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『グローバル企業のプロダクト開発最新トレンド 』

更新日 2022.9.2
『グローバル企業のプロダクト開発最新トレンド 』

ニジボックス主催のイベント「BUSINESS & CREATIVE」では、毎回ビジネスとクリエイティブに関する現場発・最前線の情報を発信しています。

今回のイベントテーマは「グローバル企業のプロダクト開発最新トレンド」
サービス開発の先端を行くグローバル企業では、プロダクトをどのように開発しているのか?
Pendo.io Japan 株式会社の大山忍さん、グーグル合同会社の矢野紘子さんのお二人をお招きし、「最新の開発事情」をお話しいただきました。

イベント当日限定配信の貴重なコンテンツを、見逃してしまった人のために記事にまとめました。
UXリサーチャーやUXデザイナーをはじめとした、プロダクト開発に携わる全ての方にぜひ読んでいただきたい内容が詰まっています!

目次

【オープニング】日本と海外のプロダクト開発の違い

よくいわれることですが、「なぜ日本からGAFAみたいな企業が生まれなかったのか?」ということを私も常日頃から考えています。
その理由のひとつは「プロダクトの開発フローに大きな違いがある」ということではないかと思っています。
そこで、「実際グローバル企業で働いている人に聞いてみよう!」と思い立ち、今回のイベントテーマを「グローバル企業のプロダクト開発最新トレンド」に決めました。

本日は、Pendo.io Japan 株式会社の大山忍さん、グーグル合同会社の矢野紘子さんをお招きしてお話をしていただくのですが、その前に私の方からPendo社について簡単に説明させていただきます。
2年前、VCを通してPendo社の紹介を受けた私は、CEOのToddと対面で話す機会を得ました。
そのときに、「なんて素晴らしいプロダクトを作っているんだろう」と衝撃を受けたのを覚えています。
彼らのプロダクトの特徴は、「プロダクト分析」と「カスタマー分析」が両方できることです。
そして、データ分析・レポーティング・セグメンテーションだけではなく、ユーザー管理・ユーザー向け通知・ユーザー向けサポートまで兼ね備えている点が、他のプロダクト分析ツールと比較した際の強みです。
私が最も衝撃を受けたのが、ユーザージャーニー機能です。
例えばアンケートを取ったとき、ユーザーに「20代後半の主婦」といったラベルを貼って、調査対象の分類をカスタマイズすることができ、その人が他のページでどんな行動を取っているのかが簡単に分かるのです。
これと同じことを、Googleアナリティクスなどを使って手動でやると大変な時間と手間がかかるわけですが、Pendo社のプロダクトを使えば「一瞬で」できることが衝撃でした。
この話を聞いて、「日本にもKARTEのような似たプロダクトがあるじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私の解釈では全く別物です。
KARTEは入り口の部分に強いのですが、Pendoはもっと幅広い範囲をカバーし、UXの分析を簡単にできるところが特徴的です。
一言でいうと、今までできなかったUXの分析ができるのがPendo社のプロダクトだと思います。
また、CEOのToddの話が聞けば聞くほど面白かったんです。
彼のDXやデータドリブン、組織に対する考え方に触れることで、日本はまだまだ海外と比べて遅れているのかな、と個人的には感じました。
このような経緯で、本日はPendo社の大山さんに登壇をお願いしました。

PLG(プロダクト・レッド・グロース)戦略のためのデータ活用/Pendo.io Japan 株式会社 カスタマーサクセス ディレクター 大山忍

丸山の紹介を受けて、最初に登壇したのはPendo.io Japan 株式会社の大山忍さん。
最先端の成長戦略「PLG(プロダクト・レッド・グロース)」を軸に、グローバル企業ならではの視点でUX、デザイン、リサーチ、そして組織とプロダクト開発について語っていただきました。

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登壇内容の概要:企業を成長させる「今後のプロダクトのあり方」を紐解く3パート

大山さんの登壇全体の概要をまとめると、以下3つのパートに分かれた内容となりました。

  1. 企業成長のキーワードとなる「PLG(プロダクト・レッド・グロース)」
  2. UXデザインの重要性と、プロダクトのリリース方法の進化
  3. プロダクト主導の組織で成長を加速させる

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1つ目のパートでは、最先端の成長戦略「PLG(プロダクト・レッド・グロース)」についての解説がなされました。
PLGとは、良質なUX(ユーザー体験)を通して「プロダクトの魅力で売上を伸ばす」SaaS企業の戦略です。
通常、売上を伸ばすキードライバーは営業ですが、PLGの場合は営業担当者を介さずに売上をいかに伸ばすかがキーになるというのが、大変興味深いお話でした。
PLGの考え方で事業を展開する企業は、企業価値が他のソフトウェア企業の2倍以上になっている事実についても紹介され、PLGが企業やビジネスの成長に大きな影響を与えることが示されました。
米国ではよくフリーミアムという言葉があり、これは無料でユーザーに体験させた後に有料版へと転換させていくもので、PLGの思想に則った戦略であるとのことでした。

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2つ目のパートは、UXを軸としたプロダクトのグランドデザインを考えることの重要性がテーマに。
ユーザーがプロダクトを認知して購入し、利用し続けるまでの「全てのタッチポイント」をいかにデザインするかが、大山さんの所属するPendo社のみならず海外の企業では重要視されているとのことでした。

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また、UXの重要性が高まってきたことで、プロダクトのリリース方法も従来とは変わっていていると大山さんは語ります。
一昔前のいわゆる「バージョン管理」(上図の左側)から、アジャイルな開発に基づく「ベータ版→ユーザーフィードバック→一般公開」(上図の右側)という流れに変化しているとのこと。
リリース方法がこのように変わったことで、よりユーザーのニーズに合ったプロダクトを作ることができるのです。

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最後のパートは、プロダクトを中心に据えた組織の連携と、商品・サービスという枠を超えたプロダクトの可能性について語っていただきました。
最初のパートで解説があったPLGの考え方を実現するために、大山さんは組織もプロダクトを中心としたものへと再編成する必要性があると言及します。
すなわち、「プロダクト上でのユーザー体験を組織内で共通言語化し、各部署が連携する組織」によって成長を目指す時代が来ているということです。
そして、このような組織が作るプロダクトは、プロダクトそのものがマーケティングの働きをしてくれます。
その具体例としてFacebookやドロップボックスの事例を交えつつ、プロダクトの新しい可能性について詳しく解説していただきました。

重要ポイント1:PLGの考え方で一気に成長したZoom

ここからは、各パートの中で多数紹介された「海外企業の事例」の中から、特に学びになると感じたポイントを解説します。

パート1では、PLGの例として、コロナ禍において急成長を遂げたZoomの事例を紹介していただきました。
Zoomは、ビジネスのミーティングが平均45分というデータを導き出し、無料バージョンの利用可能時間を5分短い40分に設定しています。
オンラインミーティングツールとしての価値を無料で体験してもらいながら、「もう少し長い時間使えないとミーティングが終わらない」という不便さを残すことで有料ユーザーを伸ばしてきたとのことです。
このように、「フリーミアム×良質なUX×ちょっと不便」という組み合わせをプロダクト上で設計することは、私たちの開発においても参考になる考え方なのではないでしょうか。

重要ポイント2:“d”esignではなく“D”esign。UXの重要性を身近な例から

パート2では「“d”esignではなく“D”esign」という言葉が印象的でした。
小文字のdesignは見た目のデザインで、大文字のDesignはユーザーが利用することを目的としたデザイン、すなわちUXの重要性を含んでいます。
大山さんいわく、GAFAやNetflixに代表されるような、一つの時代を創り上げた企業は、大文字のDesignを重要視し、今までの概念を覆す顧客体験を提供してきたからこそ急成長を遂げたそうです。

ここで、大山さんは私たちもよく知っている「ドリンクバー」を例に、UXの重要性を教えてくれました。

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上写真は、よく見かけるタイプのドリンクバーです。

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これが、多くの消費者が日常で経験している、“ドリンクをセルフで注ぐ体験”です。

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一方こちらは、UXが考慮されていない製品。(注:米国の家庭用大型冷蔵庫には、氷と水を注げる機能がついている)

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製品デザインは美しいですが、ユーザーの日常の体験などを考慮せず設計しているため、期待通りにドリンクを注ぐことができず、ユーザー体験を損なってしまいます。

この例は、大山さんが所属するPendo社のDesign&Researchチーム責任者の方が、社内でUXの重要性を説明したときに紹介されたそうです。
Pendo社のような海外企業は、いかに常日頃からUXについて考えているかを示すエピソードだったと感じました。

重要ポイント3:Facebookとドロップボックスの「AHA MOMENT」

パート3でも、私たちがよく知っている海外企業の事例が出てきました。

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上図は、Facebookが初期段階の利用者に達成させたい重要指標です。
継続利用者と実行アクションの相関関係を分析したところ「最初の10日間で7人の友達を作る」ことが重要だと分かったので、新規ユーザーにはフレンド登録を実行させるようなガイドをプログラムしています。
ドロップボックスでは、1つのデバイスで1つのファイルを保存するという実行ができたユーザーは、有料版利用ユーザーにつながりやすい傾向にあるそうです。
そのため、初期段階でファイルを保存する行動へと導くガイドを設計しています。
これらのように、ユーザーが最初に製品の価値に気付く重要な瞬間をアメリカでは「AHA MOMENT」と呼ぶそうです。
プロダクトの満足度を高めるには、新規利用時の早い段階での価値のある体験が非常に重要なので、開発の際はこの「AHA MOMENT」をいかに設計できるかがカギとなるのではないでしょうか。

まとめ:さまざまな役割を担っているプロダクト

登壇の最後に、大山さんは改めて、プロダクトにはさまざまな役割があると強調されました。
営業、カスタマーサクセス、サポート、マーケティングなどの役割をプロダクトに果たしてもらうためにも、ユーザーの声に耳を傾けて、素晴らしいUXを提供してほしいと視聴者に語りかけていました。
「組織を大きく変える」ことをいきなり進めるのは難しいかもしれませんが、今回の登壇内容のさまざまな事例や海外企業の考え方を参考にして、小さな成功体験を積み上げながら、徐々に社内にUXを啓蒙していくと、広がりに期待できるのではないでしょうか。

ユーザー中心の戦略とデザイン 〜製品開発でのUXリサーチの役割〜/グーグル合同会社 Search UXチーム シニアユーザーエクスペリエンスリサーチャー 矢野 紘子

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次に登壇いただいたのは、グーグル合同会社のシニアUXリサーチャーの矢野紘子さんです。
アメリカの複数の大手IT企業でUXリサーチや製品開発の仕事をしてきた経験をもとに、「アメリカ大手IT企業の開発現場で行われるユーザーエクスペリエンスリサーチ(UXリサーチ)がどのようなものか」について語っていただきました。

講演のテーマ:UXリサーチとはなにかを理解する

40分という限られた講演時間でUXリサーチとは何かを「ざっくり」理解してもらうために、矢野さんは以下の4点について話されました。

  1. そもそも、UXリサーチとは何か?
  2. なぜUXリサーチをするのか?
  3. 具体的に、どのタイミングでUXリサーチをするのか?
  4. UXリサーチャーにはどんな知識や経験を持った人が多いのか?

1では、UXリサーチを「ユーザー体験(ニーズ、行動、動機など)を科学的・体系的手法を通して理解する調査」と定義し、ユーザーを中心に製品を開発することの重要性について説明されました。

2では、UXリサーチは、製品を「成功」に導くために行うと説明されました。「成功」の定義は製品の目的によって少し変わるとのことですが、例えば(ユーザーのニーズや抱える問題をきちんと理解し、それを解決する製品を作ることで)ユーザーが使う価値を感じる製品を提供し、ユーザーの生活を向上させることです。そうすると、ユーザーが積極的に製品を求め、使い続けてくれるので、結果的に売り上げや評判が上がると説明されました。特に開発の初期にUXリサーチを行うことで、より早く「成功」にたどり着くとおっしゃっていました。

3では、製品開発の各工程でどのようなリサーチをすることが多いかが紹介されました。製品開発の工程は、UXリサーチを取り入れた製品開発の現場でよく見られる 「発見&理解→定義→アイデア形成→プロトタイプ→制作開始→磨き上げ」(この後にローンチ)の6つに分けて説明されました。

そして最後に、UXリサーチャーに求められる知識や経験について紹介され、今後UXリサーチャーを目指す人にとって参考となる情報をいただきました。

このように、さまざまな視点から「UXリサーチとはどういったものか」を見ていくことで、大変分かりやすい内容となりました。

ここからは、各パートの中で特に重要だと感じたポイントをピックアップしていきます。

重要ポイント1:UXリサーチが担当するのは“戦略とデザイン”

パート1の「UXリサーチとは何か」のお話での重要ポイントは、「UXリサーチがカバーするのは“戦略とデザイン”」です。

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矢野さんの解説によると、UXリサーチによって得られたデータは、製品のデザインだけではなく、製品の方向性や価値を決定する“戦略”作りにも有用であるとのこと。
通常、製品の戦略(どのユーザーのどんな問題を解決するか)は開発の最初に策定するそうです。戦略を明確にした後、どのようなデザインにしたらユーザーが製品の価値を素早く正確に理解できるか、より製品の価値を高めることができるかを考えます。
製品がユーザーの問題やニーズを解決していない場合(例えば、製品の価値に対するニーズがそもそもなかったり、重要なニーズの一部分しか満たしていない場合)、どんなにデザインが優れていても多くのユーザーは製品を使ったり使い続けたりしないとのこと。
戦略は製品の成功を決定づけるので、UXリサーチをしっかり行っている組織では、UXリサーチのデータをもとに戦略を作ると矢野さんは語ります。ユーザーニーズや、ユーザーが抱えている問題を科学的・体系的にリサーチすることで、製品を使い続ける価値を、ユーザーが容易に見出す結果をもたらす戦略が生まれるのです。

重要ポイント2:UXリサーチはベストな判断をサポートする

パート2における重要ポイントは、UXリサーチの本質的な価値が垣間見えた「UXリサーチはベストな判断をサポート」というキーワードです。
製品開発をする中で、私たちは数多くの選択を迫られることとなります。どのユーザーをターゲットとするか、そのユーザーのどんな問題を解決するかなど、数多くの選択を重ねる作業の連続です。そしてどの選択にもトレードオフがあります。「この選択をしたことで、当初解決しようと思っていたユーザーの問題は解決したけれど、より大きな問題が発生してしまった」などという状況に陥らないために、各選択で得られるものと失うものを明確にした上で、どの判断が自分たちにとってベストなのかを考えなければいけません。
しかしながら各選択で得られるものと失うものを事前に見通すのは難しい。そこでそれらを把握した上でのベストな選択ができるよう、チームをサポートするのがUXリサーチです。
矢野さんによると、UXリサーチャーはユーザーの代弁者として、ユーザー中心の製品づくりのための判断を手助けし、チームを成功に導くとのことでした。作り手の都合や的外れなユーザー像をもとに製品を作り、実際のユーザーのニーズとズレた製品になってしまうことを防ぐために、UXリサーチが重要なのです。
また、UXリサーチを基に方向性を決めることは、開発の全ての段階で行われているとのことです。特に初期段階でリサーチを行い、ユーザーを理解することは重要です。初期段階のリサーチが大きな失敗を防ぎ、早く成功にたどり着くと知っておく必要があります。なぜなら、製品を作り終えた段階で「戦略が良くなかった(ユーザーが使う価値を感じない)」となると、大幅な作り直しが発生してしまう上、最悪のケースでは失敗からリカバリー出来ないこともあるからです。

重要ポイント3:知りたいことに応じて適切なUXリサーチ手法を選ぶ

パート3における重要ポイントは、UXリサーチがどのように行われるかを知ると同時に、製品開発の工程ごとに必要・収集可能なデータを理解し、適切なUXリサーチ手法を選ぶということです。
インタビュー、アンケート、日記調査、縦断研究、ヒューリスティック評価、ユーザビリティ調査、RITEメソッドなど、UXリサーチの手法にはさまざまなものがあります。矢野さんは、知りたいこと(測定しようとしているデータ)に応じて最適な手法を選択することの重要性を強調されていました。それぞれのリサーチ手法には強みと弱みがあり、(全種類のデータを適切に収集することができる)オールマイティな手法はないからだとか。ちなみに扱うデータには定性データ、定量データ、製品のビッグデータなどの様々なものがあるとのことです。また、この工程だからこのリサーチ手法を使えばいいという訳ではなく、あくまでどのようなデータを集めるかに応じて最適な手法を選ぶことが重要だそうです。

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<図1>矢野さんが紹介した製品開発工程とUXリサーチ活動の一例

次に、矢野さんがUXリサーチャーとして製品チームによくする質問を2つご紹介いただきました。

質問1:「この製品・デザインはユーザーのどんな問題を解決しようとしているのか?」
質問2:「ユーザーについて知りたいことは何か?どうして知りたいのか?知ってどうするのか?」

どちらの質問も、ユーザー中心の製品開発をするために考えなければならないことです。UXリサーチを効果的に行うために、必要なデータの優先順位や、いつまでに必要かなどのタイムラインを、チーム全体がしっかり把握することの重要性を説明されました。

重要ポイント4:UXリサーチャーは「人研究の専門家」

パート4における重要ポイントは、UXリサーチャーのバックグラウンドに関してです。
矢野さんいわく、「UXリサーチは人研究の専門家が集まったチーム」とのこと。
例えば心理学、HCI、ヒューマンファクターズ、社会学、人類学といった「人の思考、認知、行動を測定・分析する学問」を修めた人や、コンピューターサイエンスや統計学などを理解し、大規模なデータを統計学に基づいて分析する能力に長けた人がUXリサーチャーには多いそうです。
必要となる知識・経験としては、人を研究するという意味で「人間の思考や身体のしくみ」「環境・社会・文化・言語・習慣などの人への影響」が挙がりました。そして、UXリサーチャーはデータの使い方を熟知し、製品の成功に責任を負う職種であることから、科学的・客観的視点やビジネスを前進させる力やコミュニケーション力も必要と解説されました。

このように高い専門性が求められるのを知っておくことは、これからUXリサーチャーを目指す人にとって重要なことなのではないでしょうか。

まとめ:徹底した「ユーザー中心」が製品を成功に導く

最後に、矢野さんが講演の中で言及された「ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる」という言葉をご紹介します。
この言葉は「Googleが掲げる10の事実(※)」から抜粋されたものです。矢野さん個人の解釈だと「ユーザーに焦点を絞れば」の意味は、例えばユーザーのニーズや問題を理解・解決したり、ユーザーデータをもとに決定したりすること。「他のものはみな後からついてくる」は、例えば製品によってユーザーの生活が向上し、ユーザーが積極的に製品を求め、使い続けてくれることで、結果として売り上げや評判が上がることと説明されました。この言葉は「Googleが掲げる10の事実(※)」の最初に書かれており、Googleがいかにユーザーを重要視しているかを示していると言えるでしょう。
※参考サイト:「Google が掲げる 10 の事実」

自分ならこう(あるいは自分の想像だとこう)で製品開発を進めるのではなく、ターゲットとするユーザーが実際にどのように考え、どのように行動するかを理解すること。これが、矢野さんのお話全てに通底する考え方であり、製品成功のために必要なことだと感じました。

登壇者によるQ&A

イベントの最後は、視聴者からいただいた質問について登壇者が回答するQ&Aのコーナーが設けられました。

「Q.顧客の行動を理解するために、『顧客の声を闇雲に聞いてしまう方』に向けてどのように説明しますか?」

大山さん「一番大事なのは、定性データだけではなく定量データと組み合わせて見ていくことです。また、Toddに聞いて面白いと思ったのが、ユーザーの行動データを見て想定していたものと違う行動をしているユーザーを見付けて、なぜそんな行動をしたのかを聞きに行くことで『声を吸い上げる』という手法です。」

矢野さん「顧客の声を聞くことも、行動を理解することもどちらも大事です。顧客の製品内の行動は製品データから見えるのですが、『なぜそんな行動をしているか?』は聞かないと分からないからです。声を闇雲に聞いてしまう方に対しては、リサーチを始める前にリサーチの目的を明確にして共通認識を持ってもらうといいかもしれません。」

「Q.データの質を高めるために気を付けていることは?」

大山さん「そもそもそのデータはなんのために使うのか、どんな課題があって、それを解決するためにどんなデータを取るのかを明らかにすることです。目的のないデータからは、良いアウトプットは生まれません。」

矢野さん「リサーチ手法の選び方、リサーチの設計、データの分析方法をきちんと精査することです。」

「Q.UXリサーチャーを目指す場合、メソッドの引き出しをどのように身に付けていけばよいでしょうか?」

矢野さん「リサーチ手法が学べる学校・セミナーに通ったり本を読んだりした上で、開発現場で実際にUXリサーチを行ったことのある経験者から学ぶ方が多いです。教科書だけ読んでいても経験は得られないので、とりあえず自分で疑似的にでもやってみるのもいいと思います。」

「Q.AHA MOMENTの導き方の例を教えてください」

大山さん「定量データと定性データの組み合わせだと思います。もうひとつは、行動の裏の『なぜ?』をユーザーに聞いて理解することです。」

【お知らせ】BUSINESS & CREATEVE online 次回9/29開催!

開催テーマは『デザインの力が組織とビジネスを最大化する プロダクトの価値を向上させるデザイン組織とは?』です。
2018年に経済産業省・特許庁から発表された「『デザイン経営』宣言」以降、日本企業がグローバルに競争力を発揮するため、デザイン思考のアプローチでビジネスに臨むことが重視されています。昨今ではデザイン経営の根幹である「デザイン組織」の構築について、様々な領域で事例やノウハウが盛んに情報交換されるようになってきました。
今回は、実際にデザイン組織を推進するリクルートグループのみなさんに、これまでの経験から得た知見をご共有いただきます。プロダクト開発において、これからの「デザイン組織」はどうあるべきか? 「人材」「組織」「グローバル比較」の観点から、みなさんと考えたいと思います。ご興味のある方はぜひご参加ください。
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