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デザインシステムはどこまで導入すべき? 押さえておくべきポイントや費用対効果の考え方[1/3]

更新日 2024.10.4
デザインシステムはどこまで導入すべき? 押さえておくべきポイントや費用対効果の考え方[1/3]

ニジボックスのUIデザインフローや案件事例をご紹介!


近年、デジタルプロダクト開発において有用性が認知されつつあるデザインシステム。
いざ自分のチームに導入するにあたって、「どのように起案するのか?」「導入したはいいもののプロダクトチームでうまく浸透していかない」など、苦心したという話もよく耳にします。

そこで今回は、デザインシステムの導入に関して、具体的な例を交えながら3章に分けてご紹介します。
第1章では、デザインシステム導入・運用時に気をつけるべきポイントについて解説いたします。
第2章では、主にデザインシステムの段階とメリット、解決できる課題について解説します。(こちら
第3章では、主にデザインシステム導入にあたっての費用対効果について解説いたします。(こちら
是非最後までお付き合いいただければと思います。

デザインシステムの基礎知識や参考事例は以下の記事をご参照ください。

また、ニジボックスが執筆した、デザインシステムに関する書籍が技術評論社より2024年10月2日に発売されました!
デザインシステムの具体的な要素や運用方法・作り方など、さらに詳しく知りたい方はぜひ読んでみてください。
技術評論社、株式会社ニジボックス 著(2024)『つくって、みなおす、デザインシステム——現場での合意形成から設計、運用まで』

デザインから導入するデザインシステムの罠

デザインシステムの初期導入にあたり最も簡単で導入しやすい方法として、「デザイナーの作成するデザインの品質担保と作業効率化」のために、デザイナーが主導権を握りデザインツールの整備からデザインシステムの導入を推進する、という方法があります。

デザインツールの整備からデザインシステムの構築を始めることは、実装にデザインシステムを導入する場合と比較して低コストで導入を始められます。また、デザインシステムを構築する場合はデザインの根幹となる概念から定義し、システムを適用していくのが一般的です。

しかし、デザイナーだけでデザインシステムの導入を始める場合、ちょっとした罠に気をつける必要があります。
罠にハマってしまうと、デザインシステムの成長・拡張を阻害し、有用性を最大限生かすことができないということになりかねません。

まずは、注意すべき罠について解説します。

チームへの浸透がうまくいかないという罠

デザイナーによる、デザインツール上でのデザインシステムの構築のみに焦点を当てると、デザインシステムは「デザインの品質担保と作業効率化のためのもの」という側面が色濃く見えます。
故に、デザイナーの「業務改善」としてデザイナーだけで閉じてデザインシステムを構築していくことも可能なので、この構築方法は安易に着手しやすいとも言えます。

良くも悪くも、プロダクト開発のチーム内で課題感の共有、内容の合意やプロダクトとしてのROI※の検討を行わずに、デザイナーだけでデザインシステムの構築を推進することもできてしまうでしょう。
しかし、それらが十分に行われなかった結果、デザインシステムの有用性や拡張計画をチームが認識していない、デザインシステムがチームに浸透していないという状況が生まれてしまう場合があります。
※ROI: Return On Investment(投資に対してどれだけの利益を得られたのかを把握するための指標)

チームにとって「デザインシステムは、デザイナーの作成するデザインの品質担保と作業効率のためのもの」で構わない、と判断した場合は問題ありませんが、デザインシステムは成長させていくことが求められるものです。
価値・効果を最大化していきたいとき、デザインシステムがチームに浸透していない状況は好ましくありません

デザインシステムは、デザイナーだけでなくチームの資産

デザインシステムの内容についてプロダクト開発チームでの協議や合意・共有がなかったのであれば、デザインシステムはあくまでデザイナーの資材になり、デザイナー以外の開発者にとってはそのデザインシステムは「デザイナー側の資材」という以上の意味を持てません。

とりわけ、モバイルアプリの開発などは、Material DesignHuman Interface Guidelineといったプラットフォーム側から提供される高度なデザインシステムの思想を、実装上無視できないことがあります。
むしろ、運用管理の観点を踏まえるのであれば、デザイナーが自前で作成したデザインシステムより重要視されることも多いでしょう。

下手をすると、デザイナーが良かれと思って作ったデザインシステムは実装とは全く乖離しているもので、エンジニアにとっては技術的負債でしかないという状況に陥ります。
デザインシステム導入によってデザイン接続のコミュニケーションがスムーズになることも期待していたはずなのに、コミュニケーションコストが一向に下がらない感覚を覚えるデザイナーも多いのではないでしょうか。

デザインシステムをプロダクト開発チーム全体にとって有用なものへと成長させていくためには、プロダクト開発チーム内でしっかりと協議し、デザインシステムをチーム全体の資産として位置づけ、導入・運用を推進していくべきでしょう。

デザインシステムの導入にあたって押さえておくべき5つのポイント

2020年のSparkbox(Forge社)の調査に興味深い内容があります。

Is your design system creating technical debt?
In addition, 42% of in-house respondents felt that the way their design system was originally built created debt for the organization’s technical or design departments.

When we asked how building the design system created debt, the two top responses were both related to a planning failure:

Lack of planning (9 of 23 respondents)
Failure to understand the magnitude of a design system (8 of 23 respondents)

Takeaway: Planning supports success
If hindsight is truly 20/20, planning and developing a clear strategy early in a design system’s life could contribute to its long-term success.

2020 Design Systems Survey / Sparkbox(Forge社)

調査では以下の結果を挙げています。

  • 社内の回答者の42%がデザインシステムの初期構築によって技術的負債を生み出していると回答
  • 回答者23人中9人が「計画不足」、回答者23人中8人が「デザインシステムの重要性を理解していない」を要因として挙げた

そして、このことからデザインシステムを早い段階で明確な戦略を計画、および開発することが、長期的な成功に貢献する可能性があると述べています。

前章で述べた“罠”についても同様で、デザインシステムを導入することに対する計画不足・重要性の理解不足によって起きるものです。
本記事掲題の「デザインシステムをどこまで導入すべき?」に対しては、デザインシステム導入の明確な戦略を計画することで明らかになっていくとも言えます。

デザインシステムの導入の計画における、押さえておくべきポイントを段階的に分解すると、以下の5つが挙げられます。

  1. デザインシステムの段階とメリットを把握する
  2. プロダクト・チームが抱える課題を検討する
  3. デザインシステムの導入によるコストを検討する
  4. デザインシステムの導入による費用対効果(ROI)を算出する
  5. デザインシステム導入と運用を計画する

第2章・第3章の記事で、各ポイントについて、順番に解説していきます。

第1章のまとめ

デザインシステムの導入・運用にあたって、注意しておくべき点について解説させていただきました。
デザインシステムは、正しく成長させることができれば、役割の違う人たちが共通で使うことのできる貴重なツールとなります。一方で、それぞれの業務プロセスに組み込むことに苦労することもあります。

次回から、押さえておくべきポイントを段階的に、かつ具体的に解説させていただきます。
どうぞよろしくお願いします。

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監修者
執筆者_白井 貫太
白井 貫太
UIデザイナー、リーダー

UIデザイナーとして、2021年ニジボックス入社。
デジタルプロダクトのUIデザインを専門領域とし、既存サービスの改善・グロース、デザイナーチームの業務改善などを担当。また、UIデザインチームのリーダーとして、デザイナーの育成、品質管理、生産性向上などのリードを行う。