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ペルソナマーケティングは本当に効果的?ペルソナの作り方や注意点を解説

ペルソナマーケティングは本当に効果的?ペルソナの作り方や注意点を解説

ペルソナマーケティングは、顧客像を詳細に設定した上で戦略を練るマーケティング手法です。しかし、マーケティング手法としてペルソナマーケティングを知っていても、「本当に効果があるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。

そこで今回は、ペルソナマーケティングの概要を紹介した上で、メリットや注意点について解説します。併せて、ペルソナの作り方や作成例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

ペルソナマーケティングとは

ペルソナマーケティングとは、ペルソナを活用してユーザーの情報を分析した上で、施策に活かすマーケティング手法のことです。
そもそもマーケティングでのペルソナとは、自社の製品・サービスを利用するオーソドックスな顧客像のことです。

ペルソナと混同されやすい言葉にターゲットがありますが、両者は人物像の設定の深さが異なります。

  • ターゲット:年代・性別・属性などのデモグラフィック情報に幅を持たせて設定する
  • ペルソナ:名前・年齢・性別・居住地・家族構成・趣味・日頃の行動など、ターゲットとなるユーザーを具体的な1人の人物像となるよう詳しく設定する

定義したターゲットに対して、さらに詳細な人物像を設定し、実在する一人の顧客に見立てたのがペルソナです。

ペルソナの詳しい内容は以下の記事でも紹介しているので、ぜひご覧ください。

■関連記事:
「ペルソナ」とは?ターゲットとの違いやペルソナ設定の重要性までやさしく解説

ペルソナマーケティングのメリット4点

ペルソナマーケティングの概要を把握したところで、このマーケティング手法を実施する4つのメリットを紹介します。

1.ユーザーのニーズを理解して顧客体験を改善できる

ペルソナを設定することで、ユーザーのニーズを深く理解でき、顧客への有効なアプローチが可能になります。例えば、企業側の視点のみでマーケティングを実施すると、実際の市場ニーズとの食い違いが発生し、売上・成果につなげづらくなります。

しかし、ペルソナの毎日のスケジュールや生活習慣を設定すれば、ユーザー側の視点に立てるため、ユーザーが課題や悩みを解消するときの行動を予測しやすくなるでしょう。特に、近年は価値観が多様化しているため、ユーザーのニーズをしっかりと把握してアプローチすることが、より重要になっています。

2.ターゲットになる顧客像を組織内で統一できる

顧客像が明確になると、組織内での認識のズレが生じにくくなり、効果的な施策を効率的に打ち出せるようになります。特に、複数人でプロジェクトに携わっている場合、それぞれが描く顧客像が異なると、業務効率が落ちる可能性があります。

事前にペルソナを具体化させておけば、戦略を決めるミーティングや業務を円滑に実施できるでしょう。
ペルソナを中心にプロジェクトを進めるため、無駄な作業コストの削減にもつながります。場合によっては、ペルソナのイメージ写真を設定しておくのもおすすめです。

3.マーケティング戦略の方向性が固まる

ペルソナの設定により、自社が提供する製品・サービスのコンセプトも固まり、マーケティング戦略の目標を定めやすくなります。これは、ペルソナが新たな製品・サービスを使いたい理由や、既存の製品・サービスに不満を抱えている点などが抽出しやすくなるためです。

例えば、ペルソナが自社の製品・サービスを選ぶ明確な理由を言葉で表すことができれば、競合他社と比べたときの優位性や強みを可視化できます。

この手法を用いれば、ペルソナと同様のニーズを持つ顧客層に対して、より有効なマーケティング戦略を立案できるでしょう。

4.カスタマージャーニーマップを作成時に再利用できる

ペルソナを設定しておけば、カスタマージャーニーマップを作成する際に再利用できます。カスタマージャーニーマップとは、ユーザーが製品・サービスを利用・購入するまでのプロセスを可視化したものです。

顧客行動を一つひとつ分析した良質なカスタマージャーニーマップを作る上で、重要な構成要素の一つであるペルソナの設計は欠かせません。
事前にペルソナを設定しておけば、カスタマージャーニーマップの作成時間を短縮でき、人的コストの削減にもつながるでしょう。

カスタマージャーニーマップの内容は、以下の記事でも詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてください。

■関連記事:
カスタマージャーニーマップとは?As-IsとTo-Beの2種類の作り方までやさしく解説!

ペルソナマーケティングの注意点3つ

ペルソナマーケティングには複数のメリットがある一方、知っておくべき注意点もあります。ここからは、ペルソナマーケティングの効果を高めるためにも、重要な注意点3つを見ていきましょう。

1.定期的な見直しが重要

ペルソナマーケティングで設定したペルソナは、定期的に見直してアップデートしなければなりません。

なぜなら、環境や市場の変化によって、ユーザーの消費活動は変化するからです。ペルソナの情報やデータを更新しないと、現状に即したユーザーの姿を正確に分析できない可能性があります。

製品・サービスによって異なるため一概にはいえませんが、半年~1年をめどに定期的にペルソナの見直しを行うことが大切です。時流に沿ったペルソナを設定し、マーケティング活動に生かすことで、自社の利益の安定化を図れるでしょう。

2.広く浅くターゲティングするのには向いていない

ペルソナマーケティングは、広く浅くマーケティングする手法ではありません。特定層のユーザーに刺さるマーケティングをピンポイントで行う手法であるため、そもそも自社の製品やサービスを広く浅く訴求したい場合は、向いていない可能性があります。

多くの消費者に対して訴求するのであれば、「マスマーケティング」が向いています。マスマーケティングは、画一的なマーケティング活動を行う手法であるため、ユーザーの細かな設定などが不要です。

ただし、細かなターゲティングを行わない分、幅広い層に受け入れられる製品・サービスであることが前提となる点には、注意しましょう。

近年は、セグメントされた顧客を対象としたマーケティングが主流なので、自社のマーケティング戦略は慎重に決めることが大切です。

3.データや数字をもとに分析をすることが大事

ペルソナは先入観やイメージではなく、自社で蓄積した過去のデータや市場調査をもとに設定することが重要です。データが正確性に乏しいと、現実に即したペルソナにならないおそれがあります。

例えば、市場調査のデータを活用する際は、総務省統計局の統計データや厚生労働省が発表する人口動態調査などが使えます。
さらに、ユーザーインタビューやアンケートなど、自社で独自に収集した情報も利用すると、より精度の高い分析ができるでしょう。

また、ペルソナの構築は段階的にステップを踏んでいかなければならないため、作業工数や費用がかかる点にも留意が必要です。徹底したリサーチをもとにペルソナを作り上げることで、有効性の高いペルソナマーケティングを実行しやすくなるでしょう。

ペルソナの作り方

ここからは、ペルソナの作り方を6つの項目に分けて具体的に解説します。

1.ペルソナの項目を決める

まず初めに、ペルソナとして設定する項目を決めることから始めます。
具体的には以下のような項目を設定しましょう。

【ペルソナの項目例】

  • 名前、愛称
  • ペルソナの最終目的・ゴール
  • 生活・仕事に置ける役割
  • 調査対象における知識レベル
  • 商品・サービスの利用経験、頻度
  • 商品・サービスの利用シーン、利用環境

項目例は、自社のサービスに合わせて変更・追加をするといいでしょう。

2.情報収集

ペルソナの作成において、情報収集は重要なポイントです。製品・サービスに即したペルソナを作成できるのかどうかは、収集した情報の量・質が影響します。

まずはデータ収集として、定量的なデータを既存顧客の情報から抽出し、グループ分けしましょう。ユーザーインタビューやユーザーへのアンケートも、効果的な情報収集の手法です。

上記で設定した項目例をベースに、定性情報を集めるならユーザーインタビュー、定量情報を集めるならユーザーへのアンケートを行うのがおすすめです。

アンケートでは年齢、職業などの基本情報や商品・サービスの利用経験など「はい/いいえ」または5段階評価などで回答できる情報を集めるといいでしょう。

ユーザーインタビューでは、ユーザーのニーズや課題など心理的側面に踏み込んだ情報を集めるようにしましょう。

ユーザーインタビューやユーザーへのアンケートを活用することで、自社の製品・サービスの課題やユーザーの潜在的なニーズについて、深く調査しやすくなります。

なお、ユーザーインタビューやアンケート調査のコツ、進め方などは以下の記事からご覧いただけます。

■関連記事:
【保存版】ユーザーインタビューとは?実施する目的やコツ、設計方法まで分かりやすく解説
【基礎から分かる】アンケート調査とは?進め方や注意点を解説!便利なツールも紹介

3.共通項を出す

次に、集めたユーザーデータを精査して、どのような共通点があるのかを調査・分析します。共通項を抜き出すことで、実状に見合ったフラットな目線でのユーザー像が見えてくるはずです。

また、共通項を出す際は「定量的要素」と「定性的要素」もポイントになります。ペルソナにおける定量的要素とは、年齢や年収、身長など数字で表せる情報のことです。
一方、ペルソナにおける定性的要素とは、趣味嗜好や性格など数字では表せられない情報を指します。

これらの要素も意識しながら、抜き出した共通項を当てはめて、顧客像を構築しましょう。

4.ペルソナが何を求めているのかを考える

抜き出した共通項をもとに、ペルソナが求めている製品・サービスの内容を検討します。ペルソナの抱える課題や悩みを解決することが、製品・サービスを提供する目的です。

例えば、共通項をもとに「結婚願望があるが、仕事が忙しく出会いが少ない」というペルソナの悩みが抽出できたとしましょう。この場合のゴールとしては「スキマ時間で手軽に婚活がしたい」という内容が設定できます。

ペルソナに寄り添ったゴールを設定すれば、より市場ニーズに合ったマーケティング手法を考えることができます。

5.集めた情報をまとめて書き出す

ここまで集めた情報を、以下のようにまとめて書き出して、ペルソナシートを作成します。

  • 基本情報(年齢や職業)
  • 詳細情報(行動・心理傾向)
  • 利用時のコンテキスト

上記のうち、利用時のコンテキストとは、ペルソナが製品・サービスを使う際の「ストーリーイメージ」のことです。

例えば、20代後半の女性がマッチングアプリサービスを利用するまでのストーリーを作る際は、ペルソナの心が変化する流れを時系列で書いていきます。

  • 仕事が忙しく、このままだと結婚できないかもしれない
  • 街コンや合コンだと会える人が少ないので、ピンとくる人がいない
  • マッチングアプリなら手軽にできるし、多くの人と出会えるかもしれない

なお、コンテキストを書き出す際は、カスタマージャーニーマップや共感マップ(※)を事前に作成しておくと、よりストーリーの確度を高められます。
※ペルソナ視点の感情や行動を整理して、ニーズをつかむためのフレームワーク

共感マップの詳しい内容や実際の作り方については以下の記事でも解説をしています。

■関連記事:
共感マップとは?6つの基本要素から作り方まで詳しく解説!

6.運用・見直し

ペルソナが完成したら、実際にペルソナマーケティングを実施してみましょう。ただし、顧客像は日々変化していくため、ペルソナは定期的に見直しが必要です。

ペルソナを見直す際には、実際に顧客と接する機会の多いセールスパーソンから、最新の情報を得るのが有効な方法といえます。

市場ニーズに即したペルソナを設定・管理して、価値の高いマーケティングを実行しましょう。

ペルソナの作成例

ペルソナの作成例をBtoC、BtoBに分けて紹介します。なお、BtoCは「Business to Customer」の略で、企業の製品・サービスを一般消費者へ提供するビジネスモデルのことです。

一方、BtoBは「Business to Business」の略で、企業の製品・サービスを企業へ提供するビジネスモデルを指します。

BtoCのペルソナの作成例

BtoCのペルソナを作成する際は、主に以下の要素を設定します。

  • 名前
  • 年齢
  • 性別
  • 居住地
  • 家族構成
  • 趣味
  • 日頃の行動

上記の要素を踏まえると、以下のような基本情報や詳細情報を設定できます。

ペルソナの分類と設定項目を示した表の画像。
ペルソナの分類はユーザー。設定項目は年齢、職業、年収、困っていること、休日の過ごし方、いつまでに結婚したいか、結婚相手に求めること、悩み
。

このように、基本情報や詳細情報をしっかりと書き込み、ペルソナの特徴を把握しましょう。

BtoBのペルソナの作成例

BtoBでは、購入にあたり製品・サービスの情報収集を行う担当者と、購入に関する意思決定を下す組織(決裁者)の両方のペルソナを、以下のように設定します。


ペルソナの分類と設定項目を示した表の画像。
担当者のペルソナの設定項目は、役職、困っていること、情報収集の手段。
組織のペルソナの設定項目は、企業規模、業界、実現したい目標、組織の課題、事業の課題

上記のように、両者のペルソナ設定を詳細にしておくことで、ニーズに即した顧客動向を探れ、ペルソナマーケティングとして効率的なアプローチを仕掛けやすくなります。

例えば、担当者の「情報収集の手段」にGoogle検索と記載されている場合は、SEO(検索エンジン最適化)に対応するため、自社のWebコンテンツの充実化といった対策が可能です。作成したペルソナ像を、自社のマーケティングにしっかりと生かしましょう。

ペルソナマーケティングは古いのか

近年は、デジタルマーケティングの高度化に伴い、マーケティングオートメーションツールで各顧客に適した接客をリアルタイムで行えるようになりました。

そのため、「代表的なユーザー像であるペルソナは、設定不要なのでは?」という声は少なくありません。

しかし、自社マーケティングの現状を改めて分析する、商品やサービスのキャッチコピーを考えるシーンなどにおいて、ペルソナを設定する意義は十分にあるといえます。
先述のとおり、ペルソナを設定することで、組織内での認識を共有しやすくなるなどのメリットもあります。

パーソナライズされた細かなペルソナ設定を行うことで、マーケティング戦略の優位性も高めやすいでしょう。

■関連記事:
「ペルソナマーケティングは古い」は間違い? ペルソナの重要性と効果的な作り方を解説!

まとめ

ペルソナマーケティングは、ユーザーニーズを理解した上で戦略を立てられるため、自社の売上・成果につなげやすいというメリットがあります。また、顧客像をチーム内で共有して効率的な施策を打ち出せる点や、マーケティング戦略の方向性を固めやすい点もメリットです。

ただし、ペルソナを作成する際は、データや数字に基づいた分析や定期的な見直しなどが必要になることに注意しなければなりません。

ニジボックスは、リクルートの新規事業研究機関から誕生した経緯があり、ペルソナの作成からサービスの設計、開発まで数多く実施した経験がございます。

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監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

Twitter:@junmaruuuuu
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