NIJIBOX

「LLM(大規模言語モデル)」と「生成AI」の違いとは?生成AIの仕組みや代表的なツール比較・活用例を解説

「LLM(大規模言語モデル)」と「生成AI」の違いとは?生成AIの仕組みや代表的なツール比較・活用例を解説

「LLM(大規模言語モデル)」は、AIを用いた仕組みを指します。近年ではビジネスシーンで活用される機会も増えています。

今回は「LLM」と「生成AI」の違いと、具体的なツールをピックアップして紹介いたします。また、ビジネスの分野で具体的にどのような活用方法が考えられるのか、についても考えてみたいと思います。


全実績集イメージのサムネイル

リクルートや大手企業の実績多数!

ニジボックスのUI UXノウハウや

案件事例をご紹介!


LLMと生成AIの違い

LLMと生成AIは、シーンや文脈によっては同一のものとして扱われることもありますが、厳密には異なる概念を指す言葉です。ここではまず、それぞれの定義について確認しておきましょう。

LMMと生成AIの違うを表す図です

LLMの定義と仕組み

LLMとは「Large Language Model」の略語であり、日本語では「大規模言語モデル」と呼ばれています。言語モデルとは、人間が普段使っている言葉や文章をもとに、ある単語や文章に続く別の単語の出現確率をモデル化した技術です。

言語モデルでは、さまざまなテキストデータの学習を重ねることで、前後の文脈からふさわしい単語を選べるようになります。たとえば、「私の好きな色は」という文章の後に続く単語として、「赤色」や「青色」などの言葉は高確率で正答であると判断する一方、「ビル」や「車」などは確率が低いと判断しながら、言語をモデル化していく仕組みです。

LLMは大規模という単語が示す通り、大量のデータを学習することで、人間のような自然言語処理能力を獲得できるのが特徴です。一般的な言語モデルと比べると、計算量・データ量・パラメータ数の3つが大幅に強化されており、より高度な学習が可能になっています。

その結果、テキスト全体の文脈を素早く理解し、文章生成や質問への応答、要約、翻訳といったさまざまなタスクを実行できます。

生成AIの定義と仕組み

生成AIとは、先述のLLMも含まれた文章や画像、音声、動画などのコンテンツを新たに生成するAI技術の総称です。人工知能(AI)を用いた技術の一部ですが、既存のデータから予測や分析を行うことを得意としていた従来のAIとは異なり、ユーザーが入力した指示(プロンプト)に基づいて、誰でも手軽に新たなコンテンツを生成できることが特長です。

LLMや生成AIの種類

AIの進歩に伴い、近年では多様なモデル・ツールが登場しています。ここでは、代表的なモデルやツールをご紹介します。

LLMの代表的なモデル

LLMのなかでも、特に一般まで広く普及しているのは、OpenAI社が2023年に発表した『GPT-4』です。深層学習モデルである『Transformer』をベースに開発されており、マルチモーダルモデルである『GPT-4V』では、テキストに加えて画像や音声などのデータも解析できるようになっています。

また、Google社はさまざまなLLMを開発しており、同社が発表した『Transformer』アーキテクチャは、現代のLLMの基盤技術としてパイオニア的な存在です。多くのLLMもこの『Transformer』をもとに開発されています。

それ以外にも、「BigScience」が開発した『BLOOM』は、1,760億ものパラメータを備えたオープンソースのLLMとして広く知られています。13種類のプログラミング言語と46種類の自然言語で機械学習をしているため、多種多様なコンテンツの作成が可能です。

生成AIの代表的なツール

生成AIはさまざまなツールが開発されています。ここでは、利用目的別に代表的なツールを見ていきましょう。

生成AI代表的ツールをまとめて表示する図です

会話ツール

会話ツールは、生成AIを用いた代表的な技術です。基本的な仕組みは、入力されたテキストに基づき文章を生成し、さまざまな質問に答えてくれるというものです。

高度な自然言語処理と機械学習により、まるで実在する人間を相手にしているかのような自然な会話が可能となっており、単に会話を楽しむだけでなく、顧客対応などでビジネスシーンに活用されるケースも多いといえます。生成AIを用いた主な会話ツールとしては、『ChatGPT』、『Gemini』、『Copilot』などが挙げられます。

主なツール

ChatGPTの料金体系はこちら

Geminiの料金体系はこちら

Copilotの料金体系はこちら

文章校正・リライト・改善に特化したツール

文章校正・リライト・改善に特化したツールは、日本語のテキストはもちろん、多言語のニュース記事や論文にも対応しているため、幅広いコンテンツで活用可能です。

主なツールとしては『DeepL Write』、『QuillBot』、『Samaru』などが挙げられます。

主なツール

DeepL Writeの料金体系はこちら

QuillBotの料金体系はこちら

要約AI Samaruの料金体系はこちら

テキスト作成ツール

生成AIでは、長文のテキストや記事を作成することも可能です。記事作成を完全に自動化できるものではありませんが、アイデアの考案や記事の下書きなど、多様な作業をサポートしてくれます。

主なツールとしては『Claude』、『Transcope』、『SAKUBUN』などが挙げられます。

主なツール

Claudeの料金体系はこちら

Transcopeの料金体系はこちら

SAKUBUNの料金体系はこちら

画像生成ツール

画像生成ツールとは、テキストでの指示に基づいて、適切な画像を生成してくれるツールのことです。ただし、学習元のデータや表現方法によっては、権利侵害のリスクが生じる恐れもあるため、特に商用利用時には気をつける必要があります。

主なツールとしては『Adobe Photoshop』、『Canva』、『Bing Image Creator』などが挙げられます。

主なツール

Adobe Photoshopの料金体系はこちら

Canvaの料金体系はこちら

動画生成ツール

生成AIでは、テキストや画像から動画を作成することも可能です。主な動画生成ツールとしては、『Sora2』、『Runway Gen-2』、『Adobe Firefly』などが挙げられます。

主なツール

Sora 2の料金体系はこちら

Runway Gen-2の料金体系はこちら

Adobe Fireflyの料金体系はこちら

その他のツール

生成AIには、上記のジャンル以外にもプログラミングコードを書いてくれるツールや、スケジュールを管理してくれるツールなどがあります。特定の分野に特化したものから、いくつかの分野にまたがって活用できるものまで存在するため、利用目的に応じて使い分けていくことが重要です。

LLMと生成AIの業務別活用例

ここからは、LLMや生成AIをビジネスの分野でどのように活用できるのか、いくつかのシーンに分けて具体例を見ていきましょう。

マーケティングでの活用例

大量のデータを効率的に扱えるLLMや生成AIは、マーケティング分野でのさまざまな活用が期待できます。具体的な使い方の例は以下の通りです。

LLM

  • 市場のトレンドを分析し、新しい企画アイデアを提案する
  • 人流データや各種データを分析し、売上向上やリピート率向上につなげる

生成AI

  • 新たなサービスやデザイン案を短時間で複数提案してもらう
  • AIが生み出したアイデアをもとにブラッシュアップさせ、商品開発にかかる時間を短縮する

LLMでは大量のテキストデータを分析できるため、市場の動きや顧客のニーズを把握することも得意です。自社の製品・サービスをどのように売っていくべきか、あるいはどのような機能を搭載させるべきかなどを分析し、マーケティング戦略の土台を固めるのに役立つでしょう。

他の生成Aツールでは、例えば広告に使えるデザインや新たなサービス案を瞬時にいくつも出してもらうことも可能です。多くのアイデアに触れることで、広告制作や商品開発にかかる時間を短縮することもできます。

ビジネスコミュニケーションでの活用例

ビジネスコミュニケーションの分野では、次のような使い方が想定できます。

LLM

  • 社内の知見やナレッジを効率的に検索・活用する

生成AI

  • AIチャットボットを活用して顧客からの問い合わせに自動で応答し、応対品質を向上させる
  • 問い合わせ履歴を分析してFAQを作成する

カスタマーサポートにおいては、すでにLLMや生成AIを活用している企業も多く、人手不足の解消や業務負担の軽減などに大きな効果が表れています。

コンテンツ作成での活用例

コンテンツ作成においては、次のような活用方法が考えられます。

LLM

  • 議事録の作成、メールの草案作成など、時間のかかる業務を効率化する
  • 文章の要約や翻訳に活用する

生成AI

  • テキストや画像、音声、動画など幅広いコンテンツの作成をサポートしてもらう
  • サービス解説動画などにナレーションをつける

LLMでは議事録の作成やメールの文案作成など、面倒な業務を自動化することが可能です。また、文章の要約や翻訳にも活用できるため、コンテンツ作成の材料をそろえるのに役立ちます。

他の生成AIツールでは、テキストに限らず画像や映像といった幅広いコンテンツ作成にも活用できます。また、音声データの作成も可能なため、サービス解説動画にナレーションをつけるといった使い方も可能です。

データ収集での活用例

データ収集については、次のような活用方法が考えられます。

LLM

  • 大量の社内データやWeb上の情報から必要な情報を検索する
  • キャンペーンの結果などから考察し、プロモーション方法の最適化を提案してもらう
  • データの分析、加工、レポーティングを行ってもらう

生成AI

  • 合成データを生成して学習させ、AI開発につなげる

データ収集・分析はLLMの得意とするところであり、さまざまな活用方法が考えられます。単にデータを集めるだけでなく、そこから深い分析を行ったり、図や資料として加工したりすることも可能なため、レポーティングにも活用可能です。

生成AIでは、AIに学習させるデータが少ないときや、個人情報保護のために実際のデータが使えないときなどに、合成データを生成してから学習させるといった使い方が考えられます。

開発での活用例

開発での活用例としては、次のようなものが挙げられます。

LLM

  • 下流タスクを効率化し、アジャイル開発のスピードアップを図る

生成AI

  • プログラミングコードの生成、デバッグ、コードレビューに活用する
  • テストコードの自動生成やデバッグ支援に活用する

LLMを開発の下流タスクに活用することで、アジャイル開発をより短期的なサイクルで実現できるようになります。「プロンプト」「強化学習によるファインチューニング」「インストラクション・チューニング」などに用いれば、素早くPDCAを回して製品・サービスの効率的なブラッシュアップを図れるでしょう。

そして、他の生成AIツールではさらにコード生成やデバッグ、コードレビューといった多様な場面で活用可能です。それぞれの分野に特化したAIツールも公開されており、ソフトウェアやアプリケーション開発の効率化にも役立つと思われます。

教育・研修分野での活用例

教育・研修分野においては、次のような活用例が考えられます。

「LLM・生成AI」共通

  • 職務記述書とスキルマップを照合し、各人が必要な学習項目をリスト化する
  • 学習スケジュールを自動で構築し、スライド、スクリプト、動画、理解度確認用テストなどを生成する
  • 社内データを学習させ、研修教材を自動生成する
  • 24時間対応の研修サポートシステムを構築する

こちらの例のように、個人に合わせたきめ細やかな学習支援を行うことが可能です。従業員それぞれの理解度に応じて、学習内容やスピードを調整できるため、学習効果を高めやすくなると思います。

また、既存のデータやマニュアルを読み込ませれば、自社独自の学習教材を生成することも可能です。手軽に高品質な学習環境を整えられるため、社内研修者の負担軽減や外部コストの削減にもつながるでしょう。

LLMや他の生成AIツールを利用するときの注意点

LLMや生成AIはまだ開発途上であるため、ビジネスで活用するうえでは、いくつか注意しなければならないポイントも存在します。

まず、セキュリティ上のリスクが挙げられます。LLMや生成AIでは、どちらも大量のデータを用いるため、顧客データや個人情報を扱う場合にはセキュリティ上のリスクが発生します。従業員のリテラシー教育が不十分であると、入力した情報がAIの学習に使われ、機密情報などが回答に反映される恐れもあるため注意が必要です。

また、LLMは文章や単語の意味自体を人間のように深く理解しているわけではないため、学習データの偏りやハルシネーション(事実に基づかない虚偽の出力) によって、正確性に欠ける情報が生成されるリスクがあります。

それ以外にも、生成AI全般で、意図せず著作権を侵害したり不適切な情報を用いたりと、法的・社会的なリスクも抱えています。正しく運用するためには、リスクを避けるための専門知識や教育のためのコストも必要になるため、社内の利用方針をきちんと固めたうえで導入を検討することが重要です。

まとめ

LLM(大規模言語モデル)は、生成AIという大きな枠組みの中に含まれる一種です。「生成AI」がテキスト・画像・動画・音声などさまざまなコンテンツを生み出す技術の総称であるのに対し、「LLM」はその中で特に自然言語(テキスト)の処理と生成に特化したモデルを指します。近年では、一つのモデルで画像や音声も同時に扱える「マルチモーダル化」が進んでおり、多様な領域へ対応範囲が広がっています。

ビジネスにおいては、マーケティングや開発といった重要なシーンでの活用が期待でき、業務効率化やサービスの向上を実現することも可能です。活用に際しての注意点を十分に理解し、社内の運用ルールを明確化したうえで、自社に合ったツールの導入を検討してみるとよいでしょう。


ニジボックスでは、幅広いAIサービスの利活用を研究し、企業のAI活用を総合的に支援しております。
AI技術をどのようにビジネス成果へ結びつけるかお悩みの際は、下記バナーより資料をダウンロードのうえ、ぜひご覧ください。

AI関連支援のご紹介

監修者

監修者
監修者_丸山潤

丸山 潤

元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

note: junmaru228