UXリサーチの定番手法8選!現役UXデザイナーが活用法をやさしく解説
ニジボックスのUXデザインフローや案件事例をご紹介!
UXリサーチには、ユーザーインタビューやユーザビリティテストをはじめ多くの手法があります。
この記事では、UXリサーチの手法を体系的に分類しつつ、代表的なものをまとめて紹介します。
多くの企業にUXデザインを軸としたプロダクト開発・成長支援を提供してきたニジボックスに在籍する現役UXデザイナーが、事例を交えながら解説するのでぜひ参考にしてください。
目次
UXリサーチとは?
UXリサーチとはユーザー体験(UX=ユーザーエクスペリエンス)に関わる調査全てを指します。
そもそもUXとは、「ユーザーが、会社や製品・サービスと接触・利用した際に得られる体験・感情の総称」のことです。
例えば友達の誕生日に、メッセージアプリで「誕生日おめでとう」と送ること、どんな絵文字を添えれば喜びそうか考えること、「ありがとう」と返信が来たときの嬉しい気持ち、これら全てがUXです。
また、ユーザーにとって最適なUXの設計をUXデザインと呼びます。
そして、このUXデザインに必要な情報を調査するのがUXリサーチです。
つまり、UXリサーチはUXデザインのための手段であり、サポートするものと言えます。
UXリサーチの失敗はUXデザインの失敗にもつながることから、近年ではUXリサーチを専門とする職種を用意する企業も増えているなど、その重要性に注目が集まっています。
特にアメリカの大手企業においては、UXリサーチ専門の組織を設けるケースもあるほどです。
UX、UXデザインについては下記の記事で解説しているので、こちらの記事もぜひご覧ください。
UXリサーチの種類
UXリサーチは「何を調査するのか?」の観点から、定性調査・定量調査の2つに大別が可能です。
また、この2つを組み合わせた調査手法もあります。
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
また、定量・定性については下記の記事でも解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
定性調査(質的調査)
定性調査は、数字に落とし込むのが難しいデータを対象とした調査で、「深く知る」ことができる点が特長です。
例えばユーザーにインタビューして得た発言や行動を通して、その背景にある価値観までうかがい知るといった、表に出てこないユーザーニーズまで調査可能です。
一方で、一人に対する調査に時間がかかるため、調査人数はどうしても限定的になるデメリットがあります。
定量調査(量的調査)
定量調査は数値化できるデータを対象とした調査で、「広く知る」ことができる点が特長です。
例えばアンケートでは「●%の人がAを選び、●%の人がBを選んだ」のように、大まかな市場の傾向をつかむことができます。
定性調査とは逆で調査人数は多く確保できますが、調査対象者一人ひとりの詳しい情報まではキャッチできない点がデメリットです。
定性×定量の組み合わせ
定性調査と定量調査を組み合わせることで、調査人数が限定的な「定性」、情報の具体性が限定的な「定量」というデメリットを補いつつ、より信頼性のあるデータを得られるようになります。
組み合わせ方はさまざまですが、例えばニジボックスでは「定量調査⇔定性調査→(再び)定量調査」の組み合わせで調査することがあります。
定量調査と定性調査を行き来しながら精度の高い課題抽出と解決施策の設定をし、最後に施策の効果測定を定量調査で行うやり方です。
詳しくは以下の記事で事例を交えて解説していますので、ぜひご一読ください。
定性調査と定量調査の組み合わせ事例について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください!
UXリサーチを行う目的とタイミング
これまでの章ではUXリサーチを質的・量的の観点から分類しましたが、別の軸として「何を目的とするか?」の観点で探索的リサーチ・検証的リサーチに分けられます。
- 探索的リサーチ:課題を発見するためのリサーチ
- 検証的リサーチ:課題が解決されているかを確かめるためのリサーチ
プロダクト開発のフェーズによって、実施する調査が異なるため、それぞれどのタイミングで、どんな目的で行うのかを見ていきましょう。
【探索】プロダクト企画段階
今ある課題やその解決法がまだ曖昧なプロダクトの企画段階では、主に探索的リサーチを実施します。
「解決されるべき課題は何か?」の探索を目的とし、ここで得られた結果をもとに解決策の仮説を立て、それを実現するためのプロダクト開発へと進めていきます。
【検証】プロダクト開発中
プロダクト開発中の段階では、主に検証的リサーチを実施します。
ここでは、「企画段階で立てた仮説が市場に受け入れられるものか?」の検証が目的となります。
プロトタイプを作り、検証と改善を繰り返すことでより良いプロダクトへと磨き込んでいきます。
プロトタイプについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
【探索・検証】プロダクトリリース後
プロダクトリリース後のリサーチは、探索・検証どちらも実施します。
実際にリリースしてみると、リリース前には思いもよらなかった問題が発生することは多々あります。
そこで、探索的リサーチによって課題をあぶり出し、改善施策を考えるのです。
その後、施策によって課題が解決されたのかを確認するため検証的リサーチを実施します。
【探索】のUXリサーチ定番手法
それではここから、UXリサーチで良く使われる手法を「探索的リサーチ」と「検証的リサーチ」の2つのカテゴリに分けて紹介します。
まずは、探索的リサーチのUXリサーチ手法を4つ見ていきましょう。
1.ユーザーインタビュー
ユーザーインタビューとは、プロダクトを実際に利用しているユーザーに対して、質問に回答してもらったり、対話をしたりする形で意見を収集する、定性のリサーチ手法です。
ユーザーに詳しく話を聞くことで、ニーズや課題を発見することを目的とする場合によく利用されます。
ユーザーインタビューは汎用性の高さが特長で、プロダクトの企画段階からリリース後までさまざまなフェーズで役立つ手法です。
質問内容に自由度が高く、また一つの質問への回答に対してさらに深掘りをできることで、ユーザーの真意やリアルなニーズを収集できる一方、時間がかかるのが難点なのでスケジュールに余裕を持たせることが重要です。
課題を発見するのに使うケースが多いので、ここでは「探索」にカテゴライズしましたが、検証的に使うこともできます。
例えば、プロダクト改善後にインタビューをして、改善前と比較した意見をもらう、といった使い方です。
ユーザーインタビューについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
2.アンケート
ユーザーインタビューが定性情報取得に良く使われる手法であるのに対して、定量情報を得る定番の手法がアンケートです。
質問に回答してもらう点はユーザーインタビューと同じですが、アンケートの場合は基本的に選択式の質問を用意する点(一部、自由回答の設問もあり)が異なります。
調査対象者もユーザーインタビューより多く、数千~数万人に実施することもあります。
多くの人の意見を集めることで、アンケートでは「ユーザーが抱えている不満は何か」「プロダクトの価格を高いと思っているか」といった大まかな課題を抽出することが可能です。
ただし、回答する選択肢はリサーチする側で用意したものとなるため、得られる結果が恣意的になってしまうリスクがあります。
アンケート調査については下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
3.デスクリサーチ(資料・文献調査)
デスクリサーチとは、既にある資料や文献からデータを集め分析する手法です。
調査に協力してくれるユーザーを集める必要が無く、手軽に実施できる点が良いところです。
知りたい情報について統計調査が既に出ていれば、定量情報でも定性情報でもデスクリサーチのみで事足ります。
グループインタビューやアンケートの質問項目を考えるための情報を集めるためにデスクリサーチを実施するのも良いでしょう。
ただし、自社のプロダクトに関するデータなどは、以前自社で実施していない限りは新たにリサーチをしなければなりません。
デスクリサーチが可能な範囲は、あくまで一般的な事象に限られることがほとんど、と認識しておきましょう。
4.競合分析
競合分析は、提供価値や機能が似ている競合のプロダクトを調査し、分析する手法です。
定量的に比較する場合もありますが、多くの場合は定性的なリサーチを実施します。
例えば新しく旅行アプリを起ち上げようと企画しているタイミングで、既存の旅行アプリを実際に使いながら調べていきます。
どんなUIでどんな価値を提供しているのか、また課題と感じられるポイントは無いかといった観点で複数のアプリを調査し、エクセルなどで調べた情報をまとめます。
競合分析のポイントは、「どのように差別化すれば勝てるのか」を抽出することです。
仮に、競合のアプリに「宿予約時の操作性が悪い課題」があれば、それをクリアしたアプリを作ることでより多くのユーザーに使ってもらえるかもしれません。
「相対的に」プロダクトを評価できるのが競合分析の良さです。
ユーザーが実際にプロダクトを利用する際は複数プロダクトを比較・検討することが多いため、この相対的な評価の視点をリサーチして開発に活かすことは重要です。
下記の記事では競合調査について詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
【検証】のUXリサーチ定番手法
続いて、検証的リサーチの手法を4つ紹介します。
1.ユーザビリティテスト
ユーザビリティテストとは、ユーザーにプロダクトを実際に操作してもらいながら、ユーザビリティ※を測定する定性調査手法です。
※ユーザビリティ:プロダクトを通してスムーズにニーズを満たせているかの度合い
ユーザーを集めるコストはかかりますが、ユーザビリティを「定性的に検証」したい場合は基本的にこの手法を使うと捉えて問題無いでしょう。
例えば、ECサイトで「自分好みのコートを探し、購入まで進められるか」を検証するといった使い方をします。
また、ユーザビリティ上の課題を発見し、改善点のヒントを得る目的で実施されることもあるため、探索的リサーチの側面も持つ汎用性の高い手法と言えます。
ユーザビリティテストについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
2.ヒューリスティック分析
ヒューリスティック分析は、UI UXの専門家が経験則からユーザビリティを評価する定性調査手法です。
「専門家が評価する」ことから、エキスパートレビューと呼ばれることもあります。
単に経験則だけで評価するのではなく、ヤコブ・ニールセン博士提唱の「ユーザビリティに関する10のヒューリスティクス」などの分析指標をもとに実施することで、抜け漏れなく評価することを目指します。
プロダクトを操作しながらユーザビリティを確認する点はユーザビリティテストと同じですが、専門家の確保ができればすぐに実施できる点がヒューリスティック分析のメリットです。
また、ユーザーを集める時間やコストが不足している際によく選択される手法です。
ただ、評価実施者の主観に左右されがちというデメリットがあるので、経験豊富な専門家を複数人用意して行うのが望ましいでしょう。
ヒューリスティック分析については下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
3.ABテスト
ABテストとは、主にWebサイトや広告の表示を複数パターン用意して、より高い成果を得られるパターンを検証する手法で、定量調査に分類されます。
AとBの2パターンで実施するテストだけではなく、3パターン以上の場合も含めてABテストと呼ばれます。
例えば問合せフォームページへのクリック率が低い課題があり、ボタンを目立つデザインにすれば解決されるのでは、と仮説を立てたとします。
この場合、現状のページ(Aパターン)と、ボタンデザインを変更したページ(Bパターン)をそれぞれ表示させ、Bの方が高いクリック率となれば「仮説が正しそうだ」と判断できます。
このように、改善すべき課題が明確になり、改善施策の仮説を立てたタイミングで、その施策が効果的なものであるかを検証したいときにABテストは有効です。
ABテストについては下記の記事で解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
4.アクセス解析
アクセス解析は、Googleアナリティクスなどを用いてWebサイトにユーザーが「いつ、どれくらい訪問し、どう遷移しているか」のデータを分析する定量調査の手法です。
プロダクトのリリース後や改修後の反応を定量的にリサーチできるため、ビジネスの観点からも必ず実施しておきたいリサーチと言えます。
アクセス解析で得られるのは定量的な事実情報のみなので、単体ではUXリサーチとしては不十分な場合もあります。
事実情報をもとに、その理由や背景を定性調査で探ることで、より信頼性の高いデータを得ることができます。
例えばユーザーがWebサイトのどこをどれくらいの時間見ているかを可視化する「ヒートマップ」と併用すると良いでしょう。
アクセス解析、ヒートマップについては下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
UXリサーチの注意点、Tips
最後に、UXリサーチを実施するに当たって気をつけたいこと、心がけたいことを解説します。
「何のためのUXリサーチか」から適切な手法を選ぶ
冒頭の「UXリサーチとは?」の章で、「UXリサーチはUXデザインのための手段」とお伝えしたように、目的を明確にすることが重要です。
今回紹介した手法は、どれか一つを使うだけで全てが分かる訳ではありません。
例えば「ユーザーの視線が特に注目しているのはどこか」を調べたいからアイトラッキングを選ぶ、のように目的に対して適切な手法を選んで実施するようにしましょう。
「調査して終わり」ではなく、グロースや改善につなげることがゴール
特にユーザビリティテストのように準備も当日もやることが多いリサーチだと、リサーチをしたこと自体に満足してしまいがちです。
しかし、UXリサーチが上手くいったかどうかの判断は、「調査結果が出たか」ではなく「プロダクトが成長したか」で下すべきです。
この意識が抜けると、リサーチ自体が目的化してしまうので注意が必要です。
常にユーザー中心で考えることを意識する
UXリサーチは「ユーザー体験」に関わるリサーチなので、ユーザーの視点で考えながら実施することが重要です。
ユーザーの行動や思考を可視化するために定型化されたのがUXリサーチの手法なのですが、上手く使わないと「自分だったらどうする、どう考える」の視点で判断してしまい、得られたデータを正しく活用できないこともあります。
「ユーザーはこのように発言した」「ユーザーはこのような行動をした」のように、常に主語をユーザーとして考えるようにしましょう。
まとめ
UXリサーチの各手法は、適切な進め方や注意点がそれぞれあります。
ユーザーインタビュー一つを取っても、ただユーザーにインタビューすれば良いわけではなく、質問の設計や当日のファシリテーションを正しく進めるには知識と経験が必要です。
「UXリサーチの手法がどんなものか大体理解したけど、自分でやるには少し不安がある」という方は、経験豊富なUXデザイナーの力を借りるのも手です。
ニジボックスでは、UXリサーチに関して幅広いご支援を行っております。
下記資料にて、ニジボックスがクライアント課題に伴走する中で、磨き上げてきたUXデザインのプロセスや支援事例の一端を資料として一部ご紹介しています。
ご興味を持たれた方はぜひ、下記ダウンロードリンクよりご参照ください!
UXデザイン実績資料ダウンロードはこちら
また、UXに関して次のように思う方は少なくないかもしれません。
・現状のビジネスで安定した収益を確保できているのでUXの必要性を感じない
・ユーザーの声を聞くという話は分かるが、具体的にどうすればいいかは分からない
下記資料では、「ビジネスにUXが重要な理由」について、事例を交えて分かりやすく解説しています。
ぜひUXの理解を深めることにお役立てください!
元ニジボックス 執行役員、TRTL Studio株式会社 CEO、その他顧問やエンジェル投資家として活動
コンサルティング会社でのUI開発経験を持つ技術者としてキャリアをスタート。リクルートホールディングス入社後、インキュベーション部門のUX組織と、グループ企業ニジボックスのデザイン部門を牽引。ニジボックスではPDMを経てデザインファーム事業を創設、事業部長に就任。その後執行役員として新しいUXソリューション開発を推進。2023年に退任。現在TRTL Venturesでインド投資・アジアのユニコーン企業の日本進出支援、その他新規事業・DX・UX・経営などの顧問や投資家として活動中。
X:@junmaruuuuu
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