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「2025年の崖」とは?DX推進課題と対策を分かりやすく解説!

「2025年の崖」とは?DX推進課題と対策を分かりやすく解説!

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経済産業省が企業のDXを推進するために発表した「DXレポート」で警鐘を鳴らす「2025年の崖」とは、どのような報告なのでしょうか?

ここで挙げられている課題と対策について詳しく解説します。
近い将来現実になるかもしれないと言われる日本企業の危機を正しく理解し、これからの経営改革の一助としてください。

DXについては下記の記事もぜひ併せてご覧ください。

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経産産業省発表の「2025年の崖」とは?

2025年の崖とは、一言でまとめると
「現状の日本ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)実現が困難だが、その壁を超えられない場合2025年以降大きな経済損失が生じる可能性がある。」
ということです。

つまり、デジタル技術によって大きな変革へと舵を取らなければならない状況なのにも関わらず、それを阻むさまざまな課題があるために変革できないまま、近い将来日本企業が競争力を失っていく、という深刻な問題を指します。

この2025年の崖に関するレポートを発表したのは、一企業や研究機関ではなく、経済産業省です。
経産省は、日本全体を俯瞰して見たときに、2025年以降を危惧していると判断したのです。

なぜ「2025年」なのか?

なぜ「2025年」というタイミングが崖(ここから落ちていく、という意味)なのでしょうか?

現在、日本の企業のあらゆる基幹系システムが老朽化しています。
さらに、システムに対して場当たり的なマイナーチェンジを繰り返してきた結果、元々の開発者でさえ理解できないほどブラックボックス化されています。

その結果、この「レガシーシステム」の維持に多くのコストが費やされることで、新しいデジタル技術へ投資をする余裕がない状況が生まれているのです。

そして、2025年には21年以上稼働しているシステムが全体の約60%になると予測されています。

レガシーシステムをこのまま放置してしまうことで、問題が一気に表面化され、最新のデジタル技術を活用する他国との競争に大きな水をあけられてしまうタイミングが“2025年”になる、ということです。

2025年の崖とは、「年あたり12兆円の経済損失」に対する警鐘

経済産業省は、2025年の崖問題が現実のものとなったときの経済損失を1年あたり最大12兆円と見立てています

12兆円とは、観光業や外食産業の市場規模の約半分と言われると、相当のインパクトであると想像がつくのではないでしょうか?
この12兆円が「毎年」の損失となってしまうのです。

最悪のシナリオを避けるために、特にDXを推進できる立場にある経営層に対して、現状の課題と今後への対策をまとめたものが「2025年の崖」のレポートなのです。

「2025年の崖」で挙げられている課題

「2025年の崖」では、課題を「技術」、「人材」、「経営」の3つの面から整理しています。ここからは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

【技術面】既存システムの老朽化・複雑化・ブラックボックス化

現状、技術面の課題は、既存システムの

  1. 老朽化
  2. 複雑化
  3. ブラックボックス化

です。

老朽化とは、システムが現在の業務や外部環境に対応できなくなりつつあることです。
先にも述べた通り、21年以上使い続けているシステムを多く抱えているのが、日本企業の現状です。

複雑化とは、既存システムを場当たり的にカスタマイズし、内部構造が複雑になっている状態を指します。

そして、老朽化・複雑化によって、「もはや誰もシステムの全体像を把握できていないブラックボックス化」が進んでいるのです。

特に、日本においてはシステムをベンダー企業に受託開発してもらうケースが多く、システムを実際に使う企業(ユーザ企業)側にノウハウが蓄積しないのも問題です。

さらに、システム開発をした担当者の転職や定年退職によって、属人的なノウハウが失われることも多く、ブラックボックス化に拍車をかけています。

【人材面】IT人材の不足

人材面の課題は、開発担当者の転職・退職だけではありません。

そもそも、2015年の段階で既に、IT人材が本来あるべき数に対して約17万人も不足していたといわれています。
このIT人材不足は、2025年になると約43万人まで拡大する可能性があるそうです。

その上、IT人材の多くは、ベンダー企業に所属しています。
IT人材不足のユーザ企業にノウハウが少ないため、技術面の老朽化やブラックボックス化を認知するのが困難となっているのも大きな課題です。

また、先端的な技術を学んだ若い人材をレガシーシステムの運用に充ててしまうと、今後必要な最新デジタル技術を担う人材の育成・活用ができなくなってしまうことも問題です。

【経営面】技術的・人的課題により、DX実現が難航

ここまでに解説した、技術や人的な課題が、経営面にどのような悪影響を与えるのでしょうか?

ひとつは、IT関連費用の80%以上が既存システムの維持管理費に割かれ、新たなビジネスを生み出すためのIT投資(攻めのIT投資)ができない状況を生んでいる、ということです。

システムの老朽化・複雑化・ブラックボックス化によって、本来は不必要だった維持管理費を支払い続ける「技術的負債」が原因で、DXに必要なコストを十分に用意できないのは大きな問題です。

また、事業ごとに個別最適化し複雑化したシステムは、全社横断でのデータ管理・連携を妨げ、データの利活用によってビジネスを成長させるDXも実現が困難になります。

さらに、サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブル、データ滅失や流出などのリスクが高まるのも、経営上深刻な課題となるでしょう。

「2025年の崖」を超えるための対策

ここまでで、2025年を迎えるまでに私たちが解決しなければならない課題は、複雑かつ多岐に渡っていることが理解できたと思います。

それでは、2025年の崖から「落ちないように」するためには、どんな取り組みをする必要があるのでしょうか?

大きな目的は、既存のシステムを刷新し、本格的なDXを推進することです。

そのために必要なのは、「経営の仕組み」と「ITシステム」両面で現状を把握し、あるべき姿を目指すためのアクションにつなげることです。

経済産業省が、現状把握→アクションのための網羅的な指標をまとめた「DX推進指標」を定めているので、これに沿ってまずは自社の状況を明らかにしてみましょう。

「DX推進指標」は、

  1. DX推進のための枠組み(経営の在り方や社内体制)
  2. ITシステム構築の枠組み

の2つで構成されています。

DX推進の枠組みに関する6つの指標

まずは、経営の在り方や社内体制などをチェックするための指標です。
大きく下記の6つに分けられているので、それぞれ詳しく見ていきましょう。

  1. ビジョン
  2. 経営トップのコミットメント
  3. 仕組み
  4. 事業への落とし込み
  5. DXによる競争力強化の到達度合い
  6. DXの取組状況

1.ビジョン

「データとデジタル技術を使ってどのような価値を創出するのか、社内外でビジョンを共有できているか。」

まずは、どんな価値を生むのかという、会社の根幹を成すビジョンがどの程度社内外に浸透しているかをチェックしましょう。
ビジョンなしに新しいデジタル技術の導入を試みても、それだけでは事業成長は見込めません。
特にUXの観点から、提供できる価値をしっかりと再定義することが必要です。

2.経営トップのコミットメント

「ビジョンの実現に向けて、組織整備、人材や予算の配分、プロジェクト管理や人事評価の見直しなどの仕組みが明確化・実践されているか。」

明確なビジョンが共有できていても、その実現に向けた具体的なアクションが無ければ何も変わりません。
DX推進においては、経営トップがリーダーシップを持って新しい組織作りに取り組む必要があります。

3.仕組み

「マインドセットの醸成、推進体制の構築、必要な人材の育成や確保ができているか。」

新たなデジタル技術の活用では、仮設検証を繰り返すプロセスの確立、プロセスのスピーディーな実行、さらに目的を達成した際の評価制度の確立が重要です。
仮説を立てずに実行したり、あるいは失敗をおそれて何もしなかったり、といったマインドセットではなく、挑戦を促し、失敗してもそこから学んで改善していくプロセスを早いサイクルで回す仕組みや企業文化が、DXという「新たな挑戦」には必要です。
また、DX推進をミッションとする部署を設け、適切な権限と明確な役割を与えること、DX推進に必要な人材を育成し、確保することも重要な指標となります。

4.事業への落とし込み

「DXを通じた顧客視点での価値創出に向け、ビジネスモデル、業務プロセス、企業文化の改革に取り組んでいるか。」

ビジョンを掲げ、仕組みを作ったとしても、現場から抵抗(他の業務が忙しくてそれどころではない、など)が生まれることはあります。
経営トップ自らが、ゴールに向けて改革をリードし、事業に落とし込むことで初めてDXは実現可能になります。

ビジネスモデルについては下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

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5.DXによる競争力強化の到達度合い

「DXによって経営がどのように変わったのか、競争力の強化が実現できているか。」

1~4までは定性評価でしたが、5と6は定量評価になります。
例えば新規顧客の獲得割合や、サービスに対するユーザーの満足度などのいくつかの指標によって、DXによる事業の成長を測ります。

6.DXの取組状況

「DXの取組状況に関して、目標に対してどれだけ進んでいるか。」

3年後、5年後など中長期の目標を設定し、進捗管理を行いましょう。
例えば、企業全体に占めるデジタルサービスの割合や、DXのための事業連携の数など、各社で何を重視するかを定義した上で進めていきます。

ITシステム構築の枠組みに関する3つの指標

これまで見てきたように、既存システムのブラックボックス化などの課題はDX推進の妨げとなりうるため、ITシステムの課題を「見える化」する必要があります
そのための評価指標は、「2025年の崖」では大きく3つに分けられています。

  1. ITシステムの現状評価
  2. ガバナンスと体制の評価
  3. ITシステム構築における取組状況の評価

1.ITシステムの現状評価

「ビジョンの実現(=価値の創出)のために、既存システムの課題の認識と対応策が講じられているか。」

既存システムのブラックボックス化などの問題をどの程度認識し、対応できているかを測る指標です。
具体的には、技術的負債の対象と度合い、IT成熟度、データ利活用の状況など、細かい指標に分けることができます。

2.ガバナンスと体制の評価

「IT投資において、技術的負債を低減しつつ、価値創出につながる配分ができているか。」

先述した「DX推進の枠組みに関する指標」における経営面の課題をいかにクリアにできているかの指標です。
レガシーシステムの維持という負債を減らし、攻めのIT投資ができる環境を作ることが重要です。

3.ITシステム構築における取組状況の評価

「DXを実現するためのITシステム構築にどの程度取り組めているか。」

この指標は、定量的な経営指標によって評価します。
既存システム維持の予算と価値創出のためのIT予算の比率や、DX人材の数、人材育成の研修予算、サービス改善の頻度やリードタイムなど、各社が必要だと判断した定量指標を計測するようにしましょう。

参考:定性指標における評価

2025年の崖_DX成熟度レベルの基本的な考え方


「DX推進の枠組みに関する指標」の1~4、「ITシステム構築の枠組みに関する指標」の1~2は、定性での評価を行います。
評価基準も明確化されているので、評価の際に参考にしてください。
図のとおり、レベル0~5まで6段階に分かれています。

レベル0は「未着手」なので、この評価となったのであれば今すぐにでも着手すべきです。

最終的に目指すべきはレベル5「グローバル市場におけるデジタル企業」ですので、このゴールをいつまでに目指すのかを明確にすることで、取り組むべき具体的なアクションも見えてくるはずです。

DXの実現を推進するために必要な「UXデザイン」

経済産業省が主導し、国を挙げて企業のDX推進を図るのが「2025年の崖」という警鐘です。
課題は山ほどあり、そのための対策にも大きなコストがかかります。

しかし、今DXを推進しないと、将来的に甚大な損失が生まれることは、理解していただけたと思います。
そのためには、経営層がリーダーシップを発揮して、抜本的な改革を行うことが不可欠です。

DXは今後、どんなビジネスにおいても避けては通れないものです。
経営層以外の方でも、その必要性や推進のための情報を理解しておく必要があります。

そこで、この記事の最後に、DXを進めるうえでのヒントをひとつお伝えします。
それは、「UX(顧客体験)デザインの視点からDXを考えるべき。」ということです。

DXとは、あくまで手段です。
手段によって達成したい目的(=ビジネス成長)を常に意識しながら推進するのが重要です。
ビジネス成長のためには、顧客を知り、顧客のニーズに的確に応えなければなりません
そこで有用なのが「優れた顧客体験を生み出すための」UXデザインです。

DXとUXの深い関係性については、「DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?成功のコツから実践方法まで解説」でも詳しく解説していますので、ぜひ併せて読んでみてください。

また、UXやUXデザインについては下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

■参考記事:

まとめ

ここまで、経済産業省が企業のDXを推進するために発表した「DXレポート」で警鐘を鳴らす「2025年の崖」についてご紹介してきました。

DX推進のための指標をご紹介しましたが、ただそれを知っているだけではビジネスの結果には結びつきません。
結果として実らせるためには、実際に実践する中で経験を積んでゆく必要があります。

では、手堅く、リスクを最小限にDXを推進するにはどうしたら良いのでしょう?
それは、「実績のある経験者のノウハウを参考にする」ことも一つの作戦だと思います。

ニジボックスは、リクルートの新規事業研究機関から誕生した経緯があり、UXデザインやデザイン思考をはじめとする様々なビジネス手法を実際にリクルートの新規事業でも数多く実施し、検証を重ねてきております。

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監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

X:@junmaruuuuu
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