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【ユニバーサルデザイン商品】実例から見るUDの重要性

【ユニバーサルデザイン商品】実例から見るUDの重要性

近年、ユニバーサルデザイン(UD)の考え方を反映させた、さまざまな商品が登場しています。

本記事では、ユニバーサルデザインの基本を学び、ユニバーサルデザイン商品の重要性などを実例を紹介しながら解説します。

ユニバーサルデザイン商品とは?

まず、ユニバーサルデザインについての定義を理解しましょう。
ユニバーサルデザインとは、「あらかじめ全ての人にとって使いやすいものとしてデザインする」という考え方です。

利用される中で「こんな人にとって使いにくいから改善しよう」ではなく、「年齢や能力、状況などにかかわらず、できるだけ多くの人が利用できるように最初からデザインすること」を基本コンセプトとしています。

ユニバーサルデザインには、その考え方を実現するための「7つの原則」が定められています。

  • 公平性(誰でも公平に使用できること)
  • 自由度(人によって使いやすいほうを選べること)
  • 単純性(使い方が簡単であること)
  • 分かりやすさ(必要な情報がすぐに理解できること)
  • 安全性(ミスや危険につながらないこと)
  • 体への負担の少なさ(無理な姿勢や強い力が必要ないこと)
  • スペースの確保(使いやすい十分な大きさ・広さであること)

ユニバーサルデザイン商品を大量生産するためには、7原則全てを取り入れることは難しいため、現在は7原則のうちいくつかが採用されているものがほとんどです。今後、3Dプリンティング技術やIoT技術を組み合わせることで、より多くの原則を考慮した、個別のユーザーニーズへの対応も可能になっていくでしょう。

ユニバーサルデザインについては、下記の記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
■参考記事:ユニバーサルデザインとは?身近な事例を交えながら解説!Webデザインに生かすためのポイントも紹介

ジャンル別ユニバーサルデザイン商品の実例

ユニバーサルデザイン商品は、どのようなところに使われているのでしょうか。私たちが生活の中で利用する、身近なものを例にご紹介します。

家の中にあるユニバーサルデザイン商品

センサー式の蛇口

キッチンや洗面台の蛇口は、握力の弱い人、手に障害がある人も無理なく利用できることが重要です。そこで、センサー式の蛇口が採用されることが多くなりました。また、公共のトイレなどでは、蛇口に触れずに手を洗えることで、衛生面でもメリットがあります。

照明のスイッチ

照明のオン・オフを切り替えるスイッチは、指の力の弱い高齢者や子供でも扱いやすいデザインとすることが重要です。どちら側を押しても切り替わるシーソー型のものや、手のひらで押せる大きいサイズのものが主流になっています。

階段の手すりや踏み板

転倒のリスクがある階段には、安全性への配慮が必要です。手すりがコーナー部分にも設置されていれば、手を離すことなく昇降でき、転倒のリスクを減らすことができます。滑りにくい踏み板や足元の照明も、つまずきや踏み外し対策に有効です。さらに、角になる部分に柔らかい素材を使用したり、曲面部材を使用したりすることで、転倒時の被害を軽減できます。

温水洗浄便座

温水洗浄便座は、病院で手術後などにケア用として活用されていた機能が、一般に普及したものといわれています。人を感知し自動で開閉するフタ、立ち座りを支援する手すり、座ったまま手元で操作できるボタンなど、かがむ・ひねるといった動作による身体への負担を軽減する工夫が見られます。

街の中にあるユニバーサルデザイン商品

駅の広い改札

車いす、ベビーカーなどを利用している人、旅先で荷物がたくさんある人など、誰もが余裕を持って通過することができる広い改札を見かけることも多くなりました。さまざまな人が利用する駅などには欠かせないデザインです。

スロープ

車いす、ベビーカーなどでも通ることができるスロープは、公共の場所を中心に一般的になっています。「持って運ぶ手間」を省けるので、力を出すことが難しい人にも安心な設計です。自転車でも通れるように、専用のスロープを設置している施設もあります。

ノンステップバス

ノンステップバスとは、床面を超低床構造にして、乗降時の段差を少なくしたバスのことです。高齢者や小さな子供でも、安全に乗り降りすることができるように配慮されています。
日本では2020東京オリンピック・パラリンピックに間に合うように、都営バスがフルフラットノンステップバスの実用化しました。

自動販売機

車いすに乗ったままでも商品を買えるよう、通常の選択ボタンの他、低い位置にもボタンを設けている自動販売機を見かけるようになりました。車いすの人だけでなく、子供や背が低い人にとっても便利なデザインです。また、飲料メーカーの自動販売機を中心に、低い位置のボタンに加え、受け皿つきのコイン投入口や、商品を取り出しやすい高めの取り出し口、購入した商品を置くテーブルの設置など、さまざまな工夫が施されるようになってきています。

インクルーシブ公園

身体能力の差や、障害の有無を問わず、誰もが楽しく安全に遊べるよう配慮された公園を、インクルーシブ公園といいます。物理的な配慮はもちろん、個人の興味や特性に応じた遊びを見つけられる、挑戦のきっかけを見つけられるデザインとなっており、相互理解が深まる場所としても注目されています。

身近なモノに関するユニバーサルデザイン商品

文房具

誰もが使用する文房具だからこそ、さまざまなデザインの商品が開発されています。利き手に関係なく使えるカッターナイフ、弱い力でも使いやすいハサミ、安定して握ることができる鉛筆、反射の影響を抑えたノートなど、年齢や能力を問わず、誰でも同じように使えるデザインが特徴となっています。

シャンプー・リンスのボトル

同じ形に見えるシャンプーとリンスのボトルにも、実はユニバーサルデザインが使われています。目をつぶった状態や、目に障害がある人でも安心して利用できるように、シャンプーのボトルに突起がつけられているのです。当初はメーカーによって突起の場所が異なりましたが、あるメーカーが業界全体に働きかけたことにより、現在ではボトルの同じ位置に突起をつけることで統一されています。

スマートフォン

生活に欠かせないものとなったスマートフォンには、誰もが使いやすいデザインとなるよう、多数の工夫が見られます。画面表示を自由に拡大できたり、読みやすいフォントに変更したり、背景色や明るさを好みによって変えることができます。また、音声による画像の解説や、音声での文字入力ができる他、メール送信、電話、スケジュール設定なども音声で指示することが、ほとんどの機種で可能となっています。

食品に関するユニバーサルデザイン商品

身体に直結する食品(食事)は、特に気を使うことの一つではないでしょうか。誰もが安全・安心に利用できるよう、食品業界では「ユニバーサルデザインフード」という取り組みが広がっています。

ユニバーサルデザインフードとは、日常の食事から介護食まで幅広く使える、食べやすさに配慮した食品です。その種類はさまざまで、レトルト食品、冷凍食品などの調理加工食品をはじめ、飲み物や食事にとろみをつける「とろみ調整食品」などがあります。
2002年設立の日本介護食品協議会では、消費者がより分かりやすいように咀嚼嚥下(かむ力・飲みこむ力)に配慮し、「かたさ」や「粘度」に応じて4段階に区分しています。各区分に分類される商品には、ユニバーサルデザインフードロゴマークが使われています。

ユニバーサルデザインフードロゴマーク

ユニバーサルデザインフードの商品パッケージ例

ユニバーサルデザインフードの区分や詳細に関しては、日本介護食品協議会のページで紹介されています。

情報に関するユニバーサルデザイン商品

標識(ピクトグラム)

非常口、トイレなどの標識(ピクトグラム)は、誰が見ても分かるようにデザインされています。言語を問わず、幅広い人に理解してもらうことが重要だからです。非常口の案内や、女性トイレ・男性トイレなど、街を歩けばたくさんの標識(ピクトグラム)が使われているのが分かります。

信号機

交通の安全を守る信号機には、誰もが気づき、理解できるデザイン、機能が必要です。例えば、音響式信号機には、鳥の鳴き声で知らせる擬音式と音楽が流れるメロディー式があります。擬音式では「カッコー」と「ピヨピヨ」を使い分け、方角を分かりやすくする工夫がされています。また、青信号の時間を延長する歩行者用ボタンは、素早い移動が困難な人が安心して移動できる機能です。信号灯では色の判別が苦手な方が分かりやすい高輝度LEDなども使用されています。

その他、文字入力だけでなく、音声入力にも対応した検索サイトなどもユニバーサルデザインの考え方が生かされた例といえるでしょう。

「モノ」だけでなく、情報を知るための手段であるWebサイトの世界にも、ユニバーサルデザインの考え方が浸透し始めています。

ユニバーサルデザイン商品の重要性

実例を見てきたように、それぞれの場所、ジャンルの中で、ユニバーサルデザイン商品は重要な役割を果たしています。
日本においては2020東京オリンピック・パラリンピックを前に、内閣府が「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を策定しました。これは、オリンピック・パラリンピックを契機に、「心の障壁を取り除く教育を進め(心のバリアフリー)、さらには物理的・情報に関わる障壁を取り除く取り組み(ユニバーサルデザイン)を推進することで、共生社会の実現を目指す」というものです。

私たちは、共生社会の実現のために、ユニバーサルデザイン商品の重要性を認識し、幅広いジャンルでユニバーサルデザイン化を進める必要があるでしょう。また、商品や環境のユニバーサルデザイン化だけではなく、心の中で作られる障壁・障害も同時に取り除かなければなりません。

身近になったユニバーサルデザイン商品。しかし、まだ知られていない商品も

ユニバーサルデザインは特殊な概念で、特別な工夫やアイデアが必要だと身構えられがちですが、実は身近なところにあり、当たり前の設計として浸透しているものも少なくありません。本記事で実例として紹介した通り、広い改札(車いすでも通りやすい)、トイレなどの標識(言語に関係なく理解できる)、音の出る信号機などは、意識せず利用しているのではないでしょうか。

反面、まだ知られていない優れたユニバーサルデザイン商品があるのも事実です。機能が優れているだけではなく、子供たちにも利用されやすい、かわいらしいデザインを採用している商品も開発されています。
必要としている人たちに確実に届くよう、ユニバーサルデザイン商品の情報を伝える、広げていく必要があることも忘れてはいけません。

Webサイトにもユニバーサルデザインを

Webサイトにおいても、ユニバーサルデザインに基づいたデザインは重要です。現在、多くの人がスマホ、パソコンを通じ、情報収集にとどまらず、さまざまなサービスを活用しています。そのインターフェースとなっているのが、Webサイトだといえます。それだけにユニバーサルデザインは極めて重要です。

  • マルチデバイス、マルチOSへの対応
  • カラーデザインでの配慮
  • 文字デザインでの配慮

マルチデバイス、マルチOSへの対応

1つ目のポイントはマルチデバイス、マルチOSへの対応です。最も顕著なケースはパソコンでの表示を前提としたデザインとスマホでの表示を前提としてデザインは全く違うということです。縦横比、画面の大きさ、閲覧環境など、全く異なります。レスポンシブ対応を取るなど、それぞれの観光で最適な表示になるよう、調整しておく必要があります。ユーザーはどのようなデバイスで、どんなOSでWebサイトにアクセスするのか、自由に選べなければなりません。

カラーデザインでの配慮

Webサイトのカラーデザインを決める際、企業のコーポレートカラー、サービスのイメージカラーなどを基準とするケースがほとんどですが、そこに色覚障害者へ配慮したカラーデザインを取り入れる必要があります。健常者には当たり前に見分けることができる色の違いが、見分けることができないケースがあるのです。コントラストを強める、境目が分かるようなデザインにする、色だけではなく模様で変化をつけるといった工夫が求められます。

文字デザインでの配慮

色と同様に、「文字のフォント」でも工夫が必要です。近視、遠視、弱視、乱視、老眼など、目の状態によって、文字にも見やすい文字、見にくい文字があります。最近では、その点に配慮したUDフォント(ユニバーサルデザインフォント)が使用される機会が増えています。
また、フォントの選択にとどまらず、文字の間隔、行間の調整でも可読性は変化します。一行の文字数も多すぎると可動性が低下します。

まとめ

今回は、実際に活用されている「ユニバーサルデザインの商品」を紹介しました。今後、私達の身の回りにユニバーサルデザインの概念を取り入れた商品がより増えていくでしょう。仕事を進めていく上でのヒントになれば幸いです。

ニジボックスは、Webサイトにもユニバーサルデザインの考え方を取り入れ、あらゆる人にとって快適なデザイン設計をご提案します。下記資料もご覧ください。

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■関連記事:ユニバーサルデザインについては、こちらの記事でも触れています。ぜひ参考にしてみてください。
インクルーシブデザインとは?ユニバーサルデザインとの違いや原則を事例も交えて解説!

監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

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