UXデザインとは?UIとの違いや考え方、必要なスキル・知識などを解説
ニジボックスのUXデザインフローや案件事例をご紹介!
UXデザインとは、製品やサービスを利用する際に、ユーザーにとって最適な体験を提供できるように設計することです。
現代において、ユーザーは純粋に商品やサービスを購入・利用するだけではなく、精神的な満足度も求めています。それにより、改めてUXデザインの重要さが注目を浴びています。
これから、自社の製品・サービスにUXデザインを取り入れたいと考えていても、「実際にはどのようにすればいいのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、UXデザインの基礎的な事柄やUIとの違い、UXデザインに必要なスキル・知識などを、丁寧に解説します。
商品開発やマーケティング部門などの担当者は、ぜひご覧ください。
目次
UX(ユーエックス)デザインとは
UXデザインの「UX(User Experience/ユーザーエクスペリエンス)」とは「ユーザー体験」を意味し、ユーザーが製品やサービスの利用を通して得られる、全ての体験を指します。
ユーザーの満足度を高めるために、「UXデザイン」を製品やサービスの開発に取り入れる会社が増えています。
そもそも、UXデザインとはどのようなことを指すのでしょうか。ここでは、UXデザインを理解する上で欠かせない、基本的なポイントを解説します。
UXについては下記の記事で詳しく解説しています。こちらの記事もぜひご覧ください。
■参考記事:
重要なポイント:UXは作れない
例えば、「使って便利だった」という体験も、「購入や利用に対する手続きが煩雑だったので、リピートはしない」と感じたことも、UXに含まれます。
「UXデザインを作る」と表現されることもありますが、UXはユーザー自身の体験を指すため、実際には作ることはできません。
また、ユーザーが求める体験は日々変わっていきます。例えば、スマートフォンに対して、最初は「動画でも安定した通信環境を実現したい」という要望を持っていても、時間が経つと「機械操作に疎い人でも使いやすくしてほしい」という要望に変わることがあります。
つまり、UXデザインとはユーザーの要望やニーズを正確に捉え、ユーザーが「良い体験ができるように設計する」ことを指します。
UIデザインとの違い
UXデザインと似た言葉に「UIデザイン」という言葉があります。
「UI(User Interface/ユーザーインターフェース)」とは、ユーザーとその製品・サービスの全ての接点を指す言葉です。
スマートフォンのアプリを例に挙げると、アイコンの視認性やページの操作性などを指します。つまり、いかにユーザーにとって使いやすくなるか、分かりやすくなるかを考えて設計するのがUIデザインです。
一方、UXデザインは先ほど説明したように、ユーザーが「良い体験ができるように設計する」ことを指します。
これらをまとめると、UIデザインは見た目や操作性をより良くするために行うものであり、UXデザインはUIを含め、ユーザーがより良い体験ができるように行うものであるということです。
UXを良くするためにはUIを良くする必要があるため、UXとUIは密接な関係があります。
UIやUIデザインについては、下記記事で詳しく解説しています。こちらの記事もぜひご覧ください!
■参考記事:
UXデザインの大切さをモノ・コト・トキ・エモ消費から考える
UXはデザイナーが意図して作ることができないため、UXデザインの重要性を低く考えてしまう人もいるかもしれません。
そこで、UXデザインの大切さを、ユーザーの消費傾向から考えてみましょう。
消費傾向には4種類があり、それぞれ以下の特徴や違いがあります。
- モノ消費:製品やサービスを所有するために消費すること
- コト消費:購入前の感情や利用後の感想など、一連の体験に対して消費すること
- トキ消費:日時や場所などが限られている体験に対して消費すること
- エモ消費:費用や時間などに関わらず、精神的な満足感を得るために消費すること
この4つの消費傾向は、時代とともに「モノ→コト→トキ→エモ」の順に変化しており、すでに製品やサービスを購入・利用する以外の価値をユーザーは求めています。
そのため、より多くのユーザーの獲得には、魅力的なユーザー体験の設計をサポートするUXデザインが欠かせないといえるでしょう。
■参考ページ:
「モノ、コトの次の潮流【トキ消費】とは」
「モノ、コトに続く潮流、「トキ消費」はどうなっていくのか」
変「質」する外食市場 ~マーケットの読み方と付加価値の磨き方~(前半)
良いUXデザインの定義を改めて考える
ユーザー獲得において、良いUXデザインは必須ですが、UXはユーザー一人ひとりが体験するあらゆることが対象となるため、一概に良し悪しを決めることはできません。
そこで、情報アーキテクチャの開拓者の1人であるピーター・モービルが提唱している「UXを構成する7つの要素」から「良いUXデザイン」の定義を考えてみましょう。
UXを構成する7つの要素は下記です。
- Useable:使いやすい
- Findable:商品・サービスを見つけやすい
- Useful:役に立つ
- Desirable:魅力がある
- Valuable:価値がある
- Credible:信頼できる
- Accessible:手に入れやすい
例えば、最新機能を数多く備えたデバイスは、魅力があり日々の生活の役に立つ商品(=Useful/ Desirableがある)です。
しかし、商品の出荷台数がごく少数(=Findableがない)だったり、情報流出を起こした会社が販売していたりすると(=Credibleがない)、ユーザーが感じるそのデバイスへの価値は下がってしまいます。
つまり、7つのポイントの全てを満たすような商品・サービス=良いUXの商品・サービスだといえます。
そして、ユーザーの感想などからUXデザインを改善・改良していくことで、ユーザーに価値のあるUXを提供できるようになるでしょう。
UXを設計・改善する5つのプロセス
UXを設計・改善するプロセスは多くあるため、どのように設計・改善していくか悩んでしまうものです。
ここでは「人間中心設計」という考え方をベースにした、設計・改善プロセスを解説します。
人間中心設計については下記の記事で紹介しているので、こちらの記事もぜひご覧ください
■参考記事:
1. ユーザーの課題を見つける
人間中心設計の最初のステップとなるのが、「ユーザーの課題を見つける」ことです。
ユーザーの不満や不安、ニーズなどを知ることで、ユーザーが求める体験の内容や特徴を把握できるようになります。
さらに、製品やサービスの利用状況など、実際に体験したユーザーの声を取り入れることで、具体的なUXを想定しやすくなります。
そのため、一般的な市場調査だけでなく、ユーザーインタビューを実施するなど、より多くのユーザーの声や要望を聞ける方法を実践することが大切です。
UXデザインのゴールを論理的に考えられるよう、しっかりとユーザーの意見を集めましょう。
ユーザーインタビューについては、下記の記事もぜひ併せてご覧ください。
■参考記事:
2. ペルソナやカスタマージャーニーマップの作成
ユーザーから課題や要望を収集し終えたら、どのように叶えていくかを考えるステップに移ります。このステップで行う代表的なことが、「ペルソナ」や「カスタマージャーニーマップ」の作成です。
- ペルソナ:製品やサービスのターゲットとなる具体的な人物像
- カスタマージャーニーマップ:ユーザーが体験するまでの行動や思考、感情の流れを可視化したもの
例えば、アンケートなどに答えてくれたユーザーの年代や職業から具体的なペルソナを作ったり、ユーザーがどのように製品やサービスの購入を決めたかを考えたりします。このステップを丁寧に行うことで、収集した意見を分かりやすく整理できます。
そして、情報の見落としや、プロジェクトメンバー内での目標の不一致を防ぐことで、きちんとユーザーの声を反映した商品・サービス開発に進めます。
ペルソナやカスタマージャーニーに関しては、以下の記事でも詳しく解説をしています。
■参考記事:
3. 実際に設計を行う
人間中心設計の3つ目のステップは、「製品やサービスの設計を行う」ことです。ペルソナやカスタマージャーニーマップをもとに方針を決め、実際に製品やサービスを作っていきます。
ただし、初めて設計を行う場合は最後まで作りきるのではなく、試作品(プロトタイプ)の作成にとどめましょう。
人間中心設計の考え方では、各ステップを繰り返し行うことで、ユーザーが求めるUXに近づけていきます。つまり、最初の設計段階で作りきってしまうと、作り直すコストや時間が増え、試行回数が少なくなってしまうのです。
まずは試作品の作成に注力し、何度も設計を行って完成へと近づけましょう。
試作品(プロトタイプ)に関する詳細は、以下の記事でも解説をしています。
■参考記事:
4. ユーザビリティテストなどで評価を行う
製品やサービスの試作品が出来上がったら、評価を行うステップへと移行します。ペルソナで想定したターゲットに試作品を試してもらう「ユーザビリティテスト」などを通して、ユーザーからの素直な意見を収集しましょう。
このステップの目的は、設計段階で制作側が気づかなかった使いにくさやバグ、問題点などを知ることです。
そして、想定したUXを実際にユーザーが体験できているか、想定からブレていないかをチェックします。
良い評価を受けた部分はそのまま取り入れ、悪い評価を受けた部分は改良点として、しっかりと改善方法を考えて対処しましょう。
ユーザビリティテストに関しては下記の記事で詳しく解説をしているので、ぜひ併せてご覧ください。
■参考記事:
5. PDCAサイクルで回す
人間中心設計で大切なのは、これらのステップを繰り返して行うことです。「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(評価)」、「Action(改善)」の4つのプロセスからなる「PDCAサイクル」に従い、何度も各ステップを実施して、ユーザーのニーズを叶える製品やサービスを作り上げましょう。
また、繰り返す回数が増えるほど、より良いサービスになりますが、結果にこだわりすぎると、いつまでもリリースできません。
ある程度繰り返したら正式リリースし、リリース後にも定期的に各ステップを実施して運営と改善を同時に進めることで、ユーザーのニーズに近づけていくことも大切です。
UXデザインを仕事とするUXデザイナーとは
UXデザインを外注する際に知っておきたいのが、「UXデザイナー」という職種です。どのような仕事や役割を担うのか、あらかじめUXデザイナーに関する理解を深めておきましょう。
UXデザイナーの仕事内容
UXデザイナーの仕事は、クライアントからの依頼に合わせてユーザーの体験を設計することです。提供したいサービスや商品の特性を把握し、ターゲットにしたいユーザーとの関係性をふまえた、適切なUXをデザインします。
人間中心設計の考え方で例えると、ユーザーの課題の収集からペルソナ作成を通した分析、UXの設計までを行います。
UXデザインの専門的な部分は全てUXデザイナーが担当するので、UXデザイナーへ外注すれば、社内メンバーはその他の業務に注力できます。
UXデザイナーは個人で設計を担当するだけでなく、チームで1つのUXデザインを担当する場合もあります。
また、UXデザイナーがUIや試作品の制作まで対応することもあり、UXデザイン会社によって仕事内容や対応する範囲は大きく変わります。
UXデザインを外注するには
UXデザイナーへ外注すれば、効果的なUXデザインを作ることは可能です。しかし、UXデザイナーとの意思疎通がうまくいかないと、狙い通りのUXデザインにならないことがあります。
そこで、UXデザインをUXデザイン会社へ依頼するときに知っておくべきことを解説します。
UXデザイン会社ができること
UXデザインには多くの工程が必要となるため、外注するUXデザイン会社の対応範囲と、外注したい作業内容が合致していなければ、そもそも外注できません。
一般的にUXデザイン会社が対応できるのは、以下のような作業です。
- ユーザー調査、分析
- 試作品の制作、ユーザビリティテスト
- ユーザー体験(UX)の設計
- アプリやWebサイトのデザイン制作
- サイト公開後のサービスグロース支援
細かな作業範囲はUXデザイン会社ごとに異なりますが、UXデザインに必要な工程のほとんどを外注でき、UXデザインにかける時間や労力を軽減できます。
アプリやWebサイトなどのUXデザインを外注するときには、試作品の制作やユーザビリティテストまで対応してもらえることが多く、自社で行う作業を最低限に抑えることも可能です。
UXデザインを外注する前に自社の課題を明確にする
UXには、ユーザーが体験するあらゆることが含まれるため、漠然とした発注内容だと、想定していた方向性とは異なった結果になる可能性があります。
さらに、UXデザイン会社によって、得意分野が異なるため、評価が高いというだけで外注先を選ぶと、効果的なUXデザインを受け取れません。
そのため、UXデザインを外注するときには、あらかじめ自社が抱えている課題を明確にし、課題の内容や具体的な改善方法に合うUXデザイン会社を選ぶようにしましょう。
例えば、「自社Webサイトの利用率が低い」という課題がある場合は、Webサイトの構築や改善を専門に扱うUXデザイン会社に外注すると、より効果的なUXデザインが出来上がります。
UXデザイン会社を選ぶコツ
UXの設計プロセスが同じようなUXデザイン会社でも、各工程の取り組み方や担当するUXデザイナーの能力によって、出来上がるUXデザインの質は大きく変わることがあります。
効果の高いUX設計を求めるなら、外注するUXデザイン会社選びに妥協しないことが大切です。
外注するUXデザイン会社を選ぶときには、以下の3つのポイントに注目してみてください。
- 実績
- 得意分野
- 担当者とのコミュニケーション
例えば、UXデザイン会社の実績をチェックする場合は、実績数だけでなく、自社と同じ業種や業界のUXデザインを担当した実績があるかを見ます。これは、同業種のUXデザインの実績数が少ないと、合計実績数が豊富でも、質の高いUXデザインにならないことがあるからです。
会社によって、スマホアプリのUXデザインが得意な会社や、ウェブサイトのUXデザインが得意な会社など、得意分野が異なります。
自社の課題を明確にすることで、どのUXデザイン会社に選ぶといいのかが、より分かりやすくなります。
さらに、UXデザインの改善は、UXデザイン会社の担当者と二人三脚で進めていく事業です。そのため、担当者と円滑なコミュニケーションが取れるのかも重要になります。
また、UXデザイン会社選びに役立つことは、以下の記事でより詳しく解説しています。UXデザイン会社選びで失敗しないために、ぜひこちらの記事もチェックしてください。
■参考記事:
UXデザインを独学で勉強するには
ここからは、UXデザインの勉強方法を紹介します。UXデザインは、今や製品・サービスの開発に欠かせなくなっているものです。
UXデザインを取り入れようとしている方は自分でも勉強しておくと、UXデザイナーやUXデザイン会社とのコミュニケーションもスムーズになります。
本で学ぶ
基礎からUXデザインについて学ぶときに有効なのが、本で学ぶ方法です。単元ごとにまとまって解説され、分からないとこは何度も読み直せるため、本をベースに勉強すれば、UXデザインに必要な知識や工程がきちんと身につきます。
UXデザインを本から学ぶときに有効な本は、以下の3冊の本です。
- 『UXデザインの教科書』/著:安藤昌也
- 『UI/UXデザインの原則』/著:平石大祐
- 『ジョブ理論』/著:クレイトン・M・クリステンセン
これらの本では、UXデザインやUIデザインの基礎から、ユーザー心理、改善のための具体的な方法まで学ぶことができ、実践的な思考方法などを身につけられます。
また『ジョブ理論』では、顧客が求めることを「ジョブ」と名づけ、そのジョブに対してどのようなアプローチをすればいいのかを学ぶことができます。
この3冊からはUXデザインの実務上必要なことも学べます。まずは、この3冊からUXデザインを学んでいき、自社で取り組む際には読み返してみましょう。
下記の記事では、上記の本以外にもUXデザインを学ぶのにおすすめの本を紹介しています。
こちらの記事もぜひご覧ください。
■参考記事:
セミナーや勉強会に参加する
UXデザインに関するセミナーや勉強会では、実際にUXデザインを手がけているデザイナーなどからUXデザインを学べます。本だけでは把握しづらいことも効率よく学べ、講師への質問を通して理解を深められます。
また、セミナーや勉強会は、参加者の理解度・レベルごとに開催されているため、自分の理解力に合わせて参加すると、きちんと知識の習得や成長に生かせます。
さらに、参加者同士で課題に取り組むグループワークなどがあると、刺激や新しい考え方を得られ、UXの設計などに大きく役立つでしょう。
ニジボックスでも、「BUSINESS&CREATIVE」というUIやUXに関するイベントを定期的に開催しています。
UXデザインを初めて学ぶ方向けや、新しいUXデザインのヒントが欲しいデザイナー向けなど、さまざまな内容のイベントを企画していますので、興味のある方はぜひ参加してみてください。
■関連ページ:
ニジボックス – connpass
まとめ
UXデザインは、製品やサービスの利用を通して、ユーザーがより良い体験をできるように設計することです。
UXは製品やサービスを購入する決め手となることも多いため、売上アップを狙うためにもUXデザインは欠かせないものです。そのため、UXデザインについての理解を深め、着実に製品やサービスの開発に取り入れていきましょう。
UXデザインは、自社で手がけるだけはなく、外注することも可能です。UX設計のノウハウがない会社は、UXデザインを手がける会社に外注してみてはいかがでしょうか。
ニジボックスではサイト制作や開発における、情報設計やビジュアル設計といったUIデザイン面に加えて、ユーザーテストなどによるUX観点でのご支援も可能です。
下記資料にて、ニジボックスがクライアント課題に伴走する中で、磨き上げてきたUXデザインのプロセスや支援事例の一端を資料として一部ご紹介しています。
ご興味を持たれた方はぜひ、下記ダウンロードリンクよりご参照ください!
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動
コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。
Twitter:@junmaruuuuu
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