『UX MILK Fest 2019』にUXデザイナー中井潤が登壇しました!
2019年9月14日、デジタル業界でUXデザインに関わる人が集い、共に考え、語り合えるデザインフェスティバル
『UX MILK Fest 2019』が東京 新宿で開催され、ニジボックスのUXデザイナー中井潤が登壇しました。
本イベントは、同名の人気デザインメディア「UX MILK」主催のビックイベントです。
「UX」の解像度を上げ、UXデザインとの関わり方を考える日
というテーマを掲げ、UX(ユーザー・エクスペリエンス)について、参加者とスピーカーが一体となって、丸一日深く考えるイベントになりました。
セミナー、トークセッション、キーノート、ワークショップなど、
様々な形で参加者それぞれのナレッジが共有され、会場そこかしこで小さなイノベーションが起こっていそうな熱気でした。
そんな、学びと刺激に満ちたイベントですが、
ニジボックスからも、UI/UX制作室 マネジャー 中井潤がミニキーノートに登壇し、
UXデザイナーという職業についての考えを発表し、参加者と意見を交わすことができました。
テーマは「職域から考えるUXデザイナーという職業」。定義があいまいになりがちな「UXデザイナー」という職業についてお話ししました。
目次
曖昧になりがちなUXデザイナーという職業
UXデザイナーという職業について「なんでもできる人」「スーパープレイヤー」と考える人がいます。
一方で、なかなかそういう人を見つけるのは難しく、仮にそのように定義したとしたら、UXデザイナーを名乗れる人がかなり限られてしまいます。
また、UXデザイナーが自分の職業について明確に説明できないとなると、成長しているかどうかもよくわからなくなってしまいますよね。
そこでまず、「UXデザインとは何か?」というところから説明が始まりました。
UXデザインとは?
UXとは、ユーザーエクスペリエンスのこと。
米国の認知科学者であり、Appleのヒューマン・インターフェイス・ガイドラインの策定にも関わったドナルド・アーサー・ノーマンは
ユーザーエクスペリエンスは、エンドユーザーが会社、サービス、製品と対話するすべての側面を網羅している
と語っています。
つまり、UXデザイナーだけでなく、企業のあらゆる部署が一丸となってUX視点を持ち、サービスを運用していかなければならない、というわけです。
でも、企業全体がUXの視点を持つのであれば、専門部署のUXデザイナーは何をすればいいのでしょうか?
ここで注目していただきたいのが「デザイン」という言葉。その中には「目的を持って具体的に立案・設計すること」という意味が含まれています。
なので、UXデザイナーは、ユーザーが求める価値を生み出す「仕組み」を設計するという役割があるということです。
価値を生み出す仕組みはどのように設計できるのか
では、ユーザーが求める価値を生み出す仕組みはどのように設計できるでしょうか。
それを理解するために、サービス全体を時間軸で整理してみましょう。
ユーザー体験には「UXタイムスパン」と「UXタイムライン」という2つの時間軸があると考えます。
UXタイムスパン
UXタイムスパンでは、UXを「利用前」「利用中」「利用後」「利用時間全体」という4つの期間で捉えます。
これは、UX白書で提唱されている考え方です。
どういうことかというと、使い始める前に「どういう体験ができるだろうか?」という予期から始まり、使っている最中ももちろんUXに含まれますし、
使った後に「このサービス、良かったなぁ」と思い返すのもUXですし、それら全てを含めてUXであるといえるのではないだろうか? ということです。
UXタイムライン
UXタイムラインは、btraxという会社が提唱している考え方で、利用プロセスにおけるそれぞれの段階でユーザーが感じる体験全てがUXを構成している、というものです。
知ってもらって(Know)、買ってもらい(Trial & Buy)、使ってもらって(Use)、その後のサポート(Support)もUXを構成しています。
2つの時間軸を組み合わせる
UXタイムスパンとUXタイムラインを組み合わせてみると、
予期的UXがマーケティングやチャネル、つまり知ってもらって買ってもらうまでの活動を、
一時的UXがプロダクトの部分、エピソード的UXがカスタマーサービスに重なる、ということがわかります。
これは、前述した「企業のあらゆる部署がUXの視点を持ち、一丸となってサービスを運用してゆくこと」と合致します。
なぜなら、マーケター、セールス、プロダクト開発、サポートなど、さまざまな部署がUXと関係しているからです。
一連の流れを設計するUXデザイナー
それぞれの部署が優れたUXを提供すべく、一丸となって協働しますが、その流れの仕組みを設計するのがUXデザイナーの仕事である、とニジボックスでは考えます。
先程の時間軸の概念に、各職業を当てはめたものを見ていただくと理解しやすいかと思います。
このように、社内にはサービスを作るプロダクトマネジャーやディレクター、デザイナーなどがいて、発売前にはマーケターやセールスが、発売後はカスタマーサポートの部署が活躍します。
プロジェクト全体を見通しながら社内とユーザーをうまく橋渡ししながら、理想のユーザー体験を設計するのがUXデザイナーの仕事、というわけです。
2つの共感が求められるUXデザイナー
会社とユーザーの橋渡しをする、ということはどちらのことも考える必要があります。つまり、ユーザーと事業会社の2つに共感する、ということです。
まず、ユーザーに共感して、その想いを受け取ります。ついで、その想いを事業会社に届け、共感させる、というわけです。
ユーザーに共感するために求められる2つの力
ユーザーに共感するためには、2つの力が必要になります。
- 情報収集力
- 分析力
情報を収集するためには、ユーザーインタビュー、エスノグラフィー調査、アンケート、ユーザーテストといった方法があり、それらを駆使していきます。
次いで、適切な情報を抽出し、演繹的推論、帰納的推論、アブダクション的推論を用いて分析していきます。
情報収集力や分析力は、UXデザインにおいてかなり重要であるにもかかわらず、勉強する機会が少なく、1人で勉強するのも大変です。
この前段の部分ができていないと「UX」を過小評価する人も出てきてしまうため、この力の底上げをどのようにしていけばいいのかが課題となっています。
事業会社を共感させるために求められる2つの力
ユーザーの想いに、事業会社のメンバーにも共感してもらうようにするには、2つの力が必要です。
- 定義力
- 伝達力
これは、誰でも理解できる共通認識を生み出す必要があるからです。
そのために、ビジネスモデルキャンバスやペルソナ、カスタマージャーニーマップといった可視化ツールを使います。
クライアントワークでのUXデザイナーの役割
では、受託制作の場合はどうでしょうか?
ここでも求められるのはユーザーへの共感と、その想いをクライアントにも共感させるという2つの共感であり、それがUXデザイナーの重要な仕事といえます。
よくある失敗例
クライアントワークでありがちなのが
- ニーズのないプロダクトを作ってしまうこと
- クライアントに忖度してしまうこと
です。
ニーズのないプロダクトを作ってしまう
これは、ユーザーへのリサーチをしなかったため生じてしまう失敗です。
クライアントに忖度してしまう
また、リサーチをしたにもかかわらず、クライアントを忖度した報告をしてしまい、結果としてユーザーにニーズのないプロダクトになってしまう、ということもあります。
全然ニーズが見られなかったのに、ポジティブに「イケます」と報告してしまうというわけです。
クライアントワークで失敗しないために
大切なのは、クライアントをチームとみなし、共創関係を創り出すことです。
そのためには、ワークショップの開催や、人間同士のコミュニケーションを重視するなど、お互いに本音で話せるような関係構築が重要になります。そして、それがUXデザイナーのクライアントワークでの役割、というわけです。
まとめ「UXデザイナーって?」
・ニジボックスでは、ユーザーが求める価値を生み出す「仕組み」を設計する職業と考えています
・仕組みづくりのため、UXデザイナーは2つの共感、つまりユーザーに共感し、その想いをチームに届けて共感させるという役割を果たす必要があります
・クライアントワークでは、ユーザーのニーズにマッチしたサービスやプロダクトを作り上げるため、お互いに本音で話せるような関係を構築する調整の役割も果たします
また、ニジボックスは、リクルートの新規事業研究機関から誕生した経緯があり、デザイン思考をはじめとする様々なビジネス手法を実際にリクルートの新規事業でも数多く実施し、検証を重ねてきております。
今回、ニジボックスが幾多の案件を経験する中で、磨き上げてきたノウハウの一端を資料としてまとめ公開することにしました。
また、下記資料にて、これまでニジボックスがUXデザインを用いてどのようにビジネス立ち上げや成功を支援してきたのか、ビジネスフェーズごとに実施例を一部ご紹介しています。
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