『UXリサーチの最適解 〜職域と機能から考えるベストプラクティス〜』
ニジボックスが主催するイベント「BUSINESS & CREATIVE」では、毎回ビジネスとクリエイティブに関する現場発・最前線の情報を発信しています。
今回のテーマは、「UXリサーチの最適解 〜職域と機能から考えるベストプラクティス〜」。
昨今注目を集めるUXリサーチを日々実践している3名を登壇者としてお招きし、“現場発”の声からそのあるべき姿を明らかにしていきます。
UXリサーチャーやUXデザイナーはもちろん、プロダクトオーナー、プロダクトマネージャー、ディレクターやマーケターなどにもおすすめの内容です。
この記事ではイベントのエッセンスを詰め込み、わかりやすくまとめました。
「これからのUX」を考えるためのヒントが満載なので、ぜひ参考にしてください。
目次
UXリサーチの最適解は、どこにあるのか?
イベントのオープニングは、モデレーターを務めたニジボックスの丸山潤による問題提起からスタートしました。
昨今、グーグルではUXリサーチ専門の部隊がいて、世界中でグーグルマップのリサーチを徹底的にやっているそうです。
そんな、UXリサーチの専門部隊が組織にあるのはいいことなのか?
新規事業を進めていくにあたって、UXリサーチに関してどんな体制で、どんな職種の人をアサインすればいいのか?
最近「UXリサーチ」の話をよく耳にする中で、その最適解は何だろうと考えたことが、今回のテーマを掲げるきっかけでした。
登壇いただく3名のお話を通して、みなさんと一緒にその答えを探していければと思います。
受託UXリサーチとその先/株式会社ニジボックス 山本葉月
最初に登壇したのは、ニジボックスでUXデザイナーとして活躍する山本葉月です。
受託で数多くのUXリサーチを行っているリアルな体験をもとに、目指すべき姿をお話しました。
「上手くいく受託案件、上手くいかない受託案件」
まずは、受託UXリサーチ案件の傾向を俯瞰的に観ることで、上手くいく案件と上手くいかない案件はそれぞれどんなものなのかを明らかにしたいと思います。
私が目指していきたい軸は2つあります。
1つは「顧客満足度」です。こちらが高いほどリピートにもつながるので、非常に大事だと考えています。
もう1つは「サービス・プロダクトがリリースされるかどうか」です。実際にリリースされれば、弊社の実績として見せることができますし、ブランディングにもつながります。
これらの軸で分析すると、大きく2つのパターンが見えてきます。
1つ目のパターンは実際に多いケースで、<顧客満足度が低く、なかなかリリースされない>というものです。
一言でいうと、「あまり上手くいっていない」と肌感でも感じられる案件ですね。
もうひとつは<顧客満足度が高く、スムーズにリリースされる>もので、受託のあるべき姿だと思います。
1つ目のパターンとは逆で、「上手くいっている」と感じる案件です。
今回は、この2つのパターンをそれぞれ、実例を用いて解説します。
「“UXリサーチ代行”をしてしまうと受託案件は上手くいかない」
まずは、<顧客満足度が低く、なかなかリリースされない>、つまり実際によくある「上手くいっていない」案件の実例から見ていきましょう。
こちらの表のように、大手金融会社様から「新規アプリのリリース前に、ユーザビリティテストをしてほしい」というご相談をいただいた案件です。
目的は「無料/有料会員の獲得」というざっくりとしたものでした。
結論からいうと、100ページに渡るレポートを提出したにも関わらずお蔵入り、アプリのリリースも遅々として進まず、悲しい結果となってしまいました。
分析してみると、その原因は2つありました。
1つは、案件を進める上でのスコープに理想と現実のギャップが生じたことです。
もう1つは、UXリサーチの代行をさせられてしまったことです。
1つ目の原因について詳しく解説します。
理想のスコープは、アイデアニーズやビジネスモデルの検証がなされた段階で、弊社がユーザビリティ検証を行うという流れです。
しかし、現実はユーザビリティ検証の前段階が未検証だったため、サービスのコンセプト検証やビジネスモデル検証から提案をしなければならない状況でした。
結果的に、コンセプト検証から実施したものの、「競合優位性が明らかになっていない」などのユーティリィティ観点から、ユーザビリティ観点まで膨大な課題が明らかになり、アプリリリースが延期となりました。
次は、もう1つの原因「UXリサーチの代行」についてです。
本案件でのリサーチフローは、テスト設計~レポーティングまで全ての実務を弊社が担い、クライアントにはそれを確認してもらうだけ、というものでした。
このような「リサーチの代行」になってしまうと、クライアントの関わり方は成果物の確認のみとなり、主観で判断されてしまい案件が上手くいかないことが多いです。
「上手くいく受託案件は、顧客と協業できている」
次は、<顧客満足度が高く、スムーズにリリースされる>で、上手くいった案件をご紹介します。
クライアントは大手システム開発会社様で、「アイデア創造からプロトタイプ制作まで伴走してほしい」というご相談内容でした。
こちらは、先ほどの上手くいかなかった案件と逆で、想定通りのスコープでクライアントと一緒に進めていく、非常に手ごたえのある案件となりました。
シンプルにアイデア創造から本開発まで、全てのフェーズを執り行っています。
リサーチフローは、全体設計を弊社が行い、インタビューやアンケートの実施はクライアントに担当していただき、弊社は同席する形で進めました。
その後のアイデア創造やコンセプト策定も、ワークショップのような形でクライアントと一緒に行いました。
つまり、UXリサーチの協業をさせていただいたのです。
アウトプットも、分厚いレポートは作らずに、ポストイットやストーリーボードを用いたより実践的な内容でした。
「クイックUXリサーチが協業体制への第一歩に」
さて、ここまで2つの事例を見てきて、後者のような「あるべき姿」に近づけるためにはどうすればいいかについて、私の考えを紹介させていただきます。
それはずばり、クイックUXリサーチを積極的に活用することだと思います。
UXリサーチを本格的にやろうとすると、金額・時間的に莫大なコストがかかってしまうこともあります。クイックUXリサーチであれば、コストをかけず短期間で行うことができ、クライアントとの協業体制が作りやすくなります。
ニジボックスでは、具体的なクイックUXリサーチの方法としてKA法(※)を用いたオンラインアンケートを活用しています。
先ほど取り上げた上手くいった事例の案件では、アンケートの対象者をクライアントや弊社の社員、つまり「すぐに話を聞ける身内」にヒアリングしました。
あとは、集めたアンケートを出力し、貼り出して分析するだけなので、リサーチからアイデア創出まで約3週間と、非常に短期間で行うことができました。
「UXが育つ土壌づくりが、案件成功の秘訣です」
最後に、まとめとしてニジボックスのめざす姿について解説させていただきます。
こちらの表は、今回ご紹介した2つの案件について改めてまとめたものです。
「あるべき姿」となりやすいクライアントは、ユーザー中心の思想を持たれていることが多いです。
そのようなクライアントだと、弊社の役割は「UXリサーチを導入し、協業を働きかけるもの」となるので、進行もリリースに向けてスムーズですし、結果的に顧客満足度も高くなります。
以上を踏まえて、UXリサーチ受託案件が成功する秘訣は、クライアントにUXの重要性を理解していただくことに尽きると思います。
これができれば、リサーチャーとクライアントの足並みがそろい、手戻りも少なくなります。
そこでUXリサーチャーが常に意識しておくべきことは、クライアントに対して組織的にUXが育つ土壌を作るための働きかけをすることです。
弊社でも、デザイン思考のワークショップや、OJT形式でのリサーチなどの支援によって、その土壌作りのお手伝いをさせていただいています。
カスタマージャーニーマップを共通言語に、UXリサーチをアウトプットにつなげたい話/Qrio株式会社 神谷郁
次に登壇したのは、Qrio株式会社でプロジェクトマネージャーを務める神谷郁さんです。
「今までのキャリアの中で、人の生活になくてはならないモノを作る想いでやってきました」と語る神谷さんが、UXリサーチ(定性調査)のアウトプットへのつなげ方についてお話しいただきました。
「私がこれまで感じたUXリサーチの3つの課題」
みなさんは、UXリサーチにどんな課題を感じていますか?
よく聞くのは、リサーチ結果をどうデザインに反映していいかわからない、リサーチとデザインに乖離が生まれてしまう、といった声です。
私がこれまでUXリサーチを経験してきた中で感じた課題は、3つあります。
1つ目は、UXリサーチがアウトプットにつながるまでに時間がかかるという課題です。
特にプロジェクトやチームの規模が大きくなると、リサーチ~アウトプットのリードタイムが数か月とか、長いものだと数年単位でかかるものもありました。
2つ目は、定性調査をしたときに一人のユーザーの意見をどこまで信じていいか分からない、というものです。
そして3つ目は、定性調査で出た意見がばらけていた場合、方針を決めるのに迷ってしまうという課題です。
例えば正反対の意見がチーム内で出てきたときなどは、特に頭を悩ませました。
これらの課題を解決するための1つの案として考えたことを、セッションのテーマとさせていただきました。
そのテーマとは、「カスタマージャーニーマップを共通言語にして、UXリサーチをアウトプットにつなげたい」です。
「定性調査をカスタマージャーニーマップで可視化できないかという発見」
ここからは、弊社のサービス「Qrio Lock」(※)で現在取り組んでいるリサーチを実例として解説します。
現在、Qrio Lockの調査を新規ユーザー・既存ユーザー双方に対して行っているところです。
新規ユーザーへの調査は、スマートロックを使っていない人への防犯意識やカギへの意識を可視化する目的で、定量調査を進めています。
調査後、可視化のためにカスタマージャーニーマップを作成しました。
出かける前~帰宅時・在宅中までのステージごとに、ユーザーの行動と課題を反映したのがこちらの図です。
例えば出かける前であれば、どこにカギを置いたか探す、キーケースからカギを取り出すなどの行動をすると思います。
ここでは、「複数のカギがあってどれが家のカギかわからない」といった課題が調査によって浮き彫りになりました。
この定量調査での可視化をする中で、「もしかしたら、この可視化を定性調査でもできるのではないか」と思いついたんです。
そこで、既存ユーザー調査では、定量調査とともに定性調査も行っています。
まずは、既存ユーザー、つまりQrio Lockを使っているユーザーに対して、定量調査でニーズの深掘りと課題の抽出を試みます。
次に、定量調査をした対象者からQrio Lockの想定する複数のペルソナに該当する方を抽出し、防犯意識やニーズのさらなる深掘りをするべく定性調査をしようと考えています。
「カスタマージャーニーマップの精度を高め、アウトプットしやすい環境を作る」
ここで改めて、「なぜ定性調査での可視化」をしようと考えたのか、その理由をお話ししたいと思います。
前提として理解したいことは、どんなプロダクトにも、ペルソナは複数存在するものということです。
例えばQrio Lockであれば、「20~30代のガジェットラバーな男性」「20代~の防犯意識が高い女性」「30代~の忙しいファミリー層」などが想定ペルソナになります。
カスタマージャーニーマップの基本は、ペルソナごとに作ることです。
しかし、定量調査だけではこの「ペルソナごとのカスタマージャーニーマップ」を作ることはできません。
そこで、想定ペルソナに該当する方を抽出した定性調査が必要になってきます。
定性調査の結果をカスタマージャーニーマップに細かく反映することで、その精度は格段に上がるはずです。
精度が高まれば、「このペルソナだったら、このときこうするよね」という共通合意をチーム内で共有できます。
そして、チーム内でのペルソナニーズに対する意識合わせができれば、それはアウトプットにつながりやすい環境ができるということです。
このセッションの最初に、UXリサーチの3つの課題を挙げさせていただきました。
- アウトプットにつながるまでに時間がかかる
- 一人のユーザーの意見をどこまで信じていいかわからない
- 定性調査で出た意見がばらけていた場合、方針を決めるのに迷ってしまう
これらの課題は、定性調査を通した精度の高いカスタマージャーニーマップによって解決されるのではないかと思います。
例えば「アウトプットにつながるまでに時間がかかる」という課題は、カスタマージャーニーマップによる共通合意がスピード感をもたらすことで解決されるはずです。
しっかりした調査によって作られたカスタマージャーニーマップがあれば、「どこまで信じていいかわからない」と悩む必要も無いですし、全体の方針も決まりやすくなるでしょう。
属人化させない “UX” リサーチ/Ubie株式会社 坂田一倫
当イベント最後の登壇者は、Ubie株式会社 プロダクトオーナーの坂田一倫さんです。
UIデザイナーからキャリアスタートし、UXデザイン、サービスデザイン、プロダクトマネジメントとミクロ~マクロな視点でプラダクト開発をしてきた坂田さん。
ご自身の経験をもとに、職能としてのUXリサーチを通して今後への提言をしていただきました。
「優れたUXリサーチは、ユーザーが求めているプロダクトを生む」
僕がこれまでのキャリアで学んだ、UXリサーチが明らかにすべき問いは3つあると考えています。
1つ目は、「何を作るのか?」。
これは、ビジュアルデザインやコンテンツ設計に対する検証のことです。
2つ目は、「誰のために作るのか?」です。
そして3つ目は、「なぜ作るのか?」。
つまり、徐々に視点を広くしていくイメージです。
「木」をイメージしていただくとわかりやすいのですが、何を作るかは「葉」にあたります。
そのミクロなところから、そもそもこの木は誰のために植えているのか、木を植えることでどんな意味があるのか、を考えていく。
UXリサーチは、このような3つの視点で考えていくべきだと思います。
そして、リサーチを通してこれら3つの問いに明確な答えを出すことができれば、ユーザーが求めているプロダクトが提供できるはずです。
つまり、UXリサーチの良し悪しは「リサーチの結果を出せた」ではなく、「いいプロダクトまたは機能を提供できたかどうか」で判断すべきなんです。
リサーチ自体を目的とせず、アウトプットを意識しながら取り組むことが重要、ということですね。
「組織全体で取り組めば、UXリサーチはもっと上手くいく」
次に、UXリサーチは組織全体が取り組むべき活動である、というお話です。
リサーチの手順は4つの要素のサイクルでできています。
1つは、事実を集めることです。
そこから何かしらのヒントやインサイトが生まれてきます。
そのインサイトから、わからないことを抽出して、それを明らかにするために何をすべきかという仮説を形成します。
仮説をもとに調査・検証を実施することでまた新しい事実がわかって、そこからさらにインサイトが生まれる。
この、事実→インサイト→仮説→実施のサイクルを繰り返すことでリサーチは成り立っています。
ちなみに、この4つの要素には「どれからスタートする」といったルールは無いと考えています。
新規であれば話は変わってきますが、既存のプロダクトにおけるUXリサーチであれば、事実を集めることから始めてもいいし、仮説を最初に立ててもいいと思います。
ここでポイントとなってくるのは、サービスに関わっている人は、全員がインサイトを持っている、ということです。
UXリサーチというと、UXデザインに関わっている人だけのもの、と思われるかもしれません。
しかし、実はカスタマーサポートやデータサイエンティストの方のほうが、リアルな情報を持っていたりするんですね。
このように、誰もが持っているインサイトやユーザーから得られた学びを一元化し、検証しやすい環境を作ることが重要です。
つまり、UXリサーチは「組織全体」で取り組んでほしいと考えています。
「いまこの瞬間も、プロダクトを使っているユーザーがいる」
さて、ここからはプロダクト開発におけるトレンドから、UXリサーチのあるべき姿を紐解いていきたいと思います。
近年、アジャイル開発を採用する企業が増加していることで、UXリサーチにはアジリティが求められているように感じています。
いかにユーザーのフィードバックを取り入れて、プロトタイプに反映してリリースできるかが良く議論されるようになりました。
このトレンドによって今何が起きているのでしょうか?
1つは、継続的インテグレーションや継続的デプロイが可能になったことです。
つまり、開発の自動化が進んだことでプロダクトやサービスのリリース頻度が格段に上がったのです。
Amazonなんかは、11秒に1回何かしらをリリースしているという話も聞きました。
2つ目は、ユーザーからのフィードバックまでのリードタイムが短くなったことです。
リリースの頻度が上がれば、ユーザーに触れられる機会も多くなるため、インプットのスピードが速くなるからですね。
その結果、仮説検証を高速で回せるようになりました。
この2つの事実から学ぶべきことは、従来通りの開発のやり方ではリサーチがボトルネックになりがち、ということです。
リサーチに膨大な時間をかけてしまい、なかなか開発フェーズに移行できないのは本当にもったいないことです。
プロダクト開発に関わっている人が大事にしてほしいのは、いまこの瞬間もプロダクトを使っているユーザーがいることを認識し、成長速度を上げるために仮説検証を高速で回すことです。
仮説検証の高速化にあたって、必要なマインドセットは「絶対にフィードバックループを止めないこと」です。
そのために知っておきたいのが、「リサーチのタイミング=フィードバックループがストップしそうなとき」ということです。
「新たなインサイトが抽出できない」「仮説検証サイクルがまわっていない」など、フィードバックループが止まりがちな壁にぶつかったときが、リサーチをすべきタイミングだと理解しておきましょう。
なるべくクイックにリサーチしたいので、「Mixpanel」や「FullStory」などのツールを使うのがおすすめです。
「One for All, All for Oneでプロダクト開発を」
UXリサーチャーという職種が注目を集めていますが、人材をアサインするだけで終わっては組織的な効果は見込めません。
職種とは「何か価値を提供するため」に存在するものです。
UXリサーチャーでいえば、その価値とは良いプロダクトを開発することです。
私はラグビーをやっていまして、「One for All, All for One」という言葉が好きなのですが、プロダクト開発もこの精神によって上手くいくと思います。
UXリサーチャーは良いプロダクトを生むために組織全体での取り組みを促し、他の職種の人たちは仮説の種となる情報をUXリサーチャーに共有する。
このような活発なコミュニケーションこそが、一番大切なのではないでしょうか。
登壇者によるトークセッション
イベントのラストは、モデレーターと登壇者によるトークセッションを開催。
イベント参加者からの質問に各々が答える形式で、質問も多数集まり大きな盛り上がりを見せてくれました。
当レポートでも、トークセッションで行われたQ&Aを一気に公開していきます。
Q、「受託UXリサーチでクライアントに納得してもらうための工夫は?」
A、「一番説得力があるのは、売り上げ規模の仮説」
山本:お客様がどんな情報を欲しいかにもよるのですが、具体的な数値を出せると良いと思います。例えば、アンケートをもとに市場規模を算出して、事業可能性を提示する、などです。
丸山:マーケット規模と、そこから算出した売り上げ規模の仮説を出すことだと思います。ストーリーボードを用いて「このプロダクトにいくらなら払ってもらえそうか」を検証するなど、仮説に説得力を持たせるのも重要ですね。
Q、「なぜ定量調査だけではなく定性調査をもとにしたカスタマージャーニーマップが必要なのか?」
A、「定性調査をもとにすることで、より細かいペルソナのカスタマージャーニーマップを描くことができるから」
神谷:定量調査から導き出せるのは、今回の事例でいえば「カギを使う一般的なユーザー」のカスタマージャーニーマップのみです。なので、ペルソナごとの課題やニーズを捉えるために、定性調査が必要だと考えました。
丸山:僕も、定量・定性両方やらないと分からないものって多いと感じています。誰か一人のユーザーを深掘りすることで発見できることもあるのではないでしょうか。
Q、「インサイトを抽出するために、どんなファクトを見ることが多い?」
A、「ユーザーの行動に関わるファクトに最も神経を使っている」
坂田:主に見ているのは、ユーザー行動に関わるファクトです。もちろん、デモグラフィックも重要だと思います。どんなお客さんが、どんな振る舞いをしているかには特に神経を使います。
丸山:僕からも質問なのですが、ファクトを見つけづらいことはありますか?
坂田:ファクトが見つかるかどうかは、パターン化できるくらいの母数があるかがポイントです。スタートアップなどであれば、そこまでの母数は無いので、まずは「えいや」で仮説を立ててみて検証していくのがスピーディかつ現実的だと思います。
Q、「UXリサーチの重要性をクライアントに理解してもらうために何をすべき?」
A、「『情』と『数字』を上手く使う」
山本:リサーチしているところにお客様に同席していただくことだと思います。リアルなユーザーに触れてもらうことで、お客様のWillを促進するのが重要です。
神谷:UXが結果(売り上げ)につながることを理解してもらうために、数字をもとにお話をすることだと思います。
坂田:上手くいかなかったケーススタディを見せることで、ユーザー不在のプロダクトがどうなってしまうのか、を実感してもらうことでしょうか。そこから、「この状況を僕なら変えられますよ」と説得します。
Q、「UXリサーチをはじめるにあたって、組織の中で特にどの職種から取り組むべきか?」
A、「まずはユーザーに近い立場のデザイナー」
山本:営業とデザイナーではないでしょうか。営業はクライアントに近い立場ですし、事業のKPIも理解しているからです。デザイナーは、プロダクトのフロントにいるからこそ課題も見えていると思います。
神谷:私もデザイナーは親和性が高いと思います。あとは、意外かもしれませんがカスタマーサポートです。お客様の生の声やクレームを直に聞くことが多いので、リサーチをするにあたってカスタマーサポートを巻き込むと良いですね。
坂田:僕もデザイナーだと思っています。プロダクト開発に影響を持っているデザイナーからUXリサーチを始めるのがやはり王道でしょう。また、デザイナーの持つファシリテーション力は、リサーチに大きな価値を発揮できるはずです。
丸山:デザイナーは確かに親和性が高いと思います。でも、僕はその組織の中で一番「やってみたい」と思っている人でもいいんじゃないかと思います。やっぱり、想いが強い人の方が良いですよね。
改めて、UXリサーチの最適解とは?
山本:受託でのUXリサーチという観点でお話しすると、リサーチの情報をもとにアイデア創造をするという初期のフェーズから伴走できるのが理想だと思います。
神谷:事業規模が大きくなるにつれて、分業化が進んで「UXリサーチャー」という職種が生まれると思います。そうなったときに、理想はリサーチャーが組織内で孤立せず、現場と常に情報共有しながら協働できていることだと思います。
坂田:職種というところにこだわらず、UXリサーチという「機能」が組織内で上手くまわるのが理想だと思います。
ニジボックスのデザイナーすわちゃんがグラレコを社内で共有してくれました!
この記事を読んでくださった皆さんにも公開いたします!
【お知らせ】BUSINESS & CREATEVE online vol.2
11月19日に『大企業での新規事業推進を考える〜頻出課題の傾向と対策〜』というタイトルで、大企業での新規事業開発における制度設計や運用で陥りがちな課題について、リクルートで新規事業部門「Ring」の事務局長兼事業開発部長を務めている渋谷昭範さん、スタートアップ・ブレイン 代表取締役で、ニジボックスの顧問でもある堤孝志さんを迎えて知見の共有をいただき、頻出課題の傾向と対策をみなさんと一緒に考えたいと思います。
株式会社We&Eの榎本淳子さんをモデレーターに、パネルディスカッションも行われますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。
connpass申し込みページはこちらです!
また、ニジボックスではオンラインイベントの設計・開催を多数手がけています。
オンライン全社イベント、オンラインセミナー、オンラインワークショップなど、イベント趣旨に沿って設計から映像制作までワンストップでご支援いたします。
オンラインでのイベントやワークショップにご興味のある方はお気軽にご相談ください!