マーケティングとは? 初心者が戦略を立てるときの基本ステップとフレームワークを分かりやすく紹介
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「マーケティング」という用語は非常に広い意味を含んでおり、はじめから全体像を正しく把握するのは難しい概念です。
今回は、初心者の方がマーケティング戦略の立案に取り組むうえで、まずおさえておきたい基礎知識をまとめてご紹介します。マーケティングの目的や戦略を立てる手順、活用できるフレームワーク・ツールなどをそれぞれ見ていきましょう。
目次
マーケティングとは
マーケティングとは、日本マーケティング協会では下記のように定義されています。
顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである
引用:公益社団法人日本マーケティング協会
より具体的に表現すれば、「顧客が抱える課題に対してどのような価値を提供し、売れる仕組みを構築して、事業活動を展開していくかといった一連の流れ」ともいえます。
市場調査や分析、商品開発、広告宣伝などを通じて、商品やサービスを効率的に売るための仕組みづくりがマーケティングの基本的な捉え方です。
また、近年ではマーケティングの考え方も進化しており、広義では顧客だけでなくステークホルダーとの関係性を醸成し、持続可能な社会を実現するためのプロセスであると解釈されるようにもなっています。
マーケティングとブランディング、セールスとの違い
マーケティングに類似する用語として、「ブランディング」が挙げられます。ブランディングとは自社の商品やサービス、企業そのもののイメージを向上させ、他社との差別化を図る取り組みのことです。
ブランディングの主なゴールは市場での差別化にあり、自社独自の価値を形成したうえで顧客に理想的なイメージを浸透させていくことを目的とします。ブランディングに成功すれば、顧客に特別な価値を提供できるため、広い意味ではマーケティングの要素に含まれる活動といえるでしょう。
また、「セールス」とは自社の商品やサービスを顧客へ売り込む活動のことです。セールスが直接的な販売活動を指すのに対し、マーケティングは売れるための仕組みづくりを意味しています。セールスに頼らずに商品やサービスを売るには、どのようにすれば良いかを考えるのがマーケティングの基本的なスタンスです。
なお、ブランディングについては以下の記事で詳しく解説されているので、さらに詳しく知りたい方は参考にしてみてください。
マーケティングの歴史
マーケティングの具体的な概念は時代とともに変化しています。
マーケティングの出発点にあたる「マーケティング1.0」は、「プロダクトアウト」とも呼ばれており、製品主導のマーケティングを指します。1960年代頃までの主流な考え方であり、製品を主体として捉え、「完成した製品をどのような仕組みで大勢に売るのか」を検討する「マスマーケティング」が基本的なスタイルでした。
そこから、1970年代に入ると顧客のニーズを軸に製品をつくり、顧客に合わせて訴求する顧客志向の「マーケティング2.0」が主流になっていきます。
さらに、1990年代からインターネットが普及し始めると、顧客はより自由に情報収集を行い、幅広い視点で企業や製品・サービスを選べるようになりました。そこで、マーケティングにおいて重要なポイントとなったのが「独自の価値を形成して無二の存在になること」です。こうした価値主導のマーケティングを「マーケティング3.0」といいます。
2010年代以降に入ると、誰もが自由に情報を発信できるようになったことで、顧客の価値観も多様化しました。単に流行を追うのではなく、商品・サービスの選択によって自身の目的を実現できるかが重要な判断基準となったため、企業は購入後のプロセスも踏まえたオンリーワンのアプローチが求められるようになってきたのです。この時代のマーケティングを「マーケティング4.0」と呼びます。
そして、2020年代以降はテクノロジーやAIの急激な進歩を踏まえ、「マーケティング5.0」と呼ばれる新しい概念が生まれています。
マーケティングを考えるときの5つの基本ステップ
自社のマーケティング戦略を構築する際には、一定のフレームワークに沿って進めるのが合理的です。ここでは、以下の5つのステップをもとに、マーケティングを考える際のプロセスを見ていきましょう。
STEP.1:環境分析
まずは、自社を取り巻く環境の分析を行い、現状を正確に把握する必要があります。市場や顧客を取り巻く「外部環境」と、自社の状況である「内部環境」の両面を分析し、市場の動きや自社の立ち位置を確認しましょう。
外部環境には、主に「顧客のニーズ」「市場のトレンド」「競合他社の動き、シェア」「政策、法制度」「国際情勢」などがあります。また、内部環境には「自社の強み・弱み」「商品・サービスの強み・弱み」「過去の実績」「マーケティングに活用できるリソース」などが挙げられます。
環境分析に用いられる具体的なフレームワークとして、「SWOT分析」「3C分析」などが挙げられます。次のブロックで詳しくご紹介するのでそちらを参考にしてみてください。
STEP.2:ペルソナの設計
現代のマーケティングにおいては、対象者のターゲティングをきちんと行い、ターゲットに合わせた戦略を構築していくことが重視されています。商品・サービスの典型的な顧客像を描いたものを「ペルソナ」といい、ペルソナの設計を丁寧に行うことで、戦略の軸が定まりやすくなるでしょう。
ペルソナは性別や年齢、居住エリア、家族構成といった表面的な事実(デモグラフィック)だけでなく、ライフスタイルや価値観などの心理的な側面(サイコグラフィック)にも焦点を当てて設定する必要があります。
ペルソナの詳しい設定方法については、以下の記事で解説されているので参考にしてみてください。
STEP.3:自社のポジショニング
続いて、市場全体における自社の立ち位置を明確にする必要があります。競合他社の分析も踏まえながら他社にはない自社の強みを洗い出し、優位なポジションを検討しましょう。
ポジショニングを行うことで、顧客に対して自社の商品やサービスのどこが優れているかを示すことができ、競合他社よりも優位な立ち位置を築くことにつながります。ただし、全ての顧客を対象とするのは難しいため、自社が効率的に利益を獲得できる市場やターゲットを見極めて、そのなかで優位なポジションを築けるのかを検討していく必要があります。
また、自社が想定するペルソナに対してどのような価値提供が行えるのかも考え、明文化しておくことが大切です。ポジションは顧客が購入の意思決定を行うたびに評価されるものではなく、一度決まるとそう簡単には変更されないため、慎重に見極めていくことが大切です。
STEP.4:戦略の策定と実施
市場の動きとペルソナ、自社のポジショニングが明らかになったら、マーケティング戦略の策定に入ります。顧客の視点に立って戦略を固めたら、必要に応じてテストマーケティングを実施することもあります。
通常、マーケティング施策では、最初に立てた計画がそのまま期待する効果に結びつくことはほとんどありません。アクセス解析ツールなどを活用して定期的に効果を測定し、必要に応じてKGI・KPIの見直しを行ってみましょう。
また、「予想通りの成果を得られているか」を確認して、より効率的な施策に変更していく判断も必要です。
施策の効果を測定できるように、細かくデータを集計できる体制を整え、PDCAを回してブラッシュアップを重ねていきましょう。
STEP.5:効果測定とアップデート
施策を実行してからは、定期的に効果測定を行い、うまくいっているポイントと改善すべき課題点を探ります。場合によっては、効果が出るまでに中長期的な時間を要するものもあるので、施策に合わせて効果測定のタイミングを検討しましょう。
課題点を発見したら、原因を特定して改善し、再び実行に移します。原因が見当たらない場合は、改めて市場や競合の動きを分析したり、ペルソナの設定を見直したりしながら、戦略そのもののアップデートを図ることも重要です。
マーケティングの戦略策定によく使われる主な5つのフレームワーク
マーケティング戦略を構築するうえでは、第一歩となる「分析」のクオリティが重要なカギを握ります。ここでは、マーケティングで用いられる主な分析手法として、5つのフレームワークをご紹介します。
なお、マーケティングのフレームワークには、新規事業の立ち上げ時にも活用可能なものが多いです。新規事業立案のフレームワークについては、以下の記事でも詳しく触れられているので参考にしてみてください。
➀3C分析
「3C分析」とは、「顧客(Customer)」「自社(Company)」「競合他社(Competitor)」の3つの視点から市場環境を分析する手法です。
具体的には、「顧客がどのようなニーズ・行動パターンを持っているのか」「自社の商品やサービスの強み・弱みは何か」「競合他社の動向や市場におけるシェアはどうか」などを細かく分析していきます。
➁4P分析(4C分析)
「4P分析」とは、「Product(製品・サービス)」「Price(価格)」「Place(販売場所・提供方法)」「Promotion(販促活動)」の4つの視点から分析するフレームワークです。自社が取り扱う商品・サービスに特化して分析するのが特徴であり、マーケティング戦略の土台にもなる重要な分析手法といえます。
具体的には、「どのような価値を提供できるのか」「いくらで提供するのか」「どのようなルートで提供するのか」「どのように販促を行うのか」などを一つずつ分析していきます。
また、「4C分析」とは「Customer value(顧客価値)」「Customer Cost(顧客コスト)」「Convenience(利便性)」「Communication(コミュニケーションのしやすさ)」の4つの視点から分析するフレームワークです。4P分析が企業視点であるのに対して、4C分析は顧客視点なのが特徴だといえます。顧客のニーズに合った製品・サービスの開発や、競合他社との差別化を考えるときに用いられます。
➂SWOT分析
「SWOT分析」とは、自社の状況を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの視点から分析する手法です。
強みと弱みは内部要因、機会と脅威は外部環境を対象にした考え方であり、両者を分析することで事業のチャンスや動向、リスクなどを特定できるようになります。
➃PEST分析
「PEST分析」とは、マクロ的な視点による外部環境の分析に特化したフレームワークです。「P(Politics:政治)」「E(Economy:経済)」「S(Society:社会)」「T(Technology:テクノロジー)」の視点から、企業や市場を取り巻く環境を分析します。
例えば、Pは「法改正の内容や税制」、Eは「経済成長率、物価、為替」、Sは「流行、国や地域の人口動態、倫理観」、Tは「イノベーションや技術開発、AIの実用化」などを指しています。
➄PPM分析
「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)分析」とは、自社の商品やサービスを、「花形(Star)」「金のなる木(Cash Cow)」「問題児(Problem Child)」「負け犬(Dog)」の4つの次元に振り分けて分析する手法です。
花形は属する市場が成長しており、さらに自社のシェア率も高い優等生の商品・サービスを指します。一方で、競合他社が参入しやすいリスクもあるのが花形の特徴です。
金のなる木はマーケットこそ小さいものの、シェア率が高いため安定した売り上げが見込めるものを指します。
また、問題児は成長率の高いマーケットに属しているものの、現状ではシェア率が低く、利益につながらないものを指します。投資をすれば花形や金のなる木に成長する可能性もあるため、問題児に分類された商品・サービス、事業をどのように扱うかが重要なポイントです。
負け犬は市場成長率もシェア率も低いものであり、投資の費用対効果が見込みにくいため、ここに分類されたものについては基本的に撤退するのがセオリーとされます。
マーケティングの主な6つの手法
マーケティングの手法にはさまざまな種類があるため、自社のリソースやペルソナの性質などを踏まえて、適切なものを選ぶことが大切です。ここでは、代表的なアプローチをご紹介します。
➀デジタルマーケティング
「デジタルマーケティング」とは、パソコンやスマートフォン、SNS、AI、デジタルサイネージなどのさまざまなデジタル技術を活用するマーケティング手法のことです。
デジタルマーケティングは、データの蓄積や活用を得意としています。例えば、アプリによる行動履歴の取得やAIによるデータ分析の効率化などです。データを活用することで、より効率的なマーケティングを可能にしているのです。
現代は多くの顧客がインターネットを通じた情報収集を行うため、マーケティングの根幹をなす重要な手法です。
➁Webマーケティング
デジタルマーケティングの中心的な施策となるのが、インターネットを用いた「Webマーケティング」です。Webマーケティングはデジタルマーケティングの一種であり、SEO対策やWeb広告などによって自社のWebサイトにユーザーを誘導し、接点を築きながらマーケティングを進めていくのが主な流れです。
また、Webサイトを訪れたユーザーの特性や行動データなどを解析すれば、どのようなニーズを持っているのかを深くリサーチすることもできます。
➂SNSマーケティング
「SNSマーケティング」はデジタルマーケティングの一種であり、FacebookやX、Instagram、LINEなどのSNSを用いたマーケティング手法のことです。SNSは利用ユーザー数が多く、ユーザーが自ら情報発信できるため、「双方向のコミュニケーションが図れる」「拡散力が強い」といったメリットがあります。
効果的に活用することで、自社のブランドや商品・サービスを多くの人に認知してもらえます。ただし、媒体ごとに利用しているユーザー層は異なるため、SNSの特徴に合った戦略を立てることが大切です。
➃マスマーケティング
「マスマーケティング」とは、マスメディアを用いて不特定多数のユーザーに向けて情報を発信していく手法のことです。インターネットが普及する前に主流となっていた手法ですが、分野や商品の特性に応じて現代でも活用されています。
一気に大量の顧客へ認知を広げられるのがメリットである一方、広告費用は高額になるため、媒体ごとの費用対効果を考えて活用していくことが肝心です。
➄コンテンツマーケティング
「コンテンツマーケティング」はデジタルマーケティングの一種であり、動画やコラム記事などのコンテンツを通じて、ユーザーとの関係性を深めていく手法です。顧客が必要とする有益な情報を継続的に発信することによって、信頼性を高め、自社のファンを育成していくのが主な目的です。
顧客との関係性を深めれば、リピートや紹介行動なども期待できるのが大きなメリットとされます。一方、短期的なスパンで成果を出すことは難しいため、中長期的な視点での取り組みが大切となります。
➅インバウンドマーケティング
「インバウンドマーケティング」とは、ターゲットとなる顧客に対して情報発信を続けることで、自社の商品やサービスに興味・関心を持ってもらう手法のことです。具体的には前述したWebマーケティングやSNSマーケティング、コンテンツマーケティングなどを通じて情報発信を続け、ユーザーの関心を呼び込むことが基本となります。
そうした意味で、マスメディアを通じて顧客にアプローチするマスマーケティングとは対照的なスタンスを持つ手法といえるでしょう。
マーケティングに役立つツール3選
マーケティングではさまざまなデータを活用する必要があるため、ITツールによる管理・取り扱いの効率化を図ることも重要です。ここでは、マーケティングに役立つ代表的なツールをご紹介します。
①CMS
「CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)」は、Webサイトやブログなどのオウンドメディアを管理するのに役立つツールです。具体的にはWordPressなどが該当し、プログラミングなどの専門的な知識がなくても、コンテンツの管理やページ作成、SEO関連機能、アクセス解析などを幅広く活用できるのが特徴です。
CMSについては下記の記事で詳しく解説しているため、ぜひ併せてご覧ください。
②MA
「MA(マーケティング・オートメーション)」は、見込み顧客の情報を獲得するところから商談につなげるまでのプロセスを効率化し、成果を最大化するためのツールです。例えば、見込み顧客の抽出やデータの一元管理、メールなどを通じた情報発信といったプロセスを自動化できます。
ルーティン業務の省力化を図ることで、余ったリソースを顧客獲得や商談といったコア業務に振り分けやすくなるのがメリットです。
③アクセス解析・分析ツール
「アクセス解析ツール」とは、Webサイト上でユーザーがとった行動を解析できるツールのことです。具体的には「Googleアナリティクス」などが挙げられ、ユーザーのアクセス数やページ滞在時間、離脱率などを数値で把握できる仕組みとなっています。
また、SNSなどの分析ツールでは、WebサイトやSNSなどのインプレッション数やエンゲージメント率などを細かく把握できます。WebサイトやSNSを運用する際には、定期的に解析・分析を行い、施策の有効性を確かめながら改善を重ねていくことが大切です。
アクセス解析については下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
まとめ
マーケティングは幅広い意味を含んだ概念であり、時代とともに内容も変化しています。現代のマーケティングでは、データの活用と顧客に合わせた柔軟な戦略が重要であり、そのために活用できる手法やツールも確立されています。
しかし、いくらツールなどの利便性が向上していても、土台となる戦略があいまいでは上手に活用することはできません。まずはさまざまなフレームワークを用いて、自社の状況や外部の環境を丁寧に分析しながら、じっくりとマーケティング戦略を固めていきましょう。
ニジボックスではサイト制作や開発における、情報設計やビジュアル設計といったUIデザイン面に加えて、ユーザビリティテストなどによるUX観点やLP改善のご支援を行っております。
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元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動
コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。
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