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これからの時代に求められる新しいビジネスモデルとは?

更新日 2023.6.9
これからの時代に求められる新しいビジネスモデルとは?

2020年初頭に新型コロナウイルスの感染者が日本国内で確認されて以来、社会には大きな変化がありました。それはビジネスでも同じで、これまでになかった新しいビジネスモデルが生まれたタイミングになったともいえます。

本記事では、そのような激しい社会の変化の中で求められる新しいビジネスモデルについて解説します。

■参考記事:
ビジネスモデルとは?作り方や定番パターン、欠かせない3つの条件を詳しく解説!

 

新たなビジネスモデルが求められる 「VUCAの時代」

今の時代を表す言葉として「VUCAの時代」という言葉があります。
VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った略語です。変動性が高く、不確実で複雑、曖昧。つまり、「変化に富み、予測が困難な時代」だということです。

新型コロナウイルスの感染拡大によってライフスタイルが大きく変化し、リモートワークに必要なオンライン会議ツールやUber Eatsなどの宅配ビジネスが爆発的に成長しましたが、過去にも予測が困難な大きい変化が生まれた時代がありました。

それは2010年頃、ブロードバンドも広がり爆発的にインターネットが普及し始めたタイミングです。その頃、ほとんどの人が手に携帯電話、いわゆるガラケーを持っていましたが、それが小型パソコンであるスマートフォンに取って代わられ、老若男女問わず、生活面でも仕事上でも欠かすことができないものになるとは誰も予想していなかったのです。

実際にこの10年ほどを振り返っても、多くのビジネスモデルが生まれています。

  • 民泊
  • Airbnb
  • Uber Eats
  • タクシー配車アプリ
  • メルカリ

上記で挙げたものはほんの一部に過ぎません。民泊やAirbnbのように、一時は「黒船」とまで呼ばれて既存業界への影響の大きさが危惧されたビジネスも、コロナ禍の影響もあり思うように成長しなかったものもあります。一方で、Uber Eatsはコロナ禍が後押しになり、短期間で生活に浸透したサービスとなりました。

VUCAの時代、まだまだ新たなビジネスモデルが生まれ、短期間で成長したり、逆に衰退したりするビジネスモデルも多くなるはずです。

新たなビジネスモデルを生まないと企業の成長は止まる?

古くからいわれる言葉に「企業の寿命30年説」というものがあります。どんなにうまく成長した企業でも、30年ほどで衰退するというものです。「そのようなことはない、50年、100年続いている企業もある」と言う人もいるでしょう。

例えばそういった企業の一つである、SONYを見てみましょう。
SONYは、1946年、東京通信工業株式会社として生まれました。当時は真空管電圧計の製造販売を事業としていました。1950年にはテープレコーダーを開発し、SONYのブランドをつくります。

その後、トランジスタラジオ、カラーテレビ、ビデオを開発、製造販売していきますが、1979年に携帯型オーディオ・ウォークマンが生まれます。ウォークマンがその後、時代を開いたことは誰もが知っていますが、同じ年にSONYは保険事業にも参入しています。

1990年代にはゲーム事業、音楽事業と多くの事業を展開し、2022年度の連結業績概要によると、現在、SONYグループで最も売り上げを上げているのは、ゲーム事業、次いでエンターテインメント・テクノロジー&サービス事業です。
SONYという一つの会社の中で、ビジネスモデルは何度も生まれ変わっているといえるのです。

言い換えれば、同じ企業でもビジネスモデルや事業を時代に合わせて変化させなければ、30年で衰退する可能性が大いにあるということです。
企業の寿命30年説と述べましたが、VUCAの時代、変化の速度は速まっており、その寿命は10年程度ともいわれます。
新たなビジネスを生むことは、何も起業家の専売特許ではありません。企業の中にいても、常に新たなビジネスモデルを考え続ける必要があるのです。

■出典:
ソニーグループポータル | 歴史
ソニーグループポータル | 2022年度 業績説明会 決算説明会資料

タイプ別に見る注目の新ビジネスモデル


では、現在どのような「新たなビジネスモデル」があるのかを見てみましょう。

サブスクリプションモデル

サブスクリプションモデルは、「収益モデル」を変更することで生み出されるビジネスモデルです。

少し前まで、アプリケーション(ソフトウエア)は、パッケージ販売がほとんどでした。メディア(CD-ROM、DVD-ROMなど) を購入しパソコンにインストールして利用していたのです。ダウンロード版があっても同様で、バージョンアップ時には別途 購入し直す必要がありました。

それが現在では、月額あるいは年額の課金で常にオンラインで更新されるサブスクリプション版が増えています。MicrosoftのMicrosoft 365、Adobe社のCreative Cloud などがその代表だといえるでしょう。
自動車もこれまで「購入する」ことが当たり前でしたが、リース(=サブスクリプション)のサービスが増えています。
ユーザーにとっては初期費用が抑えられる、メンテナンスコストが抑えられるというメリットがあり、企業にとっては一定期間の安定的な売り上げ見込みが立つというメリットがあります。

時間を収益に変える

時間を価値と捉え、そこに ビジネスチャンスを見いだすビジネスモデルもあります。
Uber Eatsは、飲食の宅配サービスというとシンプルですが、さまざまな時間を価値に変換しています。

そもそもUber Eats 以前にも宅配ビジネスはありました。ピザの宅配チェーン、ファミリーレストラン、ファストフードチェーンでもありましたし、もっと古くから出前サービスは存在していたのです。

Uber Eats が画期的だったのは、「宅配」の部分を飲食店から切り離したことです。古くからの出前サービスは、飲食店の人手不足から廃止されるケースが増えていました。宅配ピザチェーンでは原価の過半を宅配の人件費が占めています。

ところがUberEatsは配達料をユーザー負担として徴収することで飲食店側の負担を減らしました。「配達」を付帯サービスから、「配達すること」を中心とするサービスに変換することで、かつての出前で費やしていた「時間」を「価値」に変えたのです。

ユーザーにとっては、飲食店に出かける時間を節約し、外食レベルの食事を自宅で体験できるようになりました。加えるならば、スキマ時間で配達の仕事をして収入を得ることができる「短時間バイト」の需要も満たしたといえます 。

さらに、最近増えている副業紹介、例えばクラウドワークスやランサーズといったサービスも、会社員として働きながらスキマ時間で収入を得るという、スキマ時間を生かすビジネスモデルです。

無駄を徹底して省く

以前からあるビジネスに対して、無駄をそぎ落とすことで価値を生み出すことも、新しいビジネスモデルの一つです。
一時期隆盛を極めた「ブックオフ」ですが、いわゆる古書店ではなく「新古書店」という業態を生み出しました。それまで目利きが重視されていた古書流通に対してブックオフは、「目利きがいらない、本の見た目のきれいさ」だけに特化した値付けを実施しています。結果、買い取り価格、販売価格ともにシンプルなものとなりました。古書マニアではなく、一般の「少し安く、はやった本を読みたい」ニーズを満たしたといえます。

また、 「メルカリ」も無駄を省いたビジネスモデルです。従来のフリーマーケット、ネットオークション、ネットフリマでは、出品時の手間、注文があった際の発送手続き、入金のやりとりなど、出品者の手間が多く、出品のハードルになっていました。メルカリではそれをマニュアル化、簡略化し、誰でもすぐに出品できる、商品が落札された後の一連の手続きをガイドしてくれるサービスでハードルを下げたのです。

最近増加している24時間営業のフィットネススタジオも、 何人ものスタッフが常駐していることが当たり前だった従来のフィットネスクラブのモデルを変化させました。ユーザーが体験できるフィットネスを絞り込むことで、最低限のスタッフで運営できるようにし、さらには会費の値下げ、24時間営業などを実現しています。本格的なフィットネスプログラムでなくても、手軽に運動したい、体を動かしたい、といったニーズに合致していました。面積の縮小による出店障壁を下げることにも成功しています。

社会問題を解決する

新しいビジネスモデルを生み出す一つの軸として、社会問題の解決があります。

例えば、子ども食堂、介護ビジネス、フードロス対策、またマイクロプラスチック対策の製品開発と販売事業などが挙げられます。これらの社会問題に関連する事業も、昨今SDGsの概念が普及することで注目される機会が増えました。

駅前などで増えている傘のシェアリングサービス、自転車のシェアリングサービスなどは、シェアすることでロスを減少させる効果があります。従来、無料の貸し傘サービスはありましたが、無料サービスで十分な数の傘が用意できない、ユーザーが傘を大事にしないという問題がありました。サブスクリプション型で課金することで収益を上げ、ユーザーもお金を支払うことで借りた傘を返す意識付けができ、ビジネスモデルとして成立させることができています。

これらのビジネスで重要なことは、適切な利益を上げ、持続可能にすることだといえます。ボランティアに頼らず、ビジネスモデルとして成立させる、つまり収益モデルを作ることが重要なポイントなのです。

新しいビジネスを生み出すためのフレームワークとは?

では、実際に新しいビジネスモデルを考えたいとき、どのように取り組んでいけばいいのでしょうか。代表的なフレームワークを紹介します。

それが9セルフレームワークです。


この図のように、「提供価値」「利益」「プロセス」の3つの要素に対して、「Who(誰が)」「What(何を)」「How(どのように)」を考えていきます。

よくある思考として、「ターゲット」「製品/商品」を考え出すためのビジネスの考え方がありますが、それはこの9セルでは左上の2つ (誰に対して・何を)に過ぎません。この9セルフレームワークでは、さらに「どのように利益を得るか(収益構造)」「どうやって実行するか(実行モデル)」まで考えることで、実現可能なビジネスモデルを導くことができます。

このフレームワークで注目するポイントとして、「How」を重視している点があります。これはなぜなら技術革新でビジネスモデルが全く変わってしまうケースがあるからです。

 

前述のUber Eatsですが、出前ビジネスは古くからありました。しかし、Uber Eatsのような「出前代行業」が普及してこなかった背景には、「出前が発生してから、店舗が代行業者に頼むとタイムロスが発生する」、あるいは「ユーザーが発注する場合、店と代行業者の両方に連絡しなければならない」といった面倒が生じていたからです。

しかし、ただ、デジタル化の進行、スマートフォンの普及といった技術革新による環境変化がその障壁をなくしました。ユーザーは、Uber Eatsのサイトで注文するだけです。それだけで飲食店にタイムロスなくオーダーが入り、配達員が手配されます。スマホの普及によって「How」の選択肢が増えたおかげでビジネスモデルが実現可能となった例です。

タクシー配車アプリも同様です。リアルタイムでタクシーの所在が分かること、配車のオーダーが入った瞬間にその情報がドライバーに共有されることが、現在のタクシー配車アプリを成立させています。

この「瞬時に情報共有できる環境」が新しいビジネスモデルを生みました。

新たなビジネスモデルを生かすための6つのステップ

9セルフレームワークで新たなビジネスモデルについて考案できる一方で、ビジネスモデルを生かすには手順も重要になります。
一般的な新たなビジネスモデルをローンチさせるステップは次のようなものになります。

  • ステップ1.目的を考える、設定する
  • ステップ2.事業領域を決め、事業のアイデアを生み出す
  • ステップ3.事業アイデアを分析・予測する
  • ステップ4.新規事業立ち上げの環境を整備する
  • ステップ5.現実的な行動計画を立案する
  • ステップ6.成果を検証して改善する

まず重視するべきなのは「ステップ1. 目的を考える、設定する」ことで、「何のためにやるのか」です。ビジョンと言い換えてもいいかもしれません。

世界中で成功している、新たなビジネスモデルを生み出した人は、必ず「何のためにやるか」「どんな社会をつくりたいのか」というビジョンを持っています。お金もうけ、利益を生むことは、そのために必要な手段なのです。ただお金もうけをしたいだけなら、先行しているビジネスモデルの後追いのほうが成功確率は高いかもしれません。

その後のステップ2~ステップ5は先述の9セルフレームワークをはじめ、さまざまな取り組み方があります。重要なことは、ステップ1で決めた「目的」から外れていないかを常に検証することです。メンバーが増えると、意識が共有されないことも増えてきます。常に、「目的」にブレがないかを検証し続けなければなりません。

そしてステップ1と同様に重要なのが「ステップ6.成果を検証して改善する」ことです。
新たなビジネスを立ち上げることは容易ではなく、必ずしもそのビジネスが成功するとは限りません。
成功しなかった要因として、そもそもビジネスモデルが間違っていた、資金不足、技術力の不足、メンバーの能力不足など、内部要因もありますが、それ以外に外部要因も多く影響します。外部要因としては、為替リスク、パンデミックや災害、急激な競合企業の出現成長などが挙げられます。
社会環境も大きな影響を及ぼします。だからこそ、「なぜうまくいかなかったか」を検証しその理由を明らかにすることと、その課題を克服できるか検証することが重要です。

まとめ

時代の変化が激しい今、常に新しいビジネスモデルが求められているといえます。新しいビジネスは必ずしも成功するとは限りませんが、チャレンジしなければ新しいビジネスは生まれないことも事実です。

ニジボックスは、UXデザインやデザイン思考をはじめとするさまざまなビジネス手法を実際に数多く実施し、検証を重ねてきております。

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監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

X:@junmaruuuuu
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