UXデザイナーとは?職域から考えるUXデザイナーという職業
みなさん、こんにちは。
「UXデザイナー」という職業はご存知ですか?
WEB業界に携わっている方は、ここ数年、よく耳にするキーワードではないでしょうか。
この記事では、UXをデザインする職業「UXデザイナー」の職能をどう捉え、どのように機能させるのがベストか?ということを説明していきます。
目次
UXデザインとは?
UXデザイナーについてお話する前に、「UXデザイン」という言葉についておさらいしましょう。
まず、UXとはユーザーエクスペリエンスのことです。
ドナルド・アーサー・ノーマンという、アメリカの認知科学者で「人間中心設計」というデザインアプローチを提唱した方によると、
「ユーザーエクスペリエンスは、エンドユーザーが会社、サービス、製品と対話するすべての側面を網羅している」
のだそうです。
これは具体的にはどういうことかというと、
「企業のあらゆる部署がUXの視点を持ち、一丸となってサービスを運用してゆく」ということです。
では、そんな体制の中でUXデザイナーは何をする職業なのか?
ということを考えてゆこうと思うのですが、まずはじめに、「UXデザイン」について考えたいと思います。
「デザイン」という言葉を見ると、一般的な日本人の印象としては「ビジュアルデザイン」「UIデザイン」といったキーワードが真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか?
改めて辞書を引いてみると……。
[デザイン]
①建築・工業製品・服飾・商業美術などの分野で、実用面などを考慮して造形作品を意匠すること。
②図案や模様を考案すること。また、そのもの。
③目的を持って具体的に立案・設計すること。
参照:デジタル大辞泉
と説明されているのですが、
私は、UXデザイナーが行う「デザイン」は③なのでは? と思っています。
つまり、「UXデザイン」とは、エンドユーザーが会社、サービス、製品と接触する際受けるすべての印象(ユーザー体験)をデザインすることだと言えます。
■参考記事
ユーザーエクスペリエンス(UX)とは?〜UIとの違いから具体事例まで〜
UXデザイナーとはどんな職業か?
では、そんなUXデザインを行う「UXデザイナー」とはどんな職業なのでしょうか。
アメリカでのUXデザイナーの定義
UXPinという機関が企業を対象におこなった調査によると、フルタイムのUXデザイナーを雇用し始めたのは3年前からと答えている企業が約50%にのぼるそうです。
また、「UXデザインをどうやって学んだか?」という質問に対して、
独学で身に着けたというデザイナーが全体の約65%という結果も発表されています。
さらに、UXに関して活発な意見が交わされているUXブログ界隈では、UXデザイナーのコアコンピテンシーに関する興味深い見解を見つけました。
フィッツジェラルド・スティールさんのこちらの記事を参照してみてください。
彼によると、優秀なUXデザイナーの保持するべきスキルとして、
リサーチ手法から、ビジュアルデザイン、インタラクションデザイン、HTML/CSS/JavaなどWEB技術全般、さらにデータ分析技術などなど…。
これは、もはや「なんでも屋さん」レベルの網羅性ですね。
WEBをちょっと検索するだけでも、UXデザイナーの職能やスキルについては様々な論議がなされていることがわかります。
このことからわかるのは、UXデザインの本場と言われているアメリカでも、
「UXデザイナーの役割はまだ明確にはなっていない」ということなのでしょう。
まだ、模索段階なのですね。
では、模索段階である現状、UXデザイナーはどのような価値を生み出す職業であると言えるのでしょうか。
UXデザイナーとは「ユーザーが求める価値を生み出す『仕組み』を設計する人」
前述したように、UXデザイナーの行うデザインは「③目的を持って具体的に立案・設計すること」と仮定すると、
UXデザイナーは、ユーザーが求める価値を生み出す「仕組み」を設計する人なのではないでしょうか。
UXタイムスパンとUXタイムライン
どういうことかというと、時間軸でサービス全体を整理すると分かりやすいと思います。
まず、ユーザー体験を「UXタイムスパン」と「UXタイムライン」の2つの時間軸でとらえます。
「UXタイムスパン」とは、UX白書で定義されている概念で、ユーザー体験を「利用前」「利用中」「利用後」「利用時間全体」の4つの期間(スパン)で捉える考え方のことです。
「UXタイムライン」とは、btraxのCEO、ブランドン・K・ヒルさんが定義した概念で、「利用プロセスにおけるそれぞれの段階でユーザーが感じる体験全てが、UXを構成している」という考え方のことです。
この2つの時間軸の捉え方は、UXを考える上で非常にわかりやすいと思います。
そして、このふたつの概念を組み合わせてみると、さらにイメージが湧きやすくなるのではないでしょうか?
UXデザイナーの役割とは?
さて、この時間軸の中で、より良いユーザー体験を実現するために、UXデザイナーが常に念頭に置いておかなくてはならないことが3つあると考えています。
それは、ユーザーがサービスと触れ合う時間軸の中で、
- ユーザーは何を考えているのか
- それに対して何をさせたいのか
- そのために何が必要なのか
という3つの観点です。
先程の時間軸の概念に、各職業を当て込んでみると分かりやすいと思います。
こんな感じですね。
「UXデザイナー」が、「ユーザー」と「社内プロセス」の全体に渡って寄り添うように存在しているのがおわかりになると思います。
プロジェクト全体を見通しながら社内とユーザーの橋渡しをしているかたちですね。
UXデザイナーの立ち位置と必要なスキル
では、この立ち位置でUXデザイナーがパフォーマンスを発揮するためには、どのようなものが必要なのでしょうか?
それは、「ユーザーの声を引き出す専門的な能力と各職域を理解できる幅広い知見」だと私は考えています。
図にするとこんな感じになります。
ユーザーの声を引き出す深い専門知識は、「UXリサーチ手法」になります。
- エスノグラフィ
- インタビュー
- アンケート
- ユーザーテスト
- デスクトップリサーチ
- 認知的ウォークスルー
- ペルソナ作成
- 行動フローの作成
- サイト内行動の整理
これらの手法を専門知識として有していることが大切ということですね。
ユーザー調査の手法とその使い分け方法については、
下記参考記事をご参照ください。
■参考記事
どう使い分けるべき?UXデザインのためのユーザー調査手法
まとめ
UXデザイナーとは、ユーザーが求める価値を生み出す「仕組み」を設計する人といえます。
「内」と「外」、「自社」と「ユーザー」の両面に対して対等に真摯に向き合いつづけながら、これらの知識を深めることがUXデザイナーにとって、もっとも大切なことです。
UXデザイナーの役割が理解できたとしても、UXと聞くと、次のように思う方は少なくないかもしれません。
・現状のビジネスで安定した収益を確保できているのでUXの必要性を感じない
・ユーザーの声を聞くという話は分かるが、具体的にどうすればいいかは分からない
下記資料では、「ビジネスにUXが重要な理由」について、事例を交えて分かりやすく解説しています。ぜひUXの理解を深めることにお役立てください。
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動
コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。
X:@junmaruuuuu
note:junmaru228