AARRR(アー)モデルとは?グロースハックに活用するメリットや5つの段階を詳しく解説!
AARRRモデルとは、近年注目されているグロースハックの代表的なフレームワークです。
この記事では、AARRRモデルとはどんなフレームワークで、どんなことに活用できるか、実践でどのように使っていくのかを解説します。
「AARRRモデルという言葉を初めて知った」という方にも分かりやすい内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
AARRR(アー)モデルとは?
AARRRモデルはひとことで言うと、企業が成長するためのフレームワークです。
AARRRモデルという言葉自体は耳にしたことがあるけれど、意外と読み方を知らないという方も多いかもしれません。
AARRRは「アー」と読みます。
この言葉の生みの親は、シリコンバレーの著名な投資家で起業家のデイブ・マクルーア氏。
インターネットビジネスの起業が多様化していた当時(2000年代)を大航海時代にたとえ、海賊の叫び声を模した「アー」と命名されたと言われており、「海賊のためのマーケティングツール」「海賊指標」と呼ばれることもあります。
では、AARRRモデルとはどのようなものか、そしてAARRRという言葉の成り立ちについて、詳しく見ていきましょう。
グロースハックで用いられるフレームワーク
AARRRモデルを説明する上で欠かせないのが、近年IT・Web業界で注目されているキーワードのひとつ、グロースハック(Growth Hack)です。
グロースハックとは、「プロダクトを成長させるため、継続的に検証・改善を続ける」という概念を指し、
オンラインストレージサービスDropbox(ドロップボックス)の急成長をけん引したアメリカの起業家ショーン・エリス氏が、2010年に提唱しました。
グロースハックは比較的新しい言葉ですが、この手法を用いて急成長を果たす企業がシリコンバレーを中心に続々と生まれています。
AARRRモデルは、そんなグロースハックを実践する上で代表的なフレームワークのひとつなのです。
■参考記事:グロースハックについては以下記事で詳しく解説しています。ぜひこちらの記事もご覧ください!
グロースハックとは?プロダクトの成長に欠かせない考え方と進め方を解説!代表的なフレームワークも紹介
AARRRは5つの段階の頭文字を取った用語
AARRRは、グロースハックを達成するまでの段階を次の5つに分解して、その頭文字を組み合わせたものです。
- Acquisition(アクイジション/獲得:ユーザーを獲得する)
- Activation(アクティベーション/活性化:ユーザーに利用してもらう)
- Retention(リテンション/継続:ユーザーに継続して利用してもらう)
- Referral(リファラル/紹介:ユーザーから知人に紹介してもらう)
- Revenue(レベニュー/収益:収益化する)
上記の段階に沿って実践することで、ユーザーの獲得から収益化までグロースハックによるビジネス成長を目指せるという、再現性の高いフレームワークがAARRRモデルです。
AARRRモデルの5つの段階を詳しく解説
ここからは、先ほど触れたAARRRモデルの5つの段階について詳しく見ていきましょう。
各段階で実施する手法、注目すべき主な指標もあわせて解説します。
Acquisition:ユーザーを獲得する
AARRRモデルの最初のAcquisition(アクイジション/獲得)は「ユーザーを獲得する」段階です。
まだプロダクトの存在を知られていないような状態から、多くの人にまずは存在を知ってもらいます。
そして、興味を持った人から実際に訪問してもらうまでのステージを指します。
ユーザー獲得の段階で重要なのは、自社が伝えたいプロダクトの特徴ではなく、プロダクトを利用することで得られるユーザーにとっての利点(メリット)を示すことです。
実施する手法
広告を打つ、SEO、LPOなど
注目すべき主な指標
新規訪問者数、新規登録者数、アプリのダウンロード数、ページビュー数など
■参考記事:LPOについては以下記事で詳しく解説しています。ぜひこちらの記事もご覧ください!
LPOとは?コンバージョンを最大化させるLP改善手法を解説!
Activation:ユーザーに利用してもらう
AARRRモデルの次のActivation(アクティベーション/活性化)は「ユーザーに利用してもらう」段階です。
訪問してもらったら、次は実際に利用してもらわなくてはなりません。
たとえばアプリならダウンロードするだけでなく起動してもらう、Webサイトなら訪問するだけでなく内容をぐるりと見てもらうことです。
Activationの段階でユーザーが「どれくらいプロダクトに対して好ましいと感じる経験をしているか」が、次の段階に繋がる大切な要素です。
サイトやアプリのユーザービリティ改善や、プロダクトの価値を感じてもらえるような施策(UI UXの向上)などがここで重要になってきます。
実施する手法
一部機能の無料開放、会員登録を促す特典の用意など
注目すべき主な指標
初回から一定期間内での訪問/利用数、アプリの起動数、チュートリアル突破数など
■参考記事:ユーザビリティについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください!
ユーザビリティとは?定義や分析手法、改善手法まで分かりやすく解説!
■参考記事:UIについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください!
【今さら聞けない】ユーザーインターフェース(UI)とは?UXとの関係性までやさしく解説
■参考記事:UXについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください!
ユーザーエクスペリエンス(UX)とは?〜UIとの違いから具体事例まで〜
Retention:ユーザーに継続して利用してもらう
次のRetention(リテンション/継続)は「ユーザーに継続して利用してもらう」段階です。
せっかく新規ユーザーを獲得しても、1回使って終わりだったり、忘れ去られたりしてしまってはあまり意味がありません。
獲得したユーザーを維持して、プロダクトを継続して長く利用してもらうこと、できるだけ頻繁に利用してもらうことを目指します。
実施する手法
割引キャンペーン、プッシュ通知、メルマガなど
注目すべき主な指標
一点期間を過ぎてからの訪問/利用数、再訪問/再利用の頻度、継続利用ユーザー数など
Referral:ユーザーから知人に紹介してもらう
AARRRモデルの次のステップReferral(リファラル/紹介)は「ユーザーから知人に紹介してもらう」段階です。
既存のユーザーに対して、友人や知人にサービスを紹介してもらうよう促し、新たなユーザーを獲得することを目指します。
SNSなどでのシェアもこれに含まれます。
紹介してもらうためには、ユーザーのプロダクトに対する満足度がある程度高くなくてはなりません。
その上で、紹介により得られるメリットなど、紹介の動機となる要素を提示します。
例えばオンラインストレージサービスのDropboxは、紹介したユーザーと紹介を受けたユーザーの双方にDropboxのストレージ容量をプレゼントするという手法で、急成長を遂げました。
実施する手法
紹介のインセンティブ付与、SNSシェア機能の実装・改善など
注目すべき主な指標
紹介ユーザー数、SNSでのシェア数など
Revenue:収益化する
ユーザー数を増やし、顧客満足度を高め、継続利用やシェアを増やすという下地が整ったら、AARRRモデルの最後はRevenue(レベニュー/収益)、つまり「収益化する」段階です。
Revenueの段階では、ユーザーにできるだけ多くの「収益につながる行動」を取ってもらうにはどうすれば良いかを考えます。
収益が発生した際の様々な条件やユーザーの特徴などを分析し、収益の最適化・最大化を図っていきます。
ときには、収益化の仕組みそのものを見直すケースも必要です。
多くのプロダクトは、最終的には何らかの収益を得るために作られています。
収益の形は商品の売上、有料会員登録、広告収益などプロダクトによりさまざまですので、それぞれに合った収益化を目指しましょう。
実施する手法
ユーザー数×単価を最大化させる効率的な施策、重要指標へのリソース分配の最適化など
注目すべき主な指標
購入ユーザー数、会員登録者数、購入金額、ページビュー数など
AARRRモデルを活用する3つのメリット
AARRRモデルを活用することがプロダクトの成長に繋がるとお伝えしましたが、ここからはより具体的なメリットを見ていきましょう。
1. 計画的にプロダクトの成長戦略を描ける
AARRRモデルを活用する1つ目のメリットは、プロダクトの成長戦略を計画的に描けるということです。
先に解説した5つの段階を抜け漏れなく把握・分析することで、「今、何をすべきか」「その次に何をするか」がはっきり見えてきます。
これらを基にすれば、プロダクトの計画的な成長戦略を描けるようになります。
マーケティングではどうしても「ユーザー数が伸び悩んでいるのでなんとかしたい」「プロダクトの収益化がなかなか進まない」というように、ユーザー獲得や収益化の部分だけが注目されがちです。
AARRRモデルの活用は、そこから脱する助けにもなるでしょう。
2. 段階ごとの課題が可視化され、やるべき施策が明確になる
AARRRモデル活用のメリットの2点目は、課題が可視化されてやるべき施策が明確になるという点です。
AARRRの5段階にはそれぞれ「何を目指すフェーズなのか」がはっきり示されています。
そのため、AARRRの段階ごとに分析していくと、おのずと「プロダクトに何が足りていないのか」が順番に見えてきます。
それまでばらばらに見えていた課題が、段階ごとに分かりやすく可視化されるのです。
どの段階の課題にフォーカスすれば良いかも判断しやすくなり、プロダクトの改善・発展のためにやるべき施策が明確になります。
3. データを基に根拠ある課題設定と施策考案ができる
段階ごとに課題を設定し、課題を解決するための施策を考案するという一連の流れを、データという根拠に基づいておこなえるのも、AARRRモデルを活用する大きなメリットです。
戦略の精度が上がることに加えて、担当者間での認識共有もしやすくなり、長期に渡って成すべきことを見失わずに進めることができます。
AARRRモデルにおけるデータ分析の手法2点
AARRRモデルを実践していくには、段階ごとのユーザー特性や行動のデータを集め、分析することが欠かせません。
ここでは、AARRRモデルにおける代表的なデータ分析の手法を2つ紹介します。
1. コホート分析
AARRRモデルのデータ分析手法の1つ目は「コホート分析」です。
コホート(cohort)とは、共通した属性や条件におかれた集団のことを指します。
たとえば「このキャンペーンを経由したユーザー」「このキーワードで流入してきたユーザー」のように、コホート分析ではユーザーを流入元、検索キーワード、直帰率などの条件ごとにコホートに分け、時間の経過によってそれぞれの行動にどんな変化が生じるかを数値化して把握・分析していきます。
性別や居住地、デバイス属性で分類することもあります。
コホート分析を通して「キャンペーン経由のユーザーは継続利用率が高い」「20代のユーザーは継続利用率が低い」といった傾向を分析すれば、施策・改善の方針を決めることが可能です。
2.ファネル分析
「ファネル分析」もAARRRモデルにおける代表的な分析方法です。
ファネル(funnel)とは漏斗(ろうと)のこと。液体を別の容器に移す時などに使う、逆三角形の道具です。
AARRRモデルのユーザー獲得から収益化までの流れの中では、最初の段階(ユーザー獲得)の人数が一番多く、段階が進むにつれてユーザー数が減っていきます。
人数を図式化すると、まさに漏斗のような形になります。
ファネル分析では、ユーザーが絞られていく過程を分析し、どの段階で離脱しているのか、どこに課題があるのかを見極めていくことが可能です。
AARRRモデルでプロダクト成長させるためのポイント
AARRRモデルでプロダクトを成長させるためには、AARRRモデルの特長を最大限に活かしたいものです。
それには、AARRRの5つの段階ごとに適切な「指標」を設定することがポイントとなります。
指標の精度が成功を左右しますので、事前にしっかりと調査・分析を行った上で設定しましょう。
この記事で挙げた指標の例も参考にしてみてください。
まとめ
AARRRモデルは、グロースハックを実施するための第一歩です。
「グロースハックに興味があるけど、何から手を付けたらいいのか分からない」という場合は、まずAARRRモデルを試してみてはいかがでしょうか。
AARRRモデルを活用して計画的な成長戦略を立て、プロダクトの継続的な成長を目指していきましょう。
近年は「プロダクトの価値を高める」ことの重要性が求められている時代です。
そして、プロダクトの価値を高めるには、UXが重要だとニジボックスは考えています。
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元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動
コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。
X:@junmaruuuuu
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