新規事業の成功確率を高める!「顧客開発モデル」とは?
皆さんも、「起業を試みたものの、思いのほか時間や資金がかかってしまい、頓挫してしまった」というスタートアップの話を聞いたことがあるのではないでしょうか?
あるいは、「新規事業のアイデアはあるが、顧客がどこにいるかわからない」というケースもあるかもしれません。
そんな、ビジネスのアイデア段階や既存のビジネスを拡大して行く段階で、必須とも言える手法が「顧客開発モデル」です。
今回は、顧客開発モデルとは何か、なぜこの手法を取ることで新規事業の成功確率が高まるのか、その具体的なプロセスとは? というところから、実際の事例まで、ラーニング・アントレプレナーズ・ラボの堤孝志さんに基礎からみっちりと教えていただきます。
この記事のゴールは「顧客開発モデルの実践力を高め」「価値検証の質を向上させる」ことです!
目次
顧客開発モデルとは?
スタートアップのバイブルとまで言われる「アントレプレナーの教科書」の著者、スティーブン・G・ブランクが提唱している新規事業開発のための手法の1つです。新規事業開発では、プロダクト開発の進捗状況だけに目が行きがちで、そのため完成しても顧客がいない、という失敗が生じがちです。
そこで、プロダクトの開発をしながら顧客やビジネスモデルの開発や検証も同時に進め、プロダクトが完成しない、顧客がいない、というリスクや失敗を避け、もしくは、小さく何度も失敗を重ねながら軌道修正を行い続けることで、最終的なビジネスの成功確率を高めるために生まれた手法なのです。
また、せっかく顧客が見つかったとしても「再現性」がなければ事業の継続は見込めません。そこで再現性を担保し、拡大可能なビジネスへと導くのもこの顧客開発モデルのメリットだといえます。つまり、「再現可能でスケーラブルなビジネスモデル」を見つけることが、顧客開発モデルのゴールというわけです。
顧客開発モデルが誕生した背景とは?
顧客開発モデルは、新規事業でありがちな失敗を避け、成功確率を高めるために生まれた、と書きましたが、「ニーズがあると思うから作った」という、いわゆる新しい価値創出をしたプロダクトの90%は失敗に終わっています。作ったのに、顧客がいない、もしくはお金を払って買ってくれない、という状態ですね。
プロダクトのアイデアを思いつき、「これはいいサービス」だから、そのまま成功するだろう、というのがはじめてサービス開発をする人の陥る考え。でも実は、新たな価値創出には試行錯誤が不可欠だというのが大前提としてあるのです。この図のように、成功までの道のりは長くて遠いわけですね。
このことを知っていないと、途中でガス欠になる、または時間切れになってしまい、それが失敗につながります。
とはいえ、時間も資金も限られているのが現状。それではどうすれば繰り返す試行錯誤の中から最大限の学びを得るのか。その具体的な方法を示したのが「顧客開発モデル」というわけなんです。
「『常に新サービス開発では試行錯誤の繰り返しが必要なので、試行錯誤は早く、安く繰り返して正しい方向を見つけましょう』ということが、皆さんに学んで実践してもらいたいことの一番目です」
また、新規事業開発には次の2つのアプローチがあります。
「プロダクト・アウト」と「マーケット・イン」です。
プロダクト・アウトは、先に商品やサービスなどのコンセプトを決めておいて、あとからそれを必要としている顧客を見つける、という方法です。つまり、ターゲット(顧客)だと仮説した層にマッチしないことがわかったら、次の層へとターゲットを変えていく、という手法です。
マーケット・インはその逆で、先にターゲットを定めておき、そのニーズにマッチする商品やサービスを作ること。
とはいえ、実際にはサービスや商品のコンセプトはあるけれど、細部のUIやUXが定まっていないから、それについて顧客に聞いていくという、プロダクト・アウトとマーケット・インの中間に位置するケースのほうがよく見られています。
顧客開発モデルは、プロダクトを定めた上で顧客(ターゲット)を変えていくことを念頭に置いているため、プロダクト・アウトのための方法だといえます。
顧客開発モデルの4つのプロセス
顧客開発モデルには、次の4つのプロセスがあります。
- 顧客発見
- 顧客実証
- 顧客開拓
- 組織構築
1. 顧客発見ステップ
顧客を発見すると共に、そのターゲットになりきれるほど十分理解することを意味します。これから作ろうとしているサービスや製品のコンセプト段階で構わないので、資料を作り、想定する顧客のところに行って、そのニーズがあるかどうかを聞いて検証する。そしてニーズを持っている人がどのような人たちなのかを解明するところまでが含まれます。
2. 顧客実証ステップ
「1」と同じことをしますが、サービスや製品の開発が少し進んだ状態で行います。お試し販売をしてみて、本当に売れるのかを検証する中で、顧客の有無、販売するための営業プロセスを確立していきます。あとは「1」と「2」を繰り返していけば「事業化」にまで進めることができるでしょう。
3. 顧客開拓ステップ(カスタマーリレーション)
「2」までは顧客の有無を検証してきましたが、ここからは見つかった顧客に対して「どのように売ればいいか」「どのようにリーチすればよいか」を仮説・検証しながら探るというステップになります。
4. 組織構築ステップ
「3」まで進めたら、あとは組織やチームを作って事業を本格的に拡大させていく段階となります。
顧客開発の2つのポイント
ここで注意したいポイントが。
まず、
リスク(不確実性)のある段階では大きな投資をしないこと
です。事業になるかどうかわからない段階では、なるべく早く安く済ませながら検証を進めていきます。そのため、広告を打ったり、採用をしたりというコストのかかることはこの段階では行わないようにしましょう。
次に
再現性を高めること
です。前述のように、必要とする顧客がいたとしても、再現性があるとは限りません。リーチの仕方を特定できていれば、それを繰り返すことで再現性を見い出せ、事業化にもつながります。
顧客開発モデルの3領域における2つのステップ
顧客開発モデルでは、上記4つのステップの前半部分、「顧客発見」と「顧客実証」を「探索」ステップ、後半の「顧客開拓(カスタマーリレーション)」と「組織構築」を「実行」ステップの2段階に分けて考え、特に前半の「探索」ステップをとても重要視しています。
探索ステップ
┌→1.顧客発見─┐
└─2.顧客実証←┘※探索ステップを何度も回してピボット(軌道修正)
実行ステップ
3.顧客開拓(カスタマーリレーション)
4.組織構築
そして、各ステップで「戦略」、「プロセス」「組織」という3つの領域に対して適切なアプローチをします。
顧客開発モデルの導入メリット 「小さく失敗」してダメージを最小限に
原則1:仮説検証思考を持つ
仮説検証思考は、「Fail Smart」つまり、利口に失敗するために欠かせない考えです。これは「とりあえず作ればいい」という行き当たりばったり、つまり学びを得られない失敗を避け、仮説を明確に持って試し、確かめる(検証する)ことにより、学びを積み上げていくことを意味します。
仮説を持っていれば結果がはっきりしますし、失敗したとしてもどこが間違っていたのか把握でき、修正の仕方がわかるので学べる、というわけです。
ステップ1:仮説構築
検証すべき仮説を明確にすべく検討します。その際には製品やサービスのニーズがあるのか、顧客はいるのか、だとしたらその理由は何か、ということを考えていきます。
ステップ3:検証の実行
コンセプト段階では、スケッチや資料をもとに顧客インタビューを行い、実際に動くものができたら試しに売ってみて検証します。
先程の名刺管理サービスでは、卓上の回転式名刺ホルダーのようなUIを考えていましたが、それは受け入れられず、検索機能のあるもののほうが良い、ということがわかりました。理由は、名刺を確認したい場面というのは打ち合わせ先に遅れそう、などという切羽詰まった状況であることが多い、という調査結果があったからです。
ステップ4:考察
このように、検証しながら方向修正を重ねていくことで、考えていたサービスの良い面や悪い面、顧客の強いニーズについて見えてくるというわけです。
このように、仮説を立ててから最後の考察の部分で軌道修正しながらブラッシュアップしていくことが必要です。仮説が明確なら、潜在顧客のニーズとのズレも明確になり、軌道修正の精度が高まります。これを早く、安く、テンポよく回していくことで、成功に結びつくのです。
原則2:あえて絞り込む
「Fail Fast」「Fail Cheap」のための原則です。これは、アーリーアダプターを見つけてそこを狙う、ということです。
アーリーアダプターを探すためには、アーリーアダプターがどのような人たちなのかを知っておく必要があります。
アーリーアダプターというと、何にでも早く飛びつく人、という印象があるかもしれませんが、E・ロジャーズによる『イノベーションの普及理論』では、ある製品が世の中に浸透する(メインストリームに受け入れられる)前に、買ったり使ったりしてくれる人たちのことを指します。
この人たちは、開発中のそのプロダクトに対する切実なニーズがあり、そのため必要最小限の機能しか実装されていなくても使ってくれます。
逆に、メインストリームの人たちはニーズが弱く、そのプロダクトに実績ができるまで、または機能が充実するまで様子を見る傾向にあります。そのため、「あの機能はないか」「この機能はつけないのか」とないものねだりをする。最初にこの人たちのことを顧客にしてしまうと、開発に時間とお金がかかりすぎてしまい、結局潰れてしまう、ということになりかねません。
そこで、アーリーアダプターに絞り込む、ということが大切になってくるわけです。
とはいえ、アーリーアダプターだけをいつまでも対象にしたMVPの製品だけ作っていては、事業はスケールしません。
MVPというのは、顧客の切実なニーズを過不足なく満たす必要最小限の製品のことを指します。必要最小限なので、無駄がなく、無駄がないから仮説検証時に顧客とのズレを明確にしやすい、というメリットも生まれます。アーリーアダプター向けに、ある程度実績ができたら、メインストリームに受け入れられるプロダクトへと昇格させ、巨大市場を目指せばよいのです。
ミニマム・バイアブル・プロダクト(Minimum Viable Product)
「顧客の切実なニーズを過不足なく満たす必要最小限の製品」
アーリーアダプターを見極めるには?
ここで出てくる疑問が、自分のプロダクトのアーリーアダプターをどのように見つければよいか、ということでしょう。
目安となるのは、切実なニーズを持っているかどうか。でも、「それを欲しい」というだけでは不十分で、なぜそれが欲しいかという動機や背景、作ろうとしているプロダクトでそのニーズを充足できるかどうかを突き詰める必要があります。
例えて言うなら、電動ドリルを必要としている人は、ドリルがあれば満足するわけではなく、それによって穴を開けたい、というニーズが背景にあります。しかも、きれいに簡単に開けたい。力のある人に頼んでみたものの、忙しいということでなかなか取り掛かってくれない。
これは、穴を開けたいという「Jobs To Be Done」があるものの、うまく開けられないという「課題不満」があり、頼むという「現状対策」をしているのに、やってくれないという「満足状況」が満たされていないことを表しています。そのような人には、「電動ドリルが欲しい」というニーズがあるわけです。やりたいこと(Jobs)があるから商品を買うというわけですね。
このような、ニーズのメカニズムに着眼できれば、誰がアーリーアダプターなのかを客観的に判断できますし、別のメリットもあります。
どういうことかというと、ニーズのメカニズムというのは、顧客側の状態だから、プロダクトがなくても確認できるということ、また客観的にJobs To Be Doneがあるのか、課題不満があるのか、現状対策がされているのかなどを確認できるため客観的にニーズの有無を判断できること、またニーズのメカニズムがどの段階(Jobs To Be Done、課題不満、現状対策、満足状況つまり不満がある状態)にあるかを図ることで、ニーズの強さもわかる、ということなんです。
また、アーリーアダプターを見極めたなら、彼らのニーズを満たすMVPの仮説を具体的に立てます。どれだけ具体的にしたかということと、アーリーアダプターの反応は比例するため、改善すべき場所がはっきりしてきます。
ただ、気をつけなければいけないのは、要望を受け入れるのはアーリーアダプターからのもののみにすることです。この段階ではメインストリームの声に付き合わないようにしておきましょう。
コアとなってくれる顧客を発見するためには、アーリーアダプター探しが重要だということがわかりましたが、どうすればニーズを掘り起こせるでしょうか。それには正しいインタビュー方法を身につけることが必要です。
アーリーアダプターからニーズを掘り起こすには?
顧客発見のために、アーリーアダプター探しが重要だということがわかりましたが、どうすればニーズを掘り起こせるでしょうか。それには正しいインタビュー方法を身につけることが必要です。
顧客発見インタビュー
顧客発見インタビューの大きな流れは以下のとおりです。
インタビューの目的は、商品へのニーズを検証すること。それには、商品を欲しがる人がいるか、ニーズのメカニズムがあるか、そのプロダクトは顧客の要望にフィットしているか(プロダクト・マーケット・フィット)です。
また、アーリーアダプターの特徴を把握することも目的としておきたいところです。それによって、闇雲にインタビューしなくても、あらかじめどのような人に刺さるのか、というのを知ることができるからです。
顧客インタビューには次の3つのステップがあります。
インタビューの3ステップ
課題インタビューでは、ニーズのメカニズムの有無を訪ねます。このときは企画中のプロダクトの説明をしない、というのが大切。なぜかというと、プロダクトの説明をするとなんとなく欲しいような気になってしまうから。なので、相手がアーリーアダプター候補かどうかを見極めるためにニーズのメカニズムがあるかどうかだけを尋ねるようにします。
ソリューションインタビューでは、開発しているプロダクトが顧客に対してプロダクト・マーケット・フィットしているかどうか、相手がアーリーアダプターであるかどうかを確認します。
そして、忘れてはいけないのが
特徴把握インタビュー。
例を挙げます。ある人が、Bluetooth対応防水機能付きスピーカーを買いました。なぜそれを買ったのかというと、「お風呂で音楽を聞きたい」というジョブがあったから。なぜ聞きたいのか、というと会社主催の飲み会後に行くカラオケでうまく歌えるように練習したかったから。練習が必要なほどの曲ってなんだろう、と推測したときにとあるグループのファンだということがわかったわけです。それがわかれば、そのグループのファンである、という外形的特徴を備えた人たちに売ることができる、というわけですね。
このように、ニーズのメカニズムに因果関係がありそうなことを聞いていくことで特徴のヒントになるものが見えてくる。それを引き出すのが「5Whys」、つまり「なぜ?」の繰り返しというわけです。これは5W1Hに置き換えても良くて、理由を深掘りすることがとにかく重要とのことでした。
ここまで教えていただいたことに気をつけて、実践演習のワークショップが行われました。
その中では、
- 最近購入したプロダクトの名前を教え合う
- そのプロダクトのプロマネになったつもりで、なぜそれを購入したのかを想像して仮説を立てる
- 仮説が合っていたか5Whysを駆使しながら答え合わせする
この実践では、立てた仮説が外れがちなこと、それゆえ、何度も仮説と検証のステップが必要だ、ということをよく理解することができました。
マーケット・インで顧客インタビューするには?
ここまではプロダクト・アウトでの新規事業開発について考えてきましたが、最後はマーケット・インでの顧客インタビュー方法について教えていただきました。
そのコツは、未充足のジョブと付帯状況を聞くというもの。
なぜそのジョブを満たしたいと思っているのか、その背景を探ります。
実はジョブには3種類が存在します。
とはいえ、社会的ジョブについては口に出さない人が多いため、状況証拠から推論して見つけ出す必要があります。
いずれにせよ、未充足のジョブを見つければ見つけたぶんだけこれまでにない、イノベーティブなサービスや製品につながっていくので、マーケット・インで新規事業開発をする際にはできるだけそれを見つけるようにしましょう。
また、ジョブの付帯状況、つまり背景を把握することもマーケット・インでは重要になります。
例えば、同じ「夕食を食べたい」というジョブでも、二日酔いの状態なのか、夏バテ気味なのか、軽く食べてきたのかなどによって最適な解……ここでは献立ですけれども、それが変わってきます。
特に、本当に深くまで掘り下げないと見えてこない「インサイト」の部分まで付帯状況を得られれば、全く新しい解決方法が見えてくるようになるとのこと。「意外」を発掘できるようなインタビューができるようになりたいものですね。
顧客開発モデルとリーンスタートアップの関係性
顧客開発モデルでは、リスク(不確実性)のある段階では大きな投資をしません。事業になるかどうかわからない段階では、なるべく早く安く済ませながら検証を進めていくのです。そのため、広告を打ったり、採用をしたりというコストのかかることはこの段階では行うことはありません。
また、再現性を高めます。前述のように、必要とする顧客がいたとしても、再現性があるとは限りません。リーチの仕方を特定できていれば、それを繰り返すことで再現性を見い出せ、事業化にもつながります。
このように、小さくスタートしながらサイクルを繰り返していくことを「リーン・スタートアップ」といいます。
「構築」「計測」「学習」のサイクルを繰り返しながら、顧客開発モデルの4つのステップを進めていき、成功するビジネスへとつなげていくのです。
顧客開発モデルの成功事例
これは日本で最初の顧客開発モデルを実践して成功したケースになります。クラウド上で名刺を管理するサービスで、それが誕生する前は、名刺管理といえばPCなどにアプリケーションをインストールし、ローカルで保存・管理するのが一般的でした。
ステップ1:仮説構築
この事業の創業者たちは、過去に「自分たちの欲しいもの」を開発した結果、欲しがる顧客が誰もいないという失敗を経験していました。そこで、「アントレプレナーの教科書」に基づき、人が欲しがるものを作ろうと考えたのです。
そこでまず、仮説を立て、「価値・顧客シート」に当てはめてみました。
- 対象は誰か
- どんな商品を提供し、どんな価値を生み出すのか
- その対価として幾らもらうのか
- 対象は誰か――中小企業で手が足りなかったり、営業組織などで名刺を扱う絶対量が多いと言った課題を抱えた顧客
- どんな商品を提供し、どんな価値を生み出すのか――使いやすいUI。クラウドサービスなので外出先からもアクセス可能。名刺管理で一番手間のかかるデータ入力を代行してもらえる。という価値を生み出す
- その対価として幾らもらうのか――月額基本料と名刺入力料金をもらえる
実際に立てた仮説は次のようなものです。
ステップ2:検証方法の検討
仮説が明確になれば、誰にヒアリングに行き、何を見せればいいのかが明確になるため、検証方法の検討ができます。
ステップ3:検証の実行
コンセプト段階では、スケッチや資料をもとに顧客インタビューを行い、実際に動くものができたら試しに売ってみて検証します。
先程の名刺管理サービスでは、卓上の回転式名刺ホルダーのようなUIを考えていましたが、それは受け入れられず、検索機能のあるもののほうが良い、ということがわかりました。理由は、名刺を確認したい場面というのは打ち合わせ先に遅れそう、などという切羽詰まった状況であることが多い、という調査結果があったからです。
ステップ4:考察
このように、検証しながら方向修正を重ねていくことで、考えていたサービスの良い面や悪い面、顧客の強いニーズについて見えてくるというわけです。
当初、回転式名刺ホルダーのような、くるくるとめくるUIを考えていましたが、ヒアリングを重ねていくうちに、それが誤りだったことがわかってきました。外出先で名刺を見たいというJobが発生するのは、急いでいる場面だからです。
そこで、軌道修正をし、検索機能をつけることにしました。このように、明確な仮説を立て、検証方法を検討し、潜在的顧客のところで検証を実行するという仮説検証思考の3ステップを繰り返すことで、どんどん自分たちのプロダクトをブラッシュアップしていきました。
アーリーアダプターも見つかり、必要としているのが大企業ではなく中小企業、または個人事業主だという特徴も把握し、ニーズのメカニズムの再現性も高まりました。そのおかげで、クラウド名刺管理サービスとしては、長年上位の地位を保つほどに成功できたのです。
おわりに
本記事では、顧客開発モデルを使った新規事業開発のメリットや、失敗が少ない理由、またそのプロセスについてお伝えしてきました。また、実際の事例から、小さい失敗を繰り返しながらピボットすることで成功へと結びつく、ということも理解していただけたのではないかと思います。
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元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動
コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。
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