AIエージェントとは?業務での活用例や生成AIとの違いを紹介

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ChatGPTなどの生成AI(LLM)の登場で業務はぐっと効率化しましたが、「結局、指示を出したときだけ動く存在」になっていないでしょうか?
本記事では、人間が介入せずとも目標達成まで自律的に行動する「AIエージェント」の基本、生成AIとの違い、代表的なツール、想定活用例を解説します。AIエージェントの全体像を理解し、業務に生かしていきましょう。
※本稿の内容は、2025年11月時点での情報となります。
目次
AIエージェントの特徴
AIエージェントが従来のAIと決定的に異なるのは、人間が持つ「思考」「行動」「記憶」に近い機能を持っている点です。特に「自律性」「連続性」「実用性」の特徴が、AIエージェントの自律的なタスク実行を可能にしています。

自律性
AIエージェントの核となるのが、この自律性です。人間が最終的な目標だけを与えれば、AI自身がその目標達成に必要なタスクを細分化し、計画を立てて実行する能力を指します。これにより、従来のAIのように「これを検索して、次にこれを要約して」といった逐一の指示は不要となります。
例えば、「今年の売上向上戦略を立案せよ」という指示に対し、市場調査から戦略の提案までをAIが自動で実行します。
連続性
連続性とは、一度実行したタスクが完了した後、次のステップを自ら判断し、目標達成までの一連のプロセスを中断せずにやり抜く能力です。単一のタスクを完了して止まってしまう生成AIと異なり、AIエージェントは過去の行動と結果を記憶し、次の行動に生かします。
例として、「マーケティングブログの記事を執筆して公開まで行う」という指示に対し、企画、執筆、校正、そして公開システムへの投稿までを自動で連続実行します。
実用性
AIエージェントは、インターネット検索、メール送信、外部データベースへのアクセスなど、外部のツールやサービス(API)を適切に利用する能力を持っています。これが実用性です。
複雑な計算や情報収集、システム連携が必要なタスクでも、AIエージェントは必要なツールを判断し、まるで人間がアプリを使うように処理してくれます。
例えば、「特定地域の顧客リストを抽出し、新商品のメール案内を送信する」といった現実世界のアクションまで実行可能です。
AIエージェントは『自律型AI』、生成AIとの違いを解説
AIエージェントがなぜこれほど注目されているのか。それは、現在多くの人が利用している生成AI(LLM)とは、根本的に役割が異なるからです。
生成AIが強力な「脳(知識と文章生成能力)」であるとすれば、AIエージェントは「脳に加えて計画能力と手足を与えられた全身」と表現できるでしょう。生成AIを基盤としつつ、さらにその能力を拡張しているのがAIエージェントなのです。
AIエージェントと生成AIの比較
先ほど特徴でも説明した通り、 AIエージェントと生成AIの違いは、その機能が「単なる応答」で完結するか、「目標達成」まで処理を継続するかにあります。
以下の表で、それぞれの役割と行動を比較します。
※ 本セクションでは、AIエージェントの本質的な価値を明確にするため、「生成AI」を大規模言語モデル(LLM)が持つ基本性能として定義し、Web検索などの拡張機能を除外して比較しています。
| 比較項目 | 生成AIの基本機能 | AIエージェント |
| 役割 | 「応答」:ユーザーのプロンプトに最適な情報や文章を生成し、応答する | 「目標達成」:ユーザーの目標を理解し、自律的に計画を立てて行動し、タスクを完遂する |
| 行動 | 「指示待ち」:人間からの単一の指示(プロンプト)に対して動作し、複数のタスクを連続実行できない | 「自律実行」:目標達成のため、自ら次の行動を判断し、複数のタスクを連続実行する |
| 外部連携 | 原則的に不可能:単体で動作することが基本。リアルタイムな情報収集や外部システムへの操作はできない | 外部ツールを積極活用:APIを通じて検索、メール、SaaSなどの外部ツールと連携する |
ツール・サービス紹介全体
AIエージェントの代表的なツール5選
ここでは代表的ないくつかのAIエージェントツールについて特徴を挙げています。
『Dify』
『Dify』は、専門知識がなくてもAIアプリを開発できる、オープンソースのノーコードプラットフォームです。直感的なUIを通じて、独自のチャットボットやエージェントを迅速に構築できます。外部ツールとの連携や、社内文書を学習させたQ&A対応AIを簡単に作成できるため、ビジネスへのAI導入のハードルを大きく下げるでしょう。
おすすめの用途:
- AIアプリを自作
- 社内ナレッジを活用したAIチャットボットを素早く構築
『Microsoft Copilot Studio』
『Microsoft Copilot Studio』は、Microsoftが提供するローコードツールで、誰でも独自のAI搭載型カスタムCopilot(チャットボットやAIアシスタントなど)を簡単に作成、管理、展開できるサービスです。社内データと連携して独自の知識を持たせたり、外部サービスと接続して複雑な業務を自動化したりできます。標準のCopilot機能も拡張可能で、TeamsやWebサイトなどさまざまな場所で活用できます。
おすすめの用途:
- 社内ドキュメントに基づいた従業員向けヘルプデスクを作成
- 外部サービスと連携し、複雑な業務プロセスを自動化
『OpenAI Operator / ChatGPT Agents』
『OpenAI Operator』(現在はChatGPTに統合され、Agent機能の一部として提供)は、Webブラウザ上のタスクを自動化するAIエージェントです。ユーザーの代わりにWebサイトを閲覧・操作し、ECサイトでの商品購入や旅行の予約といった、ブラウザ上で行う一連のルーティン作業を代行します。
おすすめの用途:
- Web操作を自動化し、ブラウザ上での定型的な情報収集やルーティン作業を効率化
『Gemini Enterprise(旧Google Agentspace)』
『Gemini Enterprise』は、かつて『Google AgentSpace』が担っていた機能を核とする、Googleのエンタープライズ向けAIプラットフォームです。Googleの検索技術と企業データを組み合わせて、業務効率化を図ることができるでしょう。企業内に分散したドキュメントやデータソースを横断的に検索し、必要な情報を素早く見つけることも可能です。大量のデータからインサイトを抽出し、マーケティング支援や意思決定支援などへ活用できます。
おすすめの用途:
- 社内情報の横断検索による知識活用
- データに基づいたビジネスの意思決定を高度化
『Devin』
『Devin』は、ソフトウェア開発の全工程を自律的にこなすAIエージェントです。自然言語での指示に基づき、要件定義から実装、テスト、デプロイまで一貫して自動で実行します。コードのバグ修正や既存コードベースの理解、ドキュメント作成など、多様な開発タスクに対応し、開発チームの生産性を大幅に向上させることが期待できます。
おすすめの用途:
- ソフトウェア開発の生産性向上
- 新規サービスのMVP/プロトタイプ作成
AIエージェント活用のメリットとデメリット
AIエージェントの導入を検討する際、その効果だけでなく、潜在的なリスクについても理解しておくことが重要です。ここでは、AIエージェントがもたらすメリットと、デメリットおよびその対策を解説します。
AIエージェントがもたらすメリット
AIエージェントのメリットを一言でまとめると、業務の効率化と価値向上が期待できることです。ここでは、具体的なメリットを4つの視点から解説します。
生産性の向上
データ入力、情報収集、レポート作成といった定型業務の多くをAIエージェントが自動で処理します。これにより、私たちは単純な繰り返し作業から解放され、人間にしかできない創造的な業務や、より価値の高い戦略的な業務に集中できるようになります。結果として、組織全体の生産性向上が期待できます。
人的ミスの排除
AIエージェントは、人間のように疲弊したり、注意力散漫になることはありません。そのため、正確なデータ処理や反復作業において、人的なミスをゼロに近づけることが可能です。正確性が求められる分野において、信頼性や業務品質を向上させる上では極めて重要になるでしょう。
24時間365日の稼働
AIエージェントは、夜間や休日でも中断することなく必要なタスクを継続的に実行できます。時差のある海外取引や監視業務などにおいて、効率的な運営が期待できます。
迅速な意思決定のサポート
AIエージェントは、膨大な量の市場データ、顧客行動、競合情報を瞬時に収集・分析できます。これにより、経営層などの意思決定者はデータに基づいた迅速かつ正確な判断を下すことが可能になります。人間が数日かかる作業を数時間で完了させ、迅速な経営判断の助けとなるでしょう。
AIエージェントのデメリットとその対策
AIエージェントのデメリットは、主に自律性ゆえのリスクと、それを管理する重要性です。
予期せぬ行動のリスク
AIエージェントは自律的に行動するため、意図しない結果を招いたり、設定された目標とは異なる方向に行動したりする暴走のリスクが伴います。
対策としては、厳格な倫理規定と安全基準を設け、テストを繰り返すことが不可欠です。また、重要なプロセスにはHuman-in-the-Loop(人間による承認)の仕組みを組み込むことで、リスクを担保できるでしょう。
セキュリティリスク
外部のデータベースやSaaSと連携するAIエージェントは、機密情報への不正アクセスやデータ漏えいのリスクを伴う可能性があります。特に多くのシステムへのアクセス権を与えた場合、そのリスクは従来のシステムよりも高くなる可能性があります。
AIエージェントに与えるアクセス権限を最小限に制限(最小権限の原則)することが重要です。また、データ漏洩の対策として、通信経路上の情報保護や改ざん防止のため、暗号化技術を導入・厳密に管理する必要があります。信頼できるパートナーと連携することで、こうしたリスクを最小限に抑えられるでしょう。
業務におけるAIエージェントの想定活用例
AIエージェントの活用は、企業の主要な部門の業務において効率化と品質向上を実現する重要な手段となっています。
ここでは、3つの業務領域における想定活用例を解説します。
マーケティングにおけるAIエージェントの活用
AIエージェントは、人間が数週間かけて行う市場調査と企画のプロセスを数時間で完了させることが可能です。従来のマーケティングでは、担当者が手動でWeb上のトレンドや競合のコンテンツを調査する必要がありましたが、AIエージェントはこれを自律的に実行します。SNSのリアルタイムな動向を分析し、その結果を基に顧客のニーズに合致したペルソナを設定。さらに、そのペルソナに響くコンテンツの構成案までを自動で生成させれば、マーケティング施策の実行スピードと精度を向上させることができるでしょう。
営業・CS業務におけるAIエージェントの活用
従来のチャットボットと異なり、AIエージェントは顧客の複雑な要求を文脈から理解し、複数のデータベースを参照して最適な解決策を提示可能です。例えば、見込み客からの問い合わせがあった際、履歴を分析して、優先度の高い顧客には自動で営業担当へのアサインや会議予約まで行い、商談獲得のプロセスを自律的に支援します。
バックオフィス・開発におけるAIエージェントの活用
RPA(Robotic Process Automation)が決められたルール通りにしか動けないのに対し、AIエージェントは複数のシステムをまたぐ複雑な連携や例外処理を自ら判断して実行します。これにより、バックオフィス業務においては、経費精算や人事手続きといった、異なるSaaSツールを横断するワークフローの自動化が可能です。
また、開発の現場では、AIエージェントがコードの変更を監視し、バグを検知すると同時に修正コードの提案まで行うことで、デバッグ作業を大幅に効率化し、開発サイクルのスピードアップに貢献できるでしょう。
まとめ
ここまでお話ししてきた通り、AIエージェントは、単なるツールではありません。人間が設定した目標に向かって自律的に計画・実行するAIです。AIエージェントがもたらす生産性の向上や、人的ミス発生防止のサポートは、企業の競争力を左右する重要な要素となり、私たちのワークスタイルを向上させてくれる可能性を秘めています。
AIエージェントに代表されるように、AIの活用は今や企業にとって不可欠な成長戦略施策の1つと言えるでしょう。
ニジボックスでは、さまざまなAIサービスの利活用研究を行っており、企業のAI活用を支援しています。AI技術をビジネス成果へとつなげる方法にお悩みの際には、ぜひ以下バナーから資料をダウンロードしてご覧ください。
監修者について

監修者
吉川 聡史
株式会社ニジボックス UX・ディレクション室 室長。AIクリエイター。
2011年11月にイラストレーターとしてニジボックスに入社し、クリエイティブ領域を中心にアニメーター、デザイナーなど幅広く担当。その後ディレクションに職域を広げていき、Webディレクターや映像ディレクターなどを経て、リクルートの新規事業の伴走や大規模案件においてのマネジメントなど複数経験し今に至る。 前職は漫画家。最新の技術(ツール)を用いた、AI×UXのあり方について技術検証を行い、それらの取り組みをXやnoteを使って発信。
X:@yoshikawa5116
note: aiux_unite

元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動
コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。
X:@junmaruuuuu
note:junmaru228
