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Webディレクターにヒアリングはなぜ重要か?

更新日 2022.8.25
Webディレクターにヒアリングはなぜ重要か?

こんにちは。ディレクターの片貝です。

Webディレクターにはヒアリングが重要だ! ということをわかっている方は多いと思います。
では、なぜWebディレクターにとってヒアリングが重要なのか、簡潔に言える方はどれくらいいるでしょうか。

初めて案件を受け持った当初、ヒアリングの重要性を理解できておらず、制作背景やターゲットなど、必要最低限の情報を聞くだけで満足していました。
しかし、経験を積んでいくにつれ、「あれ? これをあの時もう少し掘り下げて聞いておければもっと正確な意思決定ができたのでは?」という場面や、「今までの経験から『きっとこうだろう』という推測で判断し、結果として手戻りに繋がった」という場面がちらほらでてくるようになりました。

そこで突き当たったのは、「決まり切った質問リストに沿ってヒアリングするだけで本当にいいんだっけ? ヒアリングはどうして重要なんだろう?」という壁でした。

今でも自分の未熟さに悔しさを覚える瞬間はありますが、だからこそわかってきた、「Webディレクターにヒアリングはなぜ重要か?」ということについて、今日は書いていきたいと思います。

Webディレクターはヒアリングで、意思決定の精度を高める必要がある

結論から言うと、Webディレクターにとってヒアリングが重要なのは、意思決定の精度を高める必要があるためです。

受託制作の場合、そもそもディレクターとはクライアントとチームメンバーの間に立って、双方に対して「ディレクション(direction)」をする人
つまり、「方向(direction)を示す人」ですね。
ディレクターは制作時もクライアントとの打ち合わせ時も、あらゆる場面で判断を下し、チームにもクライアントにも方向性を示す必要があります。
そして、そんなディレクターが何らかの決断を下してクライアントやチームのメンバーに方向を示すそのとき、決断をした明確な理由がなかったらみんな不安になりませんか? と思うんですね。

たとえばRPGのように、ディレクターが「魔王の住む城を目指す」という目的を持った勇者として、モンスターの跋扈する森の中、パーティ(制作チーム)を率いているとします。
森の中、先の見えない分かれ道があった時、「左に行くぞ!」と勇者に言われたら、自分がパーティのメンバーだったら「なんでだろう?」と思いませんか?
そのまま左に進んで、魔王の城に辿り着けるのか? モンスターが大勢いるんじゃないの? 落とし穴があってゲームオーバーするかも……etc..
色々な考えが頭を巡るはずです。
そこで、自分たちを率いる勇者に「なぜ左に行くのか?」と聞いたその時、「なんとなく!」とか言われたら正直ほんとに怖くないですか。。
こいつのパーティにいたら全滅するのでは? 大丈夫かな……? と私だったら思います。

でもそこで、「宝箱に入っていた地図に書いてあったから」とか、「左の道にモンスターが多いのは経験上知っているけど、右の道の先は崖だから進めないんだ。戦うための装備は揃えてきたし、しんがりは俺が務めるから、一緒に戦ってくれない?」と言われたら、少しは安心も納得もできますよね。
それに、自分がパーティメンバーではなく勇者(ディレクター)自身だったとしても、勘だけで先の見えない道を進んでいくのは怖すぎるはずです。

Webディレクターの意思決定の内訳は「情報」と「経験」

よって、ディレクターが健全にチームを率いるためには常に、なんらかの事実をもとにした意思決定が重要になってきます。
じゃあ、「意思決定の内訳ってなんだっけ? いつも何を基準に決断しているんだっけ?」 という話になるのですが、個人的にはその内訳を突き詰めると「情報と経験に大別されるのでは?」と考えています。
そして、それをさらに噛み砕くと、「情報は(相手が嘘をついていないことを前提にした場合の)事実」であり、「経験は(定性的な事実の累積に基づく)推測」だなと。

たとえば、

・コンバージョンボタンの色をオレンジにする

という意思決定がなされたとします。
その場合、下記のような背景があることが多いです。


①コンバージョンを増加させることがサイトリニューアルの目標である(事実)
②よって、コンバージョンボタンは目立たせる必要がある(事実にもとづいた意思決定)
③サイト全体のトンマナは青系である(事実)
④よって、補色であるオレンジを使用することで②を達成する(事実にもとづいた意思決定)

受託制作時は①をヒアリングでお伺いし、②以降のフェーズに移ることが多いのではないでしょうか。
これが、「情報(事実)をもとにした意思決定」の例です。

一方で、

・本当は再来週までにA社に見積を取れば問題ないが、今週中に見積をとっておく

という意思決定がなされた際、下記のような背景があることが多いです。


①以前何度かA社の見積を取った際、いずれも返信に1〜2週間程度かかった(経験)
②よって、今回も1〜2週間程度かかることが予想される(経験にもとづいた推測)
③だから、今週中に見積をとっておこう(推測にもとづいた意思決定)

Webディレクターの方でもそうでない方でも、上記のような意思決定を行ってきたことがあるのではないでしょうか。
これが、「経験(定性的な事実の累積に基づく推測)をもとにした意思決定」の例です。

どちらも時と場合に応じて使い分けていく重要な観点ですが、制作進行上、「前はクライアントが○○と言っていたから、今回もきっとそうだろう」と考えてしまったことはありませんか。
確かに以前は○○だったという事実があったとしても、今回もそうであるとは言えません。
よって、「推測にもとづく意思決定」ではなく、「事実にもとづく意思決定」を最重要視すべきと考えます。
なぜなら、経験は定性的に積んでいくしかない上、あくまで推測でしかないため確実にそうなるとは言えないためです。

Webディレクターは事実である情報をヒアリングで集める必要がある

よって、ディレクターにとって最も重要なのは「事実」である「情報」をヒアリングによって集めることだと考えます。
つまり、「Webディレクターはヒアリングで『事実』を集めることを重要視すべき」ということです。
そして、意思決定の内訳が主に「情報(事実)」と「経験(推測)」で構成されているとしたら、経験が浅いうちこそなおさら、前者の「情報(事実)」を集め、それをもとに決断することが重要だと思うんですね。
なぜなら、経験が浅いうちは推測の精度も低く、推測に頼った決断は失敗する確率が高いためです。

総括すると、

  • Webディレクターにとってヒアリングが重要なのは、意思決定の精度を高める必要があるから
  • Webディレクターの意思決定の内訳は「情報」と「経験」
  • ヒアリングは経験が浅いディレクターであればあるほど、正確な意思決定をするための最大の武器

ということになります。

というわけで、今回は「ヒアリングの重要性」について書いてみました。
次回は、「ヒアリングで重要なことは何か」について書いていきたいと思います。

監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

Twitter:@junmaruuuuu
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