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UXライティングとは?概要や効果とともに9つのコツを紹介!

公開日 2023.3.23
UXライティングとは?概要や効果とともに9つのコツを紹介!

近年は、商品・サービスの利用を通じてユーザーが得る体験「UX(ユーザーエクスペリエンス)」が重要視されるようになりました。そして、UXデザインやUXリサーチなどに加えて「UXライティング」という言葉が注目を集めつつあります。

UXライティングとは、端的にいえば「ユーザーがより良い体験を得られるよう、分かりやすく伝えるライティング手法」のことです。

この記事では、UXライティングの概要や効果、より良いUXライティングにするコツを解説します。

UXライティングとは?

UXライティングとは、商品・サービスの利用方法やWebサイト上での操作方法などについて、ユーザーに分かりやすく的確に伝えるライティング手法を指します。

そもそもUXとは、商品・サービスやWebサイトなどの利用を通して、ユーザーが得る体験の全てを指す言葉です。
ユーザーのUXを良くするためのライティングがUXライティングといえます。
UXライティングは、以下のような箇所や部分で用いられます。

【例】

  • CTAボタン:Webサイト上でユーザーにクリックを促し、コンバージョンへ導くボタン
  • エラーメッセージ:操作や処理にエラーが発生したことを示すメッセージ
  • ツールチップ:対象にカーソルを合わせたときに現れる注釈や補足情報
  • 入力フォーム:問い合わせなどの際、ユーザーが必要な情報を入力・送信する画面
  • ポップアップメッセージ:現状の画面の上に一時的に表示されるウインドウの中のメッセージ
  • ヘッダー:ページ上部に全ページ共通で表示されるエリア
  • フッター:ページ下部に全ページ共通で表示されるエリア

UXライティングの目的は「ユーザーが達成したいタスクをストレスなく完了できるようにサポートすること」です。
優れたUXライティングは、ROI(Return On Investment:投資収益率)やLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めます。

問い合わせフォームを例にすると、適切なUXライティングをすることでユーザーが入力フォームに情報を入力するコストを減らすことができ、結果的に問い合わせ率の向上にもつながります。

UXライティングとコピーライティングの違い

UXライティングとコピーライティングには、以下の違いがあります。

  • UXライティング:ユーザーの体験をさりげなく助ける
  • コピーライティング:ユーザーの興味を強くひく

コピーライティングとは、訴求力の高いフレーズを用いて商品やサービス、ビジネスの価値を伝える手法です。商品・サービスの販売を目的として、ランディングページやニュースレター、広告物などに使われています。

テレビCMを例に挙げると「お正月を写そう」(富士フイルム株式会社)や、「そうだ京都、行こう」(東海旅客鉄道株式会社)などがコピーライティングです。なお、コピーライティングの「コピー」とは「広告文」を指します。

一方、UXライティングの目的は、コピーライティングのような「印象的なフレーズでユーザーを引き込む」ことではありません。むしろ「印象に残らないフレーズでユーザー体験をサポートする」ことにあります。

例えば、入力フォームの「メールアドレスを入力してください」、ポップアップメッセージの「ご入力いただいたメールアドレス宛に確認メールをお送りします」などが、UXライティングに該当します。

UXライティングの効果3点

UXライティングを行うことで得られる、主な効果を解説します。

1.ユーザーの行動を後押しする

UXライティングを行うと「このボタンを押すと何ができるのか」「この入力フォームに何を入力すればいいのか」といった、操作の補足や説明を明確に示せます。
これにより、ユーザーの行動を引き出す効果が期待できます。

適切なUXライティングが行われていないと、ユーザーは操作にストレスを感じ、Webサイトやアプリなどから離脱しかねません。
さらに「操作方法をサポートセンターに問い合わせる」という、本来必要のない行動をユーザーに取らせてしまうケースもあるでしょう。

必要な場所に、見つけやすく理解しやすいテキストを記載すると、ユーザーは途中で離脱したり余計なプロセスを踏んだりせず、ページに留まって行動を進められます。

2.ユーザーとの距離を近づける

UXライティングでは、ユーザーの心地よさや親しみやすさを意識することも大切です。ユーザーに最適なボイス&トーンを見極めて用いることで、ユーザーに親近感をもたせる効果が期待できます。
具体的な例としては以下のようなものがあります。

家庭の習慣を見直すと、貴重な真水を毎日何リットルも節約できます。その結果、お金と水が排水管から流れていくのを防ぐことができます。

参照:
イケア・ジャパン株式会社|家で節水する簡単な方法

Slack に埋め込まれた YouTube 動画を全画面モードで再生できるようになりました。「アリ用の動画プレイヤー?」という声も聞かれるほどのサイズでしたが、従来より 3 倍は大きく表示されるようになりました。

参照:
Slack| Windows 版 Slack – リリースノート

ボイス&トーンのボイスはサービスの性格を、トーンは態度を表します。
サービスの特徴をつかみ、ユーザーをリサーチした上で自社のイメージやブランドに沿ったボイスを決め、状況に応じてどのような口調で語りかけるのかトーンを定めるとよいでしょう。

あらかじめ一貫したボイス&トーンを定めると、サービスを通して表現を統一できます。

3.そのサービス「らしさ」を演出する

サービスの世界観を考慮したUXライティングを行えば、そのサービスらしさを演出できます。例えば、あるSNSやポータルサイトでは、以下のような表現を用いてサービスを印象づけています。

【例】アプリのアップデート文言

アスリートと同じく、Nikeはパフォーマンスを最大限に高める努力を惜しみません。

参照:
ナイキジャパン|Nike Training Club(トレーニング)

多くのアスリートに利用されているNIKEならではの、アスリートへのリスペクトが見られます。

【例】プッシュ通知の文言

(名前):デビル│FRIDAY?金曜は一番リタイアが多いよ?ふんばろう!
(名前):遂に2週間!今日はゴホービを獲得する日です!

トレーニング管理アプリであるGohobeeでは、ユーザーが途中で挫折しないようにリマインドや応援メッセージなどを表示することでモチベーションの維持を目指しています。

参照:
Tee-App株式会社|Gohobee 女子の腹筋アプリ

UXライティングの表現次第で、ユーザーが好印象を持ったり、逆に不快な気持ちになったりすることがあります。
言葉遣いや漢字表記・ひらがな表記などの表現方法を慎重に選び、サービスに合わせて工夫することが大切です。

優れたUXライティングの9つのコツ

ここからは、UXライティングのポイントを解説します。

1.短く簡潔にする

人は、パソコンやスマートフォンの画面に表示されるテキストを「読む」というより「見る」に近い感覚で認識すると言われています。

また、人が目を動かさずに認識できるのは、一度に13文字程度とされています※。

そのため、少しでも文字数を減らすよう意識するのが、UXライティングのコツです。

文章を短くするだけでもユーザーのストレスが減り、サービスを快適に使ってもらえるようになります。能動態・現在形を使用し、できるだけシンプルな文章にすることで、ユーザーの負担を減らしましょう。

例を挙げると、「あなたが検索を開始したいと思うなら、この検索ボタンはクリックされるでしょう」より「検索ボタンをクリック」のほうがユーザーにとって分かりやすい表現といえます。

また、必要なメッセージを必要なときだけ表示させる設計にするのもポイントです。
ガイドメッセージを常に表示するのではなく、ユーザーが困ったときや特別な操作を行うときだけメッセージを表示すると、ユーザビリティを向上させられます。

※出典:京都大学大学院 エネルギー科学研究科 エネルギー社会・環境科学専攻 下田 宏|マンマシンシステム工学視覚系指標の計測と分析(1)- 眼球運動-

2.視認性を高める

UXライティングでは、視認性を高め、ぱっと見た瞬間に文章を認識しやすくするのも大切です。視認性を高めるためには、文章ではなく数字で表したり、箇条書きや表を使用したりしましょう。

例)文章ではなく表を使用する
食パンは洋食系でコーヒーに合う。おにぎりは和食系でお茶に合う。食パン(小麦)を使っていて、おにぎりはご飯(米)を使っている。

文章ではなく表で示すことで、文章を整理し認識しやすく視認性が高まることを示した表の画像。縦軸に、食パンとおにぎり。横軸にジャンル、合う飲み物、主材を配置。

箇条書きや表を作ることで、情報が整理されて内容が頭に入りやすくなります。また、情報を表などで表示すると、スペースの節約につながるケースもあります。

3.明確にする

UXライティングではメッセージを明確にし、ユーザーを混乱させないことが大切です。

例えば、メールアドレスの入力ミスでサインインに失敗した際に、「エラーが発生しました」とだけ表示されても、ユーザーには自分の操作ミスなのか、システムエラーなのかが分かりません。また、次に取るべき行動も分からず混乱してしまいます。

UXライティングでは、ユーザーがテキストを見たときに、何が起きているのか、何が起こるのかを一目で把握できるようするのがポイントです。
曖昧な表現は用いず、ユーザーに伝えたい内容を明確にしましょう。

【例】

  • メールアドレスが登録されていません。メールアドレスを確認してください。
  • メールアドレスの初期設定が完了していません。メールアドレスに届いているメールを確認して初期設定を完了してください。

4.専門用語を避ける

UXライティングにおいては、ユーザーが聞き慣れない言葉をできるだけ使用しないのがポイントです。
専門用語は避け、分かりやすく親しみやすい単語や文章を用いましょう。

例えば、エラーメッセージのテキストは「認証エラーが起きました」と専門用語を使うのではなく、「入力されたパスワードに誤りがあります」とユーザーにも分かる単語を用います。

専門用語を使わざるを得ない場面では、理解しやすいよう具体例を提示する、図やグラフなどを併用する前提で説明するなどの配慮が必要です。
難しいことをユーザーに分かりやすく伝えるのも、UXライティングの役割の一つです。

5.一貫性を保つ

文章術では、文中で同じ言葉を繰り返すと文章が単調になるため、何度も同じ言葉を使わないほうが良いとされているケースがあります。

しかし、UXライティングにおいては、同じ言葉の繰り返しを避けようとして同義語に置き換えるのは望ましくありません。

ユーザーの混乱を招かないよう、一つのサービスで使う文章には一貫して同じ言葉を使用しましょう。

【悪い例】

  • 今日は旅行でホテルに泊まっています。そのため、連絡がある場合は宿泊先にしてください。

【良い例】

  • 今日は旅行でホテルに泊まっています。そのため、連絡がある場合はホテルにしてください。

ボイス&トーンがバラバラだとユーザーにネガティブな印象を与えてしまうため、サービスを通してボイス&トーンの一貫性を保つことも大切です。

6.過剰な敬語にしない

ユーザーに対して丁寧な言葉でコミュニケーションをすることは大事ですが、丁寧すぎる言葉は逆に分かりにくくなる可能性がります。
具体的には、以下はビジネスシーンや日常でもよく使われる過剰な敬語の例ですが、会話では違和感がなくても文章になると「少し変だな」と思う人も多いのではないでしょうか。

【例】

  • お会計〇〇円から頂戴いたします。
  • 〇〇はただいま席を外しております。
  • ごみは指定された場所に捨てていただきますよう、ご協力をお願いします。
  • お客様がお見えになられました。

また、丁寧語や尊敬語が多い文章は文章自体が複雑に見えて、結果的に何を伝えたかったのか分からなかった、というケースがあるため注意が必要です。

そのため、UXライティングでは、丁寧語や尊敬語を以下のように置き換えるのがポイントです。

【例】

  • 「~いたします」→「~します」
  • 「~おります」→「~います」
  • 「~していただきますよう」→「~してください」
  • 「~なられました」→「~なりました」

7.ポジティブな表現にする

分かりやすさを意識した機能面のUXライティングに加え、好感が持てるように情緒に訴えかけるUXライティングを意識するのも重要です。
情緒に訴えるUXライティングを行う際は、ポジティブな言葉を用いるのが一つのポイントです。

例えば、エラーメッセージが出ているときや読み込みに時間がかかっているときなど、ネガティブな状況にある場面では、ユーザーが次に取るべき行動をポジティブな言葉で示しましょう。

【ネガティブな現状を伝えるだけで終わっている例】

  • 条件に合っていません
  • 読み込みに時間がかかっています

【ネガティブな現状を伝えつつ、ポジティブな表現で次の行動を提示している例】

  • 条件に合っていません。パスワードは○桁で再入力してください
  • 読み込みに時間がかかっています。作業完了まで○分ほどお待ちください

現状を伝えるだけでなく、次の行動をポジティブな言葉で具体的に提示すると、ユーザーに好印象を与えられる可能性があります。

8.翻訳されることを念頭に置く

海外にもサービス展開している、海外のユーザーが多いという場合には、日本語から現地の言葉に翻訳しやすい文章にするのが望ましいでしょう。

日本語は比較的、他の言語に翻訳しにくいため、UXライティングでは誰が読んでも同じ解釈ができる内容を心がけることが大切です。
文法的に正しく、簡潔な文章にすることを意識しましょう。

特に、順接と逆説のどちらにも取れる「~が」や、複数の用途に捉えられる「~の」などの助詞の使用には、注意が必要です。

9.全ての情報を一度に出さない

良かれと思い、役に立つ情報をまとめて提示してしまうと、ユーザーはその情報を処理しきれない可能性があります。提示に最も適したタイミングを、情報ごとに見極めることが大切です。

例えば、フォームへの入力後に入力情報の確認画面に進む場面では、ボタンのテキストを「入力内容を確認して商品を注文する」ではなく「入力内容を確認する」と記載します。

「入力内容を確認して商品を注文する」と記載されていれば、ユーザーは「ボタンを押したらそのまま購入が確定してしまうのだろうか」と不安に感じるでしょう。

そのため、ここではボタンを押した直後の内容のみを示す「入力内容を確認する」と記載するのが、適当といえます。

UXライティングの実践のポイントについては、こちらの記事でも解説しています。

■関連記事:
UIデザインをぐっと引き立てる!UXライティングの実践ポイント集

まとめ

UXライティングとは、ユーザーが商品・サービスを利用する際により良い体験を得られるよう、必要な情報を分かりやすく伝えるライティング手法です。

UXライティングを行うと、ユーザーはストレスなく操作を続けられるようになるため、結果的にユーザーの行動を後押しすることにつながります。
また、UXライティングで親しみやすさやそのサービスらしさを演出すれば、よりユーザーに親近感を持ってもらえるでしょう。

UXライティングでは、印象に残らないフレーズでさりげなくユーザー体験をサポートするのがコツです。
短く簡潔な文章にする、箇条書きや表で視認性を高める、メッセージを明確にする、専門用語を避けるなどのポイントを意識して、効果的なUXライティングを行ってみてください。

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監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

Twitter:@junmaruuuuu
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