ユーザーがページを見る際の目の焦点の位置や視線を追跡する装置を使って、どこを見ているのか、視線の動きや注視時間を記録する手法。
ユーザーの注意や興味が向けられやすい(向けられにくい)箇所はどこか、読みづらい・分かりづらくて止まっているところはどこかを把握することができます。

収集したデータのアウトプットとして、注視時間をサーモグラフィのように視覚化したヒートマップや、視線の動きの順番と注視時間をゲイズプロットがあります。

コンテクスチュアル・インクワイアリー(文脈的質問法)

別名師匠と弟子モデル。
インタビュアーを弟子、ユーザーを師匠と見立てて、インタビュアーはユーザーに弟子入りするつもりでインタビューをしていきます。
師匠の行動を観察しながら、その行動の理由を尋ねていくことで、言語化されていない潜在的な意識を引き出していくことが可能です。

人類学者がフィールド調査で用いる参与観察の手法を、数時間に簡略化したものです。

エスノグラフィ(フィールド調査)

フィールドで発生する現象を根気よく観察、あらゆる事象を記述し、パターンの発見・モデル化を行う手法。
ユーザー調査の文脈でいうフィールド(現場)とは、街角や職場など、ユーザーが日常生活を送っている場面が取り上げられることが多いです。

紹介した手法を、2つの分類を使ってマトリクスで表現すると以下のようになります。

ユーザー調査_手法整理

ユーザー調査の事例

以前、翻訳転載の形でご紹介したニューヨークタイムズアプリに関する海外ブログ記事の事例では、デザインプロセスの中でユーザー調査を組み込むことにより、新しい機能の追加をしています。
詳しくはこちらをご確認ください。

この事例では、デザインプロセスを以下の6つのステップで設計しており、ステップ2および6でユーザー調査を実施しています。

  • ステップ1 課題と概念
  • ステップ2 ターゲット、ニーズ、調査
  • ステップ3 顧客目線、スケッチ
  • ステップ4 ワイヤーフレーム、デザインレビュー
  • ステップ5 ビジュアルデザイン、ストーリーテリング(物語化)
  • ステップ6 試作品(プロトタイプ)

ステップ2では、探索的調査である「フィールド調査」を行うことで、ターゲットユーザーである若年層の生活習慣を調査しています。
その結果、必要なニュースを読みたいとは思っているものの、あまり時間がないため隙間時間をうまく使いたいと考えていることが分かりました。
この調査から、障害なく導入しやすい、シンプルな、有益でアクセスしやすいデザインという原則が浮かび上がってきます。

その後、コンセプト立案やユーザージャーニー、ワイヤフレームデザインを経て、のプロトタイプを作成します。
ここでは、検証型調査である「ユーザービリティテスト」を行うことで、自分たちのアイディアをブラッシュアップしていきました。

こうしたプロセスを経て、アプリ全体の改修をすることなく、通知に関する簡単な追加機能をつけることが決定しました。

このように、新サービスの開発や既存サービスのUX改善などの場面で、ユーザー調査がうまく活用されています。

まとめ

今回はユーザー調査の様々な手法や分類方法、使用事例をご紹介しました。

ユーザー調査は、手当たり次第に何でもやれば良いというものではありません。
上記のように、量的・質的、探索的・検証的と、目的や収集すべきデータに応じた、使い分けや手法の組み合わせが重要であることがご理解いただけたと思います。
新規事業のスタート時、既存事業のリニューアル時、どのような目的で、ユーザーの何を知りたいのかを明確にし、適切な調査手法を選択することで、より良くユーザー理解を深めていくことにご活用ください。

ニジボックスではサイト制作や開発における、情報設計やビジュアル設計といったUIデザイン面に加えて、ユーザーテストやユーザーインタビューなどによるUX観点でのご支援も可能です。

下記資料にて、ニジボックスがクライアント課題に伴走する中で磨き上げてきた、ユーザー視点を重視したUXデザインのプロセスや、UXリサーチのご支援事例の一部を紹介しています。
ご興味を持たれた方はぜひ、下記ダウンロードリンクよりご参照ください。

UX実績資料_ニジボックス

参考文献・資料

  1. 樽本徹也(2018)「UXリサーチの道具箱:イノベーションのための質的調査・分析」オーム社.
  2. 「usability.gov:Improving the User Experience」, [online] https://www.usability.gov/ .(参照 2019-7-8)
  3. 「テキストマイニングとは」, [online] https://www.traina.ai/solution/textmining/about.html (参照 2019-7-8)
  4. 「ユーザーインタビュー:実施の理由・方法・タイミング」, [online]https://u-site.jp/alertbox/user-interviews (参照2019-7-15)
  5. 「UXデザインに必要なユーザーインタビューの方法と質問設計」,[online]http://www.standardinc.jp/reflection/article/ux-how-to-conduct-user-interview/ (参照 2019-7-15)
監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

Twitter:@junmaruuuuu
note:junmaru228