アジャイル開発の「スクラム」とは?役割・手順と形骸化させない実践のコツを解説

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アジャイル開発では、スクラムというフレームワークを用いて進めることがあります。
効果的に活用できれば、柔軟な考え方ができる強いチームで開発を進められますが、運用が形骸化してしまうケースも少なくありません。
本記事では、スクラムの基本とともにどのように運用すれば良いのかを解説していきます。アジャイル開発を導入しようと検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
スクラムとは?
アジャイル開発について、定義やウォーターフォールとの違いなど詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
アジャイル開発の定義
アジャイルとスクラムはセットで語られることが多いですが、厳密には「考え方」と「やり方」という違いがあります。
アジャイル開発は、「計画、設計、実装、テスト」という開発工程を小さいサイクルで繰り返す開発手法です。仕様変更や環境変化に強く「プロジェクトを進める上で変化がある」という前提で開発する考え方です。
しかし、アジャイル開発の実践を試みるにしても、具体的な進め方や手順が確立されているわけではありません。そこで登場するのが、アジャイル開発を実践するための代表的なフレームワーク「スクラム」です。数あるアジャイルの実践手法の中でも、普及しているものの一つです。
スクラムの根底にある「3本柱」と「5つの価値基準」
スクラムは「経験主義(実際にやってみた結果から学ぶこと)」と、無駄を省く「リーン思考」に基づいています。その土台として、非常に重要な「3つの柱」と「5つの価値基準」が定められています。

スクラムの3本柱
経験主義に基づき、プロジェクトを成功へ導くための基盤です。
- 透明性: プロセスの現状や課題が、誰から見ても明らかな状態であること
- 検査: 成果物やプロセスにズレがないか、定期的にチェックすること
- 適応: 検査で見つかったズレを、即座に修正・改善すること
スクラムの5つの価値基準
チームメンバーが共有し、日々の行動の指針とすべき価値観です。
- 確約: ゴールを達成し、お互いにサポートすることを確約する
- 集中: 全員がスプリントの作業とチームのゴールに集中する
- 公開: チームとステークホルダーは、仕事の状況や課題を公開する
- 尊敬: メンバーはお互いに能力のある独立した個人として尊敬し合う
- 勇気: 正しいことをする勇気や、困難な問題に取り組む勇気を持つ
スクラムの3つのメリット
ここでは、スクラムを導入するメリットを3点紹介します。

① 市場の変化への柔軟な対応ができる
数カ月後の完成まで中身が見えない開発とは異なり、スプリントごとに「動くもの」を見てフィードバックを得るのがスクラムの基本です。
これにより、市場ニーズとのズレを早い段階で修正できるため、時間をかけて作ったのに使われないというリスクを回避できます。優先順位を柔軟に入れ替え、常にROI(投資対効果)の高いものから作っていけるというのは、ビジネスの観点で大きな安心材料になります。
② 工数見積もりの精度向上とリスク管理ができる
「これまでの実績から見て、この機能の開発は次のスプリントで終わりそうだ」という予測が、勘ではなく客観的な数値に基づいて行えるようになります。見積もりの精度が上がることで、不確実なプロジェクトでも地に足のついたリスク管理が可能になります。
③ チーム内で課題を解決する力が育つ
『スクラムガイド』でも推奨されている「自己管理型」(Self-managed)のチーム作りは、マネジメントのボトルネックを解消します。
何か問題が起きた際にリーダーの指示を仰ぎ、現場が待ちの状態になることなく、デイリースクラムなどを通じてメンバー自らが課題を見つけ、その場で相談して動きます。この積み重ねによって、特定の人に依存せず、チーム全員でプロジェクトを安定して前に進める自走力が育っていきます。
スクラムを実践するための「3・5・3」の型
スクラムを導入する際、まず覚えておきたいのが「3・5・3」というフレームワークです。これはチームが迷わずに最短距離でゴールへ向かうための型のようなものです。

3つの役割:プロダクトオーナー・スクラムマスター・開発者
スクラムチームの特徴は、指示待ちの体制ではなく、全員が責任を持って動く「自己管理型」であることです。それぞれが異なる責任を持つ3つの役割に分かれます。
プロダクトオーナー(PO)
チームが何を作るかの最終決定権を持ち、プロダクトの価値を最大化させることに責任を持ちます。プロダクトバックログの作成や管理も実施します。
スクラムマスター(SM)
チームが開発に集中できるよう、プロセスの支援や困りごとの解決に取り組みます。
開発者
実際にプロダクトを作るメンバー全員を指します。スプリント内に、実際に動く価値のある成果物を作り上げます。
チーム編成のポイントは、『スクラムガイド』が推奨する10人以下という規模感です。「PO 1名、SM 1名、開発者 8名以下」を一つの目安にすると良いでしょう。
人数が多すぎると柔軟性が失われ、少なすぎるとスキル不足や欠員リスクに弱くなるため、バランスが重要です。
5つのイベント:スプリントを回すステップ
スクラムでは開発の基本単位となるスプリント(1週間〜1カ月の固定期間)の中で、以下のステップを回します。
スプリントプランニング
スプリントの開始時に目標と進め方をチーム全体で話し合って決定します。
デイリースクラム
毎日15分程度で進捗と困りごとを共有し、軌道修正を図ります。
スプリントレビュー
成果物(インクリメント)を関係者を交えて確認し、フィードバックを得る場です。単なるデモで終わらせず、それをもとに今後の計画(プロダクトバックログ)を柔軟に調整(リプランニング)することまでを実施します。
レトロスペクティブ
スプリント終了時に行うチームの振り返りです。次のスプリントをより良くするためのプロセス改善を話し合います。
3つの作成物:バックログとインクリメント
今、どこまで進んでいるか全員が見えるようにするのが3つの作成物です。これらがあることで、チームは常に同じ方向を向いて進むことができます。
プロダクトバックログ
全体の「やることリスト」。優先順位順に並べられ、プロダクトオーナー(PO)が管理します。
スプリントバックログ
今回のスプリントで実行するタスクリストです。スプリントプランニングで決定した内容を可視化させたものです。
インクリメント
スプリントレビューにて確認する、実際に動作する成果物を指します。
スクラムを形骸化させないための注意点
スクラムの「3・5・3」という枠組みはあくまで手段であり、目的ではありません。形を守ることに注力しすぎて本来の価値を損なわないよう、導入初期に陥りがちな課題を解説します。
「短いウォーターフォール」のリスク
よくある課題が、デイリースクラムが進捗報告会になり、レトロスペクティブが形骸化してしまう状態です。また、組織構造が変わっても指示を待つという受動的な姿勢が残っていると、現場での迅速な意思決定が阻害され、スクラムの強みが発揮できなくなります。
形骸化の中でも注意したいのが、1スプリント内で「設計・実装・テスト」を順送りに進めてしまう「短いウォーターフォール」(ミニ・ウォーターフォール)の状態です。
本来スクラムではこれらを同時並行で進めますが、従来の手法に慣れていると、テストを最後にまとめてしまいがちです。しかし、スプリント終了直前に不具合が見つかれば、修正が間に合わず動くインクリメント(成果物)がゼロの状態で終了するリスクがあります。
チームの現状を診断する4つのチェックポイント
以下のリストに当てはまる場合、実態がウォーターフォール化している可能性があります。ポイントを確認してみましょう。
- PBI(プロダクトバックログアイテム)が「ユーザー価値単位」ではなく、「DB設計」や「API作成」といった技術レイヤーで区切られている
※PBIとは、プロダクトバックログを構成する、やることを決めた個々のアイテムを指します。 - 開発チームの中にサブチーム(テストチームやQAチームなど)が存在する
- スプリントの最後にまとめてテストしている
- スプリントレビューで初めてプロダクトオーナー(PO)が成果物を確認している
短いウォーターフォールを防ぐ具体策
このような「短いウォーターフォール」の状態から脱却し、スプリントを円滑に回すためには、以下の観点から対策を打つことが重要です。
PBIを「工程」ではなく「ユーザーへの価値」で切る
「DB設計」や「API作成」などの技術的な作業単位(横切り)でPBIを分けると、どうしてもリレー形式の待ち時間が発生し、実態がウォーターフォール化してしまいます。
大切なのは、薄くても良いので「ログイン画面が閲覧できる」などのユーザーに価値が届く単位(縦切り)でPBIを分けることです。これにより、一つの項目に対して設計・実装・テストを同時並行で進められるようになり、スプリント内の停滞を防ぐことができます。
個人の稼働率よりも「チームの完了スピード」を優先する
手が空いたから新しいタスクを始める(リソース効率)のではなく、今あるタスクを早く終わらせる(フロー効率)ために協力し合うスタンスが重要です。
例えばペアプログラミングなどは、一見すると2人で1つの作業をするため非効率に思えるかもしれません。しかし実際には、レビュー待ちの時間や手戻りを最小限に抑え、リードタイムを短縮するための合理的な戦略といえるでしょう。スプリントを円滑に進めるための手順については、こちらの記事でも解説しています。併せてご覧ください。
そのスプリント、短いウォーターフォールになってない!?|Qiita
成果を高めるマインドセット
スクラムを成功させるには、チーム全体の意識を「計画の完遂」から「価値の最大化」へとシフトさせる必要があります。
スプリントの目的は、スケジュール通りにタスクを消化することではありません。「実装とテストをセットで行う」「小さく作ってこまめに確認する」など、工程を分離させない進め方を意識しましょう。
一つひとつのタスクを確実に「利用可能な状態」まで完了させていく習慣こそが、スクラム本来の柔軟性とスピード感を引き出す土台となります。
まとめ
変化が激しい最近のビジネス環境や開発環境において、スクラムの実践によって、変化に柔軟に対応できる体制を作るのは有益なアプローチだと考えられます。
ただし、スクラムは枠組みをなぞっても形骸化して効果を発揮できないリスクもあります。重要なのは、プロダクトの「価値の最大化」に向かい続けているかを、客観的にモニタリングし続けることです。
とはいえ、プロジェクトの渦中において、課題を客観的に捉えるのは容易なことではないと思います。「導入はしてみたが、手応えがない」「形骸化している気がするが、どう変えればいいか分からない」といった状況であれば、専門的な知見を持つ外部パートナーの視点を活用するのも有効なのではないでしょうか。
ニジボックスでは、企業様のアジャイル開発導入における、現場の状況に寄り添った実践的なコンサルティングを随時行っています。貴社のチームが持つポテンシャルを最大限に引き出し、ビジネスの可能性を広げるためのスクラムを、私たちと一緒に作り上げていきませんか?
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最後に:実績集の紹介
■ニジボックスのアジャイル開発実績集
ニジボックスでは、アジャイル開発を活用した多様なプロジェクトに取り組んできました。
私たちがどのように課題を解決し、プロダクトを成長させてきたのか。その詳細な実績については、以下のリンクからダウンロードいただけます。ぜひ貴社のプロジェクトのヒントとしてご活用ください。
参考:「スクラムマスター スクラムガイド」 https://scrummaster.jp/scrum-guide (2026年2月24日閲覧)
監修者
古川 陽介
複合機メーカー、ゲーム会社を経て、2016年に株式会社リクルートテクノロジーズ(現リクルート)入社。 現在はAPソリューショングループのマネジャーとしてアプリ基盤の改善や運用、各種開発支援ツールの開発、またテックリードとしてエンジニアチームの支援や育成までを担う。 2019年より株式会社ニジボックスを兼務し、室長としてエンジニア育成基盤の設計、技術指南も遂行。 Node.js 日本ユーザーグループの代表を務め、Node学園祭などを主宰。


