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アプリのビジネスモデル4種類とマネタイズ成功のポイントを解説

アプリのビジネスモデル4種類とマネタイズ成功のポイントを解説

現代では、ほとんどの人がスマートフォンを所有しており、多くのスマホアプリを活用しています。

多種多様なアプリがあり、現代の生活にアプリはなくてはならないものといえるでしょう。そんなアプリをビジネスに生かすには、どのようなビジネスモデルが考えられるでしょうか。

この記事では、アプリの代表的なビジネスモデル4種類の紹介から、アプリビジネスの特徴、マネタイズ方法、成功のためのポイントを解説します。

ビジネスモデルとは

アプリビジネスについて解説する前に、ビジネスモデルとは何かを押さえておきましょう。

ビジネスモデルとは、新規事業開発には欠かせない仕組みのことです。
ビジネスモデルに対してはさまざまな解釈があり、シンプルに「もうけるための仕組み」と考える人もいれば、「カネ・モノ・ヒト」を包括した「ビジネス全体をスムーズに進めるための仕組み」と考える人もいます。

また、ビジネスモデルに関する世界的な権威であるアレックス・オスターワルダーは「ビジネスモデルとは、どのように価値を創造し、顧客に届けるかを論理的に記述したものである」と定義しています。

このことから、ビジネスモデルは「事業開発において顧客に価値を提供するための設計図」と捉えることもできるでしょう。

つまり、アプリのビジネスモデルを考える際には、「アプリをどのように使って顧客に価値を提供するのか」を中心に考える必要があります。

ビジネスモデルについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

■関連記事:
【今さら聞けない】ビジネスモデルとは?作り方や定番パターン、欠かせない3つの条件を詳しく解説!

アプリビジネスの3つの特徴

アプリビジネスに見られる3つの特徴を解説します。

1.安定した市場成長率

冒頭で触れた通り、いまや世界中で多くの人がアプリを日常的に活用しています。
そのため、モバイルアプリの市場は非常に大きく、今後も成長することが見込まれています。この点が、アプリビジネスの大きな特徴の一つです。

総務省が公表している『情報通信白書令和3年版』によれば、世界のモバイル向けアプリ市場規模(売上高)は、2020年時点で1,924億ドル(約25兆円)※1と非常に大きいことが分かります(※2)。
加えて、2022年にReport Oceanが公表したレポートによれば、2027年までの年平均成長率は11.5%と見込まれています(※3)。

このことからも分かるように、市場規模の大きさと安定した市場成長率は、アプリビジネスの特徴の一つです。

※1 2023年3月6日の為替相場1ドル約135円で計算
※2 出典:総務省「情報通信白書令和3年版 第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済」
※3 出典:PR TIMES「モバイルアプリケーションの世界市場は2027年まで年平均成長率11.5%で成長する見込み|Report Ocean」

2.参入障壁が低い

アプリビジネスは、他のビジネスに比べて参入障壁が低い傾向にあります。

例えば、実店舗などを構えて在庫管理をする必要があるビジネスの場合、参入するだけでも多大なコストがかかります。対して、アプリはプログラミングのスキルがあれば作成でき、作成にも大きなコストはかかりません。

実店舗を運営するとなると、ランニングコストも無視できないものになりますが、それに比べるとアプリビジネスのランニングコストは非常に低いといえるでしょう。
アプリの開発にあたり、自社に知識がない場合は外注することも可能です。

3.スピード感のある開発環境が必須

前述した通り、アプリビジネスの市場は今後も成長が見込まれている上に参入障壁が低いため、競合が多くなります。
競合に勝ち、ビジネスとして続けるためには、顧客を獲得し続けなければなりません。そのために求められるのが、スピード感です。

成長市場であるためユーザーニーズの変化も激しく、新しい技術なども次々と登場します。そういった環境で、市場の流れに乗りつつユーザーニーズを満たすためには、スピード感を持ったアプリの開発・改修が必要です。

そこで、PDCAサイクルを高速に回して実行に移せるように、アジャイル開発やMVP開発が採用されています。

  • アジャイル開発:機能ごとに細かい開発サイクルを続け、継続的にリリースする手法
  • MVP開発:最小限の機能だけでリリースし、フィードバックから改善を繰り返す手法

アプリビジネスは誰もが参入しやすいが故に、スピード感のある開発環境の構築は必須といえるでしょう。

MVPについてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

■関連記事:
【基本編】MVP(Minimum Viable Product)とは?開発手法やプロトタイプの種類を、事例を交えて解説

アプリビジネスモデルは大きく分けて4つ存在する

アプリビジネスモデルは、大きく4つに分けられます。
そして、さまざまなマネタイズ方法を組み合わせることで、ビジネスとして成り立つのです。ユーザーの視点で費用が発生するタイミングが異なるため、一つずつ見ていきましょう。

なお、マネタイズ方法については、後ほど詳しく解説します。

1.完全無料

完全無料のビジネスモデルでは、アプリのダウンロードから利用に至るまでに費用がかかりません。主に、広告配信でマネタイズを行います。
買いきりではないゲームや、漫画アプリなどエンタメ系のアプリが多いです。
無料で利用できるため、多くのユーザーを獲得しやすいですが、その分収益は広告の閲覧数やクリック数に依存します。

2.フリーミアム

フリーミアムは基本無料のビジネスモデルです。アプリのダウンロードや基本利用には費用が発生せず、より良い機能などを追加で利用する際に費用がかかります。
ソーシャルゲームの多くはフリーミアムのマネタイズ方法を利用しています。

フリーミアムのマネタイズはアプリ内課金を中心とし、サブスクリプションなどとも組み合わせて利用されています。

ユーザーがアプリに魅力を感じ、お金を払ってもいいと思えるかどうかがマネタイズの重要なポイントになります。

3.有料

有料は、アプリをダウンロードする際に費用が発生するビジネスモデルです。
一般的には買い切りとなる場合が多く、継続的に費用がかかることを嫌うユーザーなどに好まれます。
フリーミアムで提供しているアプリの機能制限がないバージョンとして販売しているケースもあります。
マネタイズ方法としては、フリーミアムと同様にサブスクリプションなどと組み合わせることも可能です。

4.ペイミアム

ペイミアムは、有料とフリーミアムのモデルを組み合わせたモデルです。アプリのダウンロードの際に費用が発生し、より良い機能などを追加したい場合も費用がかかります。
最初に有料でアプリを販売して、一年ごとに新しいアップデートを配布するなど、買い切り型のゲームアプリとの相性が良いです。

4つのモデルの中では最も収益が見込めるモデルですが、その分、高品質なユーザー体験の提供が必要です。

アプリのマネタイズ方法6選

アプリビジネスモデルを考える際には、前述のモデルと併せて6種類のマネタイズ方法を検討する必要があります。モデルとマネタイズの組み合わせについては、下表をご覧ください。

アプリのモデルとマネタイズの組み合わせを示した表の画像。アプリのモデルは完全無料、フリーミアム、有料、ペイミアム。マネタイズは、サブスクリプション、アプリ内課金、アプリ広告、スポンサーシップ、有料ダウンロード、自社製品・サービスへの誘導。

マネタイズ方法について、概要を一つずつ解説します。

1.サブスクリプション

サブスクリプションは、一定期間内のサービス利用を定額料金の支払いにより保証するマネタイズ方法です。月単位で課金をする場合が多いです。

サービス内容に合わせて複数のコースを用意でき、ユーザーニーズを捉えたプランの作成が可能です。

サブスクリプションは、収益が継続的に発生するのが特徴といえるでしょう。ビジネスモデルでは、フリーミアムや有料と組み合わせて利用されます。

2.アプリ内課金

アプリ内課金は、アプリの一部の要素(機能)を有料で提供する方法です。
アプリのダウンロード自体は無料で行えることが多いため、多くのユーザーにアプリを体験してもらいやすいでしょう。

例えば、ゲームであれば基本プレイは無料で、特定のアイテムやガチャに費用が発生する、ということが考えられます。

無料アプリの場合、実際にアプリをダウンロードしてもらい、有料の要素に魅力を感じてもらうには時間がかかります。そのため、どのような要素を有料にすべきかをよく検討することが重要です。

フリーミアムや有料、ペイミアムのビジネスモデルで利用されます。

3.アプリ広告

アプリ内に広告を表示して広告収入を得るマネタイズ方法が、アプリ広告です。広告の表示回数・クリック数、広告からのアプリインストール数などによって収益が変化します。

多くのユーザーにとって、広告は煩わしいものです。そのため、アプリ広告を利用する際は、ユーザビリティに影響を与えないようにする必要があります。
収益のために広告を表示しすぎると、ユーザーが離れてしまう原因になりかねません。

アプリ広告は、完全無料やフリーミアムのビジネスモデルで多く利用されます。

4.スポンサーシップ

スポンサーシップは、アプリの内容や利用ユーザーに関連のある企業から援助を受けるマネタイズ方法です。アプリそのものから収益が発生するものではなく、6つのマネタイズ方法の中でも特殊な部類に入ります。

アプリの運営とは別に収益を得られるため、アプリ広告やアプリ内課金に頼る必要がなく、よりユーザビリティに配慮したアプリ設計・運営が行えます。

ただし、スポンサーシップを受けるためには、スポンサーとの契約が必要です。
また、スポンサーの獲得は容易ではなく、他のマネタイズ手法に比べてハードルは高いといえるでしょう。

スポンサーシップは、完全無料・フリーミアム・有料・ペイミアムの全てのビジネスモデルと組み合わせられます。

5.有料ダウンロード

アプリを有料販売する方法で、「ペイ・パー・ダウンロード」とも呼ばれます。ユーザーから見れば、お金を払ってモノを得るという、従来の購買法式と同じです。
ただし、アプリはデジタルの世界にのみ存在するもので、実際に形があるわけではありません。

そのため、アプリの魅力をしっかりと伝えて“お金を払う価値があるモノ”として認識してもらうことが重要です。

ビジネスモデルとしては、有料やペイミアムで利用されます。

6. 自社製品・サービスへ誘導

アプリの利用を通して自社製品・サービスへ誘導し、そこで収益を上げるマネタイズ方法です。アプリそのもので収益を上げないという点は、スポンサーシップと変わりません。

この場合、アプリは収益を上げる商品ではなく、他の商品へ誘導するための販促ツールのような位置づけになります。
例えば、多くのコンビニが導入している自社アプリは、実店舗における買いものをサポートするためのツールとして、キャンペーン告知を発信したり、ポイントカード機能を内蔵したりします。
このように、自社の製品・サービスや店舗などと組み合わせることで、マネタイズを実現する方法もあります。

アプリビジネス成功のポイント4つ

競合が多いアプリビジネスで成功するためには、次の4つのポイントを押さえておくことが重要です。

1.目的にあったマネタイズ方法を選択する

前述の通り、アプリビジネスのモデルとマネタイズの組み合わせは、さまざまです。アプリをどのような目的でリリースするのかによっても、採用すべき組み合わせは異なります。

例えば、自社製品・サービスへの誘導を目的にしている(=自社のファンになってもらいたい)にもかかわらず、アプリ広告やアプリ内課金などが多く表示されると、ユーザーは興味をそがれてしまう可能性があります。

アプリの目的を明確にした上で、ユーザーに納得してもらえるマネタイズ方法を採用することが重要です。
マネタイズ方法は、複数を組み合わせることで収益化しやすくなるため、最適な組み合わせを模索しましょう。

2.情報収集は徹底的に

アプリ市場は変化も競争も激しく、常にユーザーニーズを捉え続けていなければ収益を上げるのは難しいといえます。アプリ市場と一言でいっても、ゲームやビジネスなどカテゴリの違いによって、ユーザーニーズやユーザー層は大きく異なります。

市場全体の動向だけでなく、カテゴリ別のユーザーニーズについても徹底的に調査を行うことが重要です。どのようなコンテンツで、どのマネタイズ方法なら受け入れられるかが明確になっていないと、収益化は難しいでしょう。

はじめから完璧な対応をすることは難しいため、PDCAサイクルを高速に回してアプリのリリース後も定期的なアップデートを行いながら調整します。

ユーザー調査に関しては、こちらの記事も併せてご覧ください。

■関連記事:
どう使い分けるべき?UXデザインのためのユーザー調査手法とは

3.収益化までの計画を立てておく

どのようなマネタイズ手法であれ、収益を上げるためには多くのユーザーにアプリを利用してもらわなければなりません。

しかし、アプリをリリースしてからユーザーに認知されるまでには時間がかかります。そして、認知されてから実際に収益を上げられるようになるまでにも、時間がかかるでしょう。

アプリの収益化を短期間で実現することは難しいため、収益化までにかかるコストを考慮した上で予算を確保しておくことが重要です。
このとき、新規のユーザーをつかむことだけでなく、継続的なユーザーを確保することも考慮しなければなりません。

このことから、新規顧客獲得と既存顧客維持の両方の施策を同時に行うことも検討しておきましょう。

4.人材の確保

アプリの開発だけでなく、運用にも専門的な知識・スキルを持った人材が欠かせません。アプリビジネスの成功にはIT人材が必要ですが、IT人材は各業界で不足しているのが現状です。

前提として、IT人材の確保手段には育成と採用の2軸が考えられます。
既存社員の育成もしくは新規採用でIT人材の確保を目指す場合、自社が求める人材にマッチしている人がすぐに見つかるとは限らないため、長期的な目線で人材の育成・採用を進めなければいけません。

またIT人材の確保については、外注するという手段もあります。
外注の場合には、外注先と外注費についてよく検討してからアプリビジネスに必要な人材の確保を行いましょう。

まとめ

アプリ市場は規模が大きく、今後も安定した成長が見込めることから、アプリビジネスは非常に注目されています。また、参入障壁も低いことから、多くの企業が次々に参入しています。そのため、競合の多い市場ではあるものの、アプリビジネスは将来性の高いビジネスモデルといえるでしょう。

アプリビジネスにおいては、ビジネスモデルとマネタイズの組み合わせによって、さまざまな収益化の方法があります。自社でアプリを開発する目的を明確にすれば、おのずとモデルとマネタイズの組み合わせも定まることでしょう。

この記事では、アプリビジネス成功のための4つのポイントも解説しました。これからアプリビジネスへの参入を検討されている方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。

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監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

Twitter:@junmaruuuuu
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