カスタマージャーニーが古いといわれる理由は?現代で通用するマーケティング方法を学ぶ
従来の「カスタマージャーニー」は、ユーザーが自社商品・サービスと出会ってから、購入を決断するまでの過程を表していました。
情報媒体が広がり、消費行動が多様化・複雑化した現代では購入意向の過程も重要視されるため、カスタマージャーニーが「古い」といわれることがあります。しかし、適切にアップデートすれば、カスタマージャーニーは現代でも通用し、効果を発揮する分析手法です。
この記事では、カスタマージャーニーがどういった理由から古いといわれることがあるのかを紹介します。併せて、カスタマージャーニーが効果的なシーンや、現代で通用するカスタマージャーニーの作り方なども解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
カスタマージャーニーとは
「カスタマージャーニー」とはカスタマー(顧客)とジャーニー(旅)を合わせた言葉で、カスタマージャーニーにおけるジャーニーとは、カスタマーの購買行動における顧客体験を指します。
従来は、顧客となるユーザーが自社商品・サービスと出会ってから、購入を決断するまでの過程を表していました。しかし現代では、購入後にSNSなどで共有・拡散するまでが、カスタマージャーニーの一連のプロセスと捉えられます。
現代の一般的なカスタマージャーニーのフェーズは、大きく分けて次の4つです。
- 認知・興味
悩みなどを抱えたユーザーが自社商品・サービスと出会い、興味関心を抱く段階 - 情報収集・比較検討
WebサイトやSNSなどを活用し、自社商品・サービスの情報を集めつつ、類似商品・サービスと比較検討する段階 - 行動
お店に足を運んで試着するなど、実際に商品を手に取ってみる段階 - 決定・購入
自社商品・サービスの購入を決断する段階
上記のようなユーザー体験のプロセスを、分かりやすく可視化したものを「カスタマージャーニーマップ」と呼びます。
カスタマージャーニーマップについては以下の記事で詳しく解説をしています。
■関連記事:
カスタマージャーニーマップとは?As-IsとTo-Beの2種類の作り方までやさしく解説!
カスタマージャーニーが古いといわれる3つの理由
カスタマージャーニーは、2000年代~2010年代に普及した概念ということもあり、「古い」「現代にはそぐわない」などといわれることがあります。しかし、現代に合わせてアップデートすることで、カスタマージャーニーはいまだに通用する分析手法です。
では、なぜカスタマージャーニーが古いといわれるのでしょうか。
ここでは、3つの理由を紹介します。
1. 情報媒体の広がり
インターネットやSNSが普及する前は、商品やサービスに関する情報を得る手段が、テレビや新聞、実店舗などに限られていました。
現代では、インターネットはもとよりSNSが発達し、情報収集に活用できる媒体が多く存在します。ユーザーが「決定・購入」「共有・拡散」のフェーズに至るまでのプロセスも多種多様です。
そのため、カスタマージャーニーのような一方通行の分析手法を用い、複雑化したユーザーの行動を管理しようとすると、大きなズレが生じる可能性があります。
このような背景から、「情報媒体が広がった現代では、カスタマージャーニーは通用しないのでは?」と考える方が増えているのでしょう。
2. 新規顧客獲得がメインになっているため
従来のカスタマージャーニーは、ユーザーが自社商品・サービスの購入を決断するまで(=新規顧客を獲得するまで)のプロセスをまとめるものでした。
新たに顧客となったユーザーが、その後リピートしたのか、離脱したのか、なぜそのような行動をとったのかという分析は苦手だったといえるでしょう。
「新規顧客の獲得にかかるコストは、既存顧客の5倍である(1:5の法則)」といわれるように、自社の売り上げを高めるにはいかに既存顧客との関係性を強化できるかが重要です。
既存顧客との関係性を強化するには、カスタマージャーニーを「新規顧客獲得」のためだけに運用するのではなく、現代に合わせてきちんとアップデートする必要があります。
3. パルス型消費に需要がシフトしている
従来のカスタマージャーニーに基づくと、ユーザーは「認知し、情報を集め、比較検討してから購入する」という消費行動をとるのが一般的でした。
しかし、Googleの調査によると、現代人は「1日中いつでも買い物をするタイミングが発生し得る状態」であり、まったく知らない商品でも、認知と同時に購入まで進むことを躊躇しない傾向にあります。
Googleはこれを「パルス型消費行動」と呼び、従来のカスタマージャーニーに基づく行動とは明確に異なるとしています。
パルス型消費に需要がシフトしていると考えると、従来のカスタマージャーニーのままでは、思うような効果を得られない場面が増えるかもしれません。
そのため、時代に合わせてカスタマージャーニーマップをアップデートしたり、作り方を工夫したりすることが重要になります。
カスタマージャーニーが効果的なシーン
カスタマージャーニーが古いといわれるのは、消費者の行動が多様化し、従来のカスタマージャーニーでは消費者の行動に対応しにくくなってきたためです。
そのため、マーケティングの分析方法として適切ではないシーンもあります。
しかし、タッチポイントの整理や自社課題の整理が目的であれば、カスタマージャーニーはまだまだ効果的な分析方法です。
タッチポイントとは、ユーザーとの接点となるツール(例:SNS)や、場所(例:店舗)のことです。
SNSに代表される現代の情報媒体に対応した、アップデートされたカスタマージャーニーであれば、特に次のようなシーンにおいて効果を発揮します。
- ユーザーとの「タッチポイント」を整理する
- 既存フローにおけるユーザーの不満や自社課題を整理する
また、パルス型消費行動も、カスタマージャーニーのプロセスを「通過しない」のではなく、「通過する時間が極端に短い」だけといえます。
したがって、パルス型消費行動の場合でも、カスタマージャーニーによる整理自体は有効と考えられるでしょう。
現代でも通用するカスタマージャーニー
従来のカスタマージャーニーは、新規顧客を獲得し、自社商品・サービスを購入してもらうことがゴールでした。
現代でも通用するカスタマージャーニーにするには、「どうすれば商品・サービスのリピートにつながるのか」に注目する、購入から先のフェーズを用意しなければなりません。
購入から先のフェーズとしては以下のようなものがあります。
例)
継続利用・再購入
自社商品・サービスに満足し、継続利用または再購入をする段階
共有・拡散
自社商品・サービスの感想をSNSでシェアするなど、身近な人におすすめする段階
また、現代のユーザーは「体験」や「感情」をより重要視する傾向にあるため、ユーザー体験(UX)をどのように設計するかが重要になっています。
例えば「商品開封時にどのような体験をしたか?」「商品を使用してどのような点に満足したか?」などを掘り下げていく必要があります。
また、消費者の行動が変化したのであれば、改めてカスタマージャーニーを作り直す、もしくは複数のカスタマージャーニーを用意するなども検討するといいでしょう。
まとめ
従来のカスタマージャーニーは、以下の3つの理由から「古い」といわれることがあります。
- 情報媒体が広がったため
- 新規顧客の獲得を中心に考えているため
- パルス型消費行動が増えているため
現代では、商品・サービスの購入までではなく、リピート、さらには共有・拡散までをカスタマージャーニーの一連のプロセスと捉える必要があります。また、ユーザーの体験や感情に、しっかりと注目することが大切です。
今回紹介した内容を参考に、カスタマージャーニーをアップデートさせ、さらに効果的な分析を目指しましょう。
ニジボックスは、リクルートの新規事業研究機関から誕生した経緯があり、UXデザインやデザイン思考をはじめとするさまざまなビジネス手法を実際にリクルートの事業でも数多く実施し、検証を重ねてきております。
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元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動
コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。
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