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UI UX Camp! 2024 ~未来を創る、テクノロジー進化とデザイン~

更新日 2024.5.29
UI UX Camp! 2024 ~未来を創る、テクノロジー進化とデザイン~

世界がデジタルシフトしていく中、「デザインはどうあるべきなのか?」という問いに対して、さまざまな職域の方々と、その本質的な価値・可能性を見つめ直し探求したい。そんな思いからスタートした、ニジボックス主催のイベント「UI UX Camp!」。第3回目となる今回のテーマは「未来を創る、テクノロジー進化とデザイン」です。

目次

オープニング

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イベントのナビゲーターは、株式会社HEART CATCHの西村真理子さんと、株式会社リクルート マーケティング室クリエイティブディレクター、荻原幸也さんが務めました。

「前回まではコロナ禍ということもありオンラインのみの開催でしたが、今回からはオフライン・オンライン同時開催になりましたね。オフラインの会場は満員御礼ですし、オンラインでは2000人近くの方が参加いただいているということでうれしいですね。さて、イベントのテーマですが、第1回目は『DX時代のデザイン』、2回目は『インクルーシブデザイン』、そして今回はそこに『テクノロジー』の軸が足されるカタチとなります」(西村さん)

「今回のイベントではテクノロジーの最新動向を、研究者および第一任者から聞いていただき、どのようにデザインにかしていくのか、ということを学んでいただきたいと思います」(萩原さん)

人間性とテクノロジーの未来 ~ぬくもりのデザインを考える~

小児精神科医 ・ ハーバード大学医学部准教授 ・ マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長 内田 舞
PwCコンサルティング合同会社 執行役員/パートナー ・ Future Design Lab Co-Lead 野々村 健一

最初のキーノートセッションに登壇したのは、小児精神科であり、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長でもある内田舞さんと、PwCコンサルティング合同会社 執行役員/パートナー、さらに Future Design Lab Co-Leadである野々村健一さんです。

テクノロジーが人間に与える影響とは?

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「最新テクノロジーがあっという間に民主化される昨今ですが、私たちの人間の認知はどのように変わってきているのでしょうか?」(西村さん)

「大きく人の心に影響を及ぼしているのはフィルターバブルですかね。ソーシャルメディアをはじめとした媒体はユーザーが何に『いいね』をして、何をどれぐらい閲覧したのかなどを測っていて、そのデータに応じてユーザーに提供する情報をテイラーメイドしているわけです。そのことを知らないと、まるで皆が自分と同じ情報を見ているように錯覚してしまう……。そして、実はそれが閉じられたバブルの中で起きていることに気づかないと誤情報の拡散などにつながるので要注意だと思います」(内田さん)

「そういったアルゴリズムってなかなか意識しづらいというか、どうしたらクローズドなバブルから一歩外に出たり引いた視点で物事を見られたりするのでしょうか?」(西村さん)

「テクノロジーだけに頼らない実生活を大切にするとよいのではないでしょうか。実は私は一度X(旧Twitter)でプチ炎上したことがありまして。最初の頃はまるで全世界から攻撃されているような気持ちになってしまいました。でも、X(旧Twitter)を閉じて実生活でさまざまな人と関わるうちに、そのようなことに興味もない人がほとんどであることに気づけたんです。自分の目に見えていることって、実はこの世界の中ではとても小さいことなんだと気づけた良いきっかけでした」(内田さん)

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テクノロジーとデザインのこれからの関係性

「一方で企業側としてはPVを稼ぎたいとかスティッキネスを高めていきたいなどといった狙いから、ユーザーに対してバブルをより深めていくような仕掛けをテクノロジーとしてもデザインとしても取り組むこともあるのかなと思いますがいかがでしょうか?」(西村さん)

「デザインの役割の一つは、僕個人としては『良いとされるものは何なのか』ということを示していくことの美意識によるものが大きいのかなと。アメリカだと“What does good look like”という問いがとても出てくるんですよね。そしてそれはビジネス文脈でもすごく問われていると思っていまして。つまり、良いビジネスとは何なのか?もうけ方はよく語られますが、振る舞いや価値観、社会のインパクトに関しては相対的に語られることは少ない。もうけたお金の『質』に対して関わっていくこともこれからのデザイナーの役割なのかなと思っています」(野々村さん)

「お金の『質』の話があまりないというのは確かにその通りですね。医療の現場や研究の現場でも、お金の質と量みたいな話は出てきているのでしょうか?」(西村さん)

「医療もビジネスなので、収益を上げないと存続できないわけですが、逆に『医療は良いこと。良いことだからお金を稼いではいけない』というような潜在的な思いも存在するのではないかと個人的には思います。ちなみに医療の場合は直近ですとコロナ禍をきっかけとしてオンライン診療が増えたワケですが、最初の頃はさまざまな懸念はあったものの、結果としてテクノロジーのアドバンスメントによって質も量も上がったなという実感はありますね」(内田さん)

これから必要となるデザイナーのスタンスとは?

「ここからいよいよ本題です。デザイナーとして起きた事象に対してどんどん改良していくアプローチもあれば、事象を先読みするスペキュラティブデザインのようなアプローチもあると思うのですが、デザイナーのスタンスは社会の変革に対してどう変えていくべきなのでしょうか?」(西村さん)

「最近20年ぐらい前のITに関連する記事を探っていて面白かったのが、スマホが普及していない時代に書かれたものであるにも関わらず、結構現代を言い当てていることが多くてですね。しかしながら、我々人間は未来に向けての準備や行動はなかなか苦手なわけでして……。デザイナーは未来のことを考える方が多いと思いますのでその辺りを積極的に考えたり描いていけたりしたらよいのかなと思っています。ですので、まずはそれらを実行していくための基礎力を高めていくことが大事なのかなと」(野々村さん)

「デザイナーが未来を描いていくにあたり、彼らの態度やモノの選び方に関して内田先生が個人的に思われるところやアドバイスなどがあれば教えていただいてよいでしょうか?」(西村さん) 「デザインは誰しもが意識的・無意識的に毎日触れているものだと思うんですね。ですからそれらをつくりだしているデザイナーの方には『ソーシャルジャスティス』を大切にしていって欲しいなと思っています。『ソーシャルジャスティス』と言うと、現代の日本では攻撃的な印象を与えてしまう傾向がありますが、自分だけじゃなく社会の幸せにつながるもののために行動していくことはやはり大事だと思うんです。先ほど野々村さんのお話で出てきた“What does good look like”という言葉は良いですよね」(内田さん)

おふたりからのメッセージ

「昨今、特にアメリカではリプレゼンテーション(社会の多様性をメディア表現においても正しく反映し、マイノリティが公正に描かれることを目指そうとすること)という言葉が良く聞かれますが、それにより私たちの美意識や、生き方の自由度がどんどん変化してきているのかなと。だからこそ、デザインをする上でも自分はこうありたい、ですとか社会にこうなって欲しい、といったような気持ちが反映されたものがもっと増えていったらよいなと思います」(内田さん)

「テクノロジーをコントロールする必要はあるのか、といったような話もありましたが、全体の流れとしては多様性の拡充とともにそれらの選択肢は増えてきているかなと思っています。テクノロジーは表象の媒介装置でもあると思っているので。そんな中、デザイン領域においてはありたい姿や美意識を加味しつつ、何を良しとして選択肢を増やしていくべきなのかを考えていくことがこれからは重要なのではないでしょうか」(野々村さん)

次世代生成AIプロダクトのつくりかた ~技術進化のトレンドから予測する生成AIビジネスの未来~

株式会社POSTS 代表取締役CEO 梶谷 健人

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現在は生成AIをはじめとした最新テクノロジーとプロダクト戦略を強みにした企業アドバイザーとして活躍される梶谷さん。このセッションでは生成AIをXRやWeb3などといった、その他技術との相対の中できちんと捉えること、さらにはそれをプロダクト戦略の実務にどう生かすのか、という観点でお話しいただきました。

まず、説明されたのは生成AIを活用しながら優れたサービスをつくっていく上で重要な3つのポイントです。

POINT 1:生成AIの7つの本質価値をおさえる

梶谷さんは優れた生成AIサービスをつくる上で、生成AI自体に対する深い理解は必要不可欠と言います。

「多くの方は生成AIに関して、以下の図のような辞書的な定義は理解されていると思います。ですが、生成AIの実務への生かし方のヒントにはあまりならないんですよね。生成AIがどんなものであるのかをしっかりと知るためには、まずはその本質的価値を発揮しているユースケースを知ることが重要だと思っています」(梶谷さん)

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梶谷さんの言う生成AIの7つの本質的な価値は以下の通り。

1.コンテンツの創造コストを限りなくゼロにする

コンピュータは「計算の限界費用をゼロ」に。インターネットは情報の「流通コストの限界費用」をゼロにしたように、生成AIの第一の本質的な価値は「創造の限界費用」を限りなくゼロに近づけること。

(例)コンテンツ制作コストを大幅に下げる「Jasper」や「Writer」
(例)無数のバリエーション生成を可能にする「Photoroom」
(例)顧客ごとに動画コンテンツのパーソナライズを可能にする「tavus」

2.限りなく自然な対話の実現

大規模言語モデルの精度向上により、限りなく自然な対話をユーザーと行うことが可能になった。
(例)顧客気企業のドキュメントを学習してCSチャットを自動化する「Ada」
(例)自然言語で入力された指示に基づきブラウザを代理で自動操作する「Adept(未リリース)」
(例)設定された性格や背景ストーリーに基づきプレイヤーと対話可能なゲーム内AI NPCを作成できる「Inworld」

3.非構造化データのベクトル化による柔軟な処理

大規模言語モデルの発展によって従来は利活用が難しかった文書などの非構造化データをベクトル変換して取り扱いがしやくなった。
(例)社内の情報をPerplexityライクな対話型インターフェースで検索できる「Glean」
(例)コンサルティング企業や投資会社向けにオンラインメディアの記事群からAIが抽出した企業分析のインサイトを提供する「AlphaSence」

4.コンテンツのマルチモーダル化

テキストなどの単一のモーダル(データの種類)のインプットを基にマルチモーダルや別フォーマットのよりリッチなアウトプットを自動生成することが可能になった。
(例)主に社内研修やマーケティング素材の用途において原稿を入力するだけでAIアバターが自然に話している動画を生成できる「Synthesia」
(例)入力されたテキストからプレゼンテーション資料を作成してくれる「Tome」

5.高単価専門知識の民主化

GPTなどの大規模言語モデルに法律文書や税務手続き書類などを学習させることで、本来は高度な専門知識が必要な領域の民主化も進んでいる。
(例)契約書のレビューや作成をAIが代わりに行ってくれる「Ironclad」
(例)特定領域で人間の医師よりもパフォーマンスが高いとされるGoogleが開発する
医療特化LLM「Med-PaLM」(臨床実験レベル)

6.言語障壁の軽減

GPTなどの大規模言語モデルはさまざまな言語のデータを一度そのAIだけに分かる言語にすべて翻訳して、言語の壁がなくなったAI語のデータ(ベクトル)として保存。そのため大規模言語モデルを介せば言語の壁は融解していく。
(例)「Synthesia」は単一のテキストインプットから多言語のバージョンの動画を一括して生成可能

7.新しいモーダルでのインプットの実現

一般的なテキスト入力ではなく画像だけで指示を送るなど新たなインプット手法を実現するという価値。比較的新しく実現しつつある価値であり、事業として大きく成長しているサービスはまだ出てきていないが、OpenAIのGPT-4Vで画像入力に対応したAPIが公開されたことや、Google Geminiの発表により今後注目が集まるであろう価値の1つ。

「生成AIを『生成できるAI』と捉えてしまうと、解像度が粗くなってしまうのでこの7つの本質価値があるということをおさえると深いところまで理解できるのかなと思います」(梶谷さん)

POINT 2:一旦「生成AI」を忘れる

生成AI領域でサービスをつくる際の一番のトラップは「生成AIを使うことが目的化」してしまい「顧客課題の設定が甘くなる」こと。先端テック領域で事業をつくろうと思うと、どうしてもその先端テックを使うことがある種のバイアスになってしまうことが多いのだとか。

「改めて言うまでもないことですが基本的にSnapchatのようなエンタメ系のサービスを除けば、99.9%のサービスは誰のどんな課題をどうやって解決するのかという、顧客課題解決法の構造が根本的な骨組みであり、多くのサービスは存在しない顧客の課題を解こうとしてしまって失敗してしまうわけです。ですので、CPF(カスタマープロブレムフィット)、つまり顧客がその課題を深く抱えていることを検証しきるということがサービスづくりの初手でとても大事なんです」(梶谷さん)

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以下四象限マップの右上部が生成AIを使用したサービスの理想とした場合、そこに至るためのポイントはとにかくまずは顧客課題を深ぼり検証をおこない、いかにしてタテ軸の上部に達することができるかなのだとか。その上で、ヨコ軸の右にいくのはタテ軸の上にいくのに比べると比較的容易なので、2つ目のステップとして先述した7つの本質価値と照らし合わせながら、顧客の課題に対してマッチングしてあげる形でサービスを考えていくことが重要なのだそうです。

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「XR、メタバース、Web3などの過去にトレンドとなった先端技術領域のサービスを思い返すと、四象限マップ上で、左上や右下がすごく多いかなと思います。つまり解決しようとしている課題は良いが、打ち手としてその技術を使用する必然性はないとか、各技術の本質的な特徴は生かせているが、そもそも解決しようとしている課題が浅い、などといったことが多かったのかなと」(梶谷さん)

POINT 3-1:生成AIならではのUXを構築する ~UXの原則~

生成AIサービスにおいて、優れたUXを実現するためには「UXの原則」をおさえつつ、「生成AIならではの体験」を実現することがポイントであると梶谷さんは言います。

では、ここで言う「UXの原則」とは何なのか。UXに関してはさまざまな角度から深ぼられ、さまざまな解説が世界には存在しますが、梶谷さんが導きだしたUXの方程式は以下の通り。この足し算と引き算の総和を最大化させることが、UXを良くすることなのだそうです。

UX=u(便益)+e(情緒価値)-f(フリクション)

u(便益)

ユーザーがプロダクトやサービスを使用することで得られる具体的な利益。例えば、生成AIを使ったライティングツールであれば、生成される文章によってユーザーが仕事を効率化するなどの恩恵。

e(情緒価値)

製品やサービスがユーザーの感情に与えるプラスの影響。サービスのUXコピーの親しみやすさ、視覚的な魅力やデザインの洗練度、サービスブランドのイメージなどがこれに影響。

f(フリクション)

ユーザーがサービスを使う上で体験する障壁や困難。具体的にはタスクを完了するための所要時間の長さ、必要なステップ数の多さ、エラーなど、また注意深く考えることを強いる認知的負荷などの総和。

POINT 3-2:生成AIならではのUXを構築する ~UXの価値を最大化するための方法~

上記方程式を最大値に持ってくために、生成AI的をエッセンスとして使っていく、という中で、梶谷さんから2つの例が紹介されました。

1つ目が、フリクション(f)を最小化するという考え方。特に、多くの人にとって初めて使う生成AIサービスがどれほど便益をもたらしてくれるかが分からない中、複雑な操作をしてまでその真価を試してみようと考えるユーザーは少ないはず。フリクションを最小化させるためには、まずはプロンプトの例を提示してユーザーがすぐにサービスのコア体験をできるようにすることが大切だそうです。

例えば「Bard」上でチャットの例を出しているのはまさにそれが狙いとのこと。

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2つ目は、多少フリクション(f)を上げてでも、便益(u)と情緒価値(e)の総和を最大化するということ。例えば、AIリサーチツールの「Perplexity」ではリサーチしたい質問を検索バーに入力すると自動で20~30記事を読み込んでくれて結果が出るという流れになるのですが、回答を生成する前に特に知りたい内容は何かを問うフォームが自動で生成されます。特に何もなければフォームを無視してもよいのですが、この機能を使いこなせばさらに絞り込んだ結果を得ることができます。

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「ステップが一度はさまるのでフリクション(f)は多少上がりますが自分の知りたい結果により近づくという良い例ですね。生成AIサービスにおいて、優れたUXを実現するためには『UXの原則』をおさえつつ、『生成AIならではの体験』を実現することが重要なのです」(梶谷さん)

AIの進化によってUXの在り方、社会、人間はどう変わるのか?

梶谷さんの考える「生成AI時代の未来を考える上での中心となる問い」は以下の通り。

Q1.創造性というものをこれからどう捉えていけば良いか?
Q2.人とAIの関係性はどうなっていくか?
Q3.仕事の仕方はどう変わっていくか?
Q4.人と人とのコミュニケーションはどう変わっていくか?
Q5.環境や情報とのインタラクションはどう変わるか?
Q6.人の在り方はどう変わるのか?

その中でも今回は主に「Q2」「Q5」「Q6」に関して深く語っていただきました。

Q2.人とAIの関係性はどうなっていくか?

「AIがすさまじい勢いで進化している中で、人間の存在意義は残ると思いますか?」という質問をよくされるという梶谷さん。その問いに関しては「問いの前提が間違っている」と梶谷さんは語ります。というのも、今はすでに人とAIを分けずに考えるべき時代に突入しているからだとのこと。

「AIはある種人間の脳の第3層、AI新皮質のような存在になると思っています。生産性を10倍にする生成AIサービスは現時点でかなり出てきていますし、今後それが100倍・1000倍になっていくというのは現実的に起こりうる未来なのかなと。で、能力が1000倍違う個体同士は、もはやデジタルに強い弱いとかじゃなくて新人類と旧人類ぐらいの差だと思うんです。今ですと、ARグラスやニューラリンク、マイクロファイバー、中長期的な未来ですとDARPA(国防高等研究計画局)が研究しているナノボットのような形で、脳とAIの知識処理を直接つなぐ技術が増えてきているので、論理や理性をつかさどる大脳新皮質の周辺にAI新皮質のようなものが存在しているような形の構造になってくると。そんな時代においては人間の能力がAIに劣るか否かという問いはないと思うんです。スマホやPC、インターネットで人間の感覚が広がっているのと同じで、AIによって個体としての人間から思考が拡張され、そこまで含めたものが人間の輪郭になるというイメージです」(梶谷さん)

Q5.環境や情報とのインタラクションはどう変わるか? ~デザインの単位が「User」から「You」へ~

AIの文脈理解とコンテンツ生成力が進化したことで、よりパーソナライズされたアウトプット生成が可能になりつつある今。インターフェースすらユーザーの状況や目的に合わせて生成され、使い捨てのものとして提供されていく可能性が高いと梶谷さんは言います。それによりデザインの対象を捉える解像度が従来の「ユーザー」から「あなた個人」へと細分化されるそうです。

AIライティングツールの『Jasper』では、例えば『NDA契約書をつくって』と入力すると、その文書をつくるために必要な使い捨てのフォームを生成してくれるそうです。インターフェースすらもインスタントにそのユーザーごと、その瞬間ごとにつくってくれる時代になってきているのです。

「おそらく10年後から今のデザインを振り返ると、今のユーザー中心設計やユーザー体験デザインというのは、大量生産・大量消費的な形に見えるかなと思います」(梶谷さん)

Q5.環境や情報とのインタラクションはどう変わるか? ~「新しいユーザーインターフェースとしてのAIの育成度合い」がサービス/ブランド体験を左右する~

今までのようにプロダクトからユーザーに対して画一的なセルフサービスを提供していた状態から、これからはプロダクトとユーザーの間にAIという中間的な「スタッフ」のような存在が入り込み、ユーザーの好みや願望に合わせてサービスを提供するようになる、と梶谷さん。最終的なユーザー体験をよくする鍵は「スタッフ」の育成やマニュアルであり、それはAIにとっての参照・学習データと裏側のプロンプトの最適化やファインチューニングにあたるそうです。

「どんなにイケてるブランドでも店舗での接客がずれていると、一気にブランド体験としては損なわれると思うんです。それと同じようにAIのユーザーへの振る舞いも今後のサービス/ブランド体験を左右する重要なファクターになるはずです。AIの育成というのは店舗スタッフの育成と同じように一朝一夕にできるものではなくて、生成AI領域でいう参照学習データ、つまりラグでどういうファイルを読み込ませるのかや、ファイン チューニングをどうするか、裏側のプロンプトをどう最適設計をするのか、という話になってくるのかなと」(梶谷さん)

Q6.人の在り方はどう変わるのか?

「多分今は個体の能力に価値がある最後の世代だろうと思っていまして。これからは個体の能力は重要性としてはウェイトはどんどん下がり、いかにAIをうまく使うかですとか、そもそもどういうAIとどういうつながり方をするのか、みたいなところに中核的な能力は変わりうるだろうと。こんなことを言うと、皆さん『寂しいな』というようなことを思われるかもしれませんが、おそらくそれはメタに見ると筋肉や武力が必要なくなっていく社会を寂しがっているのと同じ構造で『寂しいな』という郷愁は感じつつも、この不可逆な変化にしっかりと向き合う必要があると思います」(梶谷さん)

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最後に

「NVIDIAの CEOの『AI is eating Software』という言葉が象徴していますが、企業も人もデジタルに強いだけでは価値を発揮しきれないという中で、ソフトウェアを飲み込んだAIを取り込んでいく必要があるのだと思います」

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身体を超える「自分」をデザインする ~ゴーストエンジニアリングで広がる生き方の可能性~

東京大学大学院 情報理工学部研究科 准教授 鳴海 拓志

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このセッションでは東京大学大学院 情報理工学部研究科の准教授、鳴海さんよりゴーストエンジニアリングとは何なのか、そしてそれが実際どのような展開を見せているのか、というお話を伺いました。

ゴーストエンジニアリングとは?

ゴーストエンジニアリングとは、端的に言うならばメタバース上で人々が選択するデジタルな身体「アバター」のデザインが、人間の意識や心に与える影響を明らかにする研究です。ここで言う「ゴースト」とは人間がアバターを操る際に生じる「心」のようなものを指すとのこと。ちなみに、バーチャルの世界で自分の身体ではないものに自己投影することを「没入」もしくは「身体化」と定義しているそうです。

「実はアバターのデザインと心は相互作用していることが分かってきています。例えば筋肉質な見た目のアバターを使うと物が軽く感じたり、明らかにミュージシャンのような見た目で太鼓をたたくと手の振りが大きくなってうまくたたけたり、アインシュタインのアバターを使って問題を解かせると一般的な男性のアバターを使った時よりも解ける問題の数が増えたりと、新しい身体を使うとその見た目への期待値により自分の行動や能力が変わるということが明らかになってきているんです」(鳴海さん)

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ここで面白いのはアバターのデザインは本人だけでなく、接する相手にも作用を及ぼすということ。例えば、鳴海さんがバーチャル上で講演をする際に女性のアバターを使用すると、講演後の質疑応答時に視聴者の態度が違ってくることもあるのだとか。

「人々はお互いのイメージに基づいて日々のインタラクションを行っているわけですが、そのイメージが変わると内面も変わってくるという話です。この仕組み自体を解明しようとすると複雑過ぎてどこから手をつけてよいか分からない。でも、エンジニアとしては何を入力したら何が出力されるかだけ分かれば設計はできてしまうので『こんな身体を使ったらあなたの心はこうなります』というものをいっぱい見つけて、皆が心を自由自在に設計できるようにしよう、と考えたのがゴーストエンジニアリングというものになります」(鳴海さん)

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[事例]アバターによる自分事/他人事の切り替え

アバターを使うと問題を自分事にしたり他人事にしたりするということが簡単になるそうです。鳴海さんいわく、コンサルタントの客観的な意見が価値がある理由と同様に、主観的な問題はクリエイティブに解決できないケースが多く、逆に第三者視点を持てば自由な発想で意見を言えるという。

例えば、子どもを育てながら働くワーキングペアレントと、それをマネジメントする上司の体験をVRでお互いに体験し合うと両者の間に共感が生まれ、職場環境がよくなるという結果が得られているそうです。また、サードパーソンビューのゲームのようにVR上で自分の行動客観視できる状態で問題を解くと、ひらめきの数が増えるという研究もあるのだとか。

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[事例]ドラゴンアバターで飛行能力を身体化させる

アバターの外見や能力が、使用者の行動や認知に影響をおよぼすことを「プロテウス効果」と呼ぶのだそうです。なんと、ドラゴンのアバターを使ってパタパタすると空を飛べるという体験をしてもらうと、人間のアバターを使って同じことをやった時よりも、高所への恐怖感が減ったり、空中での移動の正確性が上がったりするとのこと。

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[事例]融合身体で人から人に身体スキルを伝達する

鳴海さんの最近の研究で面白かったこととして、人から人にスキルがコピーできる可能性を見いだしたものがあります。

「以下は真ん中にアバターがあり、ふたりのゴーグルを掛けた人がともに同じアバターの目から世界を見ている状況です。ひとりは上下に手を振り、もうひとりは左右に手を振っているわけですが、アバターはふたりの動きの割合の程度によって動作する仕組みです。これは、自分であり他人でもある身体を使うと何ができるのかという研究なのですが、空中で丸を描いてくださいと言うと、最初はそろわないのですが段々そろってくるんです。目的があると相手の動きを予想し、さらに相手の運動の意図が伝わってきて無意識にそろっていくようです。しかも、自分のスキルが低くてもその状態になると『自分がやった』という強い感覚が生まれるんです。つまり先生と生徒がいたとして、先生の技を生徒は自分がやったかのように感じられて、先生の動きを無意識にコピーできるというわけなんです」(鳴海さん)

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ゴーストエンジニアリングの可能性とナラティブ(自己の物語)の重要性

このようにアバターが変わったら性格や振る舞いが変わったり、人から人に能力がコピーできたりすることはダイバーシティーが重視される時代においては、より重要になっていくと鳴海さんは言います。

「SNSのアカウントを使い分けるように、アバターを使い分ければ『クリエイティブになるアバターはこれ』とか『ゆっくりリラックスできるアバターはこれ』などといったように、もっと良い顔を我々は出せていけるんじゃないかなと。それが皆のウェルビーイングの高い社会になるだろうと信じて研究をしているわけです」(鳴海さん)

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一方で、興味深いことに大学生、大学院生にアバターを使い分けられる時代についてのアンケートを提出してもらったところ「そもそもアバターを使いたくない」と回答した人が多かったのだとか。

この反応は実はさまざまな研究でも同様の結果が得られるらしく、要は至らぬ部分も含めた現状の自分を切り離して、新たな自分になるということには人は元来抵抗があるとのことです。

「自分らしさやアイデンティティを持って過去から未来まで続く存在としての自己を「物語的自己」というのですが、アバターを使うことで性格や能力が変化した自分も自分の一部であると認めて、人々がアバターを抵抗なく使えるようになるためには、過去から未来までつづく自分との地縁のようなものを長期的な視点で織り込んでいく必要があると気づいたんです」(鳴海さん)

科学的に「自己」は「身体的自己」と「物語的自己」があると言われており、この問題を解決するためには「物語的自己」を考慮したアバターのデザインや使用法が鍵となるそうです。

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「物語的自己」を反映したアバターならば受け入れることが可能なのか?

生まれてからさまざまな経験を経て作り上げられた自分の概念や性格、アイデンティティ、そして自分の未来のイメージまでもが反映された物語的な自己。それがアバターを使うことでどのような影響を受けるのかを探求するために、鳴海さんは「物語的自己」がすでに変わった人たちを集めてどのような影響があったのかを調べます。

鳴海さんが目をつけたのが日本橋にある「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」。このカフェのスタッフはロボットなのですが、ロボットはさまざまな理由で外出困難な方々が遠隔で操縦しています。

「ロボットを操縦する人を『パイロット』と呼ぶのですが、彼らはまさに新しい身体、アバターを使うことで今までできなかった社会経験を得ている人たちでして、めちゃくちゃポジティブに働いているんです。障害のある人でも、誰が使っても同じ外見に見えるアバター(ロボット)を使うことで、他者とコミュニケーションする際に障害が表に出てこない。それによってフラットな関係が築けているわけです」(鳴海さん)

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しかし、鳴海さんがインタビューを続けていると「自分を出さないことでフラットに人と話せるようになったのは良かったが、少し自分を出したい」という意見も出てきたのだそうです。そこで、デジタルのアバターで自己表現をしてみては、と「拡張アバター接客」を開始。

「普段はロボットで接客をしているのですが、お店の大きなスクリーンにメタバースをつないで、パイロットのアバターをここに投影してみたんです。どのように世界から自分を捉えてもらいたいかを考えて一緒にアバターをデザインしていきました。使っていく中で自分らしくいられる姿と場所を作り上げていくことをどう支援できるのかという部分に関してはまさにUXなわけです。1ヶ月ほど継続してみたのですが、皆さん良い変化がありました」(鳴海さん)

さまざまな事情により現実世界の身体がままならない人々が、ロボットという均一な身体を手に入れ、さらにアバターによって多様性も獲得し、新たな自分を発見したり、さらに深く自分を理解したりできたそうです。まさにゴーストエンジニアリングで広がる生き方の可能性の一端がここに見られたわけですね。

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鳴海さんからのメッセージ

「今日は『身体を変えると心も変わる』ということを発端に、さまざまな話をさせてもらいました。UX的な意味で心をデザインする技術を、どのように人間の世界に取り入れていくのか。ぜひ皆さんからもご意見を伺いつつ、研究していきたいと思っています」(鳴海さん)

未来のエネルギーをデザインする ~今、全人類が取り組むべき持続可能な社会の実現~

電源開発株式会社(J-POWER) 技術開発部 紺野 亜紀子
MTDO inc. 代表取締役/アートディレクター/デザイナー 田子 學

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このセッションでは、エネルギーとデザインの関係性について、紺野さんと田子さんにご紹介いただきました。

「BLUE MISSION 2050」とは?

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J-POWERがカーボンニュートラルと水素社会の実現を目指して掲げられた「BLUE MISSION 2050」。ミッションとして掲げられた目標は2030年にCO2排出46%削減、2050年に発電事業のCO2排出実質ゼロ。そして、それを目指して設定された3つの柱は以下の通りです。

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「これからは宇宙時代などと言われておりますが、やはりこの地球がなくなってしまったらすべての生命は終わってしまうわけです。だからこそ今この時代において私たちが何をチョイスして未来に向けてどのような行動をすべきなのかを提示したり、それを考えるきっかけをつくったりしてもらえたら良いなという想いでこのミッションははじまりました」(田子さん)

「CO2フリー」の水素発電技術とは?

以下のグラフは経済産業省が出している2030年に向けての資源配分を示したものになります。このグラフですと化石燃料と呼ばれる石炭(Coal)と液化天然ガス(LNG)が合計39%になっていますが、現在の割合はなんと76%。この37%の差分を埋めるにあたってのキーワードが再生可能エネルギーになるわけですが、田子さんいわくそれだけではなかなか難しいとのこと。

「再生可能エネルギーの生産性は気候の影響を受けるので、エネルギーの安定した供給のポイントとなるのは石炭です。石炭は世界中にデリバリー可能なエネルギー源で輸送コストも安いんです。でも、CO2の排出量が変わらなかったら元も子もない。その辺りをJ-POWERの技術力で解決したのが『CO2フリー』の水素発電技術なんです」(田子さん)

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「一般的な発電所は燃料を燃やし、その熱で蒸気タービンを回すことで発電をしています。一方で、CO2フリー水素発電は一度石炭を蒸焼きにしてガス化し、その中からCO2 を分離して回収・貯留。そして残った水素を使って発電する発電方法になります」(紺野)

石炭をガス化し、そこからCO2を分離回収できる技術を発電技術と組み合わせたこのソリューションはJ-POWERが20 年以上かけて開発してきた技術力のまさに賜物。

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「先ほども田子さんがおっしゃった通り、電力を安定的に供給するためには再生可能エネルギーのみですと、どうしても天候に左右されてしまう側面がありますので、この技術はその『調整力』として機能する役割もあるんです」(紺野さん)

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ちなみに本セッションではカーボンニュートラルに向けたソリューションの1つとして、研究フェイズのバイオマス導入の取り組みも共有されました。

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再生可能エネルギーと地域

田子さんが指摘した事実。それは太陽光にしても風力にしても水力にしても、これらはすべて地域と密接に関わっていることです。

「特に再生可能エネルギーは地形やその『場所』が大切なので、これを考えていく上では地域にフォーカスしていくことがすごく重要だと思うんです」(田子さん)

ここでJ-POWERが行っている「NEXUS」プロジェクトを事例として紹介いただきました。戦後復興のためにJ-POWERが生まれ、日本で最初につくられた大型水力電源、佐久間ダム(静岡県)。実はこのダムのモーターは80年間稼働し続けており、このモーターをリパワラリング(交換)するのが、このプロジェクトの概要です。

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なんと、リパワラリングが完了し、しっかりと稼働した暁には最大で原子力発電所2基分の電力を得られる可能性が高いのだとか。

「ここで重要なのは、私たちMTDO inc.が参画する意義でもあるのですが、このリパワラリングプロジェクトのその地域に住む方々への還元性なんです。地域に対して恩恵をエンゲージさせられたとしたら、その地域の価値って上がると思うんです。J-POWERの菅野社長も同様のことをおっしゃっていましたが、これもまた『BLUE MISSION』の価値なのだと思います」(田子さん)

「J-POWERの紺野さんから見ても、デザインマネジメントが入ることによって意識など変わってきたりしたのでしょうか?」(西村さん)

「私たちからすると、当たり前の存在だった『発電』を、このようにデザインで可視化していただけると、私たちのやっていることの意義がより分かりやすく捉えられて、社内のモチベーションが上がる側面はあると思います」(紺野さん)

また、CO2フリー水素発電技術が実証された大崎クールジェンプロジェクトの事例も紹介されました。本プロジェクトを進めるにあたり、地元(宮城県大崎市鬼首)とのコミュニケーションをとろうと採用されたデザインは、なんとこの地域の伝統工芸品でもある「鳴子こけし」。このプロジェクトのニュースはX(旧Twitter)のトレンド入りを果たしたとのこと。

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「この案件に関してはJ-POWERのスタンスとしてクリエイティブに非常に寛容だった点が良かったのだと思っていまして。その結果、『エネルギー事業が未来に向けて何か新しいことをやろうとしている』気運が社会にうまく接続したのではと思います」(田子さん)

エネルギーとデザインに関して

「デザイナーの得意なことは多角的に物事を見られたり、第三者として引いて見られたりすることだと思うんです。いかにして自分のクリエーションを社会に対して生かせるかという見方になれば、実際はまだまだデザインが行き届いていない領域は多いはず。エネルギー分野も特に日本はそうなんですよね。ですからこれからはこの業界にも多くのデザイナーが来てくれることを願っています」(田子さん)

企業における生成AI導入の実際 ~デザイン組織リーダーが考える、これからのプロダクト開発の現場~

株式会社リクルート / 株式会社ニジボックス デベロップメント室 室長 古川 陽介
株式会社ニジボックス UX・ディレクション室 室長 吉川 聡史
株式会社ニジボックス クリエイティブ室 室長 上田 沙緒理

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現場ではどのような生成AIを使用しているのか?

「まずは、生成AIをそれぞれのチームでどのように使っているのかを話していければなと。僕はプログラマーとして活動していて、エンジニアリングの部署で生成AIを活用しているので『GitHub』と『Copilot』を使うことが多いですね。あとは、まだ使い切れていない状態ではあるのですが『v0.dev』という生成AIも使っていますね。これはVercel社がつくっているものになりまして。例えば、求人表を元にした入力フォームをつくりたい場合、この生成AIを使うと、HTMLでコピペ可能な形で生成してくれるんです。しかも、『React』などのフレームワークにも沿った形で生成してくれるんですよね。吉川さんはいかがでしょう?」(古川)

「私のチームの場合は企業としてのセキュリティを担保できる形で、Chat GPTのAPIを使った独自のアプリケーションを、ディレクターの能力拡張の目的で使っています。自社ナレッジを集約して業務を円滑に進めたり、ディレクターごとの能力差を埋めるよう形で運用したりしています。あとは、個人的な活用法でいくと、技術系の専門職の方と会話する際に翻訳的な意味合いで生成AIを使うこともあります。また、ディレクター職あるあるだと思いますが、デザイナーやエンジニアにやりたきことをオーダーする前に事前に実現可否判断をする上でも生成AIは便利ですよね」(吉川)

「デザイナーの現場でいくとデザイン制作自体に活用するのは、まだこれからだと思っていまして、Chat GPT的なものでアイディアの発散を手助けしてもらっているケースが多いのかなと。特にライティング部分に関しては、自分では思いつかなかった言い回しや語意を使ったものを案出ししてくれるので助かっています」(上田)

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画像生成AIを使用する上での課題に関して

「上田さんがデザインそのものに生成AIを使うのは現時点ではなかなか難しいとおっしゃっていましたが、僕も『V0.dev』なんかは実際のプログラミング業務にそのまま使えていない側面がありまして。この辺り、なんでできないんでしょうね?」(古川)

「例えば、画像自体を生成できるAIも今はたくさんありますが、なかなか思い通りのモノを生成できない点があります。ここに関してはプロンプトの書き方と今後の進化で改善されそうな気もしますね。あとは著作権の問題が大きいのかなと。その点、Adobe FireflyはAdobeのストックフォトを元にしているという意味で安心ではあります」(上田)

「著作権をはじめとしたセキュリティの問題に関しては現場としては大きいですよね。吉川さんは画像生成AIを使いこなしているイメージがあるのですがいかがでしょう?」(古川) 「僕の場合、例えばMidjourneyで画像生成する際は、Midjourneyに直接プロンプトを打ち込むのではなく、Chat GPTにプロンプトを書いてもらっていますね。そうすることで会話形式でイメージに近づけながらプロンプトを修正していけるのでオススメですよ」(吉川)

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AIの普及により新人の育成機会が減る?

「世の中が便利になればなるほど、良い意味でも悪い意味でもキャリアの浅いメンバー向けの小さな経験を積み上げる機会が減ってしまったなと。ニジボックスの業務体系を考えた時に、簡単なタスクも彼ら向けに残した方がよいのですかね?」(古川)

「求められる領域がより上流になっているし、上流に達するスピードも今までより一層早く求められていることは確かに感じますね。ですから、機会が減ることよりもそのスピードをいかに早く身に着けてもらうのかが今後の課題かもしれないですね」(吉川)

「確かに、新人を育成する機会は欲しいけど プロダクトが遅延することは避けたいですからね……。」(上田)

これからの育成体制に関して

「僕たちの立場では採用と育成が大きなミッションだと思っていて、よく言われるのが『メンバーに失敗させる機会をちゃんとつくりなさい』ということなんですよね。そういう意味では、『POSTD』(https://postd.cc/)という自社メディアを運営していて、海外のエンジニアリングの記事を翻訳して公開することをやっているのですが、このような社内案件などをフル活用して、メンバーの育成を行っていくことも大切なのかもしれないですね」(古川)

「確かに記事を選定する上での判断スキルもそうですし、翻訳するにしても基礎的なことを理解していないと翻訳できないですもんね。あと、今後生成AIネイティブ世代のような世代が表れてきた時にどうやって育成をしていくのかも考えないとですね。生成AIでアウトプットされたものに対してどのようにフィードバックを行うのか、体系化されたものはまだないですし」(上田)

「マネジメント側がマネジメントとするだけの立ち位置っていうのは、もう厳しくなっているのかもしれないですね。メンバーと一緒に学んでいく中で、その学びをリードするような立ち位置として立ち振る舞うことが重要なんだろうなと」(吉川)

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今後必要になってくるスキルに関して

「『目より先に手が肥えることはない』という某アニメに出てくる言葉がありますが、これからも引き続きインプットが大切だと思うんですよね。それがしっかりと積み重なっていればAIのマネジメント、もしくはAIのアウトプットに対しても適切な判断ができるというか」(古川)

「そうですね。UIは特に『なんでこのアウトプットなんだっけ』みたいな目線が大切だったりするので、よそのサービスに対してそういった目線を向け続けながらインプットをおこなっていくのもよいかもしれません。『このサービスはこういうユーザーが多いのかな』とか、逆に『こうなってるということはこういうユーザーを狙っているのかな』といった分析は貴重な経験値となると思うので」(上田)

「ニジボックスのヴィジョンとして『本質をつかむ創造を 期待を超える共創を』という言葉があるのですが、やっぱそこなんだろうなと。AIが台頭してくるからこそUXがより重要になっていくのでしょうし、顧客課題に沿ったゴール設定が大切になると思います」(吉川)

ロボティクスとデザインの親密な関係 ~社会に溶け込む理想的な身体拡張ロボット開発~

東京大学大学院 工学系研究科 稲見・門内研究室 後期博士課程学生 山村 菜穂子

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本セッションでは、山村さんに身体拡張ロボット「自在肢(JIZAI ARM)」の研究内容をご共有いただきました。

「自在肢(JIZAI ARM)」とは?

自在肢はウェアラブルなロボットアームシステムになっており、バックパックのように背負うベースユニットと、着脱可能なロボットアームで構成されます。ロボットアームは最大6個まで装着可能となっております。

「このように技術で人の体を編集する考え方はサイボーグという言葉で知られていると思います。実は、サイボーグは元々1960年代にアメリカの宇宙開発の文脈で提唱された言葉でして、宇宙の厳しい環境下で人が生きていくために人の身体を人工物に置き換えるコンセプトでした。ですので、当時は一度大がかりな手術をしたら元の身体に戻すことは困難でしたが、私たちがつくった自在肢はウェアラブルデバイスの発展や無線技術の発展などにより、身体にメスを入れなくても身にまとうだけでサイボーグになれる点が特徴です」(山村さん)

このように、簡単になれるサイボーグのことを山村さんたちは「デジタルサイボーグ」と定義しているとのこと。自在肢は、デジタルサイボーグが当たり前になった未来を想定したプロトタイプで、社会に受け入れられているという意味で「ソーシャルデジタルサイボーグ」というコンセプトで設計されています。

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「自在肢」の目指すこと

ソーシャルデジタルサイボーグをつくるにあたり彼らが意識したこと、それは「身体と調和した美しさ」だったそうです。

「人々がお化粧をしたり服を選んだりするように、ソーシャルデジタルサイボーグが社会の中に浸透する際にはその見た目も重要だとの考えから、まず私たちは自在肢と身体の調和を追求しました。そして、ダンサーの松本ユキ子さんとコラボレーションし、自在肢を装着したダンスパフォーマンスをしたんです」(山村さん)

ちなみに、現時点では、どういった形が綺麗に見えるのかを探求することを目的としているので、自在肢はハーフスケールの同様の形のコントローラーをひとりにつき腕1本ずつ操作することで動かしているのだとか。

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ちなみにこのダンスパフォーマンスはオーストリアでおこなわれる「Ars Electronica(アルスエレクトロニカ)」で披露され、同イベントのSNSのトップや、クォーターごとの機関誌の表紙に採用されたのだとか。

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「自在肢」のデザインプロセス

自在肢は、山村さんが所属する稲見・門内研究室と東京大学 生産技術研究所の山中 俊治さんの研究室「Prototyping & Design Laboratory」の共同プロジェクトとしてはじまったそうです。

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開発チームに関しては以下の通り。

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「このプロジェクトの特徴は開発初期の段階で構想設計とスタイリングが入っていたところかと思います。例えば医療機器メーカーなどの場合は機能重視になるところが多いので、開発初期でこれらが入ることはあまりないかと。また、プロダクトデザイナーとエンジニアをつなぐ役割としてシステムアーキテクトを配置したことが非常に良かった点ですね。この方はデザインラボ出身で、デザインもできるけどソフトウェアやシステム設計もできる方でした」(山村さん)

「自在肢」のデザインに関して

自在肢をデザインする上で特に気を使った部分は、身体の一部と見えるように身体と調和したリズムを持つようなスタイリングにすることだったそうです。具体的には以下の通り。

  • 人間の身体同様にカーブを描いたシルエットであること
  • 人間の腕と同じようなスケール感でつくること
  • 「身体の編集」がテーマでもあるので工具ナシでアームの着脱が即座にできること

直面した困難としては、モーターをはじめとした中に入れたいパーツは基本直線でできており、外側のデザインシルエットを崩さずにそれらを組み込むことだったそうです。

また、人間の身体は関節間の筋肉のボリュームが大きいフォルムなのに対して、ロボットの場合は関節にモーターが入る都合上、関節が大きくなってしまう点も大変だったのだとか。装着性に関してはデザインをする上で最もこだわったポイントだったそうです。

「システムアーキテクトの方がスタイリングを変えないよう最大限調整してくれたので助かりました」(山村さん)

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結果として、国内外から「デザイン」観点でも非常に評価が高かく、当初意識した「美しさ」も実現できたそうです。

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NIJIBOX mini Session ~現場デザイナーに聞く! ニジボックスのリアルなAI活用術~

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こちらでは、ニジボックスで実際に活動しているデザイナー、佐々木さん富田さんを招き、彼らが現場でAIをどのように活用しているのか、本部長の齊藤がモデレーターとなりパネルディスカッションがおこなわれました。

デザイナーはどのようにAIを活用しているのか?

「Adobe Fireflyを主に使っていて、写真やイラストの方向性を決めるためのラフ作成に使用しています。納品用のデータには使えていないですが、思いつかなかったアイディアを探るには向いているなと。ですので納品用データをつくる際はゼロからつくり直している感じです」(佐々木)

「なるほど、ラフデザインで使うということは、自分でフリー素材から探すより画像を生成してイメージボードをつくってしまった方が効率的だということですね。確かに、具体的なイメージが湧かない時は、必要なキーワードで画像を生成して参考にした方が早いこともありそうですよね」(齊藤)

「僕の場合はAIの使いどころは画像生成より文章生成の方がまだ強いかなと思っていて。例えばディレクターがやるような LPとかバナーの文言のアイディアだしみたいなところに使っていたりします。デザインに入る 前の要件整理のようなタスクにうまく活用して、その後のスタイリングは自分で手を動かす、みたいなイメージですかね」(富田)

「確かにクライアントサイドの経験値がそこまで高くない時は、上流工程のディレクション側に染み出していくことはありそうですね」(齊藤)

どのように最新の技術をインプットしているのか?

「個人の活動としてAdobeのコミュニティエヴァンジェリストをやっているのでFireflyに関しては、リリース前のアップデート情報などをAdobeから直接を聞いています。また、エヴァンジェリストの中にはAIを専門にしている方もいらっしゃるので、そういった方をX上でフォローしたりイベント公式ブログをみたりしてリサーチしていますね」(佐々木)

「僕はインプット自体は本日登壇されているような方のXを見ているのですが、インプットしたものをその後に実際に使ってみることが大事なのではと思っているので、アウトプット起点でインプットする情報を探すとことが多いですかね」(富田)

誰でもすぐにアウトプットできる時代においてどのようにデザインの審美眼を養っていくのか?

「まず、僕らのようにすでにデザイナーの実績を積んでいる人間は普通に仕事をしていけば審美眼を養えていけると思うんです。でも、これからキャリアを始める場合、寿司職人が修行しないで海外で成功するとか、テレビ制作をしてない人が Youtuberで大成功するみたいな感じに近いと思っていて。デザイナー自体も新しいスタイルや価値観が生まれるか『生成デザイナー』みたいな方も出てくるのかもしれませんね」(佐々木)

「確かに、新しいプロンプト理論だとか判断基準の新しい理論だとかを持ってある意味『伝統的な』スタイルのデザイナーとは違った形で審美眼を磨き込んでいく人が出てきたら面白いですね」(齊藤)

「手を動かさないと審美眼が磨けないことはおそらくないと思いつつ、具体的にどうやればよいのかは先輩に教わるなどの動きは引き続き必要だとと思います」(富田)

「実際に自分が手を動かしてワークすること以外で審美眼を今までに養ってきたことなどあれば教えてください」(齊藤)

「難しい質問ですね(笑) やはり、とにかく『良い』と言われるものを見て、それがなぜよいのかを自分で分析し続けることですかね」(富田)

「僕は興味を持ったものをとことんやる感じですかね。あんまり興味のないものに関してちょっと情熱が注げないタイプなんで(笑) 深く1つのものを見ることかなと思います」(佐々木)

AIのある日常 2024 〜「自分流」がカギをにぎる、これからの生成AIとのつきあいかた〜

THE GUILD インタラクションデザイナー 深津 貴之
LINEヤフー株式会社 生成AI統括本部 新規事業準備室 室長/LINE WORKS株式会社 執行役員 Generative AI TF 砂金 信一郎

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最後のセッションでは、日本の生成AI分野におけるご意見番と言っても過言ではないお二人と、西村さんのトークセッションがおこなわれました。

深津さんと砂金さんが注目するAI分野

「あんまり個別のサービスやモデルに興味を持ってないので、そんなに追っかけてはいないですが、直近だと音楽生成の『Suno』のV3が出ましたけれども、性能がすごいなとは思っていました」(深津さん)

「世の中一般的には『Chat GPT』をはじめとしたテキストベースの生成AIで目くらましをくらっている感じがしますが、出口をどこにするかによって、音楽や動画の生成AIもあるし、リップシンクしたらしゃべるプレゼンテーション専用のAIも出てきていますし、世の中の方にいろんな生成AIを知ってもらいたいですね」(砂金さん)

「最近は『Chat GPT』の対抗馬の急先鋒として『Claude 3』がリリースされたことが話題となっていましたが、どういった形で情報を追っているのでしょうか?」(西村さん)

「一応新しいAIが出てきたら性能チェックはしますが、今の状況をフォントでたとえると、現状は3ヶ月ごとに新しいフォントがリリースされているみたいな感じで、そんな時にすべてのフォントを買って極めることをするよりも、特定のフォントで素組みと字詰めできるようにした方が良いよね、という感じなのかなと。ですから、どの生成AIが優れているか、という観点よりも、どのツール使ってもそれなりにちゃんと良いアウトプットを出せることがこれからは重要なのではないかなと個人的には思います。ちなみに主力で使っているのは『Claude 3』です」(深津さん)

「そうですよね。生成AIは文房具と一緒でその時その時で自分にあったモノを使ってみるぐらいの温度感で今はよいのかもしれないですね」(砂金さん)

「ちなみに深津さんから見て良いアプローチの仕方だなと思うサービスや、あったらいいなと思うサービスはありますか?」(西村さん)

「LLM(大規模言語モデル)全般で言うならば、全人類チャット入力できると想定しない方がいいのではと思いますね。チャット入力のないLLMの使い方が面白いなとは思います。例えばドキュメントをサーバーにアップしたら勝手にレビューされるとか。チャットが得意だったりチャットが必要な場所はあるんですけれど、すべての業務がチャットに置き換わるわけでもないし、普段の業務フローの中で発動する仕組みとチャット的なものは本来ペアになってちゃんと運用されるべきではないかなと」(深津さん)

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生成AIを使うことが目的化する危険性

「お二方のところに生成AIを使って新しいサービスをつくりたいんだけど、みたいな相談は来ますか?」(西村さん)

「ありますね。ただ、生成AIを使うことが目的になっている案件が非常に多くてですね。本来の課題解決になんらつながっていないから、もうちょっと冷静になろうよ、みたいな介入の仕方はよくあります」(砂金さん)

「よくある危険な相談パターンが2つあって、1つは砂金さんが言ってくれたみたいに「生成AIを使いたい」ありきで、ペインがなかったり使いどころが間違っていたりするケース。そして、もう1つはやりたいことは明確にあるけれど、それが生成AIと相性が悪いケースですね」(深津さん)

生成AIの浸透度は?

「生成AIが出てきたタイミングから最前線で活躍されてきたお二方から見て、生成AIの浸透度ってどのぐらいだと思われますか?」(西村さん)

「純粋な統計的な数字で見たら、生成AIを日常で使っている人は全人類の数%でしょうね。状況としてはiPhoneがリリースされて1年目みたいなノリに近いのかなと。メディアに出ている人はiPhone持っていることが多いけど、大半の人はガラケーですみたいな」(深津さん)

「ちょっと話が変わりますが、実際にLLMをつくっていたりする僕の立場からすると、業界内では味方が増えている感じがしてうれしいですけどね。というのも、ちょっと前まで言語処理とかディープラーニングをやっていると『金ばっかり掛かっているけど、それはいったい何の役に立つのか?』みたいな意見が多かったので(笑) 出口として金になるかどうかはまだ分からないけれど、これだけ『ChatGPT』が話題になると、組織の上層部や投資家たちの印象もポジティブに変わりますし。あとは異業種異分野の人たちが『AI』というキーワードのもとに集まってきて奇跡的な出会いも生まれていることも良いところかと」(砂金さん)

生成AIで豊かになった世界の姿とは?

「これからどういうところにAIが活用されていくと世の中より便利になったり、社会が幸せになったりすると思いますか?」(西村さん)

「UX側のことで言うとポイントはパーソナライズ化ですかね。要はコンテンツの制作コストがとても下がるわけで、今まではターゲティングしてその人たちに向けたクリエイティブで広告配信する、みたいに粒度が粗かったところから、完全個人向けのコミュニケーションが成立するわけですよね。医療でも、教育でも、本当はひとり一人に対して丁寧に課題解決をしてあげた方が良いわけだけど、今までコストの兼ね合いで妥協していた部分が改善されるのかなと。AIは学習すればするほどどんどん賢くなるわけですし、少なくとも人間よりは安く実現できますよね」(砂金さん)

「確かに、本当に自分のためにパーソナライズ化されている、例えば医療情報をもらえるんだったら、ユーザー側もそこに対して課金しようかなと思えるような気もしますし、ビジネスとしても成り立つ可能性が高いことですね」(西村さん)

「そうですね。生成AIの現状の最大の問題は参入コストが高すぎることと、投資に見合った回収をいつできるのかという答えをグローバル規模で持っていない点だと思うので、その辺りがクリアになると良いですよね」(砂金さん)

「あとは、基本的にはマーケットサイズが大きいところでないと投資コストが回収できない前提で考えると、究極的に普通の作業をマルッと取りにいくという可能性もあるかもしれないですよね。文書のレビューとか、雑談や愚痴を聞くみたいなのとか、役所での引っ越し手続きとか、フォーマットがあるのか分かんないんだけど一般常識があれば対応できるみたいな」(深津さん)

「そうですね。私はコールセンター向けのソリューション開発を長いことやっていたので分かるのですが、例えば行政の窓口などに、何が分からないのかも分からないという状態で問い合わせをする人たちって、たくさんいるんですよね。ですから、従来の一問一答の『あなたのご要件は何ですか』という機械的なコミュニケーションは全然成立しなかった。でも、深津さんがおっしゃっていたような雑談のような形だと『本当は今日、あなた何がしたかったんですか?』ということを明らかにすることはできるかもしれない。ユーザーが抱えている潜在的な課題を会話の中で解きにいくUXをつくれたら有意義ですね」(砂金さん)

これからの生成AIの進化に必要なこと

「2年前に深津さんがこのUI UXキャンプで言っていた『怠惰の法則』が印象的でして。要はいかにユーザーが楽をできるかが大切、ということなのですが、そういった未来をつくるためには現状何が足りてないんでしょうか?」(西村さん)

「究極的にはGPTとか に『おい、アレ』って言ったら問題を解決してくれたら最高ですからね。僕は生成AIを使う際に失敗したり苦労したりしているのって、生成AIに創造的な作業をさせようとしているからだと思っているんですよね。最初からレビュアー役とかに回しちゃった方が性能は出やすいと思うんです。例えば、今こうやってしゃべっているじゃないですか。普通の生成AIの使い方をする人だと、台本を書かせようとすると思うんです。プロンプト100回ぐらいやり直して『なんか生成AIはクリエイティブじゃないな』みたいな。でも、僕だったら今しゃべっている内容を全部テキスト化してGPTなどにアップロードして『今こんな会話してるんだけど、もっと盛り上げるにはどうすればいい?』みたいな使い方をすると思うんです」(深津さん)

「それ、めちゃめちゃ良いですね(笑) つまり、アシストするのが生成AIで創作するのは人間という座組みの方が短期的には未来が開ける可能性が高いということですね!」(西村さん)

「なんかそこに抵抗感がある人間側の人って結構いらっしゃいますよね。日本は特殊な国というか文化圏にいると思っていて、例えば欧米の方ってモノがしゃべるとか人間のように振る舞うことをあんまり好ましく思わないらしいんです。でも、日本は八百万の神じゃないですけど、モノがしゃべったとしても『いや便利だね』と思えるわけで。AIと共存する、一緒に生活をする、仕事をすることにそれほど抵抗がない我々の強みを生かして、AIに指示されて人間が動くみたいなことに無駄な抵抗感を覚える必要もないのかなと」(砂金さん)

「そもそも人間がプロンプトを書いてAIが実行するっていうのがそもそも設計を間違えている気がするんです。AIがプロンプトを書いて人間が実行するパートナーシップの方が成功確率は高い気がしますよね。要は生成AIって問いがあって、その問いに対して反応を返すマシンじゃないですか。世界の人口の大半の人は適切な問いを入れられるようなトレーニングを受けてないわけなので、最初の問いをAIが担当した方が応用範囲は広いんじゃないかなと」(深津さん)

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人間が持つAIへの愛着に関して

「人間とAIの関係性として、愛着のようなモノが湧くことはあり得るんですかね?」(西村さん)

「どうでしょうね。ただ我々はさまざまなアニメ作品の中でそれを疑似体験していますからね。『ソードアート・オンライン アリシゼーション』しかり『攻殻機動隊』しかり『イヴの時間』しかり。AIが社会にどのような形で受容されるのか、そしてどのような問題が起きてどう解決されるのか、ということは架空の世界の中でも3周ぐらい過ごしてる感じなのかなと」(砂金さん)

「そうそう。単純に感情移入の定義の話なのかなと。フェラーリに感情移入するのと、人間に感情移入するのと、動物に感情移入するのにはグラデーションがあって、そのグラデーションのどっかにAIも入るのかなと」(深津さん)

「先ほど砂金さんが日本人の特異性という文脈で、欧米人がモノへの感情移入がしづらいみたいな話がありましたが『ChatGPT』の登場以降『AIが人間の仕事を奪う』みたいな言い方をする人が減ったような気がするのですが気のせいですかね?」(西村さん)

「AIを売っている側のプロパガンダの影響も少なからずあると思いますけどね。ほっとくとAIが人間の仕事を奪うという論調になってしまうから、『AIのおかげで新しい産業や仕事が生まれるからそんなに心配するな。だからうちのAI を買え』、みたいな(笑)」(砂金さん)

「天然の遺伝アルゴリズムか、あるいは強化学習的な自然淘汰が起こるので、すごい雑に言うと AIが100体いたら心痛まずに消せるAIから消されていくと思うので、最終的には消すのが気まずいAIが残って、次の世代はそれを参考に開発されて、となっていくんじゃないかなと。人間から見て消したり解約したりするのが気まずくなるような言動や外見をしたAIが増えるかもですね。目がつぶらでブルブル震えているチワワみたいな」(深津さん)

Q&A:生成AIを業務で使用する上での権利関係のリスクと今後の動向に関してはどう考えているのか?

「自社に強力な法務チームがいて何があっても戦えるぞという状況であれば、勝負をかけられる範囲で誰よりも先に使い始めた方がいいと思います。ただ、そうでないのであれば、総務省、経済産業省で事業者ガイドラインを現在つくっている最中なので、それを待つ方が無難なんじゃないかなと思います」(砂金さん)

「リスクは基本的に無限にあるという前提で、少なくとも世界で2年間運用されていて、世界単位でほぼ発動していないリスクにどれだけ対策するかと言ったら、単に期待値とお金の問題にして保証金か保険金を積むというのが1番の正解だと思います。あと、情報漏洩リスクが怖いという話なのであれば、起きている件数ベースで考えたら、酔っ払った社員が電車にPCを置き忘れるとか、重要書類をコンビニでコピーしてそのまま忘れる方が全然確率が高いと思うんですよね。どうしても怖いという場合は、あと3年から5年で法整備がほぼ終わると思うので、5年後を目指して社内設備だったり人材投資だったりの準備をしておくのも正解かなと」(深津さん)

Q&A:人間の過去の知見を分析・編集したアウトプットではなく、人間が思いつかなかった新たなアウトプットをAIが出せる可能性はあるか?

「今の世代のLLMで実現できるかどうかはさておき、人間がまだ気づいていない課題を見つけて、それが解けたら すごい大発見というようなものをAIが勝手に見つけて勝手に解いていくということが5年後なのか10年後なのか、できるようになる可能性は高いと思います」(砂金さん)

「生成AIは仕様上、この世のあるあらゆる知識をなんとなくまとめて平均点的なことをしゃべれるマシンというのが大雑把なイメージなのですが、普通の人間はこの世にあることを平均点以下しかしゃべれないので、単純に新しいものをつくるというだけの話ならば、このまま順当に進化するAIを10台とか100台並べて24時間365日稼働させて、ひたすらアイディアを出させればできると思います」(深津さん)

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Q&A:デザイナーやプログラマーの違いは何か?

「あんまりデザイナーとかプログラマーとかの違いを厳密に考えすぎない方が良いと思いますね。境界線はどんどん溶けていくと思うので」(砂金さん)

「デザインもエンジニアリングもマーケティングも基本的には課題事象を構造化して最適化するというだけでして。同じ仕事を違うフィールドか違うキャリアの人がやっているだけですね」(深津さん)

Closing

「私自身学びが多かったというか、生成AI やエネルギー、VR、人間拡張みたいな話もありましたが、より優しいものというか身近に感じられた1日だったなと思います」(西村さん)

「このイベントのコピーに『デザインは技術と人間を優しく結びつける力』と書いてありましたが、今日一日を過ごしてみて、まさにそれに尽きるなと思いましたね」(荻原さん)

「今はこれだけ人間を助けてくれるテクノロジーにあふれているわけですから『人間は何をしたいのか』を突き詰めていく側に振り切ってもよいのかもしれませんね」(西村さん)

「そうですね。それでは皆さん、今日は本当にありがとうございました」(萩原さん)

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オフラインイベント会場の様子

オフライン会場では、『テクノロジーを体験する』ということをテーマに大学や大学院の研究室の皆さん、さらにはスタートアップ企業のみなさんに出展いただき、リアルならではの交流機会となっていました。

本イベントの公式Xにて当日の様子がレポートされていますので、こちらもぜひごらんください!

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アフターパーティーも盛り上がっていました!