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BtoBマーケティングにペルソナ設定は必要?BtoB向けのペルソナ設定の流れと注意点を紹介

BtoBマーケティングにペルソナ設定は必要?BtoB向けのペルソナ設定の流れと注意点を紹介

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マーケティング戦略を考える上で、製品やサービスを利用するユーザー像を具体的に設定する「ペルソナ」は重要な要素となり得ます。

その一方で、「ペルソナ設定はBtoCの製品やサービスに有効なマーケティング手法なのでは?」「BtoBでもペルソナマーケティングは有効なのか?」と考える方もいるでしょう。

この記事では、BtoBにおけるペルソナマーケティングの必要性やメリット、ペルソナ設定の流れを紹介します。

マーケティングについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

BtoBにおけるペルソナマーケティングの必要性

まずは、マーケティングにおけるペルソナとはどういう意味かを説明し、その後BtoBにとってのペルソナマーケティングの必要性について解説します。

マーケティングにおける「ペルソナ」とは

ペルソナとは、マーケティング分野においてターゲットとなる具体的な「ユーザー像」を設定されるときに使われる言葉です。

混同されがちな言葉に「ターゲット」がありますが、ターゲットは性別や大まかな年齢層など、幅のあるデモグラフィック情報に限られます。

対してペルソナはターゲットの中でもより具体的に、職業・家族構成・生活習慣・価値観などを細かく設定し、実在する人物として組み立てていく点が、両者の違いです。

BtoBの場合は、個人に加え企業や担当部署単位での施策を考える必要があることから、「個人ペルソナ」と「企業ペルソナ」の2種類を設定します。

個人ペルソナとは、氏名や役職、経歴などの企業におけるターゲットとなる1ユーザーを表します。場合によっては、決裁者が一人であるとは限らないため、複数のペルソナを設定することもあります。

一方で、企業ペルソナは会社名や従業員数、会社規模など企業そのものを表します。

ペルソナについては以下の記事でも詳しく解説しているので、併せてご確認ください。

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BtoBにペルソナマーケティングは必要?

先程BtoBのペルソナ設定では「個人ペルソナ」と「企業ペルソナ」の2種類が必要だと述べたとおり、BtoBマーケティングにおいてもペルソナ設定は欠かせません。

ペルソナ設定は、自社内でのニーズ共有や、マーケティング施策の一貫性維持などに役立ちます。加えて、企業におけるキーパーソン(決裁者など)がイメージしやすくなることから、自社の商品やサービスの導入に向けて、的確なアプローチが可能になります。

ペルソナマーケティングは、製品やサービスにおけるさまざまなマーケティング戦略の立案や施策を成功させるための基盤となり得る手法です。BtoCだけではなくBtoBにおいても、この前提は変わりません。

ただし、効果的かつ無駄のないペルソナ設定には、BtoBならではの特徴を理解する必要がある点に注意してください。

BtoBマーケティングの特徴とは

ここでは、BtoBマーケティングの特徴について3つ紹介します。BtoB向けのペルソナを設定する際は、以下の特徴を踏まえるとよいでしょう。

意思決定者・関与者が複数いる

BtoBの購買プロセスにおいて、購買の意思決定は個人ではなく組織によって行われます。そのため、担当者一人で製品やサービスの購買を決めることはほとんどありません。基本的には、購入担当者だけでなく、購入決定の権限を持つ上長、購買担当の部門が介入します。

また、商材の購買金額が大きい場合は、社内の経営に関わる役員などに稟議を提出し、役員会での承認を受けなければならない場合もあるでしょう。その場合、購買担当者や上長だけでなく、事業責任者や部長、社長など、さらに関係者が多くなります。

購買決定までに関わる複数の意思決定者や関与者は、立場や役割が異なる上、おのおのの商材に対する心理状態も異なります。

そのため、購買プロセスに関与している人物のそれぞれの役割や心理状態、行動を理解してマーケティング施策などを進める必要があるのです。

購買の決定までに時間がかかる

購買の決定までに関わる人数が多い分、検討を始めてから実際に購買などを決定するまでに時間がかかるケースが多いのも、BtoBの特徴の一つです。

BtoBの場合は、商材の中身や金額によっては、関連業者へのヒアリングをはじめとした事前のリサーチや検討、担当者および複数の関係者間での説明や調整などのプロセスを経る必要があります。

一方BtoCの場合は、大多数の製品やサービスにおいて、購入を決定するまで時間をかけることは少ないといえます。
製品やサービスの性質や金額によっても多少異なるため一概にはいえませんが、例えばスーパーで食材や飲料水を購入する際、購入決定まで何時間もかける人は少ないでしょう。加えて、「衝動買い」という言葉があるように、一時的な購買意欲の高まりによって購入を決めることも珍しくはありません。

このように、BtoBの商品が購買されるまでには、BtoCと比較して数ヵ月~年単位の時間がかかる場合もあります。

意思決定心理が論理的・合理的である

BtoCの場合、ユーザーは「広告でよく見るから」「人気のタレントが使っている」「なんとなくデザインが好き」など、心理的な理由や直感的に購入を決定するのは珍しくありません。

一方BtoBの場合は、「納期は遵守されるか」「購入費用は予算内に収まるか」「品質は高いか」「費用対効果は高いか」など、論理的かつ合理的な心理・理由で購買されることがほとんどです。
加えて、上記の理由の中で一つだけではなく、全ての理由を総合的に判断した上で購買が決定されるのも、BtoBの特徴といえます。

そのためBtoBにおいては、複数人の意思決定者に対して、商品のメリットやニーズを合理的かつ論理的に説明する必要があるのです。

BtoBでペルソナを設定するメリット

BtoBでペルソナを設定するメリット

BtoBにおけるペルソナの必要性やBtoBの特徴を踏まえた上で、ここからはBtoBでペルソナを設定するとどのようなメリットがあるか見ていきましょう。

具体的なメリットを知ることで、BtoBにおけるペルソナの必要性をより深く理解することができます。

社内や担当者間での認識を共有できる

大まかなターゲット像のみで企画や開発、マーケティング戦略を進めた場合、担当部署やチーム内での認識や方向性のズレ、統一感の喪失につながりかねません。

詳細な情報や設定を持つペルソナ像を作り上げ、社内や商材の担当部署内で情報を共有することで、上記のリスクを回避することが可能になります。

それだけでなく、情報の共有によってペルソナのニーズに合ったアイデアやアプローチの追求にリソースを集中できるようになります。その結果、業務の効率化や、時間・コストの削減につながるでしょう。

顧客のニーズや行動予測につながる

企業・組織の悩みなどといった背景をペルソナ設定に組み込むことで、今後の行動予測や求めているもの(ニーズ)の把握につながります。その結果、よりユーザー視点を持ったマーケティング施策を検討することができるでしょう。

また、前述のとおりBtoBは購買決定までの期間が長いため、ペルソナと併せて「カスタマージャーニー」を活用することで、より顧客のニーズ把握や行動予測がしやすくなります。

カスタマージャーニーとは、顧客が製品やサービスを知り、利用や購入に至るまでの過程のことです。この過程を可視化したものは、「カスタマージャーニーマップ」と呼ばれます。

カスタマージャーニーおよびカスタマージャーニーマップについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

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BtoBマーケティングの精度が向上する

顧客の特徴をピンポイントに設定することで、取引先の企業や担当者の背景を想像しやすくなります。
また、広告戦略においても、商材のどの部分をアピールすれば有効なのかが予測できる上、ターゲットに適した媒体やツールも選定できます。

このように、ペルソナを活用し、企業がどのような課題・悩みを持っているかを具体的に想定することで、マーケティングの精度が向上するでしょう。

BtoB向けのペルソナ設定の流れ

BtoB向けのペルソナ設定の流れ

ここからは、BtoB向けのペルソナを実際に設定する際の流れを、4ステップに分けて紹介します。

BtoB向けのペルソナを作りたいと考えている方は、ぜひ以下の流れを参考にしてみてください。

①自社研究およびバリュープロポジションの決定

まずは自社研究を行い、バリュープロポジションを整理します。バリュープロポジションとは、顧客への提供価値のことです。
具体的には、サービスや製品が、顧客セグメントに対してどういった価値を提供するのか、すなわち、顧客のどういったニーズを満たすのかを指します。

自社サービスや製品のバリュープロポジションを整理することで、自社が提供できる価値や強み、特徴を把握することができます。
バリュープロポジションを探す際には、以下を把握しましょう。

  • 誰に対してどのようなものを提供するか
  • 自社の顧客層のニーズは何か
  • 自社だけが持つ価値や強み、提供できるものは何か

加えて、可能であれば経営に関わっている上司や社長などの役員の意見も取り入れるのもバリュープロポジションを考える上でおすすめです。

バリュープロポジションの明確化は、「どの企業や相手に対して何を提供するか」という方向性を見つけやすくし、より最適なペルソナ設定に役立ちます。

バリュープロポジションについては以下の記事で詳しく解説しています。

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②ターゲットの決定

バリュープロポジションを決めたら、次にターゲットとなる業界および企業を決定します(ターゲティング)。

ターゲティングには、既存顧客の情報を用いるのが効果的です。
過去や現在取引のある企業や問い合わせを受けた顧客の課題や悩み、ニーズを参考にすることで、似た性質を持つ業界や企業の細分化・分類を行えます。

その他、競合他社のデータや、社内のヒアリング情報、アンケート結果を活用するのも有効です。
情報を活用して絞り込んだ業界・企業の中から、自社の製品やサービスでアプローチしたい層をピックアップしターゲットを決定しましょう。

ターゲティングの際には、自社製品やサービスを選んでもらうための戦略を立てることも重要です。

例えば、ターゲット層のニーズは同じでも、費用が高くても品質の良いものを求める層と、費用が安く品質も良いものを求めている層では、アプローチ方法が異なります。
既存顧客の情報を参考にしつつ、自社の強みや将来性を軸にターゲット設定を行ってください。

③企業ペルソナ像の設定

ターゲティングを終えたら、いよいよペルソナ像の設定です。BtoBにおいては、後述する個人ペルソナとは別に「企業ペルソナ」を設定する必要があります。

BtoBの場合、最終的な顧客は「企業」のため、ペルソナとなる企業が持つ属性をより明確にするために「法人(企業)ペルソナ」を設定するのです。

企業ペルソナに組み込む情報は、「ファーモグラフィックデータ」を活用します。
ファーモグラフィックデータとは業種や売上規模、従業員数などといった企業の統計学的な属性情報のことです。これを活用することでペルソナとして設定している企業がどのような会社なのかが明確になります。
以下は、企業ペルソナに必要なファーモグラフィックデータの一例です。

  • 企業名
  • 業種
  • 商材の特徴
  • 売上規模
  • 従業員数
  • 社風
  • 業界における立ち位置
  • 将来の展望 など

これらの情報に加えて、企業の抱えている課題やニーズなどを組み込んで、具体的な企業を形作ることで企業ペルソナを完成させます。

ただし、どのような商材なのか、どの企業がターゲットなのかによって、必要な情報は変化するため、自社の目的や施策に合わせて項目を取捨選択する必要があるでしょう。

④個人ペルソナ像の設定

BtoBの場合、個人ペルソナ像に該当するのは、企業の担当者や決裁者、購買部門の担当者などです。

企業には、購入に至るまでに意思決定者が複数いるため、複数の個人ペルソナ像を設定する必要があります。パーソナルな部分はもちろん、すでに作成した企業ペルソナも背景として加えながら設定します。

以下は、企業ペルソナの背景を加味した、個人ペルソナに必要な項目の一例です。

  • 氏名
  • 年齢
  • 担当部署
  • 役職
  • 経歴
  • 決裁権の有無
  • 担当業務
  • 仕事での目標
  • 自身および部署が抱えている課題 など

なお、企業ペルソナと同様に、商品の特徴やマーケティング戦略によって必要な項目が変化する点には注意してください。

BtoB向けペルソナマーケティングにおける注意点5つ

BtoB向けペルソナマーケティングにおける注意点5つ

施策の方向性や認識のズレがあった、ペルソナと実際のターゲット層が異なっていたなどの不備があった場合、ペルソナのメリットを最大限生かせないおそれがあります。

最後に、BtoB向けペルソナマーケティングを行う際に注意すべき5つのポイントについて紹介します。

「BtoC」向けのペルソナ設定との違いを意識すること

ペルソナを設定する際は、BtoC向けのペルソナとBtoB向けのペルソナを混同しないようにすべきです。BtoC向けのペルソナとBtoB向けのペルソナでは、設定すべき事柄や重視すべき情報が異なるためです。したがって、あらかじめBtoC/BtoBそれぞれのペルソナの違いを理解しておく必要があります。

BtoC向けのペルソナ設定の特徴は、製品やサービスを購入する意思決定が、ペルソナ一人のみに委ねられている点です。
そのため、BtoC向けのペルソナを作成する場合は、氏名や性別、職業だけでなく、性格・嗜好・価値観など、より深みのある人物像の設定が不可欠となります。

対してBtoB向けのペルソナ設定の特徴は、製品やサービスの購買決定権はあくまで「企業」にある点です。したがって、ペルソナ設定は個人の性格や嗜好よりも、企業ペルソナによって決められる企業の課題、担当者ごとの決裁権の有無、企業の規模などが反映された設定が必要になります。

ペルソナ設定の際は、BtoC向けかBtoB向けかを明確にした上で、目的や目標に合わせた項目を組み込むようにするとよいでしょう。

ペルソナは複数設定すること

先程BtoBの特徴やペルソナ設定の流れでも説明したとおり、BtoBの場合、担当者が複数人いるケースや、担当者とは別の人物が決裁者であるケースは珍しくありません。

よって、ペルソナは複数人分設定することをおすすめします。

個人ペルソナが一人分のみでは、ニーズや課題などといったマーケティングに必要な情報を把握しきれない可能性があるためです。

また、ペルソナによって立場が変われば、ニーズや課題、製品やサービスのどのような点に魅力を感じるかも変わります。同様に、アプローチ方法もペルソナごとに異なるでしょう。

複数の個人ペルソナを作成する方法は、前述の「個人ペルソナ像の設定」で解説した方法と同様です。性別や年齢、経歴などペルソナの基本となる構成要素を組み込んだ設定を、必要な人数分用意します。

その上で、「最初の接点となる担当者」「決裁権を持っている上長」「担当者の同僚、部下」など、ペルソナ同士の関係性や各個人の持つ権限、個々の担当業務などを考慮しつつ具体的に設定していくとよいでしょう。

おのおのの個人ペルソナが情報を補い合うことで、購入までのフェーズや関係者ごとに適切なマーケティング施略の立案やアプローチ方法の施策につながります。

「理想像」ではなく現実的なペルソナを書き出すこと

ペルソナを設定する際は、自社側の理想や思い込みを設定に反映させないように注意しましょう。実際の顧客像とのズレが生じてしまい、ペルソナマーケティングの効果が思うように出なくなるおそれがあります。

現実的なペルソナ像を設定するためのポイントは、事前に収集した情報や既存の顧客情報、アンケートやユーザーインタビュー・ヒアリングの結果を用いて設定に根拠を持たせることです。
情報が不足している場合は、再度調査を行い、不足している情報を補うことも重要です。

根拠のある情報で形作られたペルソナをマーケティングの指針にすることで、より効果的で現実に即した戦略の立案や施策につながります。

ユーザーインタビューの具体的なやり方についてはこちらの記事もご参考になさってください。

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定期的な見直し・改善を行う

ペルソナは、一度完成したら終わりではありません。設定時の状況や時代背景が変化したら、ペルソナも変化に合わせてアップデートする必要があります。

例えば、サービスリリース時に設定したペルソナを、ターゲット層や需要が変わってからも使い続けていては、ニーズや課題の把握を十分にすることができず、思うような効果は出ません。

このような事態を避けるためにも、設定したペルソナは定期的に見直しを行うことが大切です。

あいまいな表現や設定は避ける

ペルソナ設定は、明確かつ分かりやすい内容を心がけましょう。

ペルソナマーケティングのメリットは、ペルソナを活用することで具体的なアプローチ方法を見つけられることです。しかし、ペルソナ設定の内容に不明瞭な部分があると、適切なアプローチを決められません。

例えば、「集客手段にインフルエンサーを用いている」という表現で設定している場合、インフルエンサーの活動場所によりユーザー層も異なります。
どのメディアを活用して活動しているのかが分からないと、どのようなアプローチが最良なのかが判断できないでしょう。

このような抽象的な内容やあいまいな表現、設定はできる限り避け、例えば上記のSNSであれば「Twitterを主体的に使っている」などのように、具体的に記載することが重要です。

まとめ

BtoB商材の購買プロセスの特徴は、購入までの意思決定者の数の多さや決定までに時間がかかる点、意思決定心理が論理的かつ合理的である点などがあげられます。BtoB向けのペルソナマーケティングにおいて重要なのは、このような特徴を踏まえてペルソナを設定することです。

ペルソナマーケティングでお困りの場合はぜひ、この記事で紹介したペルソナ設定の流れやポイントを参考にしてみてください。

ニジボックスは、リクルートの新規事業研究機関から誕生した経緯があり、ペルソナの作成からサービスの設計、開発まで数多く実施した経験がございます。

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監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

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