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第1回「BUSINESS & CREATIVE」イベント『大規模メディアにおけるクリエイティブの価値創造』を開催しました!

更新日 2022.6.1
第1回「BUSINESS & CREATIVE」イベント『大規模メディアにおけるクリエイティブの価値創造』を開催しました!

「デザイン」というキーワードから、皆さんは何を思い浮かべますか? 最近では、モノやコトといったプロダクトだけでなく、「経営にもデザインを取り入れよう」という話題が出てくるほど、デザインという概念に注目が集まっています。とはいえ、「そもそもデザインするとはどういうことなのか」に対する正しい理解が広まっていないのが現状のようです。

どうすれば、デザインの価値を本当に理解し、ビジネスに活かしていくことができるでしょうか?

知見共有イベントコミュニティー「BUSINESS & CREATIVE」では、毎回テーマを決めながら、広く深い「デザイン」の世界に造詣を深めながら、それが皆さんの身近な課題から、ビジネス課題、さらには社会課題まで、解決にどのように役立つかを一緒に考えていきたいと思います。

そもそも「デザイン」とは?

最近では、デザインという言葉が、「モノ」としての色や形など見た目の事象に対してではなく、「コト」としての、ものの考え方や進め方など、直接目に見えないことに対しても使われるようになってきていると思います。
それはこの言葉が、より本質に近い使われ方をされるようになってきたからだともいえます。デザインとは、もともと見た目のことだけでなく、ある問題を解決するための設計や表現のことも意味しているからです。

そのため、「経営にデザインを取り入れる」という言い回しは、企業経営で抱えている課題をデザインプロセスのアプローチで解決することを意味します。

今回は『大規模メディアにおけるクリエイティブの価値創造』というテーマで、制約の多い環境の中でクリエイティブがどのような価値を発揮できるのかについて、登壇者の方達が実体験で得た知見を共有頂きます。
モデレーターはニジボックスの丸山潤が務めました。

ビジネスで重要性を増しつつあるデザインマインド

丸山潤

丸山潤
株式会社ニジボックス 執行役員 
2015年〜2016年、株式会社リクルートのインキュベーション部門Media Technology Lab.(現次世代事業開発室)に参画し、UX開発組織のGMに就任。数々の新規事業に携わる。
現在執行役員を務めるニジボックスでは、UI/UX制作室の室長として海外競合調査やプロダクト開発支援を始めとした新しいUXソリューションの開発を推進している。


丸山:前職はリクルートの新規事業開発部門でUXの現場を知るコミュニティイベント「UX Sketch」を開催していました。

当時は、「UXとUIは違う」ということを強調していましたが、UXからつながるUIも大切であること、デザインという意味ではその重要性に相違ない、ということなど、「デザイン」に関してバランスの取れた情報発信をしたいと考えたことが、今回の企画につながっています。

現在は、ニジボックスの執行役員、またUI/UX部門の組織長を務めており、UX戦略について考えたりワークショップやセミナーの開催や、UXソリューションの販売をしています。

ビジネス創出やグロースの段階でデザインマインドが重視されていることや、経営にデザインを取り入れる必要があるということなどを、私自身さまざまな大企業へのお手伝いを通じて間近で見てきました。このイベントは、それらの課題に向き合うべく、情報発信や皆さんとディスカッションをするためのサロン的な場所にしたいと思っています。

大規模メディアでのデザイナーの役割

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神田智哉
株式会社ニジボックス クリエイティブ室マネジャー
多摩美術大学大学院博士前期課程修了後、 2012年に株式会社ニジボックスへ入社。
リクルートグループのメディアを中心に、受託制作で多数のWebデザイン案件に携わる。 現在はクリエイティブ室マネジャーとしてメンバーマネジメントと品質管理を担当している。


神田:デザイン組織でWebデザイナー兼マネジャーとして、最近では大規模メディアのリニューアルに関わっています。その中で、デザイナーとしての価値発揮に関して、知見を得られたので、『大規模メディアにおけるデザイナーの価値発揮』というタイトルでお話していきます。

デザイナーに協力体制が必要な理由

神田:ものづくりには、「ビジネス検討」「調査・課題設定」「構造設計」「情報設計」「スタイリング」「実装」という過程があり、UXデザインパートとUIデザインパートでは、「情報設計」の部分が重なります。要は、ここでうまく橋渡しができないと、それまで積み上げてきたものをスタイリング、つまりトンマナ策定に落とし込むことができなくなってしまうということです。

プロダクトのポジションを内側から理解する

神田:では、UIデザイナーは、それまでの流れを汲んでビジュアルに落とし込むために、まず何をすれば良いのでしょうか。それは、プロダクトのポジションを内側から理解することです。プロダクト、サービスブランド、カンパニービジョンのマインドを理解していないと、事業者の認識との齟齬が作成物に生じてしまう可能性があります。

情報設計の具現化は常にスタイリングに立ち返る

神田:具体的には、事業者と自分達デザイナーとの間で共通認識を持てるように、それらのマインドを「言語化」していきました。そして、その言語を理解し、果たすべき役割を明確化するようにしました。情報設計をする際には、常に目的に立ち返りながら具体的に言語化していきます。

プロダクトのボジションを内側から理解し、情報設計の具現化で目的に立ち返ること。この2つを明確にすることで、トンマナ策定に取りかかれるのです。

UIデザイナーはT字型でマインドを装着

神田:サイトのモックアップを作る際には、その場で思いつくことをデザイナーみんなで書き出していきます。そして、それを踏まえてデザインパーツ化していく訳ですが、クライアントの事業やメディアが掲げているマインドを明確に言語化し理解するプロセスを大切にしながら作り上げていきます。それによって、事業側の納得度が高まるからです。
デザインロジックは、表層だけではなく、事業の目指したい世界、マインドと深く結びついているからです。そうすることで、メンバー全員が目指す世界を作り上げられるのです。

ビジネスとクリエイティブを両立させる

川端:これまでリクルートの中でクライアントとユーザーを結びつける、大規模な「リボンモデルビジネス」に携わってきました。その中で、ビジネス側の目標値とデザインのバランスを取りつつ、サービスをより良い方向へ成長させるTipsについて『BUSINESS × CREATIVE 結びつけるためのプロセスとスタンス』というタイトルでお話していきます。

組織の成功循環モデルのBad CircleとGood Circle

川端彬子

川端彬子さん
株式会社リクルートテクノロジーズ プロダクトデザイン本部 サービスデザイン4部 RMPサービスデザイン1G
筑波大学大学院 図書館情報メディア研究科修了。 新卒で2016年に株式会社リクルートテクノロジーズへ入社。
リクルートグループ横断のUXデザイナーとして、リクルートグループのメディアサービスにおけるUX改善を担当。


川端:皆さんは、『組織の成功循環モデル』をご存知でしょうか。これはダニエル・キムが提唱したもので、「関係の質」「思考の質」「行動の質」「結果の質」というサークルで成り立っています。

組織がうまく回らないときには、結果の質が出なくなり、関係性が劣悪になり、関係者が受け身の思考になり、行動自体も最低限のことしか行わなくなり、結果がまた悪くなる、という悪循環に陥ってしまいます。

関係性の質を向上させる

川端:大規模メディアにありがちなのが、ステークホルダーが多すぎるという問題です。これにより調和のない状態と、関係の質の毀損が生じてしまうのです。

そこでわたしたちは、チームビルディングを兼ねてキックオフを行いました。デザイナーやエンジニアだけでなく、プロダクトオーナーや執行役員、ユニット長も含め、20~30人ほどの人が、少し動けば肩が触れるくらいの密度の高い部屋に集まりました。

その中で、ユニット長や部長からは事業全体で目指していること、メディアの役割などについて、メンバーからは数値目標の根拠や事業についての疑問点などが投げかけられました。

メンバー間では、上長が抱いている熱い思いを共有できましたし、部長陣もメンバーの人柄が理解できるようになり、お互いに「自分ごと」として考えられるようになったという効果が見られました。そしてその後も上下左右関係なく情報連携を促進することで関係性が継続的に築かれていき、それがお互いへの信頼や尊重につながっていったんです。

ビジネスとクリエイティブを両立しながら動ける仕組み作り出す

川端:次は、思考の質、行動の質、結果の質へとつなげていくわけですが、ここでそもそもの問題がありました。逼迫する納期と、無駄に多いデザイン修正です。

プロダクトオーナーは、ROI、開発、クライアント、商品価値、デザインという観点でディレクターがUXに落とし込んだものをレビューしていきます。ただ、デザイン観点のレビュースキルが十分にない状態で戻してしまうと、デザイナーへの依頼が非現実的なものとなり、観点やデザインガイドラインをデザインに落とし込む時間が足りず、結局修正依頼が多発する、という悪循環にはまってしまいます。

その課題感はプロダクトオーナーも持っていたため、解決策としてデザインディレクターがプロダクトオーナーと同等の立場に立ってレビューに参加し、デザイン観点でのレビューを受け持つようにしました。これで、プロダクトオーナーやメンバーが具体的な解決案を出せなかった、UI面での課題に対して、より良いデザインでの解決策を提示したり、デザインガイドラインを担保した質の良いフィードバックができ、発注内容も明確になり、デザイナーからの納品物への修正が減っていきました。

デザインディレクターがプロダクトオーナーと密接に働ける仕組みづくりをしたことで、KPIなどビジネス観点で気をつけることと、コンセプトに沿ったUIデザインという、ビジネスとクリエイティブのバランスが取れた「最適解」を生み出せるようになったのです。

さらに納期が逼迫する中、各々の時間を作り出すのも大切な仕組みづくりの一部となりました。というのも、関係する会議が多すぎて、時間を取られがちだったためです。

そこで、「この会議は誰のためのものなのか、誰が参加すべきか」を明確にしました。参加する必然性のない会議に出る必要がなくなったため、自分たちがやることに集中することができました。

こうしてそれぞれの専門性を活かしてたアイデア創出や議論を、深めることに集中できるようになったのです。

未来を考えて行動

川端:ここからは、特にトレンドの移り変わりの激しい業界の方に意識してほしいセクションです。施策や画面設計を考える際、全方位に対してではなく、未来に向かって考えることが必要です、という話です。

具体的には、自分たちが考えるたどり着きたい未来へ向け、「発射角」を定め、A/Bテストを行うことです。また、A/Bテストの振り返りも行いますが、「対策前進」を合言葉に、前へ進むことを念頭に置いておきます。発射角と目標とする未来があることによって、ビジネス観点をクリアしつつも、コンセプトに乗っ取ったゼクシィアプリであり続けられるのです。


関連リンク
リクルートテクノロジーズ コーポレートサイト
ビジネスとクリエイティブの両立のためのTips|こまどり|note

本日のまとめ

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イベントが終了後、「BUSINESS & CREATIVE」の企画者でもあり、モデレーターの丸山に話を聴きました。

「デザインが課題を解決する重要な部分を担っている、ということへの理解はしているが、行動に移せていない大企業の多さ」について触れた後、デザインの重要性について、次のように語ってくれました。

デザインは顧客の本音と密接に結びついています。機能が多くても、顧客は振り向いてくれません。顧客が本当に使いたい機能への配慮が不足しているからです。顧客と対話し、顧客が本当に欲しいもの使いたいものは何かという本音を引き出し、それに沿ったものを作っていく必要があるのだと思います。」

また、経営とデザインの関係性については、「課題解決という観点でのデザインプロセスを経営に取り込めれば、組織の質を向上させられ、良いものを生み出せるようになります。なぜなら、関係者の本音を引き出し、埋もれていた課題が可視化され、それを解決方向へと動かすのがデザイン力だからです」と解説しました。

また、「BUSINESS & CREATIVE」を立ち上げた想いについても語ってくれました。

「大企業によって、経営へのデザインプロセスの導入に成功しているケースと、二の足を踏んでいるケースがあると思います。まだできないのはなぜだろう? と考えたときに、経営にデザインを取り込むことで、どのように課題が解決できるか、ということにピンときていない経営層が多い組織などの場合は、課題感としてデザインの重要性について重々わかっていても、実感がわかないために行動に移せない、といった理由もあるのではないでしょうか。」

そこで、経営層もデザイン担当者もみんな一緒になって、成功事例を観て、聞いて、ディスカッションしてもらう場所をつくること。そこで実感して、リアリティーを持ってもらうことがまずは大切なのではないだろうか? という想いでこのイベントコミュニティを立ち上げました。これまで日本を牽引してきたような、大企業の組織が良くなることで、経済が回り、日本の未来は明るいものとなると考えています。企業によって、方法はさまざまなので、定期的に開催される本イベントで、たくさんの成功事例の知識を取り入れていただきたいですね。

「BUSINESS & CREATIVE」の次回のイベントは1月28日開催予定です。『クライアントワークの現場で見えてきたUXデザインの変化とアプローチ』というテーマについて考えます。今回を逃したかたにも、是非参加していただきたいと思っています。

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