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オンラインUXデザインフェス『UX MILK All Night』にニジボックス丸山潤が登壇!-「大規模組織でのUXデザイン導入メソッド」-

更新日 2022.6.1
オンラインUXデザインフェス『UX MILK All Night』にニジボックス丸山潤が登壇!-「大規模組織でのUXデザイン導入メソッド」-

UXデザインに関係するナレッジを共有すべく、メディア運営やイベントを開催しているUX MILK「UXデザインへの解像度を上げたい!」という目的で、ビッグフェスティバルの「UX MILK Fest」も主催しています。

2020年は昨今の状況を踏まえ、オンラインイベントとなりました。
終電を気にする必要がないこと、お祭り気分を盛り上げたい、ということから今回はオールナイト開催。9月12日から13日にかけて『UX MILK All Night』と題してYouTube Live配信が行われました。

去年に引き続き、今年もニジボックスはコンテンツ提供に名乗りを上げ、執行役員 丸山潤が登壇しました。テーマは「大規模組織でのUXデザイン導入メソッド」です。リクルートでのUXデザイン組織運営、ニジボックスで大企業へのコンサルティングを実施してきた経験を生かし、組織にUXデザインをインストールする方法について話しました。

『UX MILK All Night』とは?

『UX MILK All Night』イベントが行われたのは9月12日から9月13日にかけて。参加するにはチケットが必要でしたが、リアルタイム視聴のみであれば無料という太っ腹です。アーカイブ動画視聴券付きのチケットも合わせ、約2400人が参加しました。
UX MILK All Nightのオフィシャルページはこちらです。

オープニング

いよいよ、開会時刻の19時半。オープニングを担当したのは、株式会社メンバーズ UX MILK プロデューサー 三瓶 亮さんです。

三瓶さんは、去年始めたこのフェスを今年もやりたいと思っていたが、コロナ禍でリアルイベントができなくなってしまったこと。
そして、やるからにはあちこちで行われているほかのオンラインイベントとは一線を画するパンチのある企画にしたいと考えた末にオールナイトイベントを思いついたことなど、『UX MILK All Night』の背景について語りました。イベントそのものが長時間ということもあり、「見たり、見なかったり、あちこち行ったりと自由に」と述べて、参加者たちをリラックスさせていました。

オールナイトで参加者も大盛り上がり!

オンライン会場にはリアルフェスのごとく2400人近い人が参加。
3つに分けられた「AREA」では、それぞれ200人から500人ほどの参加者が視聴するという盛況ぶりでした。
Live中、開放されていたコメント欄には気づきや質問がひっきりなしに書き込まれ、その勢いは夜通し続きました。
リアルイベントと違い、参加者が多くても登壇者に声が届くのがオンラインイベントの良いところ。
お祭りにふさわしい盛り上がりを見せていました。

「大規模組織でのUXデザイン導入メソッド」

12日午後7時半に始まった『UX MILK All Night』イベント。
丸山のトークセッションは2日目10時35分から始まりました。

大規模組織にUXデザインを導入するにはどうすれば良いのでしょうか
デザイナーが大切にすべきことなど、自身の経験を踏まえた一般論以上の内容を含むトークを展開しました。

経験者として語るUXデザイン導入時の課題と対策

現在、ニジボックスの執行役員である丸山は、デザイン・フロントエンド技術者を経て、ニジボックスがリクルートから分社化した2011年にリクルートに入社。ニジボックスで新規事業開発に携わった後、リクルートのインキュベーション部門Media Technology Lab.のUI/UX開発組のGMに就任しました。同時にニジボックス内ではデザインファーム事業を立ち上げて事業部長に、2016年にはニジボックスの執行役員に就任し、UXソリューション開発に注力。現在は、リクルートテクノロジーズのエンジニアリング室も兼務しています。

大規模組織がUXデザインを導入する際に、何がハードルになるのか、それを取り除くにはどうすれば良いか、何をすれば導入しやすいか、といったことを「大規模組織でのUXデザイン導入メソッド」というテーマで話しました。

大規模組織がUXデザインを導入できない理由について考える

4つのよくある課題

大規模組織がUXデザインを導入できない理由としてしばしば挙げられるのは、次のような4つの理由であると丸山は言います。

  • そもそもUXの組織を作ってもらえない
  • UXデザインへ積極的に投資してもらえない
  • 上司のやる気の消失
  • 短期的な施策を追いかける経営層

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上記の課題が発生している場合、現場では「自分の会社や組織は古い考え方を持っている」「上司は短期の売り上げしか見ておらず、将来のことを考えていないのではなかろうか」「イベントに登壇している会社はイケてる会社でいいなぁ」という意識になっているのではないか?と問います。

しかし、丸山は「本当の理由はもっと違うところにあり、そこをクリアしていけば良いのでは?」と解説します。

導入できない3つの理由

上に挙げたような課題が生まれる理由とは一体何でしょうか。次の3つの理由が考えられます。

  1. 時代変化
  2. 組織構造
  3. 事業計画

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1. 時代変化
事業ポートフォリオは時代とともに変化します。それとともに成功体験も変化し、成功の要因も時代によって異なります。「何が成功に寄与するか」に対する考え方がばらばらなので導入が難しくなってしまう訳です。

2. 組織構造
組織構造には、縦割り、横割りというものがあります。縦割りでは組織同士がディスコミュニケーションに陥りがちであること、横割りでは事業コミットする人が少ないことや、決裁権限が“社長”で、承認までに時間がかかること、また上層部がUXに対して理解を示してくれないと難しい、という課題が生まれてしまいます。

3. 事業計画
「将来のことを考えていないのでは?」と現場から見られているかもしれませんが、実際は経営層では中長期目標を考えています。しかし、短期目標も達成しなければなりません。短期目標を効果的に達成するのがマーケティング施策なのでそちらに集中しがちなため、UX施策導入に思いが向かない、という結果になってしまうのです。

UXデザインを導入するには?

UXデザインを自組織へ導入するには、「上司を説得するだけでは難しい」と丸山は言います。
そこで、上記の3つの要因ひとつずつを理解しながら解決していく方法を提案しました。

会社の中身を理解して、経営層の観点からも共感を得られるような提案をする

UX導入を難しくしているそれぞれの理由には背景があります。
そこでそれらの理由一つ一つに紐づく会社の中身を、歴史も含めて経営層が持っているのと同じくらいの理解をするようにしましょう。
それによって、自身の提案にも経営観点での動機づけが明確になり、経営層から自分の主張への共感を持ってもらいやすいからです。

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単に「UXデザインの考えは大切なんです。必要なんです!」と主張しても、理解してもらえる確率は低いでしょう。
まず、自分から会社経営を理解することで、経営層からの共感を得てはじめて理解してもらえるようになるのです。

これだけはやってはいけない

経営層になるほど、会社全体のバランスを考えているものです。
そして、デザイン組織の重要性について知らないわけではなく、導入したいと思いつつも、どこから手を付ければ良いのかわからず、できていない実態でもあります。
ですので、デザイン組織の重要性を力説するだけ、ということはしないようにしましょう。
それでは聞き入れてもらえなくなってしまうのです。

問題を解決することで整理しよう

経営層と同じ視点で会社の中身を理解できたら、次に行うのはUXを導入する上でハードルとなっている箇所を整理することです。
そのハードルを取り去った上で交渉すれば、理解を得られるからです。

では、どのように解決していけるでしょうか。

「時代の変化による問題」を解決する

ビジョンがない、あってもそれに共感できない人が多いと、同じ方向を向くことができません。

リクルートグループには、「シェアードビジョン」という文化があります
自組織内全員でビジョンを共有し、共通認識を持つことをとても重視しています。もともと生きてきた時代も、成功体験も、文化も違うわけですから同じ方向を向いていないと、何か新しいことををしたいと声をあげたときに反対する人が出てきてしまうのは当たり前です。

そこで同じ方向を向けるように、あらかじめシェアードビジョンをしておく、というわけです。

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よくあるのが、「ビジョン」「ミッション」「バリュー」というフレームワークですが、リクルートグループではさらに、「パーソナリティー」をここに加えています。価値観、行動指針、文化を共有することで、文化の異なる人同士でも同じ方向を向けるようになります。

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取り組む際に大切なのは、「なるべく全員で行うこと」です。
その際、役職や職域ごとに目指す姿を整理しておきましょう。
また、「継続的に運用していく」ことは最重要事項です。
なぜなら、時とともに組織変更や採用などにより人が入れ替わります。新しいメンバーにもしっかりシェアできないと、シェアードビジョンできていたものが崩れてしまうからです。
できれば半期に一度、長くても1年に一度は見直す運用をしていきましょう。
一度取り組んだら終わり、というものではないのです。

「組織構造による問題」を解決する

組織内にはさまざまな人がいます。必然的に、課題解決に関する各自の持つ優先度も異なってきます。またそのことが本質的な組織の課題となってしまっています。

そこで、マッキンゼーがよく使うフレームワーク「組織の7S」を使いながら理想の組織構造について議論しましょう。

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理想の組織像は、業績を上げている同業他社を参考とします。海外の企業でも良いでしょう。
それにより、現在の自組織とのギャップが浮き彫りになるでしょう。
整理するときには、組織の7Sのうち、ソフト面の「人材・リーダーシップ」「スキル・能力」に注目しますが、ここでUXの重要性を組み合わせれば整理しやすいし、その重要性も理解してもらいやすいでしょう。
なお、理想とする企業の組織設計については調査会社に依頼しなくても、目安とする企業が採用サイトやIndeedなどで、どのような人材を募集・採用しているかを調べることで、ある程度把握できます。

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「事業計画の問題」を解決する

組織の上位レイヤーになるほど、事業計画の作成とその達成が重要な仕事となってきます。ですから、リサーチ結果と事業計画の関連性が不明瞭のままでは、上司も首を縦に振りづらくなります。その課題を解決するのに、KPIツリーを作ることが役立ちます。

なぜなら、KPIツリーで可視化することで、リサーチ結果が事業計画におけるどのKPIの改善になるのかを明確にできるからです。
また、KPIに落とし込める、ということは数値化できていることにもなります。説明する際に、数字を出せるというのは大きな強みになるでしょう。

またKPIツリーは、事業計画からブレイクダウンして作っていくようにします。そうすることで、広告、検索、メルマガ、外部サイトなど、コンバージョンにつなげるために取り組んでいる施策で、ユーザビリティテストをする際に、どの部分のKPIがコンバージョンと結びつくのかを説明できるようになります。

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重要な点がいくつかあります。

ひとつは「目標となるKPIを達成したら、これだけの金額を投資してほしい」という約束を取り付けておくことです。
このような交渉の習慣は癖としてつけておきましょう。

次に、タイミングを間違えないことも重要です。
というのも、予算決めが終わってからでは、投資してもらえないからです。
なので、遅くとも事業計画を決定する1カ月ほど前までには交渉するようにしましょう。

さらに、会社に投資予算がある場合、その優先順位を整理しておくことです。それによって、UXの優先度を説明しやすくなるからです。
しっかり説明できれば、投資してもらえるようになります。

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まとめ

まず、歴史も含めて会社の中身を理解します。

  • 時代の変化
  • 組織構造
  • 事業計画

これらの要素について理解を深め、整理がある程度進んだところでUX導入の交渉を始めましょう。完璧に終わらせてからと考えていると、何年もかかってしまうからです。

交渉して、ある程度まで導入できたら、KGI・KPIに落として事業計画に対してのインパクトを説明するようにします。
とはいえ、企業組織にはそれぞれの事情があるため、「必ずしもこれが『完璧だ』というわけではない」と丸山は言います。
それでも、これまで経験してきたことに裏打ちされたメソッドなので、大いに参考になるのではないでしょうか。

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トークセッション終了後に丸山は、コメント欄に書き込まれた質問に、時間の許す限り丁寧に回答していました。

質問は「KPIツリーはどのように作れば良いのか」というもの。

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上図を出しながら、「まず、KGI、KPIをざっくり策定し、KPI向上に寄与する重要指標を洗い出すことから始めるように」と解説。
洗い出しのステップでは「必ずみんなで話し合うように」と勧めました。

詳細なデータ分析をしたら、定量的な仮説だけでなく、ユーザーインタビューやユーザーテストを行って施策案を出し、振り返り・評価するという右側の「定常業務」のサイクルを繰り返しつつ、重要指標を再選定していきます。

丸山は、Facebook広告を例に、CAC/LTVの考え方から投資の3倍以上の効果を出すための売上をどのように設定するのか、そのような考え方でKPIを出していき、それとUI/UX部分を紐付けるという方法を説明しました。

30分という限られた時間の中でしたが、これまでの経験を踏まえた中身の濃い話を聞くことができました。

11月にニジボックス主催のウェビナーを開催します!

ニジボックスでは、「BUSINESS&CREATIVE」というウェビナーを開催しています。

11月19日に「大企業での新規事業推進を考える」というタイトルで、大企業での新規事業開発における制度設計や運用で陥りがちな課題について、リクルートで新規事業部門「Ring」の事務局長兼事業開発部長を務めている渋谷昭範さん、スタートアップ・ブレイン 代表取締役で、ニジボックスの顧問でもある堤孝志さんを迎えて知見の共有をいただき、頻出課題の傾向と対策をみなさんと一緒に考えたいと思います。
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