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ストーリーボードとは?アイデアを可視化しUXデザインに活かす方法と作り方を解説

ストーリーボードとは?アイデアを可視化しUXデザインに活かす方法と作り方を解説

ニジボックスのUXデザインフローや案件事例をご紹介!


ストーリーボードとは、「ユーザーにとって価値ある体験」をストーリー仕立てで見せるUXデザインの手法です。

この記事では、UXデザインにおけるストーリーボードの役割と、読めばすぐにできるようになるストーリーボードの使い方・作り方を解説します。
記事最後には、ストーリーボードを実際に活用した事例もご紹介しましたので、ぜひ参考にしてみてください。

UXデザインにおけるストーリーボードとは?

ストーリーボードとは何か?

ストーリーボードとは、プロダクトやサービスのユーザー体験をイラストや画像を使ってストーリー化する手法です。

「絵コンテ」と呼ばれる、4コマ漫画のような形で手書きのイラストが描き込まれたものを見たことがある方も多いのではないでしょうか?
これもストーリーボードの一種で、映画などの映像制作における設計図として用いられることもあります。

ストーリーボードは「ストーリーを視覚化する」という点がポイントです。
プロダクトについてテキストで説明するより、ユーザー体験(UX)をビジュアルで説明する方がプロダクトやサービスの理解・検討・評価しやすいです。
そのため、UXデザインのプロセスの中でストーリーボードはよく利用されます。

例えば、「飲み会の幹事をやることの多い大学生向けに、オンラインで割り勘できるサービスがあれば便利なのでは?」というアイデアを思いついたとします。
上記のテキストだけでは、「サービスを使う背景・理由は?」「具体的にどんな利用方法?」「ユーザーが感じる価値は?」のように、多くの不明点が出てくることでしょう。
しかし、ストーリーボードによって、サービスを利用する動機づけから具体的な利用シーン、体験価値までをまとめることで、どんなサービスか一目で理解が可能です。

また、ストーリーボードは、プロトタイプ作成後やプロダクト提供後など、あらゆるフェーズで便利なツールです。
このタイミングで使わなければならないという決まりはないので、「ビジュアル化した方が伝わりやすい」と思ったタイミングで積極的に活用してみましょう。

UX、UXデザインについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

なぜストーリーボードを使うのか?

アイデア発想後にストーリーボードを使う主な目的は、以下の2点です。

1.アイデアを具体化するため

まだ明確なコンセプトとして落とし込まれていないアイデアの段階では、抽象的なものであることが大半です。
抽象度が高いものほど、人によって認識にばらつきが生じやすくなるため、アイデアを共有・評価する際には具体化する必要があります。

先ほど例として挙げた「オンラインの割り勘サービス」も、これだけではまだまだ具体性が見えません。
しかし、以下のような情報がイラストで視覚化されたらいかがでしょうか?

  • ユーザーの抱える課題:毎回、会計前の計算や現金の回収が面倒
  • 課題のソリューション:オンラインで簡単に金額の計算~回収してくれる
  • ユーザーの利用シーン:幹事は飲み会終わりにURLを参加者に通知する
  • ユーザーの感じる価値:楽だし、何より現金回収という「気をつかう行為」をしなくて済むのが嬉しい

このように、ストーリーを視覚化して具体的に利用シーンをイメージしやすくすることが、ストーリーボードを使う一番の目的です。

2.アイデアを評価するため

1で具体化したアイデアそのものを評価することも、ストーリーボードを用いる目的です。
そもそもアイデアは、抽象度の高い状態では正確な評価が難しいものです。

そこで、具体的なイメージの湧きやすいストーリーボードを使うことで、評価者がアイデアを疑似的に体験することを可能にし、評価しやすい状況を作ることができるのです。

UXデザインにおけるストーリーボードの役割

ここまで語ってきたように、視覚化によってアイデアの理解を促すことがストーリーボードのメリットのひとつです。
ただ、これだけでは「アイデアの単なるイラスト化」でも同じメリットが得られるといえます。

ストーリーボードという手法ならではのメリットは、ストーリー仕立てにすることでユーザーの行動・心理をより解像度高く理解しやすくなることです。
テキストベースのアイデアだけでは、プロダクトに対するユーザー体験まで想像するのは難しいでしょう。
しかし、ビジュアル付きのストーリーにすることで、ユーザーの利用状況や具体的な行動、何を嬉しいと感じるのかがはっきり見えてくるのです。

また、ユーザーの抱える問題に対して、プロダクトが介在することで起きる「変化」を捉えることができるのもメリットです。
これは、時間軸という概念の含まれるストーリーボードならではの特徴といえるでしょう。

ストーリーボードの3つの使い方

それでは、ここからはストーリーボードの使い方に関して、実践的なケースを交えて解説していきましょう。

①アイデアの共有

ストーリーボードはさまざまなタイミングで有用であると同時に、使い方もさまざまです。

その中でも最も簡単なのは、アイデアの共有ツールとして使う方法です。
ペルソナシートやカスタマージャーニーマップと同様、ストーリーボードも社内でのアイデア共有に適した手法といえます。
例えば、ストーリーボードとしてまとめたアイデアをプロジェクトメンバー全員が目につくところに貼り出しておきましょう。

そうすることで、ユーザーの抱える問題とそのソリューション、プロダクトの利用状況からユーザーの感じる価値までストーリー化して共有できるので、メンバー間での齟齬が生じにくくなります。

このようなツールによって、チーム内で徹底した認識の共有をおこなうのはとても重要です。
なぜなら、プロジェクトメンバー間の認識にずれがあると、プロダクトが完成した段階で「当初のアイデアから乖離したUIや、必要のない機能」が実装されているリスクが高くなるためです。

また、プロダクトの価値に関して社内外でプレゼンをするケースにおいても、ストーリーボードは有用なツールとして活躍します。

事業における意思決定には、マーケットリサーチや競合リサーチはもちろん重要です。
これに加えて、データだけでは表現できない「体験価値」をストーリーボードでプレゼンすることで、よりプロダクトの価値を分かりやすく伝えることが可能です。

ペルソナやカスタマージャーニーマップについて詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ併せてご覧ください!

②ユーザーテスト

アイデアを共有しやすいというストーリーボードの特性を活かして、社内だけではなく社外の人に対しても使ってみましょう。

例えば、ストーリーボードは、アイデアがユーザーにとって本当に価値があるものなのかを検証する「ユーザーテスト」のツールとして使用可能です。
プロダクトのアイデアだけでは、ユーザーは実際の利用シーンをなかなかイメージできませんが、ストーリーボードを用いてプロダクトの説明をすることで、その受容性を正しく測ることができます。

ユーザーテストについては下記の記事で解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

③プロトタイプ評価

ストーリーボードを他のツールなどと組み合わせて使う方法も紹介しましょう。

ストーリーボードはペーパープロトタイプなどと組み合わせることで、プロトタイプの評価のために活用が可能です。

「飲み会のオンライン割り勘サービス」を例に解説します。

まず、「幹事から参加者へのURL共有」「参加者の会計操作」などの、それぞれの場面で実際のプロダクトがどのようなUIになるかが分かるペーパープロトタイプを作成します。

加えて、ストーリーボードによって利用シーンを表現し、利用シーンに対応するプロトタイプの画面を並べます。

ストーリーボードとペーパープロトタイプを並べることで、利用シーンとシステム・サービスの画面の関係性について時間軸を含めて分かりやすく説明できるため、よりプロトタイプの評価がしやすくなります。
時間軸に沿って作られたツールを順に評価する手法は「ウォークスルー評価」と呼ばれます。

参考書籍:安藤昌也 著 (2016) 『UXデザインの教科書 』丸善出版

プロトタイプについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

ストーリーボードの作り方

ここでは、ストーリーボードの作り方の一例をご紹介いたします!

ぜひ参考にしてみてください。

【STEP1】今、起きている問題を整理する

プロダクトは、基本的にユーザーの困りごとを解決する手段として生み出すものなので、そもそも「解決すべき問題は何なのか」を洗い出し、整理することが重要です。

洗い出す際のポイントは、その問題が事実に基づいているものであるということです。
例えば、ユーザーインタビューなどの調査で得られた情報であれば、信頼度の高い「リアルな問題」と捉えていいでしょう。

ここで定義づけた「解決すべき問題」が、ストーリーボードで表現するシナリオのスタート地点となります。

ユーザーインタビューについて詳しく知りたい方は、以下の記事をぜひ併せてご覧ください!

【STEP2】「最高の体験」を考える

次に、シナリオのゴール地点を考えます。
つまり、ユーザーにとって問題が解決された状態を考えるわけですが、ただ解決されるだけではなく「最高の体験ができた状態」を思い描いてみましょう。

以下3つのポイントと照らし合わせながら考えてみてください。

  • 【魅力性】これ以上ない体験か?
  • 【新規性】これまでにない体験か?
  • 【意外性】常識をくつがえす体験か?

【STEP3】最高の体験を叶える解決策を考える

次は、STEP1で出したスタート地点からSTEP2で考えたゴール地点までのプロセスとなる「具体的な解決策」を考えます。
解決策のアイデア出しのポイントは、できるだけさまざまな視点から、また多様な属性のメンバーが取り組むことです。

プロジェクトメンバー内にこだわらず、違う部署のメンバーなども巻き込んで考えてみてください。
会社外のミーティングスペースやカフェなど、普段とは違う環境で考えるのもいいでしょう。

【STEP4】ストーリー構成をテキストで書き起こす

あとは、STEP1~3でまとめた情報を「ストーリー」の形式に仕立てるだけです。
まずは、テキストのみでスタート~ゴールまでをコマごとに書き起こしていきましょう。

コマの数に決まりはありませんが、例えば4コマのストーリーボードを作るなら、以下のような構成になります。

  • 1コマ目:ユーザーの抱えている問題
  • 2~3コマ目:問題を解決する道のり
  • 4コマ目:問題が解決された状態

テキストを書き起こす際は、問題~解決までのプロセスでユーザーの心理がどう変化したかが分かるようになっているか、を心がけるのがポイントです。
この心理の変化が「プロダクトの価値」を表すものとなります。

【STEP5】テキストをイラスト化する

仕上げとして、STEP4で書き起こしたテキストをもとにイラストを描き加えて完成です。
イラストには、シチュエーションを補足説明する「ナレーション」や、ユーザー心理を表す「セリフ」も入れると、より理解しやすくなります。

描き終えたら、一度通しで読んでみて「このストーリーでユーザーが感じる価値を読み取れるか?」を確認します。
ゴールは「ストーリーボードを作ること」ではなく「プロダクトの価値を具体化すること」なので、確認して違和感があれば、必要に応じて修正するようにしましょう。

ストーリーボードのテンプレート

「作り方はなんとなくわかったけれど、初めてのことなのできちんと作れるか心配」という方に向けて、ニジボックスが普段使用しているストーリーボードのテンプレートを用意しました。

下記よりダウンロード可能なので、ぜひ使ってみてください。

ストーリーボードのテンプレートはこちら

ストーリーボード活用事例

最後に、ニジボックスが実際にストーリーボードを活用した実例を2つ紹介します。
ぜひストーリーボード活用の参考にしてください。

【実例1】「あと値決め」サービスの価値検証

サービスの体験価値を検証

新しい購買・決済の仕組み「あと値決め」。
通常は販売者や提供者側が料金を提示することで決まる「値段」を、ユーザーが製品やサービスを購入、もしくは使った「あとで」「自分で決める」ことができるサービスです。

後から価格を決めるという通常馴染みがないユーザー体験の設計のため、
ニジボックスでは“ユーザーにとって、自分で値段を決める体験は本当に必要なのだろうか?”というユーザーの体験価値の検証をご支援
しました。
価値検証の際、ユーザーインタビューを実施するためにストーリーボードを用意しました。

ストーリーボードを使って体験価値を視覚化

インタビュー対象者からより正確な声を引き出すことを目指し、あと値決めが提供する体験をストーリーボードによって視覚化。
インタビューの結果は、対象者全員が「あと値決めをつかってみたい」と回答したというものに。
さらに、ユーザーは「あと値決め」を導入した事業者に対して、「あと値決めサービスを導入できるくらい、商品の品質が高い」と感じることが分かり、サービスの新たな価値を発見することにも繋がりました。
このように、ストーリーボードを活用したことで、あと値決めの価値検証をスムーズにおこなうことができました

ニジボックスでは「あと値決め」サービスに関して、ビジネス戦略支援からUI/UXデザインまでご支援させていただきました。詳細が気になる方はぜひ以下をご覧ください!
株式会社ネットプロテクションズ 「あと値決め」 UX VI UI Design

【実例2】保活サポートサービス「ほいれこ」のニーズ検証

サービスアイデアのニーズ検証

子育て世代ユーザーの保活(子どもを保育園に入れるために行う活動)をサポートする「ほいれこ」。
保育園の情報提供や保育指数の算出シミュレーションなどをスマートフォンで確認できるサービスです。
こちらのサービスは、課題探索調査を経て、複数のサービスアイデアの中からさらにニーズ検証を行い、着想されました。

ストーリーボードを使って複数のアイデアを見える化

「子育て領域」の社会課題を解決する新規事業創出の取り組みの中で、複数のサービスアイデア案がございました。
これらのサービスアイデアを、具体的にイメージし易くするするために「ストーリーボード」として見える化。
ストーリーボードを用いたインタビューを通して、ユーザーニーズが明確になり、コンセプト作成に有用な情報を得ることができました。

ニジボックスでは「ほいれこ」に関して、アイデア創出からプロダクト開発までご支援させていただきました。詳細が気になる方はぜひ以下をご覧ください!
みずほ情報総研株式会社 保活サポートサービス「ほいれこ」立ち上げ支援

まとめ

本記事では、ストーリーボードとは何かについて解説してきました。

ストーリーボードはアイデアの共有から、サービスの価値やニーズ検証まで、様々な場面において有効です。
本記事でご紹介した事例のように、「サービスのコンセプトが決まっているものの、ユーザーが本当に使ってくれるかわからない」「サービスアイデアはあるものの、ニーズがあるかわからない」といった課題を抱えている方は、ぜひお気軽にご相談ください!

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ニジボックスではサイト制作や開発における、情報設計やビジュアル設計といったUIデザイン面に加えて、ユーザーテストなどによるUX観点でのご支援も可能です。
これまでも、クライアントの課題に寄り添ったデザインプロセスを実際にリクルートや大手クライアント様の新規/既存事業でも数多く実践し、検証と改善を続けてきました。

下記にて、ニジボックスがクライアント課題に伴走する中で、磨き上げてきたUXデザインのプロセスや支援事例の一端を資料として一部ご紹介しています。
ご興味を持たれた方はぜひ、下記ダウンロードリンクよりご参照ください。

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監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

Twitter:@junmaruuuuu
note:junmaru228