なぜ現場のAI活用は“成果”につながらないのか?効率化を「事業成果」に変えるAX・業務再設計

AI導入を事業成果へとつなげたい、
本質的な業務改善をしたい方必見!
ニジボックスのAX支援『業務AIシフト』をご紹介
多くの企業で生成AIの導入が進み、現場レベルでの作業効率化は着実に前進しています。
一方で、経営層やDX推進者からは「導入はしたが、期待したほど事業成果や業績向上につながっていない」「現場の工数は浮いているはずなのに、仕事の進め方自体は変わっていない」という声も少なくありません。
現場でAIが使われているのに、なぜ事業インパクトにつながらないのか。その理由は、AI活用が既存業務の一部を置き換える効率化(部分最適)で止まっており、「AIを活用して会社・事業としてどんな成果や付加価値を生み出すのか」という目的の定義と、それを実現するための業務フロー自体の再設計(BPR)が抜け落ちてしまっていることにあります。
本記事は、株式会社ニジボックスが主催したイベント『なぜ現場のAI活用は“成果”につながらないのか 〜効率化で終わらせないAX/UX設計〜』の講演とディスカッションをもとに構成しています。アーカイブ動画(YouTubeで視聴)と、イベント詳細(connpass)も公開されています。
現場の効率化を組織成果へと引き上げる「次の一手」への気づきをお届けします。
目次
この記事で分かること
- 「効率化が成果につながらない」構造原因:AI導入で「浮いた工数」がなぜ事業インパクトに直結しないのか、現場で起こりがちな実態と「停滞期」のリスク。
- AX/UX視点による業務再設計:作業単体の自動化にとどまらず、顧客体験(CX)と従業員体験(EX)を起点に「AX 5段階フレームワーク」で上流から見直す考え方。
- 現場・職種を超えた人の役割変化:タスク指示から「問いの投げかけ」への変化、AI時代におけるマネジメントと職種横断のあり方。
- 全社最適化へ導く一気通貫アプローチ:個別最適の壁(停滞期)を越え、組織全体の資産・成果へと引き上げる「AXアセスメント・支援」の紹介。
登壇者プロフィール
- 山田英樹:株式会社ニジボックス 代表取締役
- 古川陽介:株式会社ニジボックス 開発統括本部 デベロップメント室 室長
- 吉川聡史:株式会社ニジボックス UI UXデザイン統括本部 UX・ディレクション室 室長
- 岸廉太郎(モデレーター):株式会社ニジボックス 事業統括本部 クライアントソリューション部 部長
「AIは使っているが、仕事の進め方そのものは変わっていない」そう感じる方は少なくないかもしれません。イベントでは、この状態から一歩踏み出すための考え方と、現場のリアルな課題感が共有されました。
1. 「AIを入れたが成果が出ない」理由――約2割の企業しか到達できていない業務再設計の壁
導入率拡大の裏で広がる「投資対効果」のギャップ
イベントのイントロダクションで、モデレーターの岸はPwC社・パーソル総研社・McKinsey社の実態調査データを紹介し、日本企業におけるAI活用の現在地を整理しました。生成AIの導入率は急伸しているものの、実際に業績や効果を実感できている企業はごく一部にとどまっています。

岸は、企業が直面するAI活用のフェーズを3つに分類して説明します。

多くの企業は現在、現場の裁量でツールを使う「Phase 1:場当たり導入期」にいます。ここで適切な手立てを講じなければ、チーム単位でPoCが乱立して再現性がなくなり、部門間の壁に阻まれて成果が出ない「Phase 2:停滞期」へと突入してしまいます。全社最適化(Phase 3)へ進むためには、今のうちにワークフロー全体を見直しておくことが不可欠です。
なぜ「20%の効率化」が事業インパクトに変換されないのか
現場では具体的に何が起きているのでしょうか。古川と吉川は、自社や現場で生じているリアルな現象を語ります。
「開発現場でもAIで数日かかっていた作業が2時間とかで終わるような効率化は起きています。ですが、作業が早く終わっても労働時間が減るわけではなく、空いた時間が優先度の低い『やったほうがいい程度のこと』に吸収されてしまっているケースが多いです」(古川)
これに対し、代表の山田は「効率化」の定義そのものを捉え直す必要性を指摘します。
「生産性を上げることの一丁目一番地は『やらないことを決める』ことです。その上で『空いた時間を必要なことに置き換えられているか』ということです。20%効率化したという報告を受けた際、単に作業時間が減っただけでは、極論『人員を減らして原価を下げる』という話にしかなりません。ですが経営が求めているのは、作業量を減らしたうえで、アウトプットの質と量を増やし、どう売上や事業価値につなげるかです。ここをつなげる視点が抜けたまま不要な業務を手当たり次第に増やしていては、本末転倒になってしまいます」(山田)
2. 作業代替で終わらせない「UX起点のAX」と5段階フレームワーク
手が出しやすい「実装・設計」から、本質が問われる「構造・要件・戦略」へ
では、どうすれば作業効率化を事業成果へと結びつけられるのでしょうか。ニジボックスでは、AIによる変革(AX:AI Transformation)を5つの段階で捉えています。

多くの企業は「実装(ツール作成)」や「設計(個別のワークフロー)」から手をつけがちです。しかし、個人単位で便利になるものの組織成果に結びつかない原因は、その下層にある「構造・要件・戦略」が抜け落ちているためです。
「何のために効率化するのか」「効率化した先で何に再投資するのか」「どこまでAIに委ねるのか」という戦略やルールに向き合わない限り、AXはツール導入止まりで終わってしまいます。事故を防ぎ成果を出すための起点となるのが、ニジボックスが提唱する「顧客体験(CX)と従業員体験(EX)」の両面からの業務再設計です。
トップダウンとボトムアップをつなぐ「3つのレイヤー」アプローチ
ただし、経営陣がトップダウンで全社の戦略や組織構造を一気に塗り替えるのは難易度が非常に高くなります。そこで重要になるのが、「経営」「部署・事業部」「プロジェクト(PJ)」の3つのレイヤーで捉えるアプローチです。

現場(PJ単位)での実践と検証をボトムアップで積み上げることで、経営陣が意思決定を行うためのリアルな材料が揃います。探り当てた定まった戦略が再び現場の拠り所となり、PJへと降りていく。この相互循環を回すことこそが、事業インパクトにつながるAXを実現する現実的な手法です。
3. 現場・職種で起きている変化と「AI時代の人の役割」
単なる作業者から「上流・ビジネス領域」への染み出し
AIツールの急速な進歩(『Claude Code』など)により、現場での職種の定義そのものが変わりつつあります。
「開発領域では、コードを書くだけの作業はAIへ置き換わっていきます。これからのエンジニアやデザイナーは、単にものを作ったり技術を追求したりするだけでなく、ビジネスの構造やドメイン理解、さらには企画の上流まで足を踏み入れていく必要があります」(古川)
吉川も「現場の支援に入るとよく起きるのが『優秀で自力で作れる人ほどAIを使わない』という現象です。今の期待値(スピードや質)を自力でクリアできるからです。しかし、これからは今まで通りのスピードで作ることで満足するのではなく、浮いた時間でより高い『成果にコミットすること』へ意識を変えていかなければならない」と語ります。
言葉で仕様を語るだけでなく、「AIでサクッと作った動くプロトタイプ」をベースに会話や試行錯誤をすることで、意思決定のスピードを速くすることができます。
こうした上流の思考と実務の効率化を組み合わせた進め方が、実際のプロジェクトでの成果につながっていきます。
マネジメントの転換――タスクではなく「問い」を渡す
人の役割が「作る」から「成果にコミットする」へ変わる中で、マネジメントのあり方も変化を迫られています。
岸から「AIと壁打ちできる上司の中で作業が完結してしまい、部下へ渡すボールや成長機会が減っているのではないか」という問いが投げかけられると、吉川は日常のマネジメントで意識している工夫を明かしました。
「部下に対して『この作業をやっといて』というタスク単位で渡すのをやめました。そうではなく、『こういう問いを解きたいから、あなたは何をすべきか考えて動いてほしい』という“問い”の単位で渡すように注意しています。部下がAIと壁打ちして構造化し、持ってきた提案に対してフィードバックループを回す。これがAI時代における新しい成長方法だと感じています」(吉川)
効率化と「遊び(クリエイティビティ)」の両立
また、山田と古川は「合理性だけで業務を削ぎ落とす危険性」についても言及しました。
「合理的なことばかり追い詰めて『いらないものは全部削って効率化してやろう』というだけでは、つまらないですよね。数字の世界だけでなく、人間同士の対話やアナログな世界もちゃんと作っておくことが、結果としてクリエイティブなプラスアルファを生み出します」(山田)
「例えばUIのアコーディオンメニューを押したとき、どうフワッと開けば人間が『気持ちいい』と感じるか。こういった感覚値への指摘は、AIには今はまだ苦手です。削れる無駄はAIで徹底的に削りつつ、生まれた時間で人間同士の対話や人間ならではの『気持ちよさの追求』や新しい実験にチャレンジするアナログな世界を残すことが、結果として新しい価値を生む鍵になります」(古川)
4. まとめ | 個別最適の「点」を、組織成果の「面」へと引き上げるために
横断的な視点と第三者アセスメントによる「詰まり」の解消
パネルトークの終盤、山田は「ひとつの部署や職種だけで効率化を進めても、前後工程やレビュー待ちでスタックしてしまえば組織全体の売上は上がらない」と指摘し、組織全体を俯瞰してボトルネックを特定することの重要性を強調しました。
ですが、自社内だけでは「自分たちは進んでいるのか遅れているのか」「どこにプロセスの詰まりがあるのか」を客観的に捉えることは容易ではありません。


ニジボックスでは、制作・開発の現場やDX/AI推進部門を対象に、上記の6つの軸で「現状とあるべき姿のギャップ」を可視化する「AXアセスメント」を提供しています。第三者の目を入れることで、組織横断のボトルネックを素直に洗い出し、次に取り組むべきテーマを明確にすることが可能です。
補足|現場のAI活用・組織推進に関するQ&A
AI活用を個別の作業効率化で終わらせず、事業成果や組織全体の成長へつなげる上でのポイントについて、Q&A形式で整理・解説します。
Q1. 個人や特定チームでのAI活用から、組織全体の成果へスケールさせる際の鍵は何ですか?
A1. 部門間をまたぐ「意思決定の停滞(ボトルネック)」の解消と、共通ゴールの設定です。
個人や特定職種で作業スピードが向上しても、前後の工程や上司のレビュー待ちが従来のままであれば、組織全体のスピードや業績は変わりません。個別最適の効率化に閉じず、「リリース期間の短縮」や「顧客提供価値の向上」といったプロジェクト全体の共通目標を掲げ、部門横断で業務プロセスの詰まりを解消することが不可欠です。
Q2. AIが生成や下書きを行う時代に、若手・ジュニア層の育成はどう進めるべきですか?
A2. タスク(作業指示)ではなく「問い」を渡し、AIとの試行錯誤を回させることです。
コード作成や下書きなどの単純作業はAIが担うため、若手には「この課題を解くためにどう動くべきか」という“問い”を渡します。若手自身がAIと壁打ちして構造化した提案に対し、上司がフィードバックを行うことで、AIのアウトプットを正しく評価・判断する高度な思考力や専門性が育ちます。
Q3. 「AIを現場で一通り使いこなせるようになった」後、次に取り組むべき具体アクションは何ですか?
A3. 「やらない業務」を定義して余白を作り、その工数を事業成果に直結する上流業務へ再配分することです。
効率化で浮いた時間が優先度の低い雑務に吸収される「本末転倒」を防ぐため、まずは不要な業務を削減・定義します。その上で、創出した時間を「顧客理解・対話」や「企画上流への踏み込み」、さらには「人間ならではの感性・品質の追求」といった売上や事業成長につながる領域へと組み替えていくことが重要です。
成果につなげるAXへの第一歩
AIは単なる作業削減のツールではなく、業務総量を抑えながら事業の売上や価値をジャンプさせるための強力なレバーです。
ツール導入や一部の工数削減という「点」の取り組みで終わらせず、顧客体験・従業員体験(UX)を起点とした業務フローの再設計(AX)を通じて、組織全体としての「面」の成果へと引き上げていくこと。それこそが、AI導入の停滞期を突破し、確実な事業インパクトを生み出すための本質的なアプローチです。
ニジボックスでは、UX(ユーザー体験)の視点と業務プロセスの理解を組み合わせ、ビジネスを成長させる業務改革(BPR)にAIを掛け合わせて推進する支援を行っています。「何から始めればよいか分からない」「現場のAI活用の現状を把握したい」という段階からのご相談も歓迎しています。

進め方や詳しい事例をまとめた資料を用意しています。
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ぜひお気軽にご相談ください。
監修者
吉川 聡史
2011年11月にイラストレーターとしてニジボックスに入社し、クリエイティブ領域を中心にアニメーター、デザイナーなど幅広く担当。その後ディレクションに職域を広げていき、Webディレクターや映像ディレクターなどを経て、リクルートの新規事業の伴走や大規模案件においてのマネジメントなど複数経験し今に至る。 前職は漫画家。最新の技術(ツール)を用いた、AI×UXのあり方について技術検証を行い、それらの取り組みをXやnoteを使って発信。

