DX化とは?DX化のメリットや具体的な進め方・成功のポイントを分かりやすく解説
近年、「DX化」という言葉をよく耳にするようになりました。今まさに、DX化に取り組もうとしている企業も多いでしょう。
一方で、そもそもDXがどのようなもので具体的に何をすればいいのか、はっきりと分からないという方もいるのではないでしょうか。
この記事では、会社をDX化するメリットや具体的な方法、成功させるポイントについて分かりやすく解説します。
目次
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DXとは、どのような意味なのでしょうか。まずはDXの定義やポイント、「DX化」との使い分けについて説明します。
DXの意味は「デジタル技術で競争上の優位性を得ること」
DXとは、「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」を略した言葉です。広義では「デジタル技術を活用して社会や生活、ビジネスの形を変えること」を指します。
2022年9月に改訂された経済産業省の『デジタルガバナンス・コード2.0』では、DXの定義を次のように定めています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
さまざまな商品やサービスがあふれかえる現代において、差別化は企業にとって大きな課題の一つです。
企業がDXを進めることで、業務の効率化や商品・サービスの品質向上、新しいビジネスモデルなどの差別化が期待できます。
つまり、企業がDXをいち早く進めれば、同業他社との競争における優位性の確保につながるのです。
「DX化」は間違った表現?
「○○化」とは、○○の部分に当てはまるものや状態に変えることを表します。
前述したように、DXには「デジタル技術を活用して社会や生活、ビジネスの形を変えること」という意味合いがあります。
DXという言葉自体に「○○化」と同様の意味が含まれることから、「DX化」という言葉は誤りだと思う方もいるのではないでしょうか。
しかし「DX化」は、一般的に「DXの推進」「DXへの対応」という意味で使われているため、誤用とはいえません。
また、DXとDX化が示す内容はほぼ同じで、厳密に使い分けられているわけでもないようです。
ただし、DX化は「DXが完了した状態」というニュアンスで使われることがあります。
そのため、単に「デジタル技術による変革」を指す場合は、DXという言葉を使ったほうが伝わりやすいかもしれません。
DXを進める3つのステップ
DXを進める過程には、さまざまなステップがあります。企業によって状況や課題は異なるため、それぞれの現状に合わせたDXの進め方を見極めることが大切です。
ここでは、一般的にDXを進めるために必要とされる3つのステップを紹介します。
1.アナログ作業のデジタル化
これまでアナログで行ってきた業務をデジタル化することが、DXの最初のステップです。
DX化と聞いて、イメージしやすい変化ではないでしょうか。
例えば、紙の帳簿を使っていた会計業務に会計ソフトを導入したり、契約書を電子契約に変えたりすることなどが挙げられます。業務のデジタル化により時間や手間の削減につながり、業務の大幅な効率化が期待できます。
2.デジタルデータの蓄積
業務にデジタル技術を導入することで、業務効率や生産性が大きく向上します。デジタル化が進んだ次のステップで重要なのは、データの蓄積です。
業務にデジタル技術を活用することで、収支や業務内容、顧客ニーズなどのあらゆるデータが企業に蓄積されていきます。このデータが増えれば増えるほど、現状の把握や今後の戦略に生かすことが可能です。
3.デジタルデータを活用した業務・組織の変革
最後のステップは、デジタル化で得られたデータを活用することです。
蓄積されたデジタルデータの活用が、効率化された新しい業務プロセスの構築や不要な作業の削減につながり、組織のあり方が変わっていきます。
また、顧客のニーズや評価などのデータを分析することで、商品・サービスの品質向上や新事業の立ち上げにも生かせるでしょう。
DXと間違えやすい言葉との違い
DXと混同されやすい言葉に、「IT化」「デジタル化」「ICT・IoT」などがあります。明確な定義の違いがはっきりと分からない、という方もいるのではないでしょうか。
これらの用語について、それぞれの意味やDXとの違いを説明します。
IT化
ITとは、「Information Technology(情報技術)」の頭文字を取ってできた言葉です。
コンピューターやインターネット、情報処理などの技術を広く指します。つまりIT化とは、ITを用いてアナログ業務を効率化することです。
具体的には、連絡にメールを使ったり、業務管理にツールを導入したりするなど、ITを活用した幅広い業務効率化が含まれます。
それに対しDXは、単なる業務効率化だけでなく、事業やビジネスモデルなどの変革も目標としている点で、IT化とは明確に異なります。IT化は、DXの手段の一つといえるでしょう。
デジタル化
デジタル化とは、デジタイゼーション(Digitization)やデジタライゼーション(Digitalization)を指します。
デジタイゼーションは、アナログのものや情報を電子データに変換することです。分かりやすい例がペーパーレス化でしょう。FAXをPDFデータにするなど、紙というアナログな物質からデジタルへの変換がデジタイゼーションです。
そして、デジタライゼーションとは、業務やプロジェクト全体をデジタルへと変換することを指します。具体例を挙げると、工程管理のクラウド化やオンラインサービスの導入などです。
まとめるとデジタル化とは、デジタイゼーションとデジタライゼーションを通して業務を効率化したり、商品・サービスにデジタル要素の付加価値を足したりすることを指します。
一方でDXは、最終的にビジネスモデルや経営戦略の変革を目指します。つまりデジタル化は、IT化と同じくDXの手段の一つといえます。
ちなみに、IT化とデジタル化の違いが分かりづらいという方もいるでしょう。
どちらも、DXの手段や過程の一つという点では同じですが、IT化は「IT(情報技術)全般」、デジタル化は「電子データ」を用いた業務効率化と考えると、分かりやすいかもしれません。
ICT・IoT
ICTは「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の頭文字を取ってできた言葉です。前述のITにコミュニケーションの要素を加えたもので、ネットワークを介して情報や知識を伝達する技術を指します。
オンライン授業やオンライン診療など、ビジネスだけでなく日常生活のさまざまな場面で活用されている技術です。
一方、IoTは「Internet of Things(モノのインターネット)」の頭文字を取ってできた言葉で、身の回りのさまざまな商品がインターネットにつながる仕組みのことです。
例えば、インターネットを介して外出先からスマートフォンで操作できる、洗濯機やエアコンなどが該当します。
ICTもIoTもいずれも、ビジネスにおいてはDXを助ける技術・システムの一つです。利便性や効率を向上させる手段として、うまく活用する必要があるでしょう。
DX化でもたらされる4つのメリット
企業がDXを推進することで、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。DXでもたらされる4つのメリットを紹介します。
1.柔軟な働き方に対応できる
実感しやすい大きなメリットは、IT化・デジタル化によって業務が効率化したり、柔軟な働き方に対応できたりすることです。
手動で行っていた作業が自動になることで業務が大幅に効率化し、余分な労働時間や手間を削減できます。また、テレワークなどの導入により、社員の事情や希望に合わせた柔軟な働き方に対応できる環境が整うでしょう。
DXのためにさまざまなツールを導入すると、業務が効率化して働き方の選択肢が広がり、働き方改革の実現につながります。
2.人手不足の解消(人材の確保)
多くの企業が抱える課題である人材不足の解消も、DX推進のメリットです。
DX推進によって、アナログで行っていた作業がIT化・デジタル化されると、業務量が減少して生産性が向上します。
生産性が向上すれば、社員数の少ない企業でも一人ひとりに余裕が生まれ、人手不足に陥りにくい環境になるでしょう。
また、業務の効率化により職場環境が改善されると、退職者の減少や採用希望者の増加なども見込めます。
3.新しい商品・サービスの開発
DXで蓄積されたデータや技術を活用すれば、新しい商品やサービス、事業の開発に
つなげることができます。
ビジネスをする上で、顧客ニーズや市場の調査は欠かせません。集めたデータをAIなどの高度技術を用いて分析すれば、より正確な調査結果が得られ、顧客のニーズを満たす商品・サービスを開発できるでしょう。
DXが進むほどに実現可能なビジネスプランの幅も広がり、より質の良い事業展開を望めます。
4.BCPの内容が充実し選択肢が増える
BCPとは、「Business Continuity Plan(事業継続計画)」の頭文字を取ってできた言葉です。災害やテロ、システム障害などの不測の事態が発生したときに、事業を中断せずに継続するための具体的な計画を指します。
毎年のように、地震や台風などの自然災害が発生する日本では、リスクに備えるBCPの重要性が高まっています。このBCP対策において、欠かせないのがDXです。
DX推進により、コミュニケーションツールやリモートワークなど、アナログに頼らない環境が整っていれば、有事の際にもいち早く業務の正常化が可能です。
また、データのクラウド管理などで、不測の事態による損失をできる限り抑えられます。
DX化が必要とされる「2025年の崖」とは
「2025年の崖」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。2018年に経済産業省が発表した『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』で使われた表現で、日本の企業の将来に対して警鐘を鳴らしています。
上記レポートの内容を要約すると、「企業がDX化せずに複雑化・老朽化した既存システムが残った場合、2025年以降に年間で最大12兆円の経済損失が発生する可能性がある」ということです。
IT化・デジタル化が世界的に進む中で、複雑化・老朽化したシステムを抱えていると、システムのサポート終了やシステムの全貌を知る人材の高齢化・引退などのリスクが生じます。
膨大なデータ量の増加に対応できず、競争力の低下も免れません。
レポートでは、このような問題は2025年を境に多くの企業が直面することになると予測し、それまでにDXの推進に取り組むことが重要だと強調しています。
「2025年の崖」については、以下の記事でも詳しく解説しています。興味がある方は、ぜひご覧ください。
■関連記事:
「2025年の崖」とは?DX推進課題と対策を分かりやすく解説!
■参考URL:
DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
DXを成功に導く4つのポイント
企業でDXを成功させるためには、どのような点に力を入れればいいのでしょうか。具体的なポイント4つを解説します。
1.数年先を見越したDX計画を作る
DXが目指すのは、業務プロセスや組織の変革や新しい商品やビジネスプランの開発です。
しかし、DXに取り組んでから完了するまでにはある程度の時間がかかります。
そのため、先を見越したDX推進をしないと推進結果が時代遅れになる懸念があります。
そうならないためにも、数年後の時代のニーズや業務プロセスの変化などを予測して、計画を立てることがDXでは重要です。
2.社員の能力や業務内容に合わせたシステムの導入
DXにおいて、業務のデジタル化は必須です。しかし、それを現場の社員が使いこなせなければ意味がありません。
企業の課題や現状が異なれば、導入すべきシステムやツールもそれぞれです。
また、導入したシステムが最新のものであっても、社内の体制やルールなどに合わなければ社員が適切に利用できず、かえって負担が増えることにもなりかねません。
DX推進においては、最新のITシステムやツールを取りそろえるのではなく、社員の視点に立った使いやすさにも配慮し、効果を十分に発揮できるものを導入しましょう。
3.DXの中心人物となる人材の育成
DXを推し進めるためには、IT・デジタルの技術や知識に精通した人材が必要です。
日本企業でDXがなかなか進まない理由の一つとして、DXの中心となって主導する人材(DX人材)の不足が考えられます。
DXは最終的にビジネスモデルなどの変革を目指しているため、DX人材に求められる能力は、単にIT技術やデジタルデータの知識・活用だけではありません。
企業のあり方を変革するプロジェクトのリーダーとして、組織をけん引する資質も必要です。
社内に適任者がいれば良いですが、そうでない場合は外部から採用しなければなりません。
採用を含めた人材育成に力を入れれば、DX推進がスムーズになるだけでなく、DXによってもたらされる効果も大きくなることが期待できます。
4.経営層の積極的参加
DXが成功すれば、既存の業務プロセスや社内システムが大幅に変わります。抜本的な変革には、経営層がDXの意義を十分に理解し、積極的な姿勢で参加することが不可欠です。
もし経営層がDXに非協力的だった場合、DXのための取り組みが限られてしまいます。
場当たり的な一部のITツールの導入に留まるなど、中途半端な形で終わる可能性が高く、目標となるビジネスモデルや組織の変革は達成できません。
まずは、経営者自身がDXについての考えやビジョンを社員に示し、DXに対応するための社内の体制を整えることが必要です。
経営層が協力的な姿勢を見せれば、DX人材の育成・採用や、システム・ツールの導入などの投資もスムーズに進むでしょう。経営層のDXへの理解と意欲は、DX成功に必須といえます。
まとめ
DXとは、デジタル技術によって商品・サービス、ビジネスモデル、組織そのものを変革することです。いち早くDXに対応することで、業務効率化や商品・サービスの品質向上、新しいビジネスモデルの構築などにつながり、他企業との競争で優位に立てます。
「2025年の崖」に備えるためには、少しでも早くDXに着手することが必要です。ここで紹介した進め方やポイントを参考に、これからの企業競争の焦点ともいえるDXに取り組んでみてはいかがでしょうか。
ニジボックスは、リクルートの新規事業研究機関から誕生した経緯があり、UXデザインやデザイン思考をはじめとする様々なビジネス手法を実際にリクルートの新規事業でも数多く実施し、検証を重ねてきております。
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元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動
コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。
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