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『UI UX Camp!デザインでDX時代を切り拓け!』

公開日 2022.6.7
更新日 2022.9.8
『UI UX Camp!デザインでDX時代を切り拓け!』

ニジボックス主催のイベント「BUSINESS & CREATIVE」では、毎回ビジネスとクリエイティブに関する現場発・最前線の情報を発信しています。

今回は通常のイベントと異なり、元フォートナイトのUXデザイナーをはじめ、デジタル庁や東京大学、グーグルやリクルートといった、官・学・民さまざまな分野でのエキスパート9名をお招きしたスペシャルイベント!

テーマは「デザインでDX時代を切り拓け!」です。
イノベーションを生み出すヒントが得られる講演が目白押しの1日となった、当イベントをレポートします。

デザインやDXに携わっている方、興味がある方はもちろん、すべてのビジネスパーソン必見です!

目次

オープニング:当イベントは「宇宙船」からお届け

今回はスペシャルイベントということで、宇宙船の中をイメージしたスタジオで開催されました。
体験の時代ともいわれる現在、最前線で「体験」を創り続けるトップランナーの講演がこれから始まる、イベントへの期待を感じさせる雰囲気がさらに高まっていました。

まずはモデレーターを務めた、株式会社HEART CATCHの西村真里子さん、株式会社リクルートの萩原幸也さんが「宇宙船」に登場し、登壇いただく豪華ゲストをご紹介。

ここで、ニジボックスの丸山からのご挨拶。当イベントについての想いが語られました。

【主催者挨拶】デジタル体験の新潮流 デザインが担う領域の変化と可能性 /株式会社ニジボックス 丸山潤

「世の中が大きくデジタル化へシフトしていく中で、デザイナーだけでなく、今後ビジネスに携わる多くの人に、デザインの本質的な価値に気づいてほしいと思い開催しました。」

続けて、話はデザインが担う領域の変化と可能性というテーマに。
「2014年ごろ、デザイン思考が日本に広がりを見せたころから、デザイン経営やサービスデザインというキーワードが出てきたり、2021年にはデジタル庁がCDO(チーフデザインオフィサー)を設置したことで話題となったり、デザインの重要性がビジネス→経営→社会へと広がりを見せています。」

一方で、テクノロジーの変化によってデジタルと人の融合が進んでいく中、人間は今後どう拡張していくのか?その可能性の一つとして「メタバース」があると丸山は語り、本日の基調講演へとつながっていきます。

最後は、次のようなメッセージで締めくくられました。
「リアルと仮想空間の境界がなくなったとき、われわれはどうデザインするのか?そのためにはメタバースのUXについて考える必要があると思います。そこで、今回の基調講演として、元フォートナイトのUXディレクターであるセリアさんに登壇していただくこととしました。他の方々も一人ひとりがスペシャルゲストと言える豪華な登壇者なので、ぜひ一日お付き合いください。」

【基調講演】元Fortnite UXディレクターが語る! 「メタバース」でひろがる体験価値 /元Epic Games(代表作:フォートナイト) UXディレクター Celia Hodent

≪『フォートナイト』とは≫
Epic Games社が販売・配信するオンラインのバトルロイヤルゲーム。世界で3億5000万人を熱狂させる。ゲーム内でコンサートを鑑賞したり、島を作ったりするなど、メタバースでの体験要素が多彩。

「『フォートナイト』のようなゲームでは、プレイヤーは体験の共有、創造、コミュニケーションなどを3D空間で行います。これが、メタバースの出発点です。」

講演の冒頭でこう語ってくれたセリアさん。メタバースとは「持続的な仮想世界+没入型の共有空間+人の存在感や積極的な参加」であると定義します。
続けて、メタバースの世界に参加するプレイヤーの体験、つまりUXを「ターゲットユーザーがどのようにゲームに接するか。その体験がどれほど魅力的かも含まれる」と定義しました。

次は「人間」についての解釈についても言及。人間の脳には限界があるため、人間が使用するものをデザインする際はそのことを考慮するのが重要だそうです。
これを踏まえ、ゲームUXには、システムの使いやすさである「ユーザビリティ」と、ユーザーを動機づける「エンゲージアビリティ」の2要素が必要というお話もありました。

そして、いよいよ話はメタバースへ。コンテンツを「見る」テレビやインターネットと違い、メタバースはその場に「いる」体験となり、「体験の共有」こそがメタバースの面白さであるとセリアさんは語ります。
そのため、『フォートナイト』はユーザーが創作活動をしたり、動き回ったり、他の人の姿を見たりすることもできる「3Dの共有仮想エコシステム」を創り上げました。
さらに、それを実現するための「ダークパターンの排除」「すべての人をインクルージョンしたUX」「ユーザーの安全性の確保」といったお話も大変興味深く、メタバース、ひいてはUXに携わる人にとってのヒントが満載の講演でした。

講演後には、視聴者からの質問にセリアさんからご回答をいただくQ&Aセッションも開催。
ここでは1つだけご紹介しますが、本レポート記事末に「全回答集」を掲載しています。当日お時間の都合上、答えられなかった質問にも丁寧なご回答をいただきましたので、ぜひご覧ください!

Q 「知覚は主観的なものとのことですが、デザイナーとして自分の主観をどのように取り除けばいのでしょうか?」
A 「残念ながらデザイナーの主観を取り除くための手立てはありません。そのためにいつもテストを行うことで、文化などの違いに対する意識を高めていくことが大切です。トレーニングをしてスキルを磨くのも手段の1つですが、やはりテストをたくさんしていくことが最も重要です。」

■セリアさん全回答集はこちらへ!

【POINT】「知覚は主観的」「記憶は不確か」「注意力は不十分」

講演内で語られた「人間の脳には限界がある」について、セリアさんはさらに詳しく解説してくださいました。
私たちがプロダクトを開発する際にも考慮すべき示唆に溢れていたので、以下にポイントをまとめておきましょう。

1.人間の知覚は主観的である
同じものを見たとしても、ユーザーの知識や経験、文化的背景によって受け取り方は変わる。「当たり前のことだろう」と考えず、「自分はこう受け取ったが、ユーザーは違うかもしれない」と常に考えるべきである。

2.人間の記憶は不確かである
私たちは1日たてば最大で70%の内容を忘れてしまう可能性がある。だから、ユーザーがインターフェイスの情報や操作方法を1日で忘れると想定してデザインする必要がある。

3.人間の注意力は不十分である
私たちは環境のすべてを注意深く観察していない。注意力はフィルターのような仕組みで、1~2つの要素に注目したら残りは除外してしまう。だから、情報を探すための手助けがユーザーには必要である。

デジタル庁CDOが語る~行政にデザインを浸透させる意味とその可能性~ /デジタル庁 浅沼尚


(※役職はイベント登壇時のものです)

本講演では、デジタル庁でのデザインの役割や活動事例を紹介いただきました。

デジタル庁は「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」というミッションのもと、デジタルを活用したサービスの持続的な提供を目指しています。身近な例として挙げられるのが「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」のリリースです。
2021年9月に設置されたばかりのデジタル庁ですが、「デジタル庁がなければこのアプリ開発は不可能だったと思います」と浅沼さんが語るように、目に見える成果を上げています。

デジタル庁において、デザイナーは幅広い活動を担っているとのことです。
持続的なサービスデザインの推進、サービスを利用する国民とのコミュニケーションデザイン、行政サービスにおけるガイドライン策定やデザインシステム開発、デザイン人材の育成、そして府省庁や自治体といったステークホルダーとの協業などです。

講演の最後には、行政におけるデザインの可能性についても言及されました。
「行政にデザイン責任者がいることで、よりユーザー視点のサービス提供が可能に」「行政職員からサービスデザイナーへ」など、デザインの力で行政が変わっていく未来を予感させる言葉が印象的でした。

【POINT】デザインの「目に見えない活動」が行政の未来を変える

新型コロナワクチン接種証明書アプリのように「目に見える成果」だけではなく、行政において重要なのはデザインの「目に見えない活動」とのこと。

それは例えばサービスデザイン推進のための体制整備や人材育成、関係者とのコミュニケーションのことです。これらのデザイン活動こそが、デジタル化、ひいては私たち一人ひとりに優しい行政づくりを支えていく、と浅沼さんは語ります。

市民参加型の社会づくり 多様な人々が主体になる未来 /一般社団法人コード・フォー・ジャパン 関治之/東京大学生産技術研究所 左右田智美


本講演は、市民が主体的にテクノロジーを活用してより良い社会を創り上げていく「シビックテック」という考え方を中心に、さまざまな取り組みをしているお二人をお迎えいたしました。

はじめに、関さんから「Make our City」というプロジェクトについて紹介いただきました。
これは「わたし(=市民一人ひとり)主体のまちづくりを実現するための取り組み」です。
具体的な事例として挙げられたのが、バルセロナ発・オープンソースの参加型合意形成プラットフォーム「Decidim」。このプラットフォームを活用して、兵庫県の加古川市では多様な市民がまちづくりのプロジェクトに参加しています。

次に左右田さんより2つの取り組みの紹介がありました。
1つ目は、地域のコミュニティと一緒に新しい海洋リサーチを広げる取り組み「OMNI Microplastics」です。
2つ目は市民参加型でAIについてみんなで考える科学研究「AICOM」
いずれも、参加型の社会づくりをデザインがリードし、市民のアクティブな参加を促す事例でした。

【POINT】より市民を「巻き込む」ためには?

お二人の講演の後にはトークセッションも設けられました。
ここでは特に「どのようにしてより多くの市民を巻き込むか?」というテーマが盛り上がりを見せ、お二人のテーマに対する答えがシビックテックを加速させるための大きなヒントになったと思います。

関さん「特に行政は完璧なもの(=完成したプロダクト)を市民に見せたがるのですが、開発途中でもそのプロセスから見せていくことで、市民の主体的な参加が促されるのではないでしょうか」。
左右田さん「例えばワークショップに工作を取り入れるなど、参加される方が興味を持って楽しんでもらいやすいようにデザインするのが重要です」。

次世代につなぐデザインと組織のあり方~ 社会と組織を元気にする「T型人材」の育成方法 ~ /IBM Consulting 柴田英喜

デザインを表層的なものだけではなく「成果の背後にある意図」と本質的に定義し、人間中心アプローチとデザイン思考の企業文化を全社で浸透させてきたIBM。
その文化醸成のキーワードとなる「T型人材」について紹介いただきました。

T型人材とは、社会や組織で活躍できるデザイナーのあり方のモデルで、アルファベットの「T」の形にスキル・経験・知識が伸びた人材を指します。
縦軸はデザイナーとしてのコアとなるスキル・経験の深さ(デザイン思考・デザインリサーチ・サービスデザイン…など)、横軸は他分野とのコラボレーションによる知識の広さ(フレームワーク・ビジネス感覚・テクノロジー…など)、そして縦軸と横軸が交わるところに「デザインスペシャリティ」を据える、というものです。

また、T型人材を育成するために重要なポイントとして、組織内におけるデザイナーのキャリアパスを定義すること、デザイン思考を全社に浸透させデザイナーが力を発揮できる環境を作ることが挙げられました。

【POINT】T型の縦軸という「コア」を持つことが重要

デザイナーは「成果の背後」、つまり表層デザイン以前のフェーズである構想やMVP定義にも深く関わることから、異分野の人材との良いコラボレーションを果たす必要があります。
そこで重要なのが、自分自身が何に貢献できるのかという「コア」であると柴田さんは強調されていました。

T型人材が形成するTの形は1つではありません。縦軸が他の人より長いTもあれば、横軸が長いTがあっても良いのです。
しかし、どんなTの形であれ、コアとなる「自分ならではのデザインスキル」を明確に持っていれば、デザイナーとして活躍できるのではないでしょうか。

「怠惰の法則」で観る2022年 主流になるもの、文化になるもの、最新テックを俯瞰する /THE GUILD 深津貴之

「怠惰の法則」という刺激的なテーマで、登壇者の深津さん・モデレーター西村さんのトークセッションが繰り広げられました。

怠惰の法則とは、深津さんが提唱するコンセプトで「第1原則:テクノロジーは人を甘やかす方向に進化する/第2原則:あるテクノロジーが定着するかどうかは『ダメな人』にどれだけ優しいかで決まる」というもの。
夏休みの宿題を8月31日にやってしまう、朝なかなか起きられない、そんな人が普通に楽しく生活できる「ズボラに対するインクルーシブ性」がテクノロジーやプロダクトには必要だと深津さんは語ります。

トークセッション内では、以下のようなテクノロジーに対して、「怠惰の法則」と照らし合わせて今後広がりを見せるかの予測がなされました。
NFT(広がりづらい)、ディープフェイク(広がる)、ヴァーチャルヒューマン(運用コスト次第で広がる)、メタバース(広がるために厚い壁がある)

【POINT】打率を上げるために「性ダメ説」で考える

新しいテクノロジーやプロダクトを企画するとき、よく性善説で考える、性悪説で考えるという会話がなされます。
しかし、深津さんは「性ダメ説(人間はもともと怠惰な生き物である)」で考えるべきだと語ります。
99%の人の99%の意思決定は「マウスを動かす距離が近かった」といった怠惰な理由で決まるものなので、その視点で考えることで、より広がりを見せる企画に近づけられるとのことです。

興味深かったのが、「深津さんはどうしてそのような(怠惰の法則的な)視点を持てるのですか?」という視聴者の質問に対しての「自分自身がマメな人間ではないから」という答えでした。
もしかすると「怠惰な人」の方が、より多くの人に支持されるテクノロジーやプロダクトを作る素質があるのかもしれません。

戦略に欠かせないUXリサーチ 製品にイノベーションを起こすユーザー中心戦略/グーグル合同会社 矢野紘子

続いては、グーグルの矢野さんより、UXリサーチ及びUXリサーチャーの価値と役割についての講演がありました。

去年「UXリサーチャーは暇じゃないですか?」と複数の方から聞かれ驚いたという矢野さん。日本でのUXリサーチに対する理解や開発プロセスへの組み込まれ方が、アメリカと異なることを示す面白い質問だと思ったそうです。なぜならUXリサーチャーが通常製品開発で行う、製品戦略のためのリサーチや、仮説やデザインの検証・改良を何度も繰り返していると、むしろUXリサーチャーの時間や人手が足りないことの方が多いからだそうです。

UXリサーチの価値の一つは「使ってもらえない製品」のリリースを防ぐことにあると矢野さんは説きます。製品開発前の段階からユーザーニーズをしっかり把握し、ニーズに沿った製品アイデアの検証と修正を繰り返し、「ユーザーが製品を使わない要因」を排除することで、「ユーザーが使いたいと思う製品」への磨き上げに貢献するのが、UXリサーチの価値であり役割であるとのことでした。

【POINT】「戦略検証」こそがUXリサーチャーの重要な仕事

UXリサーチは、戦略(どんな価値を生み出すべきか)とデザイン(その価値をどう伝えるべきか)それぞれにおいて活用されます。
矢野さんは、製品を作り始める前の戦略フェーズにおけるUXリサーチが特に重要と強調していました。
なぜなら、ユーザーニーズを理解しユーザーへの共感を高めた上で戦略を決めないと、製品全般のUXの向上が難しく、結果的に「ユーザーが使いたいと思う製品」にならないからです。

日本ではまだUXリサーチの価値・役割があまり知られていないかもしれません。
しかし、開発の幅広いフェーズで、より多くの人が使いたいと思う製品づくりに大きく貢献するUXリサーチは、企業の成長に欠かせないものなのではないでしょうか。

デザイン経営の先にあるもの〜デザイナーの役割を更新するデザインマネジメント〜 /MTDO inc. 田子學/株式会社リクルート 磯貝直紀

当イベント最後は、デザインマネジメントにフォーカスした講演でした。
前半は登壇された田子さん・磯貝さんからの事例紹介、後半はお二人によるトークセッションという構成で進められました。

≪田子さんの事例紹介≫
田子さんがクリエイティブパートナーを務める、三井化学の「MOLp(モル)」を紹介いただきました。
MOLpとは、仕事ではなく「ブカツ」「砂場」と位置付けられた、参画するメンバーが主体的に活動を広げるプロジェクト。
「会社ブランディングや広報×三井化学の本業である開発」によって生まれた、化学の未来への展望を発信し、問いかけるというものです。

この活動によって誕生した新しいプラスチック「NAGORI」は、GOOD DESIGN AWARD 2018のBEST100にも選ばれました。
さらに、素材の持続可能性をデザインする意思を高く評価され、株価を引き上げることにもつながるという成果を上げています。

≪磯貝さんの事例紹介≫

磯貝さんからは、リクルートにおけるデザインマネジメントの3つのパターンをご紹介いただきました。

1つ目は、未来の理想像を具現化する「デザインドリブン」。
ステークホルダーごとに戦略イメージがバラバラだったゼクシィのアプリを、デザイナーが実際に「作る」ことで未来像を描き、事業スピードを上げることに貢献した事例を挙げられました。

2つ目は、ユーザーインサイトとプロダクトを結びつける「提供価値の最大化」。
Airレジ オーダーというプロダクトにおいて、デザイナーが現場に直接足を運んでインサイトを捉え、本質的な価値を組み込むことに成功した事例を共有いただきました。

3つ目は、デザイン価値を翻訳して提示する「最適なデザインコンサルティング」。
ホットペッパービューティーのアプリで、事業状況を理解した上でデザインを活用した際の価値を分かりやすく伝え、全体最適なソリューションを提示した事例でした。

【POINT】日本社会にデザインマネジメントを浸透させるために必要なものは何か?

後半のトークセッションでは主に2つのテーマが設けられました。
1つ目のテーマ「日本社会にデザインマネジメントを浸透させるために必要なものは何か?」については、お二人から次のようなお考えをお話しいただきました。

田子さん「デザインとは創造的な価値を示すもの、という理解を広げていくことです。これは、事業価値をどう高めて資産形成をしてゆくか、と同義です。」

磯貝さん「田子さんと同じ意見で、その中でも特に経営層をはじめとした『上流の意思決定者』にデザインの本質を理解していただくことが大事だと思います。」

【POINT】デザイナーは今後どうあるべきか?

2つ目のテーマについても、お二人のお考えを見ていきましょう。

磯貝さん「デザインをどう使うか、だと思っています。そのためには上流から参加する必要があり、そしてポジションを獲得しなければならない。そのために、デザインを翻訳して伝えたり、ロジカルにデザインの必要性を伝えたり、といった小さな積み重ねが大事なのではないでしょうか。」

田子さん「磯貝さんがおっしゃっていた、デザインを翻訳して伝えること、これ自体もデザインだと思います。このようなコミュニケーションを重ねることで、お互いに理解し合う『渦』を作っていくことが今後のデザイナーのあるべき姿ではないでしょうか。」

クロージング

1日に渡って、視聴者からの質問や感想の投稿も多数集まり、大いに盛り上がりを見せた当イベントも、いよいよ終わりの時間となりました。

クロージングでは、モデレーターを務めていただいた西村さんと萩原さんが登場。
萩原さんは「デザインの表層だけの理解ではなく、本質を捉えて、それを浸透させていくことの重要性を学ばせていただきました」と語り、西村さんは「メタバースからデジタル庁、企業の話までさまざまな領域について、知見を広げていただく機会となったのではないかと思います」と総括しました。

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記事を最後までご覧になっていただき、ありがとうございました。
この記事でご紹介できたのは、丸1日かけて行われた一大イベントのほんの一部です。
気になる講演、興味のある分野のセッションなどがきっとあったかと思いますので、ぜひアーカイブ動画もご視聴ください。

特別付録:セリアさん全回答集


本イベントで基調講演を行った、セリアさんのQ&Aセッションの内容を完全収録いたしました。当日の回答に加え、時間の都合でお答え出来なかった質疑も含めた特別編です!

当日のQ&A

Q:フロー 状態と幸福感の相関性に関するお話がありましたが、特に子供の教育において「ゲームに没頭すること(フロー状態)=良くない」といったイメージも世の中に強くあるかと思います。そこで「教育におけるゲームのあり方」といったテーマについてぜひセリアさんのお考えをお聞きしたいです。

A:たくさんの親が、子供がゲームに夢中になっていることに心配しているのは存じ上げております。しかし、子供がゲームをしたり友達と遊んだり、本を読んだりなど、なにかに集中しているのは良いことです。ゲームがそのお子さんの年齢に合っていれば問題ないです。問題なのは集中して朝から晩までずっとプレイしている場合です。ゲームだけではなく、ブロック玩具で遊んだりお友達と遊んだり、他の遊びと組み合わせて経験の幅を広げることが非常に重要だと思います。

Q: ゲームフロー、チクセントミハイのフローを基にお話しされていましたが、フロー状態になるには、ある程度のストレス(難しいお題)も必要になります。そのストレスもひとりひとりの主観によって差異があると思いますが、多くの人が参加するゲームではどのように「個人個人が感じるストレスの違い」作り上げるのでしょうか?

A: 非常に大きなテーマで、1分でお答えするのは難しいですが、ここでいうストレスはチャレンジのようなものです。例えばギターを弾きたいと思って学び始めた際、難しい曲もあると思います。ストレスを抱えるというよりも、うまくなりたいと思って上達していきます。ゲームの場合は少し難しいのですが、チャレンジは各個人によって異なります。なぜゲームをするのかというと、チャレンジして何かを達成したいからだと思います。そのために重要なのは、ダメだったとしても何度も挑戦してレベルアップしていけるようになることです。悪いUXというのは、失敗した際になぜ失敗したのかが分からないことです。いいUXは失敗の理由が明確で次に進めることです。そのため開発の際は何度もテストし、楽しんでもらえるようなゲームを作り上げることが非常に重要です。

Q: プロダクトを作っていく工程で、チームにUXを理解しているメンバーが居ても、開発都合やスケジュールを優先してUXが重要視されず、結果的に使いづらいコンテンツになってしまうことが度々あると思います。その問題に対してアプローチされた方法などあれば伺ってみたいです。

A: すごくいい質問で、これはよくあることです。よくあるのは、UXの成熟度というものを持っていない企業が多いことです。チームの中の人はUXの重要性を理解しているにも関わらず、トップが理解していない場合、ゲームの土台となるものとは別の機能を後から付け加えろという指示が来てしまうことになります。そのメンタリティを変えるには非常に時間がかかります。こういった場合は、UXリサーチを繰り返し行い、何がうまくいく/いかないかを明確にし、KPIに落とし込んでいくことが重要です。例えば、ウェブサイトで商品を売っている場合、ユーザーが離脱してしまうと売上が伸びていかないため、どこに問題があるのかを明確にすることです。ユーザーとサービスの関わりによってUXが生まれてきますので、UXの重要性を理解することは非常に重要なのですが、メンタリティを変えるのは何年もかかります。

Q: UXデザインとはカスタマーサポート含むユーザーの全ての体験を考える必要があるとなると、組織そのものも変わる必要があると思います。セリアさんは組織デザインにも関わられていますか?

A: 正確にお伝えすると、UX戦略は組織全体が含まれるものです。UXデザインは特定の職種に限った話になります。UX戦略は全員が理解しなければなりません。エンドユーザーへの影響もありますし、正しいプロセスを設計して期待値を管理しなければなりません。私はUXデザイナーではなくUXストラテジストとして活動していますが、戦略に関しては適材適所で行い、リサーチャーや関係者、意思決定者を含めてUXリサーチを行い、正しい道筋を立てていくことが重要です。

Q: 知覚は主観的に「当たり前だから大丈夫」だと思ってはダメだとするなら、どうやって自分の主観をデザイナーとして取り除けばいのでしょうか?

A:残念ながらデザイナーの主観を取り除くための手立てはありません。そのためにいつもテストを行うことで、文化などの違いに対する意識を高めていくことが大切です。意識していてもエンドユーザーを使わないでテストしてしまうと、こういったことを忘れてしまうことが良くあります。トレーニングをしてスキルを磨くということも手段の1つですが、やはりテストをたくさんしていくことが最も重要です。

後日回答いただいた質問

Q: 収益を求める際にダークパターンに陥らないように注意する必要があるとおっしゃっていましたが、ダークパターンを使わずにどのような体験を提供すれば収益が上がっていくと考えていますか?

A: ユーザー/プレイヤーを騙さずに収益を上げることができます。理想は、楽しくて魅力的なゲームを作ることであり、そうすれば人々はそこに自然とお金を使いたくなるものです。大抵の場合、ゲームではあまりダークパターンは見られませんが、陰険なやり方は見かけます。それでも、特定の時間に接続したり、たくさんのお金を使ったり、何時間もプレイすることを強制しなくても、プレイヤーをイベントで熱狂させることはできます。プレイヤーの年齢やコンテクスト(例:化粧品を獲得するためのルートボックスとゲームプレイアイテムを獲得するためのルートボックス)により、楽しさや興奮がどこで止まり、どこで陰険な施策が始まるかを定義する必要があります。例えば、スキルで勝てるのに、お金を払わないと勝てないと信じ込まされたり、いくらお金を使ったか知らされなかったりなど、プレイヤーが本当に騙されるようなダークパターンは、ゲームやその他の業界で、プレイヤーやユーザーに敬意を払わないものとして避けなければなりません。

Q: 大手総合通販サイトの広告例では、どのような画面構成にすればダークパターンから開放されますか。どのようにすべきでしょうか。教えて下さい

A:大きなボタンでシンプルに「購入する」(本来のユーザーの目標)と表記し、特別会員(初月無料、その後毎月–$)に登録すると、この買い物がお得になります。”というテキストを追加することです。プラスでサービスのメリットと明確なコストを記載すると良いでしょう。

フォートナイトの大ファンです。プレイヤーとしても「競争」することと同時に、作り手が「共有」や「共創」を大事にしていることを強く感じていました。フォートナイトが世界で流行しているバトルロイヤルゲームの中で存在感を示しつつ、フォートナイトらしさをリッチにしていくことのバランスをどのようにとっているのですか?

A: 何度もテストと修正を行うことによって作り上げられています。多くの時間を要するため簡単には答えられません。

『DEATH STRANDING』や『Pokémon LEGENDS アルセウス』のような新しいゲーム体験についてどう思っているのか伺いたいです

A: それらのゲームに関するUXの意見をお伝えできるほどプレイしていないんです。すみません。

ワンタイムイベントはいつも参加しておりトラヴィススコットやアリアナグランデのLIVEの没入感もすごいもので感動しましたUXの観点から演出で注意していることがありましたら教えてください!(プレイヤーの視線など)

A: 私は2017年にEpicを退社したので、これらのイベントには参加していません。