コラボレーションツールでチームの生産性を最大化させる方法——『Figma』が導くアジャイル時代の開発組織

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「タスク管理やチャットといったコラボレーションツールを導入したけど、チームの生産性が上がっている気がしない」そのような悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか?
本記事では、『Figma』を単なるデザインツールではなく「プロセスを共有するプラットフォーム」として捉え直し、その活用方法を組織設計という領域にも踏み込んだ形で解説します。
■イベント動画の紹介

本記事は、2026年1月にニジボックスが開催したオンラインイベント「『Figmaではじめるデザインコラボレーション』出版記念トーク」の内容をもとに執筆しています。
より詳しい内容を動画で見たい方は、こちらからご覧いただけます。
目次
ツールを導入しても「開発の停滞」は消えないという悩み
多くの開発組織では、チャットツールやタスク管理ツールがすでに整備されています。ドキュメントもオンライン上に蓄積され、会議はリモートで迅速に開催できます。一見すると、情報共有のインフラは十分に整っているように見えます。
しかし現場では依然として、「思っていた仕様と違った」「この前提は聞いていなかった」「実装段階で想定外の制約が見つかった」といった事態が発生していると感じる方も多いのではないでしょうか。
認識のズレ、なくならない手戻り、その結果起こる開発の停滞。これらの問題を解決するには「ツールの導入」だけでは不十分かもしれません。
開発現場に停滞をもたらす3つの理由

前章で述べたように、認識のズレや手戻りが多発するのには、3つの構造的な理由があると考えられます。それぞれ、詳しく見ていきましょう。
1.開発プロセスがアジャイル型へと変化
従来の開発モデルは、要件定義・設計・デザイン・実装といった工程の分業を前提としたウォーターフォール型が主流でした。このモデルの強みは、責任範囲が明確であることです。各工程で成果物を定義し、順番に引き渡していくことで、品質を担保しやすいという利点がありました。
しかし、ウォーターフォール型は「前工程で決めたことを後工程で覆しにくい」という性質も持っています。白井は「市場の変化が激しい現代において、アジャイル型のように全員参加型のプロセス・コミュニケーションが主流の時代になっている」と語っています。
2.市場環境の変化により開発スピードの高速化が求められるように
かつては、プロダクトのリリースサイクルは長期にわたるものでした。ユーザーの声が届くまでに時間差があり、仕様変更も限定的だったためと考えられます。
しかし現在は、リリース直後からユーザー行動が可視化され、SNSやレビューを通じて即座にフィードバックが届きます。この環境下では、「最初に正解を設計する」ことはほぼ不可能ではないでしょうか。
そこで重要なのが、仮説を素早く検証し、改善を繰り返すことですが、スピードが上がれば結果としてデザインや仕様の変更も増える可能性が高くなります。
3.人間の心理に起因するブラックボックス化
デザインは視覚的成果物として現れるため、「完成度」が評価対象になりやすい領域です。そのためデザイナーには、ある程度整えてから共有したいという心理が働きます。
未完成の状態を見せることは、プロフェッショナリズムに反するのではないか。誤解されるのではないか。勝手に修正されるのではないか。
この心理は自然なものです。しかし結果として、デザインは「ブラックボックス化」し、内部で熟成され、完成後に初めて共有されてしまいがちです。白井は、「ブラックボックス化が進むと、コラボレーションの弊害になるシーンをよく見かける」と語っています。結果として「合意形成が後ろ倒しになる」「エンジニアが早期に技術的制約を指摘できない」といった問題が発生してしまうのです。
ここではデザインを例示しましたが、他職種においても「完成してから見せたい」という心理から、同様の問題が大なり小なり発生しているのではないでしょうか。
「デザインコラボレーション」と、独自の立ち位置を有するツール『Figma』

現代のプロダクト開発において重要視されるのは、意思決定の早さなのではないでしょうか。どれだけ早く仮説を立て、検証し、改善できるか。そのためには、フェーズとロールを横断する情報共有が不可欠でしょう。それを実現するための概念として近年よく聞くようになったのが「デザインコラボレーション」です。
デザインコラボレーションとは?
今回のイベントでは、デザインコラボレーションを「プロダクト開発における全てのプロセスで、職種・役割の壁を越えて協働すること」と定義しています。
ツールを導入するだけではなく、ツールを使ってチーム全員でコラボレーションをしたり、共通のマインドセットをチームで持ったりすることで、全体の生産性向上やプロダクト品質の最大化を目指す、という考え方です。
デザインコラボレーションは、例えば現代のアジャイル型開発にもフィットします。フェーズとロールの壁を取り払う思想が根幹にあるため、作りながら素早くフィードバックを回せるようになるためです。さらに、近年はAIが台頭し、「作る作業」自体のスピードも上がりました。だからこそ、チーム全体で意見を出し合いながら磨き込むデザインコラボレーションがさらに大きな効果を発揮するようになったのではないか、と考えられます。
多様化するツール群と分断の構造
ここで、デザインコラボレーションをサポートするツールについて見ていきましょう。現代の開発環境には、多様なツールが存在しています。
- チャットツール:リアルタイムコミュニケーション
- タスク管理ツール:進捗と責任範囲の明確化
- ドキュメントツール:仕様や議事録の整理
- ホワイトボードツール:アイデアの発散と整理
- デザインツール:UI制作
それぞれ便利なツールですが、多くは「特定の用途」に特化しています。その結果、議論・設計・実装がツールごとに分断されてしまうかもしれません。例えば、アイデアはホワイトボードで発散され、仕様はドキュメントにまとめられ、デザインは別のツールで作られ、実装はさらに別環境で行われます。この分断構造では、フェーズが進むたびに情報の解釈が変わるリスクが生じます。
『Figma』は「制作ツール」ではなく「プラットフォーム」
フェーズとロールを横断し、デザインコラボレーションを実現するために、今回のイベントでは『Figma』の有用性が語られました。『Figma』はデザインツールと見られがちですが、その本質は「チーム全体のコラボレーションを活性化させるプラットフォーム」といえます。
最大の特徴は、制作プロセスそのものがリアルタイムで共有される点です。誰がどのように編集しているのかが可視化され、コメントによる議論も同一画面上で行えます。これは、「完成物を受け渡す」構造から、「過程を共に見る」構造への転換を意味します。
PMは要件との整合性を早期に確認できます。デザイナーは技術的制約を理解した上で設計できます。そして、エンジニアは実装観点での懸念を事前に指摘できるようになるのです。
プロセスが共有されることで、小さな違和感を早期に検知できるため、意思決定の質と速度が向上します。さらに五井は、「エンジニア側から実装コストを下げるための提案もできるようになる」と語っています。
これは単なる作業効率の向上ではなく、開発コストの削減、リードタイムの短縮、顧客価値の最大化という、経営レベルの課題に直結するといえるのではないでしょうか。
『Figma』をハブにした組織設計のヒント

デザインコラボレーションを実現する上で、最初に乗り越えるべき壁は「『Figma』はデザイナーのためのツールである」という固定観念です。『Figma』を「デザイナーの所有物」ではなく、「チームのプラットフォーム」として再定義するために、今回のイベントで語られたTipsを紹介していきましょう。
まずは「触れてもらう」ところから始める
『Figma』が浸透していない現場では、まず全職種にアクセスを開くことが重要ではないでしょうか。デザイナー以外のメンバーが『Figma』にアクセスし、閲覧する機会を増やすことが第一歩です。
特に有効なのが『FigJam』の活用だと安田は提言します。定例の振り返りやブレストに取り入れることで、PMやエンジニアも日常的にFigma環境に触れるようになるでしょう。その結果、「デザイナーのツール」という心理的な距離が徐々に縮まり、「自分たちのツール」という認識へと変わっていきます。
これは単なる操作の習熟度の問題ではありません。ツールへの心理的ハードルを下げることが、コラボレーションの土台をつくるのです。
ブラックボックス化を解き、早期共有を前提にする
多くの現場で見られるのが、デザインが完成してから共有されるフローです。作業中はFigmaを閉じ、整ってから「どうぞ」と渡す。この構造は、先述した「完成してから見せたいデザイナーの心理」とも相まって、デザインをブラックボックス化します 。
しかしエンジニアの立場からすれば、未完成でも早めに見せてもらえるほうがありがたいという声もあります。並行して実装準備ができ、リスクの早期発見にもつながるためです。
そこで、デザイン検討段階からアクセスできるページを用意し、「アップデート前提で共有する」という運用ルールを明示すると効果的だと白井は語ります。完成品を渡すのではなく、変化するプロセスを共有するのです。
プロトタイプが「空中戦」を終わらせる
言葉だけの議論は、しばしば認識のズレを生みます。特にアニメーションや複雑な挙動の仕様は、会話だけでは共有が難しい領域です。安田はその解決策として、会議中にその場でプロトタイプを作成するというやり方を提案しています。
『Figma』のプロトタイプ機能や『Figma Make』を活用すれば、抽象的な議論を具体化できます。可視化された動きは、関係者の認識を即座に揃え、持ち帰りによる認識齟齬を防ぎ、意思決定のスピードを高めてくれるでしょう。
コメント機能を使い分けてハンドオフをスムーズに
『Figma』のコメント機能は「解決済み」にすると画面から消えてしまうため、確定した仕様などの残しておくべき重要な情報を記載しておくのには適さないケースがあります。そこで、以下のように使い分けると、よりハンドオフ(デザインをエンジニアに引き渡すプロセス)がよりスムーズになると安田は語っています。
- コメント機能は、確認や相談などの非同期コミュニケーションとして用いる
- 細かい仕様の決定事項やなぜそのデザインなのかという意図は、キャンバス上にメモコンポーネントやアノテーションで書き込んでストック情報として残す
このように、コメント機能といった細かい点もルールを設けることで、より効率的なコラボレーションが生まれる余地があります。
書籍出版を通じて改めて分かったコラボレーションの本質
現在は、デザイナーでなくてもプロトタイプを作ることができる時代です。『Figma』という一つのプラットフォーム上で、各職種が専門性を持ち寄りながら形にしていく流れが加速しています。
エンジニアがデザインに踏み込み、デザイナーが構造や実装を意識する。その境界は徐々に溶け始めています。『Figma』をプラットフォームとして再定義することは、組織の思考様式を変えることにつながるはずです。単にツールを使うのではなく、ツールを組織のコラボレーションの手段とすることで、生産性が向上し、変化の速い市場で持続的に価値を創出できるようになるといえるのではないでしょうか。
ニジボックスでは、書籍出版の実績にも裏打ちされた、プロダクト開発全般の支援を行っています。「ツールを導入したけどうまくいかない」、「チームの連携がうまくいかない」、などのお悩み事があれば、まずはお気軽にお問い合わせください。
本記事でご紹介した書籍の詳細については、こちらからご覧いただけます。
『Figmaではじめるデザインコラボレーション』
株式会社ニジボックス 著
技術評論社 商品ページ
監修者
丸山 潤
コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。
