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NPS(ネットプロモータースコア)とは?顧客ロイヤリティを測る重要な指標を詳しく解説!

更新日 2022.8.24
NPS(ネットプロモータースコア)とは?顧客ロイヤリティを測る重要な指標を詳しく解説!

NPS(ネットプロモータースコア)とは、顧客が特定の商品・サービスや企業・ブランドに対して、どの程度愛着を持ち信頼しているかを表す、ロイヤリティを測る指標です。

この記事では、NPSに関する詳しい説明、調査の種類や計算方法、ビジネスへの活用の仕方まで分かりやすく解説します。

NPS(ネットプロモータースコア)とは?

NPS(ネットプロモータースコア)とは、企業や商品・サービス、ブランドに対する愛着度や信頼度を示す指標です。

みなさんも、「この会社の商品Aが好きで、いつも使っている」「このシリーズのゲームは外れがないから、新作が出たら必ず買う」といったようなことがあると思います。
このように「何度も使いたくなるほど愛着がある」「外れがないと思えるほど信頼している」度合いを数値化したものが、NPSです。

NPSは「顧客ロイヤリティ」を測る指標

「顧客ロイヤリティ」とは、顧客の愛着度、信頼度を指す言葉です。
つまり、NPSは、一言で説明すると「顧客ロイヤリティを測る指標」と言えます

NPSは、2003年にアメリカのコンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーのフレッド・ライクヘルドによって提唱されました。
そして、NPS提唱後にアメリカのさまざまな有名企業が事業の収益性と顧客ロイヤリティの相関を証明し、欧米を中心に急速に広まりました、

NPSの誕生以降、ビジネスの成長の上で顧客ロイヤリティ(=顧客がどれくらい愛着し、信頼しているか)がいかに重要であるかが注目されるようになったのです。

NPSと「顧客満足度」との違い

NPSとよく比較される指標に「顧客満足度」があります。
顧客満足度は、その名の通り顧客が商品などにどの程度満足しているかの度合いです。

NPSと顧客満足度の一番の違いは収益との相関性です。
NPSは収益との相関性が強く、顧客満足度は弱いと言われています。

これは、「満足」は必ずしも将来の購入意欲にはつながらない、ということです。
例えば、お菓子を食べた多くの人が「まあ満足できるくらいには美味しい」と感じれば、そのお菓子への顧客満足度は高くなります。
しかし、お菓子を「また買いたい」「毎日のように食べたい」と思うかは、また別の話です。
一言で「満足」と言っても、その定義は曖昧で、また幅広いものなのです。

一方、NPSが高ければ、そのお菓子を「毎日食べたい」と思うほど愛着・信頼があることを表し、購入の動機付けとなり、収益につながると言えます。

NPSで分かるのは「心の満足」

先ほど述べたように、満足は幅広い意味を持つ感情です。
そこで、ここでは「頭の満足」と「心の満足」の2つに分けて考えてみましょう。
NPS_頭の満足と心の満足

頭の満足とは、合理的な判断のもと満たされている状態です。
他より安い、使い勝手が良い、近くで買えて便利といった、メリットとして感じられる満足を指します。

一方、心の満足は、感情的に満たされている状態です。
今までで一番美味しい、毎日使いたいと思えるといった、心からの愛着や信頼が含まれます。

NPSは心からの愛着や信頼が含まれる「心の満足」を測ることができる、とも言えるのです。

NPSが高いとLTVも高くなる

心の満足を測り、収益と強い相関を持つNPSは、LTVにも大きな影響を与えます

LTVとは「ライフタイムバリュー」の略で、一人の顧客が生涯に渡って特定の企業やブランドに対してもたらす利益の総額のことです。
1:5の法則」と呼ばれるように、新規の顧客を獲得するコストは、既存の顧客を維持するコストの5倍かかると言われることから、LTVは効率の良い経営を行う上での指標として用いられます。

経営の重要指標であるLTVにもつながることから、NPSを測ることがいかに重要か、が分かると思います。

2種類のNPS調査

NPS調査は、「どの範囲で顧客のロイヤリティを測るのか」によって大きく下記の2種類に分けられます。

  1. 商品やブランド全体への評価を測るリレーションシップ調査
  2. 利用直後の体験を把握するトランザクショナル調査

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

1. リレーションシップ調査

リレーションシップ調査では、商品・サービスや企業のブランドなど、比較的大きなくくりに焦点を当てて、その顧客ロイヤリティを把握します

一般的には、直近半年から1年での利用体験や商品・ブランドに対する評価を調査します。
そのため、リレーションシップ調査では、評価の時系列での変化や、商品・ブランドと顧客の接点にどのようなステップがあるかを把握できるのが特徴です。

次の章で詳しく解説しますが、NPSを調査する際の質問項目は「あなたはこの商品をどのくらい友人・知人におすすめしたいですか?」という内容にするのが一般的です。
リレーションシップ調査では、上記に加えて商品を構成する要素(例えばお菓子なら味、パッケージ、ブランドイメージなど)についての質問や、改善してほしいことを聞きます。

2. トランザクショナル調査

トランザクショナル調査では、顧客が商品・サービスを利用した直後にどう感じているかを調査します

トランザクショナルは「商取引」を意味します。
その名の通り、トランザクショナル調査は、店舗やWebサイトといった「購入・利用の接点」における利用体験を把握し、より具体的な顧客の声を拾えるのが特徴です。
顧客との接点ごとに課題を把握し、素早く改善のための施策を打つことができるようになります。

この調査での質問は、友人・知人への推奨度を尋ねる項目を入れるのはリレーションシップ調査と同様ですが、「購入・利用の接点」に関する内容も入れておきます。
例えば接点が店舗であれば、スタッフの接客対応や説明の分かりやすさを尋ねる質問項目を用意します。

NPS計算のための質問項目と、計算方法

それでは、ここからはNPSを具体的にどう計算すればよいかを解説していきましょう。

最初に「あなたはこの商品(サービス/ブランド/企業など)を、友人や知人にどのくらいおすすめしたいですか?」という質問に、0~10の11段階で回答してもらいます
このアンケートを取る上で必要とされている人数は、統計上ある程度の精度を担保するには400人以上、より誤差を少なくしたい場合は2000人以上です。

回答が集まったら、次にその数字に応じて以下の3つに分類します。

  • 【9~10と回答】推奨者:リピート率が高く、周りの人にもおすすめしてくれる人
  • 【7~8と回答】中立者:周りにすすめることも、悪く言うこともしない人
  • 【0~6と回答】批判者:ネガティブな口コミを広げる人

あとは、以下の計算式で出したものがNPSです。
推奨者の割合-批判者の割合=NPS
NPS_計算方法

例えば1000人にアンケートを取り、200人が推奨者、400人が批判者と結果が出たら、
NPS=20(推奨者割合)-40(批判者割合)=-20
となります。
この計算式で算出したNPSの数値が高いほど、顧客ロイヤリティが高いと判断できます

NPSは最も低くて-100、最も高ければ100となりますが、基本的にはマイナスの値になることが多いです。
また、調査対象とする商品やブランドの業界によって平均値に差が出るため、「これくらいの値を出せば良い」と一概には言えません。

同じ業界の競合と比較し、それぞれNPSの目標値を定める必要があります

NPSをビジネスに活用する3つの代表例

実際にNPSのためのアンケートを取り、現状の数値を計算して、これをどのように活かせばよいのでしょうか?
活用の仕方はさまざまですが、代表例を3つ紹介していきます。

1. 将来的な収益拡大の可能性を判断する

NPSの活用方法の1つ目は、その商品やブランドの「将来性」を判断するのに活用することです。

NPSが高ければ高いほど、今後のリピート率が高くなります。
また、知人におすすめしてくれることで新規顧客増加にも期待が持てる推奨者が多くなるので、商品の売上や収益の向上が見込まれます。

そのためNPSを、調査対象の商品やブランドが将来的に収益を拡大できるかのバロメーターとするのです。

2. 業界内での自社のポジションを確認する

次のNPSの活用方法は、同業界におけるポジション把握です。

顧客満足度と異なり、NPSは測定方法が共通なので、競合のNPSが分かっていれば正しい比較が可能です。
競合や業界平均と比較してどうかを見ることで、顧客ロイヤリティの観点で自社が今どんな立ち位置なのかを知ることができます。

NPSの業界別ランキングや各社データを公開(有料のデータもあり)している会社があるので、競合や業界について調べてみて、該当するデータがあれば上手く活用しましょう。

3. 改善のヒントを得る

3つ目のNPSの活用方法は、商品やサービスの改善のヒントを得ることです。

NPSのアンケートを実施した人に対して、さらなる質問をすることで商品やサービス、ブランドの課題が発見できることもあります。
特に批判者から「どこにネガティブなイメージを持っているのか?」「なぜそう思うのか?」といった情報を得られれば、それが改善のヒントとすることが可能です。

手法としては、最初のアンケート(他人への推奨度を尋ねる質問)に低い点数(0~6点)をつけた方を対象として、ユーザーインタビューをして具体的な理由などを深掘りするのが良いでしょう。


■参考記事:ユーザーインタビューについては以下記事で詳しく解説しています。ぜひこちらの記事もご覧ください!
【保存版】ユーザーインタビューとは?実施する目的やコツ、設計方法まで分かりやすく解説

NPSにおける調査・分析・活用の5つの注意点

ビジネスの成長における重要な指標となり、さまざまなことに活用できるNPSを実際に導入してみようと思った方も多いかもしれません。
ここで、その際に注意したいポイントをまとめたので、導入前に確認しておきましょう。

1. 調査対象のユーザー属性を限定する

NPS調査の際に注意したいポイントは、NPSを用いる目的に応じてアンケートを取る対象の属性を限定することです。

例えば現在の主要ターゲット層からの評価を把握し、よりロイヤリティを高める施策のヒントを得ることを目的とするならば、ターゲット層に調査対象を限定すべきです。
逆に新しい層へのリーチ拡大を目指すなら、どのような属性の顧客にアンケートを取るか仮説を立てた上で臨むようにしましょう。

2. 「回答しなかった人」がいることを考慮する

アンケートを求めた人全てが回答してくれるとは限りません。
場合によっては、アンケートに回答しなかった人の割合の方が高いこともあり、いわゆるサイレントマジョリティーの声なき声を拾えずに正しい分析ができない可能性もあります。

NPSの調査の際は、回答内容だけではなく「回答者/非回答者」の割合も見るようにしましょう

回答者は能動的に行動していることから、そもそも商品に対してポジティブなイメージを持っている可能性が高いです。
もし非回答者が多い場合は、回答者の意見が強く反映された、偏った結果になっているかもしれません

可能であれば、多くの人が回答してくれるように、インセンティブを用意するなどアンケートの取り方を工夫すると良いでしょう。

3. 日本人の特性を考慮する

日本人のアンケートに対する回答行動の特性として、「真ん中に寄る傾向」があります
みなさんの中にも、例えば5段階のアンケートでは2~4の中から選ぶことが多く、よっぽどのことが無ければ1と5を選ばない、という人も多いのではないでしょうか。

NPSのアンケートは0~10の11段階ですので、真ん中の5~6を選ぶと「批判者」にカテゴライズされます。
これは、日本におけるNPSの数値はマイナスが多くなる一因とも言われています。

特にグローバルに展開している商品・サービスやブランドであれば、日本人の特性を考慮し、他の国で調査したNPSとの比較はあまり意味が無い可能性が高いことを理解しておきましょう。

4. 他社と比較する際は同じ業界内で

先にも少し触れましたが、NPSは業界によって平均値が異なることが多いです。

大きな傾向として、日常的に触れる機会が多く、かつ単価が低い商品・サービスはNPSが高く、逆に触れる機会が少なく単価が高いものはNPSが低くなります。
前者はネットスーパーや動画配信サービスなど、後者は証券や生命保険などが挙げられます。

NPSはそもそも相対比較が大前提ですが、さらに同じ業界内での比較をしないと意味を成さないことを理解しておきましょう。

5. NPS集計後に活用することが重要

NPSはアンケートを取って集計したら終わり、ではありません
NPSから課題を発見し、その課題を解決することがゴールです。

先の章「NPSをビジネスにどう活用するか」を参考に、集計後の行動まで見据えてNPSを導入するようにしましょう。

NPS以外の顧客体験を測定する3つの指標

NPSは顧客ロイヤリティを測る上で有効な指標ですが、それだけで顧客の全てが理解できるわけではありません。
例えば、「好きであるがゆえに、他の人には教えたくない」という人が多ければ、NPSが正しく機能しないケースもあります。

そこで最後に、NPS以外の顧客体験を測定する指標を紹介します。
これらとNPSを組み合わせることで、より多角的・俯瞰的な分析ができるようになるでしょう。

1. CSAT(カスタマーサティスファクションスコア=顧客満足度)

記事冒頭でも登場した「顧客満足度」です。
NPSのように定型の質問項目はありませんが、商品・サービスを利用して満足だったか大まかな傾向を知ることができます。

調査時の質問例

「この商品に対してどれくらい満足していますか?」
「この商品をどれくらい再購入したいと感じましたか?」

2. GCR(ゴールコンプリーションレート=目標達成率)

GCRは、商品・サービス利用を通して、顧客の目標をどの程度達成できたかを測る指標です。
この数値が低ければ、UI UXの改善が必要と言われています。

調査時の質問例

「このアプリを使ってやりたかったことがどれくらい達成されましたか?」
「このサービスを使って、策定時の売上目標の何パーセントが達成できましたか?」

3. CES(カスタマーエフォートスコア=顧客努力指標)

CESは顧客が商品・サービスをどれくらいスムーズに利用できたかを測る指標です。
この数値が低ければ、ユーザビリティの改善が必要と言われています。

調査時の質問例

「このサービスを利用したとき、どれくらいストレスを感じましたか?」
「このアプリを操作するとき、どれくらい負担を感じましたか?」

まとめ

NPSについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

「NPSについては大体理解したけど、ビジネスに活用して、サービスを改善していけるか少し不安がある」という方は、経験豊富なUXデザイナーの力を借りるのも手です。

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監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

Twitter:@junmaruuuuu
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