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ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いとは?考え方、意味、事例も紹介

ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いとは?考え方、意味、事例も紹介

「ユニバーサルデザイン」と「バリアフリー」という言葉は、似たような意味合いで使われていることもありますが、異なる考え方に基づいて生み出されたものです。

簡単にまとめると、下記のような違いがあります。

ユニバーサルデザイン

障がいの有無、年齢、性別、人種などにかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方。

バリアフリー

障がいのある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去する考え方。     

異なる考え方ではありますが、全ての人が「福祉の心」を持つことにより、ハード事業だけでは足りない部分を補うという点では共通しています。

本コラムでは、ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いについて、その考え方、意味を、事例も交えて解説します。

ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いとは?

ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いとしては、大きく4つの視点があります。簡単にそれぞれを紹介していきましょう。

1.考え方、意味の違い

総務省「障がい者基本計画(平成14年12月閣議決定)」では次のように書かれています。

ユニバーサルデザイン

バリアフリーは、障がいによりもたらされるバリア(障壁)に対処するとの考え方があるのに対し、ユニバーサルデザインはあらかじめ、障がいの有無、年齢、性別、人種などにかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方。

バリアフリー

障がいのある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去するという意味で、もともと住宅建築用語で登場し、段差などの物理的障壁の除去をいうことが多いが、より広く障がい者の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的な全ての障壁の除去という意味でも用いられる。

また、「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱(平成20年3月28日バリアフリーに関する関係閣僚会議決定)」では、下記のように書かれています。

物理的な障壁のみならず、社会的、制度的、心理的な全ての障壁に対処するという考え方(バリアフリー)とともに、施設や製品などについては新しいバリアが生じないよう誰にとっても利用しやすくデザインするという考え方(ユニバーサルデザイン) が必要。

2.対象の違い

ユニバーサルデザインでは、個人差、国籍の違いなどに配慮されており、全ての人が対象とされていますが、バリアフリーでは、障がい者、高齢者などに配慮し策定されています。

3.普及方法の違い

ユニバーサルデザインは、良いものをほめたたえ推奨する「民間主導型」となっていますが、バリアフリーは法律などで規制することで普及させる「行政指導型」となっており、大きく異なっています。

4.思想的な違い

ユニバーサルデザインは、障がい者だったロナルド・メイス氏が、バリアフリー対応設備の「障がい者だけの特別扱い」に嫌気がさして、最初から多くの人々に使いやすいものを作る設計手法として発明されました。一方、バリアフリーは障がい者・高齢者などの生活弱者のために、生活に障がいとなる物理的な障壁の除去を行うという、過去の反省に立った考え方で進化してきました。

5.混同しやすい理由

例として、建物玄関前の段差について注目します。公共施設では、高齢者や車いす利用者への配慮として、玄関などにスロープを設置することが法令で定められています。このケースでは法令に則って、スロープを設置するというのが、「バリアフリー」だといえます。一方、ユニバーサルデザインでは、高齢者、車いす利用者に限定せず、あらゆる人にとって使いやすい環境を想定して、スロープを含めた玄関周りのデザインを計画し作ることとなります。しかし、完成した入り口は全く同じ形状なのです。これが、ユニバーサルデザインとバリアフリーを混同しやすい理由なのかもしれません。

6.ユニバーサルデザインとバリアフリーの根底にある共通点とは?

全ての人に使いやすいものを作ろうというユニバーサルデザインの考え方には「やさしさや思いやり」があります。また、「障がい者、高齢者などが安全に利用できる、住みよい福祉の街づくり」を行うバリアフリーにも「やさしさや思いやり」があります。共通する「やさしさや思いやり」の精神は、「全ての人を個人として尊重し、思いやりの心を持って助け合う態度を育て、共に生きる人間の心の育成を目指す」という福祉の心の育成に通じています。ユニバーサルデザインとバリアフリーとは、異なる考え方に基づいて生み出されたものではありますが、両者とも、全ての人が福祉の心を持つことにより、ハード事業だけでは足りない部分を補うという点では、共通しているといえます。

ユニバーサルデザインについては、下記のコラムでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

■関連記事:ユニバーサルデザインとは?身近な事例を交えながら解説!Webデザインに生かすためのポイントも紹介

■出典:総務省「バリアフリーとユニバーサルデザイン

■出典:静岡市役所 福祉総務課「バリアフリーとユニバーサルデザインの違い

ユニバーサルデザインとバリアフリーの事例

いま、社会で注目されているユニバーサルデザイン、およびバリアフリーですが、実際に形となって社会に普及しているものも多くあります。以下ではその実例をいくつか紹介します。

ハード整備とソフト事業

ユニバーサルデザインとバリアフリーは、それぞれハード整備とソフト事業の2種類に分けられます。ハード整備とは、物理的に都市基盤や建物、乗り物、築造物などを整備することを指し、ソフト事業は心の啓発(教育)といわれています。ものや施設などハード面のユニバーサルデザイン(バリアフリー)が整備されたとしても、サービスを提供する人の心のやさしさや思いやりがなければ、本当の意味でのユニバーサルデザイン(バリアフリー)にはならないといわれるように、ハード整備、ソフト事業ともに成果を上げなくてはなりません。

■出典:静岡市役所 福祉総務課「バリアフリーとユニバーサルデザインの違い

住宅・建築物におけるユニバーサルデザインとバリアフリー

住宅においては、始めから全ての人が使いやすいよう、設計段階から段差・階段を除去し、スロープを作るというのがユニバーサルデザインの考え方です。商業施設などで当たり前のように使っているエレベーターや自動ドアも、ユニバーサルデザインの一つです。

一方、歩行が困難な高齢者や車いすを使用している人にとって、障壁となる段差・階段を除去する、または、スロープを設けるというのがバリアフリーの考え方です。

住宅においては、家族が高齢になって歩行が困難になったときや、事故などで車いすが必要となったとき、リフォームをしてスロープや手すりを設置するのがバリアフリーといえます。

バリアフリーはもともと建築用語で、「段差などの障がい除去」を意味します。主に、高齢者、障がい者に配慮したデザインとなっており、公共施設の入り口のスロープや、駅で見かける点字ブロックも、バリアフリーの一つです。バリアフリーは、ユニバーサルデザインの一部であるということができます。

住宅におけるユニバーサルデザイン、バリアフリーの実例として、下記のような項目が挙げられます。

  • 玄関前にスロープを設置
  • 室内にある段差の除去
  • 全ての扉を引き戸タイプに変更
  • 室内に車いすが通れるスペースを確保
  • 階段、浴室、トイレへの手すりの設置
  • レバー式水栓の設置
  • ホームエレベーターの設置
  • 室内、浴室の床を滑りにくくする

ユニバーサルデザインとバリアフリーの課題

内閣府が毎年実施している「バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する意識調査」からは認知度の差がみられます。また、個別の施設(建築物)・公共空間について「バリアフリーやユニバーサルデザインがどの程度進んだと感じているか」についても、施設によって大きな差がみられます。

「バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する意識調査」において、「バリアフリー」という言葉の意味を知っている(「知っている」+「どちらかといえば知っている」)と答えた人の割合は、2022年の調査では94.2%となっています。この割合は、2017年の調査からほぼ変わっていません。「バリアフリー」という言葉は、多くの人に浸透したといえるでしょう。しかし、「ユニバーサルデザイン」を知っていると答えた人の割合は、2022年の調査で59.0%でした。2017年の53.0%よりは増えたものの、いまだ浸透したとはいえません。さまざまな障壁(バリア)をなくすというバリアフリーに比べ、「ユニバーサルデザイン」という言葉から、その意味を理解するのはやや難しいのでしょう。

次に、個別の施設(建築物)・公共空間についてバリアフリーやユニバーサルデザインがどの程度進んだと感じているかを見てみると、進んだと答えた割合の上位1・2位を占めたのは、特定の人が集まる「老人ホーム等の福祉施設」(76.2%)、「病院、診療所等の医療施設」(66.2%)という結果でした。続いて、公的な施設である「公民館、図書館等の社会教育施設」(55.4%)、「官公庁施設」(54.6%)が挙がっています。

「学校」「オフィスビル・事務所等」のように、さまざまな人が利用する施設においては、バリアフリー・ユニバーサルデザインが進んだと答えた割合は、3割前後と低くなっています。「飲食店、料理店等」、「公衆トイレ」以外の公共空間も3割を下回っています。

全ての人を対象とした「ユニバーサルデザイン」より、高齢者や障がいのある人などの障壁を排除するという「バリアフリー」のほうが広く浸透しており、法律などで規制することで普及させる「行政指導型」でもあることから、福祉・医療施設の整備が優先的に進められていると考えられます。

詳しくは株式会社 第一生命経済研究所のコラムで解説されています。

■出典:株式会社 第一生命経済研究所「バリアフリー・ユニバーサルデザインは進んだのか ~『誰でもいつでもどこでも』暮らしやすい社会を~

Webサイトにもユニバーサルデザインを

Webサイトにおいてもユニバーサルデザインの考え方が浸透しつつあります。例えば、人によって色の見え方が異なる前提に立ち、どんな色を使うか、どんな組み合わせにするかを考える。また、テキストの大きさやフォントも、Webサイトの見やすさ・情報の伝わりやすさに大きく影響を与えることを考慮する。以上などが、Webサイトにおけるユニバーサルデザインのポイントとなります。

色やテキストを例にしてユニバーサルデザインの考え方を見てみましょう。

色を判別しやすくするために必要な工夫は以下の3つです。

  • 多くの人にとって見分けがつきやすい配色
  • 色だけでなく模様にも変化をつけることで、色の見分けがつきにくい人にも伝わりやすくすること
  • 色をつけている箇所に「赤」「青」「黄」のように、「この色が何色か」のテキスト情報を付与すること

テキストの読みやすさは、以下3つの要素で構成されています。

  • 視認性:文字の形の分かりやすさ
  • 判読性:文字の誤読のしにくさ、見分けやすさ
  • 可読性:文章の読みやすさ

このうち、特に視認性と判読性の向上を目指して生まれた「UDフォント」というフォントがあります。

可読性を高めるために仮名を小さめにしたタイプのUDフォント(イワタUDゴシックR本文用など)もあるので、文章量が多い際にはこちらを採用するなど、ケースに応じて使い分けるとよいでしょう。

また、テキストのおすすめの大きさは、本文なら14~16pxです。ページタイトルはサイトによってさまざまですが、スマートフォンなら24px前後、PCなら30px前後を目安とするとよいでしょう。

まとめ

ユニバーサルデザイン、バリアフリーはそれぞれ異なる概念ですが、共通するのは「あらゆる人にとって、使いやすい、住みやすい社会を実現する」という考え方が根底にあることです。これからの社会において、欠かすことができない考え方だといえるでしょう。

ニジボックスは、Webサイトにもユニバーサルデザインの考え方を取り入れ、あらゆる人にとって快適なデザイン設計をご提案します。下記資料もご覧ください。

ユニバーサルデザインについては、下記のコラムでもふれています。ぜひ参考にしてみてください。

■関連記事:インクルーシブデザインとは?ユニバーサルデザインとの違いや原則を事例も交えて解説!

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監修者
監修者_丸山潤
丸山 潤
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動

コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。

Twitter:@junmaruuuuu
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