【保存版】知っておくと便利!ステージ別、新規事業立案のためのフレームワーク
「ビジネスにUXが重要な理由」を事例を交えて解説!
新規事業のフレームワークには、さまざまなものがあります。
しかし、それらを闇雲に探して使うだけでは、新規事業の立案は思うように進みません。
よって、適切な場面で、適切にフレームワークを使うことができるように、この記事では新規事業立案のステージ別で「使えるフレームワーク」を紹介します。
目次
新規事業を立案する前に考えるべきこと・知っておくべきこと
みなさんが今まさに、新規事業という「ものすごく難易度の高そうなもの」の立案に向き合っていることとしましょう。
最初に起こす具体的なアクションの手がかりとして、既存のフレームワークを使ってみようとするのは賢いアプローチだと思います。
そしてさらに、以下の4つの点に注意していただくと、より効率的にアイデアを現実のものにして行けるはずです。
なぜ新規事業をやるのか?
一般的に、新規事業の多くは「失敗」すると言われています。
企画倒れになるもの、資金が底をついて断念するもの、利益が出ず撤退するものなど、失敗の理由はさまざまですが、プロジェクトメンバーが「なんとなく」やっているものは、失敗する可能性が高いと言ってもいいのではないでしょうか。
新規事業に臨む際は、「どんな課題を、どう解決するのか」を常に意識しておくことが重要です。
それはつまり、
新規事業の社会に対する意義=「なぜその新規事業をやるのか?」を明確にする、ということです。
よって、新規事業を創りたいと考えている人は、まずこの目的の再確認をする必要があります。
時間・お金・人…「制約条件」を整理する
ヒト・モノ・カネ、そして時間というリソースは限られています。
新規事業に限らず仕事には必ず予算があります。
どれくらいの人を動かせて、いつまでにやるのか、制約条件があることを理解しておきましょう。
リソースを適切に配分し、より効率的に進めていくことも、新規事業を立案するためには重要です。
新規事業立案の各ステージを理解する
各項目ごとの解説は後述しますが、新規事業を立案する際にステージを6段階に分けると、抜け漏れなく計画的に進めることができます。
上からマクロ~ミクロの視点(事業を取り巻く環境~商品・サービスのユーザー価値)へ順番に観ていくイメージです。
- 【事業環境分析】大まかに新規事業を取り巻く環境を分析
- 【市場選定】新規事業の立ち位置を明確化
- 【事業価値分析】新規事業の魅力を客観的に分析
- 【事業構造整理】新規事業に関わる人やお金の流れを整理
- 【顧客検証】想定顧客イメージを具象化
- 【仮説検証】仮説を実証し、事業化の可能性を見極める
フレームワークはあくまで手段
一点注意しておきたいのは、フレームワークを使うことはとても重要ですが、そのこと自体を目的としてはいけないと理解しておくことです。
目的はあくまで、新規事業を成功させること。
常に、俯瞰的な視点は忘れないようにしましょう。
「事業環境分析」をするときに使える新規事業のフレームワーク
それではここから、上記新規事業立案の6つの各ステージごとに、活用できるフレームワークを紹介していきます。
まずは、「事業環境分析」のときに使いたい2つのフレームワークです。
【3C】で全体像を捉える
3Cとは、下記3つの視点から事業環境の大枠を捉えるのに便利なフレームワークです。
- Customer(顧客・市場)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
各視点において一つ一つ情報を挙げることで、事業環境を整理していきます。
- Customer
・事業の顧客となり得る人はどんな人か
・顧客のニーズはどんなものか - Competitor
・競合の数はどれくらいあるか
・競合のリソース(資本、人員等)
・競合の強み、弱み - Company
・自社のリソース(資本、人員等)
・自社の強み、弱み
競合についての情報を収集するときは、
「直接的な競合」「間接的な競合(価値競合)」
双方を見ることで、より幅広い事業環境を捉えることができます。
例えば、漫画アプリの新規事業を考えるとき、直接的な競合は既存の他漫画アプリです。
しかし、「可処分時間を楽しく過ごすサービス」の観点で考えると、間接(提供価値)的に「動画アプリ」「ゲームアプリ」なども競合になります。
【SWOT】で勝ち筋を見つける
3Cの観点で整理した情報から、さらに分析を進めます。
SWOTとは、自社と競合・顧客の情報から、新規事業のKSF(成功要因)を導き出すフレームワークで、下記4つの要素があります。
- Strength(強み)=内部要因×ポジティブ要素
- Weakness(弱み)=内部要因×ネガティブ要素
- Opportunity(機会)=外部要因×ポジティブ要素
- Threat(脅威)=外部要因×ネガティブ要素
「強み」「弱み」は、3C分析の「自社」とイコールです。
「機会」「脅威」は、3C分析の「顧客」「競合」から導くことができます。
新規事業立案においては特に、「強み」「機会」に着目することで、新規事業の勝ち筋を見極めることが重要です。
「市場選定」をするときに使える新規事業のフレームワーク
大まかな事業環境を把握したら、次はもう少し細かく市場の状況を分析しましょう。
【STP】で立ち位置を明確にする
STPとは、下記3つの頭文字をとって、新規事業における自社の立ち位置=競合との差別化ポイントを明確にするためのフレームワークです。
- Segmentation=ニーズのグループ化
- Targeting=狙うグループ選定
- Positioning=自社の立ち位置の見極め
STP分析は、上から順に以下のように進めていきます。
【1】 Segmentation
市場全体から、同じようなニーズを持っている顧客を「グループ」にする。
↓
【2】 Targeting
1でグループ化した中から、自社の新規事業における商品・サービスを最も必要としてくれそうなグループを見つける。
↓
【3】 Positioning
2でターゲットに設定したグループに対して、競合より魅力的に見える戦略を考える
「事業価値分析」をするときに使える新規事業のフレームワーク
次は、「新規事業の価値」を分析するときのフレームワークです。
4P、4Cというふたつのフレームワークを使いますが、これらは独立して使うというよりは、ふたつをミックスして分析することが重要です。
【4P】で商品・サービスの特長を整理
4Pとは「自社側の視点」から、新規事業の商品・サービスの特長を整理するときに使うフレームワークで、下記4つのPを示します。
- 製品(Product)
- 価格(Price)
- 流通(Place)
- 販売促進(Promotion)
【4C】で顧客からの見え方を整理
4Cは「顧客側の視点」から、新規事業の商品・サービスのメリットを整理するときに使うフレームワークで、下記4つのCを示します。
- Customer Value(顧客価値)
- Cost(顧客にとっての経費)
- Convenience(顧客利便性)
- Communication(顧客とのコミュニケーション)
【4P×4C】で新規事業の魅力を明確に
4Pと4Cの各項目はそれぞれ対応しています。
4Pにおける「事実情報」を、4Cにおける「顧客体験」と照らし合わせながら分析しましょう。
新規事業を進めていく上で陥りがちな状況の一つに、「自分たちの事業は世界一素晴らしい、絶対成功する!」と思い込んでしまうことがあります。
特に事業の具体的な商品・サービスを開発する際に陥りがちです。
しかし、そこで一度冷静になって、4Pと4Cを掛け合わせて客観的に分析することが重要です。
「素晴らしい」と思っていた商品・サービスが、顧客目線で考えると「意外と魅力的ではない」と見えることはよくあることです。実際に事業化する前にこのことに気づくことができれば、早い段階で商品・サービス内容を見直すことができます。
「事業構造整理」をするときに使える新規事業のフレームワーク
ここで一旦、事業全体の構造を俯瞰して整理してみます。
【ビジネスモデルキャンバス】で事業構造を俯瞰する
ビジネスモデルキャンバスとは、ビジネスモデルを可視化できるフレームワークです。
価値提案を中心に据え、左側が組織体制をはじめとする自社の要素、右側がマーケティングの要素、下2つが収益とコストの構造を示しています。
各要素を記入する順番は決まっていませんが、以下の順で進めると整理しやすいと思います。
ほとんどの要素を、ここまで見てきたフレームワークで出した情報を足掛かりとすることができます。
- 顧客
新規事業が対象とする顧客
⇒3CのCustomer - 提供価値
顧客に提供する価値
⇒4P×4Cで明確にしたもの - チャネル(販路)
販売経路や、商品・サービスを顧客が認知する流れ
⇒4CのCommunication - 顧客関係
顧客とどのような関係を構築するか
⇒4CのCommunication - 収益
どのように収益を上げるか、利益率はどれくらいか
⇒SWOTやSTPで分析して算出 - キーリソース(カギとなる資源)
ヒト、モノ、カネ、情報などの中から、提供価値を生み出すもの
⇒3CのCompany - 主要な活動
提供価値のためのアクション
⇒STPのPositioningなど - キーパートナー
自社にないリソース・活動を提供してくれるパートナー
⇒SWOTのWeaknessを埋めてくれるもの - コスト
価値を提供するのにかかるコスト
⇒キーリソース、主要な活動、キーパートナーにかかるコスト
ビジネスモデルキャンバスについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
「顧客検証」をするときに使える新規事業のフレームワーク
課題を抱えているのは、顧客です。
だからこそ、顧客についても深い理解をしなければなりません。
【ペルソナ分析】で顧客像を明確に
ペルソナ分析とは、顧客をより深く分析するためのフレームワークです。
新規事業の良質なお客様となってくれそうな顧客イメージを明確にすることで、より商品・サービスを効率的にアピールすることができます。
そんな顧客の人物像を描くには、年齢・性別・職業など基本的な要素はもちろん、趣味・愛読書・好きなタレントなどより「個人」に準拠した要素も明確にすることが重要です。
さらには、口癖・悩み・恋愛に対する価値観など、行動や心理傾向も思い描くことで、商品・サービスへの共感ポイントを作りやすくなります。
実際の分析では、
【1】 大まかなターゲット層に対して情報収集
↓
【2】 データ分析、情報のグルーピング
↓
【3】 物語風にペルソナ作成
と、コスト・時間がかかりますが、商品・サービスデザインやマーケティングなど、全てにおいて方針を固めやすくなるメリットがあるので、取り組んでおくべきです。
ペルソナについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
「仮説検証」をするときに使える新規事業のフレームワーク
ここまでのフレームワークは、全て「仮説」を立てるために使ってきました。
事業を取り巻く環境は今どうなっているのか、どんな顧客層を狙い、どのように勝ち筋を見つけていくかなど、あくまで「おそらくこうだろう」を探るためのフレームワークを紹介しました。
最後は、ここまでで立てた仮説を「検証」するためのフレームワークです。
これを使うことで、新規事業が事業として成立するか、見極めていきましょう。
【ストーリーボード】でユーザーテストする
ストーリーボードとは、商品・サービスを通して顧客が体験する「ストーリー」を、視覚的に描写したものです。
さまざまなシーンで利用できるフレームワークですが、仮説検証においては商品・サービスを実際に作る前に、ユーザーに利用体験をイメージしてもらえるというメリットがあります。
商品・サービスを利用するシナリオを漫画のように見せられるので、単にスペックだけの商品説明よりも、よりリアルなユーザーの声が聞けるのです。
ストーリーボードについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
【MVP】で小さくはじめてみる
MVPとは、「Minimum Viable Product」の略で、日本語にすると「実用最小限の製品」を意味します。
まだ仮説しか立てていない段階で、商品・サービスを事業成立後と同様に作ってしまうと、それが市場に受け入れられなかったときに大きな損失となります。
そこで、シンプルな商品・サービスを開発して、それを顧客に使ってもらい、有用性をフィードバックしてもらうのです。
よく実例として挙げられるのが、「車」のMVPです。
車の実用性とは、「徒歩よりも楽に、早く移動ができること」なので、例えばその実用最小限の製品として「スケートボード」を作ります。
これを利用してもらい、顧客に受け入れられたら「車のニーズがあるかもしれない」と判断するのです。
MVPについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
UXの視点で、フレームワークを使いこなす
はじめに、新規事業を立案するときは「どんな課題を、どう解決するのか」が重要と述べました。
つまり、まず「課題=ニーズ」があることを見つけないと、新規事業をはじめることができないということです。
ニーズとは、時代とともに変化していくものです。
新規事業のタネとして、「今何が求められているのか」を見極めるために、
デザイン思考やマーケットイン・プロダクトアウトの考え方でアイデアを生み出すことも重要です。
下記の記事もぜひ参考にしてみてください。
ビジネスフレームワークを自分のものに!
どんな手法やフレームワークでも、ただそれを知っているだけではビジネスの結果には結びつきません。
結果として実らせるためには、実際に実践する中で経験を積み、手法を自分のものにしてゆく必要があります。
下記資料では、新規事業の立ち上げからリリースまでを具体的にどのように進めるべきなのかについて、よくあるご質問を交えながら解説しています。
ぜひUXリサーチを用いた事業推進への理解を深めることにお役立てください。
また、ニジボックスは、社内新規事業立ち上げのご支援にも携わっています。
■株式会社ネットプロテクションズ あと値決めUX VI UI Design
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元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動
コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。
X:@junmaruuuuu
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